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Online ISSN : 2434-4966
REVIEW ARTICLE
Dietary management of short bowel syndrome in adults
Satomi Ichimaru
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2022 Volume 4 Issue 4-5 Pages 175-181

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Abstract

短腸症候群(Short bowel syndrome;以下,SBSと略)では,長期にわたる静脈栄養(Parenteral nutrition;以下,PNと略)により,肝障害などのQuality of Lifeの 低下をきたす合併症が多い.SBSは残存腸管の状態からI型(空腸瘻),II型(空腸-結腸吻合),III型(空腸-回腸吻合)に分類される.I型は脱水・電解質異常のリスクが高く,II・III型はI型よりPN離脱の可能性は高いものの,結腸が残存するゆえに尿路結石,D型乳酸アシドーシスという合併症の発症リスクがある.食事療法は,単純糖質制限や少量頻回食などI~III型共通の内容もあるが,II・III型に特化したシュウ酸制限など,SBSの分類に応じた対応が必要になる.SBSの食事療法は複雑だが,残存腸管の解剖学的特性を理解して実践することが重要で,症状の緩和や腸管順応の促進により,PNの離脱/減量の可能性がある.

はじめに

短腸症候群(Short bowel syndrome;以下,SBSと略)は,「何らかの原因による小腸大量切除・残存腸管の機能障害のために小腸からの吸収が低下し,標準的な経口あるいは経腸栄養では水分,電解質,主要栄養素,微量元素,およびビタミンなどの必要量が満たされない状態」と定義される1).一般には,成人で残存小腸150 cm以下,小児では全小腸の1/3以下の場合を指すことが多い1).栄養管理は静脈栄養(Parenteral nutrition;以下,PNと略)が主体となるが,長期PNは肝障害などのQuality of Lifeの低下をきたすことが問題となる2,3).PNを離脱/減量するには適切な食事療法が重要である4).本稿では残存腸管に炎症性腸疾患などの併存症がないSBS患者に対する食事療法について述べる.

SBSにおける下痢・吸収不良の機序

SBSの症状は吸収面積の減少だけが原因ではない.空腸切除例ではセクレチンやコレシストキニンが減少しガストリン分泌が抑制されないため,腸管切除後6~12カ月は胃酸分泌が亢進し,蠕動を刺激するとともに,近位小腸のpHが低下することで膵酵素の活性が低下する4,5).回腸切除ではペプチドYYやGlucagon-like peptide-1の減少により回腸ブレーキが無効となり,食物は腸管内を急速に通過する6,7).食物と消化液は十分に混和されず,腸管粘膜との接触時間も短縮することから栄養素の吸収が減少する8).回腸末端60 cm以上の切除ではビタミンB12の吸収障害が生じる9).回腸末端100 cm以上の切除では胆汁酸の腸肝循環が途絶え,脂肪の吸収不全のため脂肪性下痢となり,脂溶性ビタミンの吸収も減少する.吸収されなかった胆汁酸は結腸に流入し胆汁性下痢を起こす10)

腸管順応

腸管順応とは,腸管切除から約2年かけて腸管粘膜が肥厚・増生し,構造的・機能的に消化吸収効率が改善する現象である11).腸管順応の機序は完全には解明されていないが,腸管への栄養投与,消化液や消化管ホルモンの分泌,成長ホルモンなど複数の要因により促進されると考えられている11).特にGlucagon-like peptide-2(以下,GLP-2と略)は腸管内を食物が通過する刺激により回腸末端や結腸にあるL細胞から分泌される消化管ホルモンで,腸管順応に極めて有効とされている11).GLP-2は半減期が約7分と短いが,アミノ酸配列を一部変更し半減期を延長させたGLP-2アナログ製剤が開発され,本邦でも2021年に販売が承認された12,13).腸管順応の生体指標としては,小腸で生合成されるアミノ酸の一つである血漿シトルリンの濃度が有用である14).術後2年以上経過後の血漿シトルリン濃度が20 μmol/L(健常成人の50%)未満の場合は,PN離脱困難となる可能性が高いとされている14)

