2024 Volume 6 Issue 2 Pages 109-110
2023年度未来研究プロジェクト海外学会参加費助成を受け,2023年10月20日から22日に台北で行われたPENSA 2023 - Parenteral and Enteral Nutrition Society of Asiaへ参加いたしました.PENSAは1995年に設立され,アジア諸国における栄養支援の研究開発を促進することを目的の1つとし,毎年アジア諸国で開催されています.私自身は2015年に名古屋国際会議場で開催された際に初めて参加し,今回は2度目の参加となりました.COVID-19パンデミック後の初の対面での学会とのことで,世界30カ国から1,000人近くが参加したとのご報告がありました.今回のテーマに「疾患栄養と治療法の進歩」が掲げられており,今後の栄養学の発展を目指した学会運営がされていました.
会場は,台北101からすぐ近くの台北国際会議センターで行われ,とても広い会場で多くのセッションと活発な議論が展開されていました.生活習慣病,がん,高齢期の栄養,摂食嚥下障害など分野も様々で,日本の現状の再確認と,アジア諸国との比較ができ,とても勉強になりました.特に摂食嚥下障害のセッションで食事に関しては,台湾の先生のご発表の中で日本の嚥下調整食を参考としているとの話があり,嚥下調整食の必要性や効果などについて学会発表・論文を通して広く共有していく必要があると感じました.
私は今回Effect of home-visit-based nutritional support by registered dietitian on the dietary habits of home-care residents.という内容でポスター発表しました.内容は管理栄養士の在宅訪問栄養指導を行うことで,食欲,食品摂取多様性が有意に上昇するというものです.この研究は診療報酬や医療計画のなかで在宅訪問栄養指導の重要性が高まっていることから,厚生労働科学研究費の1つとして実施した研究で,栄養ケア・ステーションの管理栄養士,介護支援専門員の方々と連携した研究で,日本独自の様々なシステムを活用していたことから,「介護支援専門員とは?」「日本の管理栄養士は地域にどうやってでているの?」などといったご質問をいただきました.また同じhome-careの分野にはポスター発表が5つほどあり,アジア諸国のhome-careに携わる先生方と日本との違いや評価項目について話ができたことが一番大きな収穫でした.
また学会2日めに行われたGala dinnerへも参加し,台湾の美味しい食事やバンドの演奏・歌声を楽しみました.Gala dinnerの催しの1つに学会賞の発表があり,私の同僚の歯科衛生士の先生がポスター賞を受賞し,また同じ席に座っていた台湾の先生が口演賞を受賞され,皆で大喜びしました.今回私の同僚が受賞したポスターの内容はアルツハイマー型認知症高齢者の方の摂食嚥下機能に関する内容で,今回の学会では認知症に関する発表は少なかったものの,とても重要な課題と捉えていただいたのだと思います.私自身もとても良い刺激になり,PENSAでの学会賞も目標の1つとして今後の研究活動に邁進していこうと決意を新たにすることができました.
その他に学会以外でも前述のとおり,台北101に近いアクセスの良い会場でしたので,空き時間には台湾の食文化を楽しみました.台湾の方々は食をとても大切にしておられ,いたるところにレストランがあり,朝食,昼食,夕食のどれか1つに限らず,すべての食事のタイミングで台湾の方々が食卓を囲んで楽しくお食事をされている姿が印象的でした.
今回,2023年度 未来研究プロジェクト海外学会参加費助成を頂いたことで,多くの学びを得ることができました.また来年はマレーシアで2024年11月7日から10日で開催されるとのことで,ぜひ参加したいと考えております.今回いただいた学びを忘れずに,今後の研究活動を深めてまいりたいと思います.この度は誠にありがとうございました.