GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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DIAGNOSIS AND THERAPY OF PANCREATOBILIARY DISEASES USING BALLOON-ASSISTED ENDOSCOPY IN PATIENTS WITH SURGICALLY ALTERED ANATOMY
Shomei RYOZAWA Hirotoshi IWANOYuki TANISAKATsutomu KOBATAKEMaiko HARADAKumiko OMIYA
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2016 Volume 58 Issue 9 Pages 1395-1403

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要旨

術後再建腸管に対する胆膵内視鏡処置は,十二指腸乳頭部への到達が困難であるため,これまでは積極的に行われてこなかった.しかしバルーン内視鏡の登場により,比較的高頻度に目的部位までアプローチすることが可能となってきた.現状では,鉗子口径が小さいこと,鉗子起上装置がないことなどから,診断や治療を行う際にはまだ多くの制限がある.このような問題点を克服していきながら,確立した手技として発展していくことが期待される.

Ⅰ 緒  言

近年,ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)関連手技は胆膵疾患に対する診断と治療に不可欠なモダリティーのひとつとなっている.通常,その成功率は90%以上とされている 1)が,胃切除術後をはじめとする術後再建腸管症例に対する胆膵内視鏡処置は難易度が高い.術後再建腸管の中でも,Billroth-Ⅱ(B-Ⅱ)法再建腸管や胃切除術後のRoux-en-Y(R-Y)再建腸管や胆管空腸バイパス手術後,さらには膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)後再建腸管などでは目的とする十二指腸乳頭部や胆管・膵管吻合部に到達するまでに,腸管の距離が長くたわみ易いうえ,腸管吻合部における急峻な分岐角や術後癒着の影響などにより挿入が困難である.さらに到達後のカニュレーションや各種処置にも様々な制約がある.本稿では,術後再建腸管におけるバルーン内視鏡による胆膵疾患の診断と治療の現状について概説する.

Ⅱ スコープの選択

B-Ⅱ法再建腸管では,輸入脚が比較的短いため,通常の上部消化管用内視鏡,あるいは十二指腸内視鏡,さらには前方斜視鏡が用いられることが多い.前方斜視鏡は,上部消化管用内視鏡と同等の視野を有し,適度の硬性があり,鉗子起上装置を備えているため,B-Ⅱ法再建腸管に対する胆膵内視鏡処置に有用である 2),3).前方斜視鏡を用いた場合の乳頭到達率は88.4%~91.7%であり,このうち94.7%~100%でERCPおよび関連処置が可能であったと報告されている 2),3).しかしながら,前方斜視鏡を常備している施設は少なく,最近ではB-Ⅱ再建腸管症例に対してバルーン内視鏡を用いる施設も増えてきている.

一方,R-Y法再建腸管における乳頭到達率は,十二指腸内視鏡を用いた場合33%~67%にすぎない 4),5)ため,細径大腸内視鏡 6)~8)やオーバーチューブ併用前方斜視鏡 9)を用いた試みもなされてきたが,これらの報告は術者の技量と熱意によるところが大きく,多くの施設ではR-Y再建腸管に対する胆膵内視鏡処置は非現実的なものとされてきた.しかし,ダブルバルーン内視鏡(DBE:double balloon endoscopy)の登場 10),11)により,R-Y再建腸管に対する胆膵内視鏡処置は一気に現実的なものとなった.2005年にHarutaら 12)が生体肝移植後の胆管空腸吻合部狭窄に対してダブルバルーン内視鏡を用いて内視鏡的治療を行って以来,その有用性が報告されてきている 13)~28).さらに最近では,シングルバルーン内視鏡(SBE:single balloon endoscopy)を用いた試みも報告されている 29)~32).バルーン内視鏡の長所は小腸のたわみを短縮させながらスコープを挿入していくことができるところにあり,より確実に目的とする十二指腸乳頭部や胆管・膵管吻合部に到達することができる.

Ⅲ バルーン内視鏡の特徴

1.ダブルバルーン内視鏡(DBE)

Table 1に現在市販されているバルーン内視鏡の仕様を示す.DBE(富士フイルム社製)の4種類のうち,EN-580Tは3.2mmの鉗子口径を有する処置用の内視鏡であり胆膵内視鏡処置用のデバイスを挿入することはできるが,有効長が2,000mmと長いため使用可能なデバイスは制限される.EI-530Bは有効長が1,520mmの“ショート”DBEであり,通常の胆膵内視鏡処置で用いられるデバイスのほとんどが使用可能である 13),20)~28).直近では,鉗子口径3.2mmを有する“ショート”DBEであるEI-580BT(富士フイルム社製,Figure 1)が登場し,さらなる利便性の向上が期待される.有効長2,000mmのDBEであるEN-580Tを用いる場合には,内視鏡が十二指腸乳頭部あるいは胆管空腸吻合部まで到達したあとに,オーバーチューブを残して内視鏡を上部消化管用内視鏡に入れ換えれば,通常の長さの胆膵内視鏡処置用デバイスが使用可能となる.ただし,内視鏡用バルーンの固定に固定ゴムを使用していると,内視鏡抜去の際に先端がオーバーチューブに引っかかるため,代わりに手術用の糸を用いて固定しておくと良い 13),21),22).また,上部消化管用内視鏡をオーバーチューブ内に挿入するためには,全長1,450mmのオーバーチューブでは長すぎる.バルーンポンプコントローラー用管路とオーバーチューブ内部注水用管路を残してオーバーチューブを切断し,そこから挿入すると良い 13),21),22).この点については次に述べるスタンダードタイプのSBEを使用して胆膵内視鏡処置を行う場合も同様である 30)

Table 1 

バルーン内視鏡の仕様.

