2025 Volume 7 Issue 1 Pages 57-58
社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院
2. 研修期間2024年11月25日〜11月29日
私は所属組織では口腔がんをはじめ,口腔に疾患を持つ患者さんの診療にあたっております.術後性摂食嚥下障害や高齢者の低栄養のマネージメントに苦慮しており,今回,日本栄養治療学会の国内研修支援制度が認定歯科医師にも拡充されたため上記の理由で熊本リハビリテーション病院への研修に応募させていただきました.
同院は高度なリハビリテーションとNutrition Support Team(以下,NSTと略)を行う施設で,リハビリテーション科の吉村芳弘先生を筆頭とする論文がいくつも出ており臨床研究も盛んに行われている施設です.そのため,実際の現場の様子や研究への取り組みについて学び,自施設での患者の栄養管理と臨床研究に活かすことを目的といたしました.
概要としては,NSTカンファレンスへの参加をはじめ,実際の臨床現場での研修を行いました.また,リサーチミーティングにも参加させていただきました.
毎日の研修内容のすべてが大変勉強になりました.その中でも特に前述のようにNSTカンファレンスとリサーチミーティングが印象に残りました.NSTカンファレンスはGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準を適切に使いこなし,NSTとしてのゴールを医学的根拠に基づき設定しており,そのゴールに対する各職種からの提言が的確で病院全体の栄養に対する意識の高さをうかがい知ることができました.ここまでのチームを作り上げるには多くの苦労があったのではないかと想像に絶する思いでした.また,NST専従薬剤師の医学的知識の幅広さやフットワークの軽さに驚きました.病棟のミールラウンドや病棟看護師とのミーティングに参加させていただいた際に,食事の内容や,ルート管理まで気を配った助言に感銘を受けました.管理栄養士の方々も同様で,患者のゴールをSMARTに設定し患者背景や状態,輸液にまで気を使った食事の提言をされており,栄養管理室内に留まらない活躍ぶりでした.その忙しい臨床を行いながら,次のエビデンスを作ろうと臨床研究と論文作成に励んでおられてただただ脱帽するばかりでした.
カンファレンス参加だけでなく,実際の臨床現場も見学することができ,Peripherally Inserted Central venous Catheter(PICC)造設や嚥下造影検査(Videofluoroscopic Examination of Swallowing;VF),嚥下内視鏡検査(Videoendoscopic Evaluation of Swallowing;VE)も見学させていただきました.VFやVEの結果をもとに言語聴覚士の方々が主体的に主治医に提言している姿も印象的でした.スペシャリストとして仕事へのプライドがあり,患者さんのために何ができるかを考えリハビリのメニューも数々の工夫がなされておりました.
楽しみにしていたリサーチミーティングは個々の研究の進捗状況を報告し,新しいプロジェクトについてのディスカッションがされておりました.投稿したら次の論文,次の研究へというようなサイクルが潤滑に回るように吉村先生がマネージメントされている姿が非常に印象に残りました.臨床研究チームのリーダーとしての理想像と感じ入りました.年間何本も論文が出るチームとしての強さを窺い知れました.私も臨床研究を行っておりますが,まだまだスピード感に欠け精進しないといけないと猛省した次第でした.
また,1週間の中で座学の時間も設定いただき,その分野のスペシャリストの方々から講義をしていただきました.特に印象的な講義は集団起立運動についてです.患者のFunctional Independence Measure(FIM)利得にかなりの効果があり,また,集団で行う点についても精神的・社会的フレイル予防になるといった医学的意義があり驚愕しました.ぜひ自施設の術前介入で取り入れたいと強く感じました.
最後になりましたが,ご多忙な中研修を受け入れていただいた熊本リハビリテーション病院リハビリテーション科吉村芳弘先生はじめ,栄養管理室の皆様,NST関係者の皆様に深謝いたします.