Online Journal of JSPEN
Online ISSN : 2434-4966
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2025 Volume 7 Issue 1 Pages 55-56

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 研修概要

1. 研修施設名

長崎リハビリテーション病院

2. 研修期間

2024年10月28日~11月1日

 報告

令和6年度の診療報酬改定において回復期リハビリテーション病棟においてglobal leadership initiative on malnutrition(以下,GLIMと略)基準の導入が義務化されました.現在,私は急性期病棟,療養病棟,回復期リハビリテーション病棟と多病棟を担当しています.幅広く業務を担当することで,多くの患者と関わりあえるメリットもありますが,専門性の弱さも常に感じていました.そこに今回の診療報酬改定においてGLIM基準の義務化です.セミナーや書籍からの知識取得だけで円滑に栄養管理業務を行えるのか.そう不安に思っていた時,長崎リハビリテーション病院の研修内容を目にしました.この機会を逃してはならないと勇気をだし応募しました.

研修先の長崎リハビリテーション病院では管理栄養士業務に限らず,多職種の先生方より講義をしていただきました.

初日に講義していただいた臨床部の熊木先生のお話は「病院」「部署」という概念が当たり前の自分にとって衝撃的な内容でした.長崎リハビリテーション病院には「看護部」が存在しません.「栄養科」も「リハビリ部」も.徹底したチーム医療を行うために見えない職種の壁を取り払い,医師すらも合わせ,「臨床部」という組織であり,職員は各病棟に配属されています.チーム医療,多職種連携が取りざたされている現在においても,所属部署間の見えない壁を感じることがあります.でもその壁は患者,および家族には不要の壁です.どうしてそこまですることが可能なのか.驚く私に法人の理念,基本方針,長崎リハビリテーション病院の基本的ケア10箇条を教えてくださいました.行動の柱となる理念,方針をしっかり意識する組織の強さを感じました.

管理栄養士の先生方の専門的な講義では今回の獲得目標であるGLIM基準の活用方法,病因の判断基準など詳しく教えていただきました.判断基準について迷うことが多かったため1対1での講義は知りたい,学びたい箇所を心置きなく質問出来,大変貴重な時間でした.回復期における必要栄養量についても高齢者のカロリーに対し,先入観があったことに改めて気づくことが出来ました.

病棟では病棟担当管理栄養士の先生に付き,カンファレンスなど日常業務に参加させていただきました.その中でも入院時に行われる合同評価は衝撃的でした.患者の入院時に時間通り病室に看護師,セラピストをはじめ多職種が集い,その多職種が見守る中,実際に患者に手を洗っていただいたり,水を飲んでいただいたりなどの行動を行っていただき,身体機能,支持理解能力,嚥下機能の状態などの確認を行いました.その後,スタッフステーションにて多職種それぞれが発言し,入院中のプラン,ゴールを設定していきました.事前に届く患者サマリーだけで判断するのではなく,今まさに目の前にいる患者さまに合わせ,医師任せではなく多職種で意見を出し合いプランを作成していく姿は本当のチーム医療だと感じました.

合同評価前の管理栄養士の業務も驚きの連続でした.患者の入院から合同評価までの限られた時間,病棟管理栄養士は患者へ会いに行き,状態を確認します.聴診器を持ち,腸の状態を確認し,腋下,手の皮膚の状態,下腿周囲長の測定などを行い,栄養状態を判定します.必要エネルギーを計算し,適正な形態など事前情報と照らし合わせ,入院後最初の食事となる昼食の内容を決めていきます.プランを作成し,医師に承認をいただき,給食委託業者に連絡し,食事内容を伝えます.急性期病院で提供されていた食事内容と同じものを提供すればこの作業は省くことも可能かもしれません.ですが,長崎リハビリテーション病院では患者一人一人の今の状態と真摯に向かい合い,高い専門性とフットワークの軽さで適正な食事提供を行っていました.長崎リハビリテーション病院の給食部門は外部委託です.給食部門が直営の施設,病院でしか勤務したことがない私にとって委託給食業者はどこか遠い存在であり,正直に言ってしまえばプラスの感情を持っていませんでした.しかし,研修を通し病院の管理栄養士と給食委託業者側の管理栄養士とのスムーズな連携や定期的に行われる献立ミーティング,バラエティーに富んだ献立,充実した個別対応,綺麗で衛生的に管理された病棟パントリー.陶器の食器に盛り付けられた手作りの美味しい食事.信頼できる食事の専門職に病院給食を任せることで,病院の管理栄養士は栄養管理の面に集中することが可能となるのだと実感しました.

InBodyを用いた体成分測定にも同行させていただきました.装置を運び,測定するのは病棟の管理栄養士です.通常はセラピストが測定されるそうですが,管理栄養士も作業されることを知り,大変驚きました.

長崎リハビリテーション病院にはnutrition support teamが存在しません.しかし,確固たる理念のもと徹底したチーム医療が存在し,栄養もまた必須の医療として組み込まれていました.

理念を持ち,業務を検証し,多職種に自身の専門分野,知識を発信する重要性を学びました.

今回研修を担当して下さいました西岡室長,西岡先生をはじめ管理栄養士の皆様,看護師,セラピスト,薬剤師,委託給食の皆様,そしてこのような貴重な機会を設けて下さったJSPENの事務局の皆様に心から感謝申し上げます.今後の業務に活かし精進してまいります.

 

掲載している写真は,被写体となった方から掲載への同意を得ています.

写真1. 合同カンファレンスの様子
 
© 2025 Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition Therapy
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