2025 Volume 7 Issue 3 Pages 151-157
【目的】半固形化栄養剤ハイネックス®ゼリー(以下,HNと略)は,製剤の粘度を高めるためゲル化剤に低強度寒天を使用した.本研究では,粘度上昇後も従来の製品と同等の操作性および栄養補給効果が維持されるかを検証した.【対象および方法】実験1では半固形化栄養剤HN;n = 12,ハイネ®ゼリー(以下,H);n = 6,薬価基準収載の半固形化栄養剤(以下,R);n = 6の製剤粘度およびチューブ通過性を評価した.実験2では胃瘻を造設したラットに,胃瘻から半固形化栄養剤(HN;n = 9,H;n = 8)を持続投与した際の栄養評価および糞便性状の評価を行った.【結果】HNはHに比して製剤粘度およびシリンジ押出力は有意に高値であったが,加圧バッグ使用時の排出時間およびチューブ付着性に差はなかった.ラットに投与した際の糞便性状は良好であり,体重,血液検査値および窒素出納も同等であった.【結論】新規のゲル化剤で粘度を上昇させたHNは,Hと同様の操作性であり,窒素出納も劣らないと示唆された.
液体栄養製品を用いた経腸栄養療法の際に生じる胃食道逆流,誤嚥性肺炎,下痢などの消化器症状に対して,半固形栄養法が有用であることが知られており,液体栄養製品と比較して短時間で投与可能なことから,褥瘡防止やリハビリ時間の確保が期待される1).一方,半固形栄養法では介護者が加圧バッグやシリンジなどを用いて投与を行うため,操作性が介護者の負担になる.半固形栄養法の胃食道逆流抑制に対する有用性を示した清水らの報告2)を参考に薬価基準収載の半固形化栄養剤(以下,Rと略)を目標とし,既に市販しているハイネ®ゼリー(以下,Hと略)から粘度を改良したハイネックス®ゼリー(以下,HNと略)を開発した.HNは,H同様にゲル化剤として寒天を用いることで操作性を維持し,寒天の種類を変更することで,製剤粘度の調整を実現している.それ故,在宅移行時の栄養剤切り替えに関する消化器症状や使用方法の変更などのトラブル低減への貢献が期待される.Hの栄養組成は,日本人の食事摂取基準(2005年度版)を参考にしている一方で,HNは日本人の食事摂取基準(2020年度版)3)を基に設定した.
本研究では,医療現場で使用されているHおよびRを対照として,HNの物性評価を行い,その操作性について評価した.また,ラットを用いてHNが一般的な栄養評価指標や糞便性状に与える影響について,Hを対照に比較検討し,HN摂取における栄養学的効果を評価した.
今回の実験では,HN,H,Rを用いた.これら3つの試験物質の性状を表1に示した.また,HN,Hの組成を表2に示した.実験1:物性評価は製剤粘度および投与時の操作性の評価を目的にHN,H,Rの比較評価を行った.実験2:ラットを用いた栄養評価はHN摂取における栄養学的効果の評価を目的にHN,Hの比較検討を行った.
| HN | H | R | ||
|---|---|---|---|---|
| 熱量 | kcal/100 g | 100 | 100 | 100 |
| 蛋白質量 | g/100 g | 4.50 | 5.00 | 4.38 |
| pH | ― | 約6.6 | 約6.7 | 5.8~6.3 |
| 比重 | ― | 1.082 | 1.069 | 1.075~1.090 |
| かたさ | N/m2 | 約1,100 | 約5,200 | 約3,400 |
| 成分 | 単位 | HN | H | |
|---|---|---|---|---|
| 100 kcal[100 g] | 100 kcal[100 g] | |||
| 蛋白質 | g | 4.5 | 5.0 | |
| (エネルギー比率) | % | 18 | 20 | |
| 脂質 | g | 2.78 | 2.3 | |
| (エネルギー比率) | % | 25 | 20 | |
| L-カルニチン | mg | 16.7 | ― | |
| 炭水化物 | g | 15.35 | 15.7 | |
| (エネルギー比率) | % | 57 | 60 | |
| 糖質 | g | 13.15 | 14.5 | |
