Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
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2024 Volume 6 Issue 3 Pages 169-170

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研修概要

1. 研修施設名

神奈川県立こども医療センター

2. 研修期間

2024年1月15日~1月19日

報告

2024年1月15日から19日に神奈川県立こども医療センター(以下,こども医療センターと略)にて国内施設研修を行いました.

今回の研修に応募した動機は小児栄養を学ぶことでした.当院は小児科病棟,Neonatal Intensive Care Unit/Growing Care Unit(NICU/GCU)病棟を有しており,小児がん,先天性心疾患,遺伝子疾患を始め多様な疾患の小児患者の治療を行っています.長期間の治療を要することが多くみられ,栄養管理が治療に影響することがしばしばみられます.より適切で細やかな小児栄養管理を当院で取り入れるため,今回の研修に参加させていただきました.

こども医療センターは小児病院に肢体不自由施設,重症心身障害者児施設が併設されており,各施設が連絡通路で繋がっていました.院内に県立の支援学校を併設し,子供たちが学びながら治療を受けられる施設となっています.

こども医療センターNST座長兼,地域保健推進部長の高増哲也先生に研修を担当頂きました.NSTはNutrition Support Teamの略であるとともにNurse,Seamless,Team同士の連携の意味もあり,患者の生活を丸ごと看護り,継ぎ目のない支援,すなわち入院・外来・在宅を見据えた生活そのもののサポートを視野に入れた活動が大事であるとのお話でした.他職種が有機的に連携して,チームで医療をする,栄養以外をテーマにしたチームとも連携していくこともNSTが機能していくために大事なポイントであることを教えていただきました.

アメリカでは現在,Nutrition Care Process(以下,NCPと略)が発展しています.Academy of Nutrition and DieteticsはこのNCPの導入方法をホームページで公開しています.NCPは個々の患者もしくは一定の患者集団に対するNutrition careの質と一貫性を向上させ,望ましいアウトカムの可能性を高める目的で作成されました.個々の患者のケアを標準化させることが目的ではなく,ケアを提供するための標準化されたプロセスを構築することを目的としています.プロセスはアセスメント,診断,介入,モニタリング・評価の4つのステップで構成されています.ホームページには各10分程度の6つのモジュールが無料で公開されており,NCPについて誰でも学ぶことが可能です.実際にモジュールを見たところ,スライド・音声は英語のためハードルが高いように感じましたが,スライドが簡潔にまとめられており理解することができました.最近,薬剤師の領域では患者の薬剤や臨床所見などの情報収集を行い,臨床推論を行って薬学的介入を行うことが話題となっていますが,栄養領域での臨床推論がNCPにあたると感じました.

また,ミキサー食講習会に参加しました.ミキサー食のメリット,医薬品の栄養剤だけでは不足する栄養素の話(ヨウ素,セレン,食物繊維など)や,食品の栄養剤紹介がありました.唐揚げをミキサーにかける実演を初めて見ました.ミキサー食を継続するために大事なことは,「ミキサー食が負担にならないこと,無理をしないこと」です.たくさんのケアを毎日行っているご家族に「週1回とか隔週でいいですよ」「まとめて作って小分け冷凍するとよいですよ」「楽しみながら」「できるところから」と声掛けがありました.最後はさまざまなミキサー食材をシリンジに吸って胃瘻に注入する体験を行いました.胃瘻の種類は複数あること,チューブの孔径の違いでシリンジを押す力が変わってくること,チューブに食材がこびりつきにくい工夫などを看護師,栄養士の方に教わりました.注入体験をしながら,ご家族同士が今までの闘病経験や在宅での体験を意見交換されているのが印象的で,こういった交流の場で情報を得て心をリフレッシュして,また明日からも頑張ろうと思えるのだなと感じました.

関わらせていただいた症例を紹介します.患児は離乳食を進めていたところ嘔吐を繰り返すようになり,体重減少を認めて外来受診予定でした.アレルギー疾患が疑われていましたが,私は薬剤性肥厚性幽門狭窄症の可能性があるのではと考えました.薬剤性肥厚性幽門狭窄症はアジスロマイシン,エリスロマイシンによって誘発されることが知られています.患児はアジスロマイシン,エリスロマイシンの最近の処方歴はありませんが,感冒症状などでかかりつけのクリニックなどで処方があったかの確認が必要ではないかと考えました.Up to dateや医中誌による検索を行ったところアジスロマイシン,エリスロマイシン以外の薬剤でも症例報告は散見されました.ただし患児が現在服用中の内服薬では報告がないことと,好発時期から外れた月齢であることを確認しました.これらの情報を事前に診察医に情報提供しました.実際の外来診察では,少し前から嘔吐が治まり離乳食が再開できているとのことでした.患児に活気があったこと,保護者は食事がとれて喜ばれていたことから,処方歴等の確認は行わないこととしました.

今回の研修を通して普段の臨床現場の中で常に学ぶ姿勢を持つことの大切さを改めて実感しました.疾患の病態・治療に対する共通の知識を持つこと,患者指導に対する基本的な技術を身に付けること,他の医療スタッフとの連携を行っていく調整力を身に付けることを目標に,自分の中でマイルストーンを設定し,小さな目標の達成を繰り返すことが重要です.そのためには個人の学習を続け,実践できるチャンスを逃さない(知り合いを作る,自ら動く,環境を作りに行く)よう今後も研鑽を続けたいと思います.

最後に,研修を受け入れてくださった高増哲也先生はじめ神奈川県立こども医療センターの皆さま,そして研修の機会を頂いたJSPENの皆さまに深く感謝申し上げます.

 
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