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Online ISSN : 2434-4966
ORIGINAL ARTICLE
Effects on interprofessional work competency of improved nutritional management and consultation behavior of nurses in a gastroenterological ward after nutrition study sessions
Sonomi IshidaYasuo HironoYoshiko Uehara
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2023 Volume 5 Issue 1 Pages 21-28

Details
Abstract

【目的】消化器病棟における看護師の栄養管理実践力と相談行動が専門職連携実践力(Inter professional Work competency;以下,IPWCと略)におよぼす影響を検討した.

【方法】500床以上のnutritional support team(NST)稼働病院(53施設)の経験年数3年以上の消化器病棟看護師517名に無記名自記式質問紙調査法にて,属性,背景,栄養管理実践力,相談行動,IPWCを調査した.

【結果】栄養管理実践力は経験年数と正の相関,栄養勉強会参加回数と正の相関を認めた.相談行動は多職種連携勉強会参加回数と正の相関,栄養勉強会参加回数と正の相関を認めた.IPWCは多職種連携勉強会参加回数と正の相関,栄養勉強会参加回数と正の相関を認めた.栄養管理実践力と相談行動とIPWCの間に各々正の相関を認めた.重回帰分析ではIPWCに影響している要因は栄養管理実践力と相談行動であった.

【結語】栄養勉強会参加回数と栄養管理実践力や相談行動,IPWCは関連しており,栄養管理実践力と相談行動の向上がIPWCの向上におよぼす影響が明らかになった.

Translated Abstract

Purpose: The aim of this study was to examine the effects of nutritional management and consultation behavior of nurses on interprofessional work competency (IPWC) in a gastroenterological ward.

Methods: The subjects were 517 nurses with more than 3 years of experience in a gastroenterology unit at 53 hospitals with nutritional support teams (NSTs) and more than 500 beds. Information on characteristics, background, nutritional management practice, consultation behavior, and IPWC were obtained using an anonymous self-completed survey.

Results: Nutritional management competency was positively correlated with years of experience, and showed a weak positive correlation with the number of nutritional study sessions in which nurses had participated. Consultation behavior was positively correlated with the number of interprofessional study sessions attended and weakly positively correlated with the number of nutritional sessions. IPWC was positively correlated with the number of interprofessional sessions attended and weakly correlated with the number of nutritional sessions. Moderate positive correlations were found among consultation behavior, nutritional management competency, and IPWC. Multiple regression analysis showed that IPWC was influenced by nutritional management competency and consultation behavior.

Conclusions: The number of nutritional study sessions attended by nurses was associated with nutritional management competency, consultation behavior and IPWC. These results show that improved nutritional management and consultation behavior can improve IPWC of nurses.

目的

入院患者の栄養ケア・マネジメント(Nutrition Care -Management;以下,NCMと略)のシステムの中で看護師が担う役割は大きく,看護の視点から患者の栄養状態を評価し,適切な栄養管理が実施できるような知識や技術が必要であり1),栄養管理は看護の基本である2,3).看護師は患者の疾患や治療を踏まえ栄養評価と栄養管理を実践することが栄養管理実践力であると考える.栄養管理実践力がある看護師は,栄養不良患者の抽出をし,必要な援助を考え,看護ケアでは改善できないと判断した場合には多職種に相談行動をとることができると考える.そして,各専門職が情報共有や調整を行い,共通の課題を達成するため,専門分野を超えて横断的に役割を共有する必要がある4).つまり,看護師は抽出した栄養不良患者の情報を各専門職に繋げ5),各専門職と共に栄養に関する共通の課題を達成できるよう役割を共有する必要があると考える.しかし,研究者が栄養サポートチーム(nutritional support team;以下,NSTと略)の一員として活動する中で,病棟看護師からのNSTへの依頼や相談は他の職種に比べて少なく,患者の栄養面の問題点を認識していないと感じている.先行研究では,看護師の栄養評価への自信の無さがあり6),正しく栄養スクリーニングが実施されていない可能性が報告されている7).一方,看護師と医師の栄養面の連携が相談行動(以下,相談行動と略)に影響を与えているとの報告があり8,9),栄養管理実践力や相談行動は多職種との連携に関係しているのではないかと考える.

