Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
REPORT OF CONFERENCE
Overseas conference participation supported by the 2024 JSPEN future research project
Mizuki Takeuchi
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2025 Volume 7 Issue 1 Pages 43-44

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 国際学会に参加して

2024年度JSPEN未来研究プロジェクトの海外学会参加費助成を受け,2024年6月12日(水)から14日(金)に,カナダ・オンタリオ州トロントのWestin Harbour Centre Hotelで開催された第19回国際栄養士会議(The 19th International Congress of Nutrition and Dietetics;以下,ICND2024と略)において発表する機会を得た.ICND2024のテーマは『Rise to the Challenge』であり,あらゆる分野の栄養士・管理栄養士や研究者が参集して,3日間,各国の栄養課題,栄養教育に関する研究,栄養士活動などについて議論が交わされた.

筆者は「Na/K Ratio By Composition and Relationship to Dietary Intake Status」というタイトルで研究成果を発表した.食事からのナトリウムとカリウム摂取量の比(Na/K比)を低下させることが,高血圧や循環器疾患の予防に有効であると期待されているが,Na/K比は絶対値ではなく比であるため,栄養指導に用いる際には留意する必要がある.今回の発表では,Na/K比構成別に身体状況や栄養素・食品群摂取量の実態を明らかにし,構成比を考慮した栄養指導について報告した.e-Posterでの発表であったが,特段細かい規定はなく,適切な様式で発表資料を作成するという指示であった.そのため,口頭発表に倣い,20枚程度のスライドを作成し,ネイティブの先生にご指導いただきながら,説明の順番,言葉の使い方,わかりやすく端的に伝える工夫など,修正と練習を繰り返して本番に臨んだ.

ポスター会場には,研究の要旨とQRコードが記載されたミニポスターが掲示されており(写真1),タブレットなどで専用アプリをダウンロードして,コードを読み取ることで発表内容を閲覧することができた.さらに,発表資料の他にも,発表者情報へのリンクや関連する資料,これまでの研究成果など,事前に登録した様々な情報が集約されており,これらの情報は,発表者とのディスカッションや情報交換を意義深いものにしてくれた.特に,動画の保存が可能であったことは,手技や検査画像等の供覧が説明の理解を助けるため,非常に有用であると感じた.

写真1. ポスター会場にて

自身の発表を終え,やはり英語力は大きな課題であり,反省も多かったが,世界の研究者と深いディスカッションをできるようになりたいと強く感じ,英語学習のモチベーション向上に繋がった.また,世界各国の発表を聴講して,多岐に渡る演題から多くの知見を得るとともに,会場が一体になるような熱量のあるプレゼンテーションからは,自身の研究に対して自信や熱意を持って聴講者に伝えることが重要であることに改めて気づかされた.国際学会の参加を通して得た学びを今後の研究活動に生かしていきたい.

 各国の専門職や研究者との交流

発表時以外にも,各国の栄養士・管理栄養士,他の専門職,研究者の方々と交流する機会があり,各国の養成課程の教育について意見交換を行った.諸外国では,栄養士制度のみ有する国が一般的であるため,日本において栄養士と管理栄養士の2種の資格があることをどのように伝えると良いか苦戦した.いくつかの国では,養成課程の時点で分野を選択し,より専門性の高い教育がなされており,今後はAI技術を取り入れた教育に力をいれる必要があるとの意見もあがった.さらに,臨地実習の方法や時間数は大きく異なり,日本の管理栄養士養成校の必修の時間数は180時間(厚生労働省の定める1単位45分で計算)だが,他国では500時間から1,000時間以上と多く,卒後のインターシッププログラムが用意されている国もあった.筆者は現在,管理栄養士養成に携わっているため,各国の教育制度やその背景が大きく異なることは知識としてあったが,実際に教育を受けた方々と栄養士・管理栄養士養成について語ることでき,新たな視点を得る貴重な経験となった.

 帰国する朝の冒険

帰国する前にどうしても一つ心残りがあった.インスリンを発見した実績を持つ,トロント大学に行きたかったのだ.帰国日の早朝,まだ少し薄暗く,人通りが少ない街に一人で繰り出し,地下鉄を乗り継いでトロント大学に向かった.トロント大学は約8万人もの学生が学ぶ世界最大級の大学の一つである.キャンパスは堀もなく街と同化しており,230以上の建物からなり,その多くが石造りの重厚な建物であった(写真2).想像を超える広大な敷地を散策する中で,大学の迫力に圧倒されるとともに,研究者たちが積み重ねた歴史を感じた.微力ではあるが,今後も栄養学の未来に貢献できるように研鑽を積んでいきたいと思う.

写真2. トロント大学キャンパスにて

 謝辞

筆者が大学院博士課程で学んでいた時期はCOVID-19の影響で,国際学会の多くがオンライン開催であったため,他国の研究者や専門職種の方々とディスカッションする機会は残念ながらとても少なかった.そのため,今回はこれまで努力してきた成果を海外で発表することが叶い,大変嬉しく思う.貴重な機会を与えていただいたJSPEN未来研究プロジェクトの先生方,そして,ご指導いただきました先生方に深く感謝申し上げます.今回の経験を糧に,今後も研究および教育に対して努力を重ねていく所存です.

 
© 2025 Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy
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