| 食物繊維 | g | 2.2 | 1.2 | |
| イヌリン | g | 1.0 | ― | |
| ビタミン | ビタミンB1 | mg | 0.156 | 0.32 |
| ビタミンB2 | mg | 0.178 | 0.35 | |
| ナイアシン | mg NE | 2.7 | 3.5 | |
| ビタミンB6 | mg | 0.156 | 0.45 | |
| 葉酸 | μg | 26.7 | 45 | |
| ビタミンB12 | μg | 0.5 | 0.45 | |
| ビオチン | μg | 5.6 | 6.0 | |
| パントテン酸 | mg | 0.667 | 2.0 | |
| ビタミンC | mg | 22.3 | 80 | |
| ビタミンA | μg RAE | 100 | 82 | |
| ビタミンE | mg | 2.27 | 3.5 | |
| ビタミンD | μg | 1.67 | 2.0 | |
| ビタミンK | μg | 8.33 | 9.5 | |
| ミネラル | ナトリウム | mg | 177 | 177 |
| 食塩相当量 | g | 0.450 | 0.45 | |
| クロール | mg | 221 | 199 | |
| カリウム | mg | 184 | 156 | |
| マグネシウム | mg | 41.2 | 39 | |
| カルシウム | mg | 97.8 | 94 | |
| リン | mg | 75 | 75 | |
| クロム | μg | 4.5 | 4.0 | |
| モリブデン | μg | 3.4 | 3.2 | |
| マンガン | mg | 0.445 | 0.50 | |
| 鉄 | mg | 1.223 | 0.81 | |
| 銅 | mg | 0.15 | 0.12 | |
| 亜鉛 | mg | 1.5 | 1.8 | |
| セレン | μg | 5.6 | 5.0 | |
| ヨウ素 | μg | 14.5 | 19 | |
試験物質に,表1に示す組成のHN,HおよびRを用い,ISO 80369-3対応チューブ使用時のチューブ通過性を評価し,製剤粘度,加圧バッグ使用時の排出時間,チューブの付着性およびシリンジ押出力を測定した(HN:n = 12,H,R:n = 6).全ての試験操作および測定は,20 ± 2°Cの条件下で実施した.
製剤粘度の測定は,ジェイフィード®ペグロック延長チューブ(以下,チューブ,JF-3PXL030C;長さ30 cm,内径4.5 mm,ISO 80369-3対応;(株)ジェイ・エム・エス)を通過させた試験物質を,B型回転式粘度計(RB-85L:東機産業(株))を用いて12回転/分の条件で測定開始から2分後の値を測定値とした.
加圧バッグ使用時の排出時間の測定は次の通りとした.試験物質が300 g入った容器のスパウト部にジェイフィード® ペグロック(JF-3PB1825B05;有効長25 mm,18 F,ISO 80369-3対応;(株)ジェイ・エム・エス)キット内の接続チューブおよび接続スパウトを接続したものを加圧バッグ(医療機器届出番号34B1X00001000102;(株)ジェイ・エム・エス)にセットし,40 kPaで加圧投与したときに排出される試験物質の重量を測定した.クレンメを開放した時点を排出開始とし,1 g以上の試験物質が30秒経過するも排出されなくなった時点を排出完了とし,排出開始から排出完了までに要した時間を排出時間とした.
チューブへの付着性の測定は,チューブに試験物質を注入した後,ENシリンジ(JF-3S50Z;(株)ジェイ・エム・エス)を用いて純水(約20°C,30 mL)でフラッシング(3秒/30 mL)した後のチューブ内残量を付着量とした.付着量は,フラッシング前後のチューブの重量を測定し,減算して求めた.
シリンジ押出力の測定は,チューブを接続したENシリンジに試験物質を約50 mL充填し,テンシロン万能材料試験機(RTG-1225;(株)エー・アンド・デイ)を用いて200 mm/分の試験速度で等速圧縮したときの,荷重の最大値を求めた.
