2025 Volume 7 Issue 1 Pages 53-54
尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院
2. 研修期間2024年9月30日~10月4日
この度,幸運なことに参加者として選定され,広島県にある公立みつぎ総合病院で研修を受けることが出来た.私は今年11月,8年半勤務した急性期病院を去り新たに地域に根ざした診療所にて栄養管理室と訪問栄養を立ち上げることとなっていた.
研修先である,公立みつぎ総合病院は山口昇名誉院長によって構築された「寝たきりゼロ」を目指す地域包括ケアシステムの発祥の地であり,このシステムに基づいた栄養サポートチームが病院,介護施設,在宅部門と連携して,退院後も質の高い栄養ケアを提供している.そのような病院での各部門と連携して行う退院後も患者によりよい栄養ケアについて学ぶことで自身の病院にて生かし,地域と連携したよりよい栄養管理を展開するために志望した.
当方の研修要望が『地域包括ケアシステムから在宅の支援,主に訪問栄養指導のノウハウを知りたい』ということもあり,その要望にお応え頂き,地域包括ケアシステムの連携や訪問栄養指導のノウハウや活動状況について広くカリキュラムを組んで頂いた.症例件数も日程を調整し,件数を多く見学させて頂くことが出来た.また,研修中もセンターや回診などのカリキュラムの変更も,研修生の希望を逐一対応して頂いた.
公立みつぎ総合病院は,地域包括ケア発祥の地である.病院から在宅まで一貫した医療や在宅ケアによる「寝たきりゼロ作戦」,保健・医療・福祉の連携・統合各種介護施設の併設による介護予防を住民と職員一丸となって長い歴史にて行っている.病院に入ってすぐに「地域包括ケアシステム」を図式化されたものが大きく掲げられており,職員および地域住民の方々に地域包括ケアシステムがどういったものであるかということが分かるようになっている.この地域包括ケアシステムの中で栄養ケアも展開されて細かく抜け目なく行われている.
今回の研修で特に,nutrition support team(以下,NSTと略)の充実さ・栄養外来・各病棟での回診からも栄養療法の重要性が多職種でも浸透していることが職員の様子や発言からも伝わってきた.これは,医療の現場で働いている管理栄養士として嬉しく思い,新たな土地でも公立みつぎ総合病院のように啓蒙活動に積極的に取り組んでいきたいと士気が高まった.
研修内容としては,
・栄養サポートステーション(栄養外来)
・患者の在宅訪問(訪問栄養・訪問看護同行・保健福祉センター)
・保健福祉総合施設の取り組み(ケアハウス・特養・老健)
・NST(病院・施設・在宅)
・病院での栄養管理の取り組みについて(各病棟・回診・地域ケア会議)であった.
栄養外来は主に低栄養の患者に対して,医師と管理栄養士が同時に行う外来の取り組みである.日常業務において,迅速に医師との連携を取りたいが……なかなかという点を克服できていた.情報共有が早く,栄養療法の的確な指示が施されていた.患者も医師と管理栄養士がいることで不安が解消され,本音が相談しやすい流れができていると感じられた.この取り組みは迅速な栄養療法の重要性が医師にも認識されていることの表れだと感じた.その外来顧問医師が言っていた高齢者が増える地域では,病院へ通院できる人よりも来られない方が問題である.この事柄については訪問栄養や施設および在宅NSTを行うことでフォローが行われていた.
訪問栄養では,病院ではしっかり食べられていたにも関わらず,在宅での日中独居に帰った時から低栄養になる患者や自宅での食事に戸惑いを感じる患者などの生活の場に栄養療法を落とした際の個々に合うフォローが施されており,患者からの満足度も早期に対応することで介護や低栄養予防に繋がっていると実感できた.実際に同行させていただくことでケアマネージャーからの管理栄養士への信頼や現場の課題や生活の場への落とし込むノウハウを学ぶことが出来た.管理栄養士1人1人の対象者への気持ちや思いやりも感じられた.また地域包括ケアシステムという行政や施設の距離が近いことで,在宅で問題を抱える方の連絡がケアマネージャーや保健福祉士,行政職員からも迅速に入るなど連携も充実していた.
多職種や地域の栄養の重要性が浸透するのは,実績があるから浸透しているだけではなく,NST・カンファレンス・地域ケア会議など加算がなくても参加する啓蒙活動や管理栄養士1人1人が抱える多職種や地域の人への思いや行動が浸透する理由だと身をもって感じることができた.
あっという間の5日間であったが,学びはもちろん,管理栄養士の心得や栄養療法の重要性を啓蒙活動が徹底された環境を経験できた.これからの業務にも栄養ケアに携わる管理栄養士としても生かすことができる有意義な実習であると感じた.
今回このような機会を与えてくださった日本栄養治療学会および研修を受け入れて頂いた公立みつぎ総合病院に感謝いたします.
掲載している写真は,被写体となった方から掲載の同意を得ています.