SBSの病期

小腸広範切除後の臨床経過は第I期(術直後期),第II期(回復適応期),第III期(安定期)の3期に分類される(表11).第I期は腸管麻痺期と腸蠕動亢進期に分けられ,術後~7日間の腸管麻痺期は一般的な術後患者と同様に水分・電解質に注意しながら管理する1).術後3~4週間の腸蠕動亢進期はPNによる水分・電解質・栄養管理を行いつつ,薬剤による排便コントロールを行う1).術後1~2年間の第II期では残存小腸の機能が代償期に入り吸収能も改善し,水様便の回数が徐々に減少する1).日本では第II期から成分栄養剤で経腸栄養を開始し,半消化態栄養剤,さらに経口摂取へ移行していくことが多いが1),海外では“regular whole food diet(普通食)”が推奨されている15,16).日本でも「絶食状態と比較して水分喪失を大きく増加させるものでなければ何を食べてもよい」とする意見もある17).いずれにしても,水分・電解質バランスが安定した時点で,腸管順応を促進するためにできるだけ早期に少量でも経口または経腸栄養を開始し,段階的に増量していくことが重要である.第III期では経口・経腸栄養を進め,PNからの離脱を目標とする1)

表1. 小腸広範切除後の臨床経過分類
病期 臨床経過分類 期 間 病 態
I期 術直後期
 a.腸管麻痺期
術直後2~7日間 腸管の麻痺
 b.腸蠕動亢進期 術後3~4週間 頻回(10~20回/日)の下痢
水分・電解質不平衡
低タンパク血症,易感染性
II期 回復適応期 術後数~12カ月 代謝機能の働き始める時期
下痢の減少(2~3回/日)
消化吸収障害による低栄養
III期 安定期 II期以降数年 残存小腸の能力に応じた代謝レベル

小山 諭.短腸症候群に対する栄養療法.日本臨床栄養代謝学会編.JSPENテキストブック.南江堂,東京,2021,p440–444.(文献1)より引用

SBSの分類

SBSは3つの型に分類される(図118).分類とその特徴を記載する.

図1.短腸症候群(SBS)の分類

Massironi S, et al. Understanding short bowel syndrome: Current status and future perspectives. Dig Liver Dis 52: 253–261, 2020.(文献18)より引用

1. I型SBS

回腸と結腸が切除されて空腸の断端がストマとなっている18).大量の排液が出るため脱水,電解質異常,場合により腎不全に至るリスクがある8).残存空腸100 cm未満の場合PN離脱困難となり,75 cm未満の場合PNに加えて水分・電解質補充用の輸液を要す8)

2. II型SBS

回腸の全体または大部分が切除されて空腸-結腸吻合が行われたタイプとなる18).結腸で水分を吸収し,食物繊維を利用できるため,残存小腸が50 cm以上あればPN離脱可能とされている8,19).尿路結石,D型乳酸アシドーシスといった合併症のリスクがある8)

3. III型SBS

空腸が切除され回腸末端10 cm以上と全結腸が残存したタイプとなる18).回腸が50 cm以上残存した場合の予後は良好で,食事療法を必要としないことも多い8,20).コントロール困難な下痢,尿路結石,D型乳酸アシドーシスが生じた場合はII型と同様の食事療法を行う.