医療安全やQuality of life(QOL)を重視した退院支援,その他日常的なチーム医療などでは,専門職連携実践(Inter professional Work;以下,IPWと略)が重要である10).IPWは,複数の専門職の連携と協働によって,患者に質の高いケアを提供する実践のことであり10),チーム医療に関わる病棟看護師にも必要な実践力であると考える.また,IPWは様々な看護活動場面に必要とされ,看護の卓越性に重要な要素であり,専門職連携実践力(Inter professional Work competency;以下,IPWCと略)の獲得が看護実践能力の向上に繋がる11).つまり,栄養管理においても栄養管理実践力がある看護師は,多職種との相談行動により患者に質の高いケアを提供でき,IPWCも高いのではないかと考える.

NSTは栄養管理上の疑問(コンサルテーション)に応えるという役割がある12).また,コンサルテーション(相談)とは,コンサルティ(相談者)が学び,自ら選択し行動できるよう助けることとされている13).つまり,看護師は栄養管理分野を専門とする各職種への相談行動により,コンサルティという立場で知識や技術を修得し,栄養管理実践力の向上に繋げていると考える.

先行研究では,栄養管理実践力を評価するための尺度が開発され14),経験年数や栄養学授業構成との関連が報告されている14,15).また,IPWCを自己評価するための尺度が開発され16),IPWCはIPWの機会が関係していること16,17)が明らかになっている.しかし,栄養管理実践力と相談行動がIPWCにおよぼす影響は明らかになっていない.そのため,本研究では看護師の背景と栄養管理実践力と相談行動がIPWCにおよぼす影響を明らかにすることを目的とした.

研究方法

1. 研究デザイン

関連検証型研究

2. 対象者

消化器病棟に勤務する経験年数3年以上の看護師600名.WebサイトでNST稼働施設として公開している施設から病床数が500床以上の病院60施設を無作為に抽出し,各施設10名または施設が可能とした対象者数とした.無記名自記式質問調査を実施し,回収は郵送法とした.

3. 調査項目

1)属性(年齢・性別・最終学歴).2)背景(臨床経験年数・職位・消化器病棟通算経験年数・NSTリンクナース〈委員会・係〉の経験の有無・栄養に関する研修会参加の回数・多職種連携に関する研修会参加の回数).3)栄養管理実践力:看護師の栄養管理に関する自己評価尺度14)を使用した.この尺度は「アセスメントに基づく食事指導」「食事摂取に関する援助」「経管栄養に関する援助」「在宅栄養管理に関する援助」「職種間との連携」の5下位尺度24項目の5段階リッカート型尺度で,合計点は24点から120点で点数が高いほど栄養管理の看護実践が高いことを意味する.4)NSTが未介入の栄養不良患者に関する相談行動:看護師が,患者の栄養状態・輸液内容・食事内容・経管栄養剤・消化器症状の5つについて,医師・看護師・栄養士・NST・その他の職種5つにどの程度相談しているかを明らかにするため,研究者が作成した項目を使用した.その他の職種とは全ての保健医療福祉に関わる職種とした.全25項目について,「いつも行っている」5点から「ほとんど行っていない」0点の5件法にて回答し,合計得点の範囲は0から100点で,得点が高いほど相談行動を行っていることを示す.5)IPWC:IPWコンピテンシー自己評価尺度OIPCS-R2417)を使用した.この尺度は「事実やアセスメントの相互のやりとり」「チーム活動のマネジメント」「対話と議論の促進」「総合されたケアのための調整」「他者の理解と尊重」「感情の共有と意味付け」の6下位尺度24項目4段階リッカート尺度で,合計点は24点から96点で点数が高いほど専門職連携を実践する能力が高いことを意味する.

4. 分析方法

統計ソフトIBM SPSS Statistics 25を使用し,有意水準を5%とし統計学的検定を実施した.検定方法の選択にあたり,Shapiro-Wilk検定および度数分布表で正規性を確認した.1)対象者の【属性】【背景】の各項目について,百分率,平均値と標準偏差を算出.2)【栄養管理実践力】【相談行動】【IPWC】について(1)合計得点平均点数と下位尺度平均点数を算出.(2)〈年齢〉〈看護師経験年数〉〈消化器病棟通算経験年数〉〈栄養に関する勉強会参加の回数〉〈多職種連携に関する勉強会参加の回数〉との関係についてSpearmanの順位相関係数を算出.(3)〈性別〉〈NSTリンクナース(委員会・係)の経験の有無〉の群間比較はt検定を実施.(4)〈職位〉の群間比較は一般職と副師長・主任・係長の2群,〈最終学歴〉の群間比較は専門学校とそれ以外の2群として,t検定を実施.3)【栄養管理実践力】と【相談行動】と【IPWC】との合計得点の関連についてSpearmanの順位相関係数を算出.4)【IPWC】に影響する要因を検討するため,【IPWC】の合計点数を従属変数として,【栄養管理実践力】と【相談行動】の各合計点数と,4)で【IPWC】に関連のみられた【属性】【背景】の項目を独立変数とし,強制投入法による重回帰分析を実施した.