2. 実験2:ラットを用いた栄養評価本研究は株式会社大塚製薬工場の動物実験指針に従い,大塚製薬工場動物実験倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:OPFCAE-2023091).実験動物には,7週齢のCrl:CD(SD)系雄性ラット(ジャクソン・ラボラトリー・ジャパン(株))を用いた.飼育は室温23 ± 3°C,湿度55 ± 15%,明暗サイクル12時間(7:00 a.m.–7:00 p.m.)の環境下で行い,7日間以上の馴化期間を設けた.一晩絶食後,体重を指標に,未処置のNormal群(n = 5)と胃瘻群に分けた.胃瘻群の全ての動物に胃瘻を造設した.Normal群は胃瘻造設がなく,標準固型飼料を摂取させる参考値として設定した.胃瘻造設に伴う術後侵襲からの回復のため一晩絶食し,翌朝,胃瘻群の動物は体重を指標にHN群(n = 9)とH群(n = 8)に分けた.試験期間中はNormal群には標準精製飼料(AIN-93G;オリエンタル酵母工業(株))を14日間自由摂取させ,HN群およびH群にはそれぞれ異なる組成の試験物質を胃瘻から14日間投与した(表2).投与1日目は絶食後および術後の消化管機能を考慮し,摂取目標の半量である40 kcal/rat/日を4.5 mL/hrの速度で約9時間持続投与し,2日目以降は80 kcal/rat/日の用量を5.0 mL/hrの速度で16時間持続投与した.14日間の投与期間中は2日から4日に1回,全動物の体重を測定した.栄養管理が定常状態に達したと想定される投与11日目から14日目の3日間の尿および糞便を採取し,尿中および糞便中への窒素排泄量を分析した.各試験物質中の窒素量も分析した.投与量と試験物質中窒素量から摂取窒素量を算出し,そこから窒素排泄量を差し引くことで窒素出納を算出した.また,糞便性状の評価として,流動食投与群の全糞便についてスコア(0点:正常便,1点:軟便,2点:泥状便または水様便)を毎日記録し,個体ごとのスコアおよび群の平均スコアを算出した.14日目の試験物質投与翌日にイソフルラン麻酔下で腹大動脈から血液サンプルを採取した.血液サンプルはヘパリンリチウムを含む採血管に分注後,素早く氷上で冷却した.その後,遠心分離(4°C,3,000 rpm,10分)を行い,血漿を回収し,血液生化学的検査を実施した(オリエンタル酵母工業(株)長浜ライフサイエンスラボラトリーに委託).
結果は全て平均値 ± 標準偏差(SD)で示した.
実験1では,HNを対照群としたDunnettの多重比較検定を行った.
実験2において,Normal群は参考値扱いとし,HN群とH群の有意差検定には対応のないt検定を用いた.
上記検定の有意水準はいずれも両側5%とした.統計処理は,SAS9.4((株)タクミインフォメーションテクノロジー)を使用した.
チューブ通過後の製剤粘度は,Hの約5,300 mPa·sに比し,HNは約8,800 mPa·sと有意に高値であり(p < 0.01),Rの約9,200 mPa·sと同程度かつ粘度規格(6,500~12,500 mPa·s)内であった(表3).加圧バッグ使用時の排出時間について,HNは6.4分であり,Hの5.5分と有意な差を認めず,Rの11.6分より有意に短縮した(p < 0.01).チューブの付着性はHおよびRとHN間に有意差は認められなかった.HNのシリンジ押出力15.3 Nは,Hの12.4 Nと比較して有意に高値であったが(p < 0.01),Rの22.6 Nと比較して有意に低値であった(p < 0.01).
| HN | H | R | vs H | vs R | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| Mean ± SD | Mean ± SD | Mean ± SD | ||||
| 製剤粘度 | mPa·s | 8,833 ± 539 | 5,255 ± 337 | 9,208 ± 472 | ** | n.s |
| 加圧バッグ使用時の排出時間(300 kcal当たり) | 分 | 6.4 ± 1.2 | 5.5 ± 0.4 | 11.6 ± 2.3 | n.s. | ** |
| チューブ付着性 | g | 0.13 ± 0.04 | 0.09 ± 0.04 | 0.13 ± 0.03 | n.s. | n.s |
| シリンジ押出力 | N | 15.3 ± 1.6 | 12.4 ± 0.7 | 22.6 ± 1.4 | ** | ** |
Mean ± SD,HN:n = 12,H:n = 6,R:n = 6
Dunnett’s test:**;p < 0.01
投与期間中の体重は,HN群とH群の間で有意な差は認められなかった(図1).

Mean ± SD,Normal:n = 5,HN:n = 9,H:n = 8
摂取窒素量はHN群でH群よりも有意に低値であったが(p < 0.001),尿中および糞便中への窒素排泄量もH群に比して有意に低値であった(尿中:p < 0.01,糞便中:p < 0.001).窒素出納では2群間の差は認められなかった(図2).

Mean ± SD,HN:n = 9,H:n = 8
Student’s t-test:**;p < 0.01,***;p < 0.001
投与開始から5日間はHN群とH群の両群でスコア1の軟便からスコア2の泥状便が多く見られた(図3).以降,6日目から11日目の期間はH群に比してHN群で有意に良好な糞便スコアであった(9日目を除いてp < 0.05).12日以降は両群で正常便が多く確認され,有意な差はなかった.