SBSの食事療法(表2)
表2. 短腸症候群(SBS)の食事療法
SBSの型 内 容
食べ方 I~III型共通 ・少量の食事を頻回に摂取する(6~8食/日)
・十分に咀嚼する
・35~58 kcal/日を目安にするが,体重の変動や検査値をモニタリングし適宜調整する
・静脈栄養・経腸栄養を併用している場合は,それらの栄養量を考慮した食事量とする
糖 質 I型 糖質エネルギー比40~50%を目安にする
II・III型 糖質エネルギー比50~60%を目安にする
I~III型共通 ・単純糖質(単糖類,二糖類),糖アルコール(例:キシリトール,ソルビトール,マンニトールなど)を避ける
・複合糖質(例:米飯,パン,麺,芋類など)を摂取する
・乳糖不耐症がなければ乳糖制限は不要
たんぱく質 I~III型共通 ・たんぱく質エネルギー比20%を目安にする
・毎回の食事および間食で,良質のたんぱく質を摂取する
脂 肪 I型 ・脂肪エネルギー比は重要ではない
・脂肪性下痢に注意しながら段階的に脂肪量を増やしていく
・脂肪エネルギー比30~40%を目安にする
II・III型 ・脂肪エネルギー比20~30%を目安にする
・中鎖脂肪酸を使用してもよい
I~III型共通 ・脂肪制限を行う場合や,中鎖脂肪酸を使用する場合は,必須脂肪酸欠乏症,脂溶性ビタミン欠乏症に注意する
水 分 I型 ・経口補水液を摂取する
・低浸透圧の飲料(例:水,お茶)を避ける
II・III型 ・症状に応じて経口補水液を使用する
I~III型共通 ・食事中の水分摂取を控える
・高浸透圧の飲料(例:ジュース)を避ける
・利尿作用のある飲料(例:カフェイン,アルコール)を避ける
・水分摂取は1日を通して少量ずつ,時間をかけて行う
ナトリウム I型 ・必要に応じて多めに摂取する
II・III型 ・下痢が多くなければ通常量でよい
水溶性食物繊維 I型 ・便性状の改善目的で使用してもよい
II・III型 ・結腸内で短鎖脂肪酸となりエネルギー源となるため使用を推奨する
I~III型共通 ・満腹感による食欲低下の可能性に配慮して使用する
尿路結石予防 II・III型 ・シュウ酸の多い食品を制限する(例:葉菜類,タケノコ,紅茶,コーヒー,茶(特に玉露・抹茶),バナナ,チョコレート,ココア,ピーナツ,アーモンドなど)
・脂肪エネルギー比を30%未満にする
・カルシウムを十分に摂取する(600~1,200 mg/日)
・十分な尿量を保つ(1,200~1,500 mL/日以上)
D型乳酸アシドーシス予防 II・III型 ・単純糖質を制限する
・少量の食事を頻回に摂取する
・ヨーグルトや漬物などの発酵食品を避ける
その他 I型 ・残存小腸が非常に短くストマ排液量が多量の場合は,経口摂取は楽しみ程度の量に制限する

1. I型~III型SBS共通の食事療法

下痢を恐れ長期間絶食にすると,腸管順応が促進されないだけでなく胆汁うっ滞や肝障害を生じかねない15).明確なエビデンスはないものの,水分・電解質バランスが安定しており,絶食の状態で排便量が800 mL/日未満となれば経口摂取を試みるよう推奨されている21)

(1) 少量頻回食

SBSでは,経腸的に摂取した栄養素の1/2~1/3しか吸収されない22).PNを離脱するには,必要エネルギーの2倍以上を摂食し,吸収不良を代償する必要があるが22,23),摂食量増加に伴い下痢が悪化する恐れがある.そのため1食の量を少量にし,頻回(6~8食/日)に摂取することが望ましい4,15).具体的な食事の必要量は患者によって異なるが,観察研究によると,SBS患者は栄養必要量を満たすために35~58 kcal/kg/日を摂取すると報告されている2224).PNや経腸栄養を併用している場合は,それらの栄養量も考慮した食事量とする.

(2) 十分な咀嚼

食物の表面積を最大にし,膵液や胆汁と混和されやすくするため,十分に咀嚼することを患者に指導する16)

(3) 単純糖質の制限

単糖類,二糖類といった単純糖質を多く含む食品・飲料は,浸透圧により腸管内へ水分を引き込み,排便量を増加させるため摂取量を制限する21,25).特にキシリトール,ソルビトール,マンニトールなどの糖アルコールは緩下作用があるため避ける26).乳糖は摂取により下痢が悪化するなど明らかな不耐症状があれば制限するが,症状がない場合はカルシウム(以下,Caと略)の補給のためにも乳製品は摂取する方がよい15).複合糖質(例:米飯,パン,麺,芋類など)は腸管内の通過時間を遅延させるとともに,腸管順応を促進する効果を持つ27,28)

