Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
REPORT OF CONFERENCE
Report of the 45th ESPEN Congress
Hiroe Takahashi
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2023 Volume 5 Issue 5 Pages 167-168

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45th ESPEN Congressにてポスター発表の機会をいただき,「Outcome of creating a nutrition therapy protocol for critically ill patients at our hospital.」についてフランス・リヨンで発表をおこないました.私は今まで海外発表の経験は無かったのですが,当院のICUで独自に作成した栄養療法プロトコールの成果発表を世界に向けて発信したいと思い,取り組みました.

当院では日本集中治療医学会が作成した日本版重症患者の栄養療法ガイドラインが発信された早期から医師,看護師,管理栄養士らと共にICUでの栄養療法に取り組み,輸液管理の見直しや早期経腸栄養開始などを導入してきました.またリハビリ科医師,理学療法士らと毎日,栄養リハビリラウンドをおこないます.今回発表したプロトコールはそれらを集約したものであります.

抄録はESPENのサイトから登録できましたが,締切り時間はどの国の時間なのかということがとても気がかりでした.海外では開催される場所によって時差がありますが,日本時間が適応されるのか現地時間が適応されるのかについては示されておらず,不慣れなうえ手直しするうちに間に合うのか不安が募りました.最終的には開催国の時間が適応されており無事に登録することができました.

採択のご連絡をいただいてからポスター作成に取り掛かりました.発表準備について約1時間の講義形式のYouTubeやガイドラインの案内があり,ポスターのテンプレートも何種類か用意されており,これらのコンテンツが充実していることによって,発表内容の質の向上に繋がるのではないかと思いました.また,ポスター印刷も委託することができ,現地で受け取るだけのシステムが導入されておりとても便利でした.学会開催までは様々な企画もメールで案内されていましたが,今回のESPENではClinical Nutrition & Metabolismがテーマであったためか,会場横のTête d’Or公園で早朝6時から意識向上のためのランニング企画などユニークなものもありました.

ESPENからはディスカッションのために,指定された時間はポスターの前に留まるよう指示がありました.私が今まで経験したポスター発表では座長の方がいて,質疑応答の時間が設けられていたのですが,プログラムでは示されておらず,どのような発表となるのか想像がつかないまま発表原稿を用意していました.しかし,おおよその時間が来ると発表者から参加者に声をかけ,フリーディスカッションがあちこちで行われ,研究のアピールポイントなどを説明しながら交流を深めました.Poster TopicはCritical Careのエリアであったため,周りの発表では筋肉に関するものが多くみられ,HMBやω-3などを取り入れた研究もみられました.ESPENにはヨーロッパの方々だけではなく,中国や韓国,インドなど様々な国からの参加者の方がおられ,外傷ICUに特化した研究などもあり日本のICUとのシステムの違いも感じました.

今回の取り組みを通じて,英語での発表準備や,発表に際してのコミュニケーション力やアピール力の必要性,海外でおこなわれている研究を知ることで研究の視野が広がることなど,海外学会参加経験は私にとって大きな学びとなりました.しかし,英語を母国語としない人は英語での準備と練習に94%余分な時間が必要とされ,30%の人が英語が原因で国際会議の参加を諦めることが多々ある1)とされています.確かに,今回の発表準備は日本での発表準備より多くの時間を要し,発表の練習も休日の時間を費やしたり通勤時間の合間を縫って取り組みました.練習の甲斐なくフリーディスカッションでは上手く伝えられたか不安が残るところではありますが,自身の課題を再認識できたと思います.

海外学会に参加することでグローバルスタンダードを知ることができたり,ディスカッションをする中で交流を深め,新たな気づきを得られることが多くあります.様々な研究やガイドラインでも海外の文献を引用することは日常的であり,世界の取り組みは私たちの日々の臨床の質の向上に繋がっています.今後も日本の研究を海外でも発信し,世界の臨床に役立てられればと思います.

写真1.学会会場の様子
写真2.
引用文献
 
© 2023 Japanese Society for Clinical Nutrition and Metabolism
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