Mean ± SD,HN:n = 9,H:n = 8
Student’s t-test:*;p < 0.05
投与終了時における,血液生化学検査値はいずれの項目においても両群間で有意な差は認められなかった(表4).
| Normal | HN | H | vs H | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Mean ± SD | Mean ± SD | Mean ± SD | ||||||
| TP | g/dL | 6.4 ± 0.2 | 6.0 ± 0.2 | 5.9 ± 0.2 | n.s. | |||
| ALB | g/dL | 4.3 ± 0.1 | 3.6 ± 0.4 | 3.3 ± 0.3 | n.s. | |||
| BUN | mg/dL | 16.5 ± 1.2 | 13.9 ± 1.7 | 14.2 ± 0.5 | n.s. | |||
| UA | mg/dL | 0.4 ± 0.1 | 0.3 ± 0.1 | 0.3 ± 0.1 | n.s. | |||
| CRE | mg/dL | 0.26 ± 0.0 | 0.2 ± 0.0 | 0.2 ± 0.0 | n.s. | |||
| AST | IU/L | 63 ± 7 | 79 ± 18 | 79 ± 15 | n.s. | |||
| ALT | IU/L | 24 ± 1 | 32 ± 3 | 35 ± 7 | n.s. | |||
| AMY | IU/L | 2,007 ± 174 | 1,544 ± 353 | 1,447 ± 255 | n.s. | |||
| LDH | IU/L | 143 ± 29 | 311 ± 158 | 265 ± 158 | n.s. | |||
| γ-GT | IU/L | <3 | — | <3 | — | <3 | — | — |
| T-BIL | mg/dL | 0.07 ± 0.01 | 0.05 ± 0.03 | 0.05 ± 0.03 | n.s. | |||
| Ca | mg/dL | 10.7 ± 0.2 | 10.6 ± 0.3 | 10.6 ± 0.2 | n.s. | |||
| Na | mEq/L | 137 ± 0 | 138 ± 1 | 137 ± 1 | n.s. | |||
| K | mEq/L | 4.8 ± 0.3 | 4.5 ± 0.2 | 4.5 ± 0.2 | n.s. | |||
| Cl | mEq/L | 103 ± 1 | 103 ± 1 | 102 ± 1 | n.s. | |||
| Mg | mg/dL | 1.5 ± 0.2 | 1.7 ± 0.0 | 1.6 ± 0.0 | n.s. | |||
| Fe | μg/dL | 240 ± 29 | 165 ± 22 | 148 ± 26 | n.s. | |||
| IP | mg/dL | 5.9 ± 0.4 | 6.6 ± 0.4 | 6.9 ± 0.6 | n.s. | |||
| T-CHO | mg/dL | 74 ± 9 | 57 ± 12 | 56 ± 10 | n.s. | |||
| TG | mg/dL | 229 ± 22 | 113 ± 48 | 113 ± 38 | n.s. | |||
| HDL-C | mg/dL | 29 ± 4 | 24 ± 6 | 26 ± 3 | n.s. | |||
| NEFA | μEq/L | 116 ± 32 | 170 ± 64 | 156 ± 54 | n.s. | |||
| GLU | mg/dL | 167 ± 14 | 165 ± 12 | 171 ± 15 | n.s. | |||
Mean ± SD,Normal:n = 5,HN:n = 9,H:n = 8
Student’s t-test:n.s.;not significant(HN vs H),総蛋白(TP),アルブミン(ALB),尿中窒素(BUN),尿酸(UA),クレアチニン(CRE),ナトリウム(Na),カリウム(K),クロール(Cl),カルシウム(Ca),無機リン(IP),マグネシウム(Mg),鉄(Fe),総コレステロール(T-CHO),HDLコレステロール(HDL-C),中性脂肪(TG),遊離脂肪酸(NEFA),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),乳酸脱水素酵素(LDH),アミラーゼ(AMY),γ-グルタミントランスフェラーゼ(γ-GT),総ビリルビン(T-BIL),グルコース(GLU)
実験1では半固形化栄養剤のISO 80369-3対応チューブ通過後の製剤粘度を測定した結果,HNは目標として設定したRと類似した製剤粘度であることを確認した.製剤粘度を6,000 mPa·sから10,000 mPa·sに高めることにより,胃食道逆流が抑制されることが報告されており2),HNはこの範囲内であったことから同様の効果が期待できる.
また,製剤粘度の上昇はチューブ通過性に影響を及ぼすことが懸念されたため,加圧バッグ使用時の排出時間,チューブ付着性およびシリンジ押出力の測定によって評価した.