(4) 食事中の水分摂取を控える

食物が急速に腸管を通過することを避けるため,食事中の水分摂取は最小限にする15)

(5) 高浸透圧の飲料の制限と経口補水液の摂取

全ての型のSBS患者において,高浸透圧の飲料(例:ジュース)を避けるよう指導する29).高浸透圧の飲料は,高濃度の単純糖質を含み,ナトリウム(以下,Naと略)濃度が低いため,腸管内腔への水分およびNaの流入を促進し下痢を悪化させる30,31).低浸透圧の飲料(例:水,お茶)についてはNaの喪失を促進するため特にI型SBS患者では避ける方がよい15,29,30).また脱水のリスクが高い患者では,カフェインやアルコールなど利尿作用のある飲料も避ける15,30).SBS患者の飲料としてはNa-ブドウ糖共輸送機構を利用した経口補水液(oral rehydration solution;以下ORSと略)が推奨されている15).SBS患者に最適なORSのNa濃度は90~120 mEq/Lと報告されているが32),この濃度では味覚的に摂取が難しいため,本邦で市販されているORSのNa濃度は50 mEq/L程度となっている33).スポーツ飲料はさらにNa濃度が低いうえ単純糖質が多いため適さない34).ORSは一日を通して少量ずつ飲むことを指導し,食事中に大量に飲むことは避けさせる29).残存空腸65 cm未満のI型SBSはORSであっても下痢抑制効果が小さく,飲水量を制限する場合がある21).II型・III型SBSは結腸でNaと水分の吸収が可能なためORSの必要性は低くなるが,症状に応じて使用を検討する34)

(6) Naの摂取

I型SBSはストマ排液のNa濃度が高く(約100 mEq/L),Na欠乏を生じるリスクが高い16).そのため,食事や間食に食塩を添加し,尿中Na濃度を20 mEq/L以上に維持する16).II型・III型では下痢の量が多くなければ通常のNa量でよい4)

2. I型SBSに特有な食事療法

臨床的に安定したI型SBS患者では,高脂肪食と低脂肪食でエネルギー,脂肪の吸収率に差はなく,ストマ排液量やNa,カリウム排泄量にも差がないと報告されている3537).そのためI型SBSの食事は,脂肪エネルギー比30~40%,糖質エネルギー比40~50%が目安とされており38),脂肪性下痢に注意しながら段階的に脂肪量を増やしていく1).ただし高脂肪食の場合は2価の陽イオン(Ca,マグネシウム,亜鉛,銅)の喪失が増加するという報告があるため37),定期的なモニタリングが必要となる.

食直後にストマ排液が増加するため8),止瀉薬(例:ロペラミド塩酸塩)は食事の30~60分前に服用することが多い15).適切な食事・薬物療法を行っても排便量が3 L/日を超える場合は,楽しみを目的とした少量の食事に留める21)

3. II型・III型SBSに特有な食事療法

結腸が残存するII型・III型SBSでは,低脂肪食の方が栄養素の吸収率が高く,水分や電解質の喪失が少ないと報告されており3941),脂肪エネルギー比20~30%,糖質エネルギー比50~60%の食事が目安とされている38)

またII型・III型SBSでは,結腸が残存するゆえに発生する尿路結石やD型乳酸アシドーシスといった合併症の予防に考慮した食事を検討する必要がある.

(1) 尿路結石予防

結腸が残存するSBS患者の約40%に尿路結石が発生する42).通常,シュウ酸は腸管内でCaと結合し便中に排泄される.脂肪の吸収不良があるとCaは腸管に残った脂肪酸と結合するため,シュウ酸はCaと結合できず遊離型のまま結腸へ流入し吸収される.その結果,尿中のシュウ酸が増加しCaと結合して結石となる43).尿路結石の予防には,シュウ酸制限,脂肪エネルギー比30%未満の食事,十分なCaの摂取(600~1,200 mg/日),十分な尿量の確保を推奨する4,15,16,44).シュウ酸が多い食品は,葉菜類の野菜,タケノコ,紅茶,コーヒー,お茶(特に玉露・抹茶),バナナ,チョコレート,ココア,ピーナツ,アーモンドなどがある.シュウ酸は水溶性なのでゆでることによって減らすことができる45).SBS患者における適切な尿量に関するエビデンスは乏しいが,尿路結石予防としては1,200 mL/日以上,尿路結石再発予防としては1,500 mL/日以上が目安とされている4)