Figure 1 

有効長1,550mm,鉗子口径3.2mmの“ショート”ダブルバルーン内視鏡EI-580BT.

2.シングルバルーン内視鏡(SBE)

これまでは,市販されているSBE(SIF-Q260,オリンパスメディカルシステムズ社製)は,1機種のみで有効長2,000mm,外径9.2mm,鉗子口径が2.8mmであった.これはスタンダードタイプのDBEとほぼ同様のスペックであり,挿入における操作性に大きな違いはない.SBEでもDBEと同様,有効長が1,520mmのショートタイプのものが試作されている 33)~35).鉗子口径は3.2mmとさらに大きくなっており,市販されているデバイスのほとんどが使用可能である.このモデルはこれまで大腸内視鏡に用いられてきた受動湾曲機能ならびに高伝達蛇管を搭載しSIF-H290S(オリンパスメディカルシステムズ社製,Figure 2)として今春市販が開始された.

Figure 2 

有効長1,520mm,鉗子口径3.2mmの“ショート”シングルバルーン内視鏡SIF-H290S.

Ⅳ 前処置,体位

前処置は通常のERCP時と同様で,当日の朝食より禁食とし腸管洗浄剤は使用しない.被験者の体位は腹臥位から半腹臥位を基本とし輸入脚への進入やループ解除を確認するために適宜透視を使用する.鎮静および鎮痛も通常の胆膵内視鏡処置時と同様で,鎮静剤としてフルニトラゼパムやミダゾラム,鎮痛剤としてペンタゾシンや塩酸ペチジンを使用する.また腸管蠕動の抑制目的で臭気ブチルスコポラピンまたはグルカゴンを適宜使用する.術中はパルスオキシメーター,自動連続血圧計,心電図モニターを使用しモニタリングを行う.

Ⅴ 輸入脚へのアプローチ

胃切除後症例に対する内視鏡挿入の前には必ず過去の手術記録を確認し 36),再建法ならびに分岐部からの長さ,さらにPD後の場合には胆管および膵管の吻合形態などを把握しておくことが重要である.

1.B-Ⅱ法再建腸管

B-Ⅱ法再建腸管では胃空腸吻合部を越えると,2つの管腔構造が認識される.多くの場合は輸入脚への食物の流入量を減らすため輸入脚の吊り上げが行われ,輸出脚は吻合口からよく観察できるのに対して輸入脚入口部は鋭角となっているため見えにくく挿入しにくい.輸入脚は通常胃小弯側と吻合している場合が多い.したがって,輸入脚にスコープを進めるためにはまず小弯方向へアップアングルをかけてスコープ先端を輸入脚入口部に挿入する.アップアングルが強くかかっている場合にはそのままスコープを押しても先には進まないため,次にスコープを引き気味にして,アップアングルを少しずつ解除しながら軸を合わせることで直線化してからスコープを奥に進めるようにするとよい.

PD後再建症例も基本的には同様である.Braun吻合がなければ一本道であり,挿入の難易度は癒着の有無に影響される.

2.R-Y法再建腸管

輸入脚方向には胆汁が多く,腸管が逆蠕動運動をしていることで見分けることができるとされているが,実際には判別困難なことが多い.Yanoら 37)は,インジゴカルミン液を腸管内に散布すると腸蠕動の影響で多くが輸出脚に流れていくという理論に基づいて検討したところ,80%の症例で輸入脚を同定することに成功したと報告している.誤って輸出脚方向に挿入した場合には,点墨をしておくと後に迷わなくて済む 13),21),22),24),25).後はバルーン内視鏡の特性を生かして,腸管を短縮させながら十二指腸乳頭部を目指して内視鏡を進めて行くが,とくにY脚の角度がきつい場合は,内視鏡先端部に力が伝わらず内視鏡を進めることが困難である.ジャグリングを用いながら送気を最小限にし,慎重に挿入する 38).CO2送気を用いることも有用な方法の一つである.挿入困難例では,X線透視で確認しながら用手圧迫を加える 38)

Table 2に術後再建腸管に対するバルーン内視鏡による胆膵処置の主な報告を示す.乳頭部あるいは胆管空腸吻合部への目的部到達率はDBEでは82%~100%,SBEでは75~94%と報告されており,従来のスコープを用いた挿入より格段に成績が良いことがわかる.しかしながら,挿入時の偶発症として穿孔も少なからず(0%~11%)報告されている 22),24),28).内視鏡の挿入や腸管の短縮に際しては術後腸管であり癒着があるということを念頭に置いて,無理な挿入や短縮は行わないように心がけるべきである.