5. 調査期間

2020年9月15日から2020年10月30日

6. 倫理的配慮

本研究はヘルシンキ宣言に従って行われ,福井大学医学系研究倫理審査委員会での承認(20200052)を受けた.

結果

1. 対象者の属性と背景

本研究の協力の得られた53施設517名に調査用紙を配布し,有効回答数220(有効回答率42.6%)であった.過去3年間の栄養に関する勉強会参加の回数は146名(66.4%)で平均2.1 ± 3.0回,過去3年間の多職種連携に関する勉強会参加の回数は151名(68.6%)平均2.5 ± 3.2回であった(表1).

表1. 対象者の属性(n = 220)
項目 カテゴリー 平均値 ± 標準偏差(範囲) %
性別 女性 202 91.8
男性 18 8.2
年齢 35.1 ± 9.5
最終学歴 専門学校 134 60.9
短期大学 15 6.8
大学 69 31.4
大学院 2 0.9
職位 一般職 186 84.5
副師長・主任・係長 34 15.5
臨床経験年数 11.9 ± 8.8(3–35)
消化器病棟通算経験年数 5.5 ± 3.9(0–25)
リンクナース経験 55 25
165 75
過去3年間の栄養に関する勉強会参加の回数 2.1 ± 3.0(0–20)
過去3年間の多職種連携に関する勉強会参加の回数 2.5 ± 3.2(0–20)

2. 栄養管理実践力について

2-1.栄養管理実践力尺度の合計得点120点満点の平均は87.6 ± 14.5点で,下位尺度の点数範囲がそれぞれ違うため百点換算を行った結果では「経管栄養に関する援助」(平均13.6 ± 1.9,百点換算90.9点)が最も高く,ついで「食事摂取に関する援助」(平均25.5 ± 3.8,百点換算85.0点)であった(表2-1).

2-2.「属性」「背景」と栄養管理実践力の合計得点について,Spearmanの順位相関係数を実施し,「消化器病棟経験年数」(rs = 0.174,p < 0.05)でごく弱い正の相関があった.「栄養に関する勉強会参加の回数」(rs = 0.259,p < 0.01)で弱い正の相関があった(表2-2).

2-3.「性別」によるt検 定を行った結果,女性88.6 ± 14.0,男性76.4 ± 15.0で有意差がみられた(t = 3.514,p < 0.001)(表2-3).

表2-1. 看護師の栄養管理実践力の合計得点平均点数と下位尺度平均点数(n = 220)
検討項目 平均 ± 標準偏差(点) 百点換算
経管栄養に関する援助 13.6 ± 1.9 90.9
食事摂取に関する援助 25.5 ± 3.8 85.0
アセスメントに基づく食事指導 31.1 ± 6.6 69.4
職種間との連携 9.6 ± 2.8 64.0
在宅栄養管理に関する援助 7.7 ± 3.0 51.0
合計 87.6 ± 14.5 73.0

表2-2. 属性と背景における看護師の栄養管理実践力・栄養不良患者に関する相談行動・専門職連携実践力の関連(n = 220)
検討項目 各相関係数(rs
栄養管理実践力 相談行動 IPWC
年齢 –0.012 0.028 0.068
臨床経験年数 0.043 0.074 0.089
消化器病棟経験年数 0.174* 0.123 0.096
栄養に関する勉強会参加の回数 0.259** 0.226** 0.211**
多職種連携に関する勉強会参加の回数 0.101 0.174* 0.191**