(2) D型乳酸アシドーシス予防

II型・III型SBSでは小腸で吸収されなかった糖質が結腸に流入し,腸内細菌で発酵されD型乳酸アシドーシスを発症することがある46).血液ガス分析ではL型乳酸のみを測定しており,D型乳酸値は測定されない.臨床的には脳症,言語障害,運動失調などの中枢神経症状をきたす46).予防法は確立していないが,速やかにD型乳酸に代謝されてしまう単純糖質を制限する,食後のD型乳酸濃度のピークを抑えるために少量頻回食にする,ヨーグルトや漬物などの発酵食品を避ける,などが推奨される44,46)

4. その他の留意点

(1) たんぱく質

SBS患者の食事ではたんぱく質エネルギー比20%が目安とされている38).SBSのたんぱく質の消化吸収への影響は小さく,炎症性腸疾患や小腸内細菌異常増殖症などがなければ約80%が吸収される34).そのため消化態栄養剤は不要であり47),腸管順応を促進する点からも通常のたんぱく質の使用が推奨されている28)

(2) 中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸は小腸および結腸で吸収されるため,II型・III型SBSで使用を推奨されている15).I型SBSでは中鎖脂肪酸の摂取により糖質とたんぱく質の吸収が減少することが報告されている48).そのほか,長鎖脂肪酸と異なり浸透圧性下痢を誘発することや,必須脂肪酸を含まず,腸管順応の促進作用が小さい点には考慮が必要である11,15)

(3) 水溶性食物繊維

水溶性食物繊維はSBS患者にとって有益な場合もあるが欠点もある.水溶性食物繊維はII型・III型SBSであれば,結腸内で短鎖脂肪酸となりエネルギー源として利用される49).水分保持作用により便性状を改善する効果もあるが,これは腸管による水分吸収量が増えるわけではなく脱水の改善にはならない50).胃排泄抑制作用により下痢が改善する可能性もあるが,満腹感により食事量が減少する可能性もある4).水溶性食物繊維の特性と患者の症状をふまえて使用を検討する25)

(4) サプリメント

SBS患者は吸収障害や便中への喪失のため,食事摂取基準を上回る量の微量栄養素が必要となる.特にPN離脱後の微量栄養素欠乏には注意を払う必要がある.マグネシウム,亜鉛,銅,脂溶性ビタミンは容易に不足するので定期的に血中濃度を測定し必要に応じて補給する5153).前述のように尿路結石予防にはCaの摂取を推奨するが,溶解・吸収のしやすさからクエン酸Caを推奨する54).回腸末端を60 cm以上切除した場合はビタミンB12の非経腸的な補給を要する55).グルタミン,プロバイオティクスはエビデンスが不足しており投与は推奨されていない15)

(5) 栄養剤

理論上は成分栄養剤の方が吸収率は良いはずだが,SBSでは成分栄養剤と半消化態栄養剤でエネルギー・たんぱく質・水分の吸収率に差はなかったと報告されている56,57).腸管順応促進作用については成分栄養剤より半消化態栄養剤の方が大きい35,58).そのため,栄養剤を使用する場合は重度の吸収障害がない限り等浸透圧の半消化態栄養剤が推奨されている15)

結語

SBSの食事療法は複雑だが,残存腸管の解剖学的特性を理解して実践すれば,症状の緩和や腸管順応の促進が可能となる.この総説により,SBS患者の残存腸管の機能が最大限に引き出されることを期待する.

謝辞

本論文作成に当たりご指導を頂きました,東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座小児外科学分野教授和田基先生に深謝致します.また,SBSの食事療法についてご指導くださったイーストカロライナ大学医学部教授Laura E Matarese先生,バージニア大学医学部Carol Rees Parrish先生に御礼申し上げます.

 

本論文に関する著者の利益相反なし

引用文献
 
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