Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
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2025 Volume 7 Issue 1 Pages 51-52

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 研修概要

1. 研修施設名

公立みつぎ総合病院

2. 研修期間

2024年9月30日~10月4日

 報告

この度,国内施設研修支援制度でご選定いただき,公立みつぎ総合病院にて研修を受けて参りました.御病院は地域包括ケアシステム発祥の地であり,これを基盤とした地域密着型nutrition support team(以下,NSTと略)活動をされており,退院後も継続した支援活動をされている.当院では再入院の患者も多く,退院後のフォローができておらず,切れ目のない栄養管理体制の必要性を感じている.そのため地域との連携の実際や管理栄養士としての関わり方を学び,自施設へ活かすことを目的とし研修に参加した.

まずは地域包括ケアシステムにおける最大の特徴は御病院を核として保健・医療・介護・福祉サービスが成り立っていることである.真隣には保健福祉センターがあるが,その施設内に地域包括支援センター・訪問看護ステーションなどの事業所が隣り合って仕事をされている.また,近隣に運営を同じくする老人保健施設や特別養護老人ホームといった福祉総合施設も持ち合わせており,この包括システムを実践する上で立地や組織として,大変合理的であると感じた.さらに,どの場所に所属していても病院の基本理念が共有されており,対象者の暮らしを考えた医療やケアおよび予防医療を担うという意識がスタッフ皆に定着していることを感じ,感銘をうけた.そう感じたのはどの職種においても日々の業務で対象者のその後を見据えた関わり方をされていることやすれ違うスタッフ同士も家族のように,心地よい挨拶をかけあうことからも感じることができた.そういった姿勢や信頼関係があるからこそ,多職種や他施設への情報もスムーズに提供され,皆で支えるという循環が起こっていると考えられた.当院も公的な病院であるが市や近隣施設と共に地域住民を支える一員であるという認識を共有し,垣根なく情報を共有できる体制や関係作りをしていきたい.

そして,栄養は欠かせないものであり,切れ目なくサポートしていく必要があると唱えた先人の故・山口昇先生の意思を医師の先生方が引き継ぎ,築きあげられてきたのが,地域密着型NSTである.栄養管理を病院内で完結させず,次の療養先にいたるまで,継続できるような仕組みが構築されている.具体的には従来の入院NSTに加え,併設する福祉施設でのNST(施設NST)や在宅におけるNST(在宅NST),外来での栄養に関する診察(栄養外来)がある.在宅NSTであれば包括支援センターのスタッフやヘルパーも参画し,退院後,在宅において栄養状態が不安定な住民を拾いあげ,月1回どう支援していくかの話合いがされている.月1回の協議だけでなく,必要に応じて病院や行政の栄養士も訪問し,さらに実践的な指導やフォローが行われている.診療報酬については全てを算定できるわけではないようだが,住民のニーズや状態の変化を聞きつけ必要時に介入されており,細やかな対応がされていた.また,栄養外来は通院できる方で低栄養などにお悩みの方を対象に医師と栄養士が同じ診察室で指導を行う場である.まず,医師は今の生活状況などを温かい雰囲気の中,聞き取りされ,栄養士が聞き取りした栄養摂取や身体状況を加味して,具体的な助言をされていた.患者様もしっかりと取り組まれ,改善されている方も多く,大変喜ばれていた.信頼関係が構築されていることを感じた.また,栄養に関わる回診として褥瘡回診にも同行させてもらった.持込の褥瘡で情報が少ない場面でもなぜこの場所に褥瘡が発生したのか?栄養状態はどうだったのか?などを考察し,再度褥瘡ができないよう,次の生活や本人の身体的な特徴も加味して姿勢やケアの方法・栄養管理などを検討されていた.私もこれまで栄養サマリーなどを書き,現状を他施設へ伝達することは行ってはいたが,退院後の暮らしの全体像を考えた環境整備や栄養管理がしっかりとできていたのかと反省し,今後の取り組み課題としたい.

沢山の訪問栄養指導に同行させてもらったが,今後,自施設で訪問栄養指導の強化をしたいという思いもあり,大変参考となった.指導対象者は本人や介護者,ヘルパーなど様々であったが他部門からも様々な情報を得て,その方の生活や好みに合わせた調理実習や助言を行い,経過表なども作成して可視化して評価をされており,伝わりやすいと感じた.既存の資料だけでなく対象者に合わせて資料やレシピを作成されており,対応の細やかさを感じた.それ故,訪問する方の御宅の冷蔵庫や手元には栄養士が作った資料が必ず置かれていた.パーソナルできめ細やかな対応が対象者の意識継続のためにも重要と考えられた.訪問指導で調理をする場合は時間を要するため,栄養士2人が同行し,担当栄養士も固定ではなく,4人でローテーションするという体制をとられていた.栄養部員の全体的なスキルアップと有事にもカバーしやすい体制をとられていた.ムラなく安定した支援が継続できるよう,栄養部としての体制づくりも必要と考えられた.今回得た経験を当院でのNST活動や栄養管理に活かして参ります.

今回,このような貴重な機会を与えて下さった日本栄養治療学会,並びにお忙しい中,研修の受け入れをして下さった公立みつぎ総合病院の皆様に心から感謝を申し上げます.

 

掲載している写真は,被写体となった方から掲載への同意を得ています.

写真1. NST等ご教授いただいた菅原先生と
写真2. 御世話になった栄養管理室の皆様と
 
© 2025 Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy
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