IPWC:専門職連携実践力

Spearman順位相関係数 * p < 0.05 ** p < 0.01

表2-3. 看護師の栄養管理実践力・栄養不良患者に関する相談行動・専門職連携実践力と属性と背景の2群間での比較(n = 220)
n 栄養管理実践力 相談行動 IPWC
平均 ± 標準偏差 p 平均値 ± 標準偏差 p 平均値 ± 標準偏差 p
性別 女性 202 88.6 ± 14.0 0.001** 42.3 ± 17.8 0.565 69.3 ± 12.5 0.106
男性 18 76.4 ± 15.0 39.8 ± 20.9 64.2 ± 14.0
職位 一般職 186 87.3 ± 14.3 0.425 41.2 ± 17.9 0.075 68.1 ± 12.6 0.048*
副・主・係 34 89.5 ± 15.4 47.2 ± 17.9 72.8 ± 12.4
NSTリンクナース経験の有無 55 90.3 ± 13.4 0.118 47.2 ± 15.8 0.016* 68.2 ± 12.3 0.635
165 86.8 ± 14.8 40.5 ± 18.4 69.1 ± 12.8
最終学歴 専門 134 86.7 ± 15.4 0.239 43.3 ± 18.5 0.235 68.6 ± 13.6 0.737
短大・大学・院 86 89.1 ± 13.5 40.3 ± 17.2 69.2 ± 13.6

IPWC:専門職連携実践力

t検定 * p < 0.05 ** p < 0.01

3. 相談行動について

3-1.相談行動の合計得点平均点数は42.1 ± 18.0点であった.相談行動(相手別)各項目の点数範囲は0~20点で,「看護師」(平均11.8 ± 4.7)が最も高く,ついで「医師」(平均11.0 ± 4.2)であった(表3-1).

3-2.相談行動(相談内容別)各項目の点数範囲は0~20点で,「栄養状態」(平均9.5 ± 3.9)が最も高く,ついで「食事内容」(平均9.4 ± 3.9)であった(表3-2).

3-3.属性と背景と相談行動の合計得点について,Spearmanの順位相関係数を実施し,「栄養に関する勉強会参加の回数」は(rs = 0.226,p < 0.01)で弱い正の相関があった.「多職種連携に関する勉強会参加の回数」は(rs = 0.174,p < 0.01)でごく弱い正の相関があった(表2-2).「NSTリンクナース経験の有無」によるt検定を行った結果,経験有は47.2 ± 15.8と経験無は40.5 ± 18.4で有意差がみられた(t = 2.421,p < 0.016)(表2-3).

表3-1. 栄養不良患者に関する相談行動(相手別)の合計平均得点と下位尺度平均点数(n = 220)
職種 平均 ± 標準偏差(点)
看護師 11.8 ± 4.7
医師 11.0 ± 4.2
栄養士 8.1 ± 5.2
NST 6.9 ± 5.6
その他の職種 4.3 ± 5.0
合計 42.1 ± 18.0

表3-2. 栄養不良患者に関する相談行動(内容別)の合計平均点数と下位尺度平均点数(n = 220)
検討項目 平均 ± 標準偏差(点)
栄養状態 9.5 ± 3.9
食事内容 9.4 ± 3.9
消化器症状 9.0 ± 3.4
経管栄養剤 7.5 ± 4.4
輸液内容 6.7 ± 4.2
合計 42.1 ± 18.0

4. IPWCについて

4-1.合計得点96点満点の平均は71.7 ± 13.9点であった.下位尺度の点数範囲4~24点だが,「事実やアセスメントの相互のやりとり」(平均13.2 ± 2.3)が最も高かった(表4).

表4. 専門職連携実践力の下位尺度平均点数と合計平均得点(n = 220)
検討項目 平均 ± 標準偏差(点)
事実やアセスメントの相互のやりとり 13.2 ± 2.3
他者の理解と尊重 12.8 ± 2.4
感情の共有と意味付け 11.6 ± 2.8
統合されたケアのための調整 11.3 ± 2.6
チーム活動のマネジメント 10.4 ± 2.9
対話と議論の促進 9.6 ± 2.9
合計 71.7 ± 13.9

4-2.「属性」「背景」とIPWCの合計得点について,Spearmanの順位相関係数を実施し,「栄養に関する勉強会参加の回数」(rs = 0.211,p < 0.01)で弱い正の相関があった.「多職種連携に関する勉強会参加の回数」(rs = 0.191,p < 0.01)でごく弱い正の相関があった(表2-2).

4-3.「職位」によるt検定を行った結果,一般職68.1 ± 12.6と副師長・主任・係長72.8 ± 12.4で有意差がみられた(t = –1.989,p < 0.048)(表2-3).

5.

栄養管理実践力合計得点と相談行動合計得点とIPWC合計得点のSpearmanの順位相関係数を算出した.栄養管理実践力合計得点と相談行動合計得点では(rs = 0.438,p < 0.01)で中程度の正の相関がみられた.栄養管理実践力合計得点とIPWC合計得点では(rs = 0.516,p < 0.01)で中程度の正の相関がみられた.相談行動合計得点とIPWC合計得点では(rs = 0.390,p < 0.01)で中程度の正の相関がみられた(表5).