介護者の負担に関連する操作性の指標として加圧バッグ使用時の排出時間を評価した結果,Hに対し,HNは高値であったが有意差はなく,半固形短時間注入法の目安4)とされる15分以内であり,Rより短縮することが可能となった.チューブ付着性は,HNはHおよびRに対して有意な差を認めなかったことから,同等の洗浄性を有すると考えられた.また,シリンジ押出力は,Hに比し,HNは有意に高値であったが,いずれも手で押出しやすい力の目安5)である30 N以下であったことからチューブ通過性は適切と考えられた.また,HNはRと比較して低値を示したことから,粘度上昇後もシリンジ押出力を抑制できたと示唆される.
HNとHにおいて,製剤粘度で違いがある一方で,加圧バッグ使用時の排出時間およびチューブ付着性では差がなかった要因には,ゲル化剤の影響が考えられる.HNとHはいずれもゲル化剤として寒天を用いており,寒天は熱水中に分散した鎖状分子がネットワークを形成することでゲル化する6).HNは,Hと比較し強度の低い寒天(低強度寒天)を用いた.低強度寒天は通常の寒天より分子量が小さく,ネットワーク形成力が弱いため,弱い力で変形しやすい.このため,チューブを通過する際に試料中のゲルは微粒子となり表面積が増え,粘度測定時に内部抵抗が上昇することで,製剤粘度が高値となったと考えられた.一方,寒天は一度崩壊するとゲル内部からの離水が増加し7),チューブ表面との摩擦抵抗が低下することからチューブ付着性や加圧バッグ使用時の排出時間については,各群間で差はなく,チューブ通過性の目安の範囲内になったと考えられた.
実験2では,HNはHよりも蛋白質配合量が少ない(4.5 g/100 kcal および5.0 g/100 kcal)ため,HN群の摂取窒素量はH群よりも有意に低値であった.しかし,H群は尿および糞便中への窒素排泄量がHN群よりも有意に高値であり,窒素出納には両群間で有意な差は確認されなかった.これは,必要量を越えた窒素が体外へ排泄された可能性が推察される.ラットの蛋白質の必要量は5.2 g/kg BW/日8)と報告されている.本研究においてHN群およびH群の試験最終日の平均体重より算出した蛋白質必要量は1.90 g/日となる.HN群およびH群の摂取蛋白質量はそれぞれ3.6 g/日および4.0 g/日であり,これらは充足率としてそれぞれ197.8%および219.8%であることから,蛋白質必要量を十分に充たす.一方,必要量を超えて蛋白質を摂取した際,過剰な窒素は尿中へ排泄される9,10).また,摂取蛋白質は尿中への窒素排泄量と相関するとの報告がある11–14).以上のことから,HN群およびH群では必要量を超えた蛋白質が窒素として尿中へ排泄され,HN群およびH群間で窒素出納に有意な差が確認されなかったと考えられる.さらに,体重,TPおよびALBに群間で差はなかったことから,HN群はH群と同様の栄養状態であると示唆された.
また,投与開始初期にHN群およびH群の両群で軟便から泥状便が確認されたが,これは絶食および胃瘻造設処置に起因するものと思われた.絶食は消化管の運動を低下させ15),手術などの侵襲は腸管免疫の低下を引き起こす16)ことが報告されている.一方で,HN群ではH群よりも早期に正常便へ移行した.半固形化栄養剤は,液体栄養剤と比較して粘度が高いことで生理的な蠕動運動を促進することが報告されている17).このことから,HNでは製剤粘度を上昇したことが生理的な消化管運動に,より貢献したと期待できる.さらに,Hは食物繊維が1.2 g/100 kcal配合されるが,HNには,食物繊維が2.2 g/100 kcal配合される(表2).経腸栄養における食物繊維について,糞便性状に効果的な摂取量は明らかとなっていないが,ヒトでの糞便性状悪化の抑制に寄与することはシステマティックレビューやメタアナリシスを含む多くの文献で報告されている18–20)ことから,Hよりも食物繊維を多く配合したことが糞便性状に影響した可能性が示唆された.
これらの理由から,HNは胃食道逆流症の予防や,胃の蠕動運動促進に貢献する可能性が期待できる.
本研究から,製剤的物性において,HNの製剤粘度はHと比較し有意に高く,Rと同等でありながらも,Hと同様のチューブ通過性を維持した.本結果から,HNはHと同様に使用でき,Rと同様に清水らの報告に基づく半固形栄養法の有用性が期待される.
また,ラットを用いた栄養評価では,H群およびHN群のいずれも胃瘻ルートからの投与下で糞便性状は良好であり,血液生化学検査や窒素出納に有意差はなかった.
著者はいずれも株式会社大塚製薬工場の従業員である.