表5. 看護師の栄養管理実践力合計得点と栄養不良患者に関する相談行動合計得点と専門職連携実践力合計得点の関連(n = 220)
栄養管理実践力 相談行動 IPWC
栄養管理実践力
相談行動 0.438**
IPWC 0.516** 0.390**

Spearman順位相関係数 ** p < 0.01

6.

IPWCの合計得点を従属変数とし,「栄養管理実践力」の合計得点と「相談行動」の合計得点と,IPWCに関連のあった「栄養に関する勉強会参加の回数」と「多職種連携に関する勉強会参加の回数」,IPWCに有意差のみられた「職位」を独立変数として強制投入法による重回帰分析を行った.また,「職位」は一般を1,副師長主任係長を0とするダミー変数とした.結果,調整済みR2乗は0.302であり,IPWCの合計点で約30%が説明できた.また影響している要因は,栄養管理実践力(β = 0.409,p < 0.01)と相談行動(β = 0.196,p < 0.01)であった(表6).

表6. 専門職連携実践力に影響する要因(n = 220)
要因 標準化β 信頼区間 p
栄養管理実践力 0.409 (0.244–0.472) 0.000**
相談行動 0.196 (0.229–0.047) 0.003**
栄養に関する勉強会参加の回数 0.032 (–0.374–0.645) 0.601
多職種連携に関する勉強会参加の回数 0.068 (–0.200–0.729) 0.262
職位 0.081 (–1.104–6.755) 0.158

強制投入法 ** p < 0.01

考察

属性・背景のうち,「栄養に関する勉強会参加の回数」は相談行動,栄養管理実践力,IPWCのいずれとも関連があった.また,栄養管理実践力の合計得点や各下位尺度得点では,調査対象が消化器病棟看護師であることが影響していることが予測される.消化器病棟看護師は,他の疾患が入院する病棟と比べて,食事や排泄・経腸栄養・ルート管理について観察指導教育をする場面が多く,栄養に関する知識を日々の実践の中で必要としている.また,森山15)は,栄養学授業構成では「講義と演習・実習」の方が「講義のみ・履修なし」に比べて栄養管理実践力が高くなると報告している.栄養に関する勉強会に参加することは,栄養に関する技術を学び経験を積むことであり,日々の業務で実践することは,On the job training(以下,OJTと略)と同様である.OJTにて実践で活かすことができ18),栄養不良患者への意識が高まる.勉強によって得られた技術と経験を基に根拠を持って,栄養不良患者に関する相談行動を行うことに繋がりIPWの機会が増えると予測する.

相談行動(相手別)では「看護師」が最も高く,ついで「医師」であった.相談行動(相談内容別)は「栄養状態」「食事内容」であった.看護師にとって医師との協働的関係が重要課題であり19),栄養不良患者に対する看護師の意識と介入行動の関連には,栄養面で医師と十分な連携がとれていることが関連しており8),今回の結果でも病棟看護師がIPWを行う相手として「医師」が多くなったと予測する.

IPWCの下位尺度平均得点では,「事実やアセスメントの相互のやり取り」が最も高く,「対話と議論のマネジメント」が低かった.國澤らの研究では17),「事実やアセスメントの相互のやりとり」は中間管理職よりも一般職が高得点で,「対話と議論のマネジメント」では中間管理職よりも一般職は有意に低得点であった.そのため,本研究では対象者の85%が一般職であったことが結果に影響したと考えられる.

本研究の仮説通り,栄養管理実践力と相談行動に関連があることが明らかとなった.そして,IPWCを従属変数とした重回帰分析を行った結果「看護師の栄養管理実践力」と「栄養不良患者に関する相談行動」で,IPWCの約30%が説明できた.また,栄養管理実践力および相談行動が専門職連携実践力と相関があった.那須ら11)は,IPWCは看護の卓越性に重要な要素であると述べている.また,IPWCはIPWの機会が関係していること16,17)が明らかになっている.日々の手技的技術を含む基本的な看護業務を行う力である看護実践能力がなければ,看護の質を高める卓越性の要素であるIPWCは実践できない,そして,相談行動によってIPWCの機会が増え,IPWCが向上すると考える.そのため,本研究の結果では,栄養管理実践力と多職種への相談行動がIPWCに影響していると考える.しかし,那須ら11)は,IPWCの獲得が看護実践能力の向上に繋がるとも述べていることから,IPWCと看護実践能力は双方に影響しており,両方を高めることが重要である.

本研究は,栄養管理に関する看護実践に焦点を当てたが,IPWCを向上させるのは,栄養管理以外の様々な看護実践でも同様であると考える.松谷ら20)は,看護実践能力の育成方法は,シミュレーション演習や実習など理論と実践とを繋ぐことが必要と述べている.また,吉江ら21)は,多職種との連携実践力を高める要因として,連携に関する教育や実践の場でのコミュニケーション能力およびバックアップ能力を高める支援が必要であると述べている.さらに,冨澤ら22)は,多職種連携実践の質は,協調性コミュニケーション,専門職間の対立,役割の明確化が互いに重層的に影響していることを示唆している.つまり,手技的技術を含む様々な看護実践と勉強会や相談行動で得られた知識を繋ぐことで看護実践能力が育成され,チームの一員としての役割を理解し,相談行動によって協調性を持ったコミュニケーション能力およびバックアップ能力を養うことにより,患者に質の高いケアを提供するIPWCが向上すると考える.

看護師が勉強会に参加し知識を習得して実践力に繋げるには,その分野に興味を持ち学びたいという意欲を持つことが必要であり,勉強会に参加できるような職場や家庭の環境が大切である.さらに,新型コロナウイルス感染症拡大により,実践的な勉強会開催の減少や開催形式の変化が必要とされ,どのように感染対策を行いながら勉強会を開催していくかが課題となると考える.そして,看護師を対象とした勉強会の開催をする中で,チーム医療での看護師の役割を伝え,各職種とのコミュニケーション能力の育成を行い,IPWCの重要性について伝えていくことで,看護師のIPWCを向上できると考える.栄養管理においては病棟看護師のIPWCが向上することで,さらにNSTと連携・協働し,患者の栄養状態を維持改善するために行動することができると考える.

本研究の限界として,対象の選定はNSTが活動する500床以上の施設の消化器病棟に所属する看護師であり,今後はNSTが活動していない施設や500床未満の施設,他の病棟に所属する看護師について調査が必要である.「栄養不良患者に関する相談行動」は研究者が作成した項目であり,言葉の定義や点数配分において考慮する点があり,結果に影響している可能性がある.今後は相談行動について尺度開発を見据える必要がある.また,「看護師の栄養管理実践力」の下位項目には「職種間との連携」があり,さらに「IPWC」と「栄養不良患者に関する相談行動」のように,それぞれの尺度や項目に同じ連携という要素が含まれている.そのため,今回の分析でもその影響により,多少相関が強く出ている可能性がある.

自己評価尺度について松谷ら20)は「看護実践能力は複雑で状況依存的で全体的統合的な能力であることから,客観的な観察による評価は難しいという見解があるが,看護実践能力の評価が求められることも現実であり,多くの議論を経て自己評価尺度が開発された.」と述べている.また,舟島23)は,自己評価尺度は看護実践能力を測定する研究に活用できると述べている.先行研究では,内藤24)が社会的スキルに関する次元において自己評価と他者評価が一致するかどうかを検討した論文で,全体としては一致するという報告をしている.そのため,自己評価尺度得点をもって看護実践力を測定できると考え本研究を実施した.しかし,今後は自己評価だけでなく他己評価や相互評価を考慮した研究が必要であると考える.本研究で予測した独立変数では,専門職連携に影響する要因の30%を予測できた結果となり,他にも専門職連携に影響する要因があると考えられる.また,栄養管理実践力や栄養不良患者に関する相談行動に影響する要因などの検討が必要である.

結論

本研究は,看護師の栄養管理実践力と栄養不良患者に関する相談行動がIPWCにおよぼす影響を分析した.その結果以下のことが明らかとなった.

1.IPWCの影響要因として,看護師の栄養管理実践力と,栄養不良患者に関する相談行動が抽出された.

2.看護師の栄養管理実践力と栄養不良患者に関する相談行動は関連していた.

3.栄養に関する勉強会参加の回数と,看護師の栄養管理実践力,栄養不良患者に関する相談行動,IPWCは関連があった.

4.以上のことから,看護師に対する栄養に関する勉強会の開催は,栄養管理実践力と栄養不良患者の相談行動の向上となり,その結果IPWCを高めると期待される.

 

本論文に関する著者の利益相反なし

引用文献
 
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