Table 2 

術後再建腸管に対するバルーン内視鏡による胆膵処置の主な報告.

Ⅵ カニュレーション

目的部位まで到達した後は,乳頭あるいは胆管・膵管の同定と挿管を行う.乳頭の発見が困難な場合には,適宜透視を併用し,内視鏡先端の位置を確認すると良い.PD後の胆管・膵管開口部の同定は,手術術式を事前に確認し,盲端からの距離の把握が重要である 45).胆管吻合部は比較的同定しやすいが,膵管吻合部は膵管径が細く,吻合部がピンホール上あるいは膜様の狭窄を呈しており同定困難な場合も多い.吻合部周囲の潰瘍瘢痕様の所見やスリット上の粘膜所見が吻合部発見の手掛かりとなる.また手術の際の吻合に非吸収糸を用いていれば,その近傍に吻合部が存在するため重要な所見である.

術後再建腸管では,乳頭の位置は一定しておらず画面の様々な方向に観察される可能性がある.まずは,内視鏡を軸回転させて乳頭をなるべくカニュレーションしやすい方向に位置させることが第一である.すなわち鉗子口から出たカニューレの方向と胆管・膵管の軸が同じ方向になるようにする必要がある.どうしても接線方向にしか位置させられないことも多いが,そのような場合には先端アタッチメントを装着しておくと,カニュレーションに役立つことがある 15),21),22),42).カニューレは通常のERCPで用いるのと同様ガイドワイヤーを入れたまま造影が可能なものが用いられる.なるべく曲がり癖をつけずに先端がまっすぐな状態のものを用いるとよい.どうしても胆管・膵管軸が合わない場合には,先端が湾曲可能なカニューレやスフィンクテロトーム 45)が用いられることもある.カニュレーション成功率は,DBEでは67%~94%,SBEでは70%~92%と報告されており(Table 2),まだ十分な数字とは言えない.バルーン内視鏡はスコープが直視であり正面視が困難であること,鉗子起上装置が備わっていないことなどが原因と考えられ,今後のさらなるスコープ改良が望まれる.

Ⅶ 胆膵内視鏡処置

術後再建腸管で胆膵内視鏡処置の対象となる病態は,胆道狭窄や胆管結石などである.

1.内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)

ESTは,胆管にプラスチックステントを留置後ステントに沿って口側隆起をニードルナイフで切開する方法で行われることが多い 35)が,上級者が慎重に行うべきである.他には,ナイフがシャフトの反対側についたB-Ⅱ法専用のスフィンクテロトームを用いる方法やナイフの方向を回転させることができるものを用いる方法 36),通常のスフィンクテロトームを成型してナイフの方向を変えて用いる方法 29)などもある.

2.内視鏡的乳頭バルーン拡張術・内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(endscopic papillary balloon dilation:EPBD,endoscopic papillary large balloon dilation)

術後再建腸管症例に対してESTが行える熟練医がいない場合や,ESTが解剖学的に困難な場合には,EPBDによる乳頭処置を考慮すべきである 46).また巨大結石や積み上げ結石症例では,大口径バルーンで胆管開口部を十分に拡張させるEPLBDを行ってから結石除去する方法(Figure 3)も有効である 45)

Figure 3 

“ショート”シングルバルーン内視鏡を用いた胆管結石除去術.

a:Roux-en-Y症例に対してシングルバルーン内視鏡を用いて乳頭部まで到達した.

b:EPLBDを行った.

c:砕石用バスケットカテーテルで結石を把持した.

d:結石を除去した.

3.胆管結石除去術

結石除去は,基本的には通常の胆膵内視鏡処置と同様であり,バスケットカテーテルやバルーンカテーテルを用いる.しかしながら,術後再建腸管におけるバルーン内視鏡を用いた処置においては,スコープの位置が安定しないこと,鉗子起上装置が備わっていないことなどの理由で,慎重な操作が必要である.結石が大きく,破砕しなければならない場合には,機械式砕石具の適応となる.これまではバルーン内視鏡の鉗子口径が2.8mmと小さく,使用可能な機械式砕石具が限られていた 22),35),36)が,既に述べたように3.2mm径を有するバルーン内視鏡が登場しており,処置具の選択肢が広がった.

4.胆道ドレナージ術

胆管ステンティングについては,2.8mm径のバルーン内視鏡で使用できるのは,プラスチックステントであれば7Fr,金属ステントであれば理論上ではデリバリー径が8Frまでである.しかしながら,デリバリー径8Frの金属ステントは通常挿入困難である.3.2mm径のバルーン内視鏡の登場により,結石除去術と同様,デバイスの選択肢が広がることが期待される.ステントの挿入に際して通常の十二指腸用内視鏡とは異なり,鉗子起上装置やアップアングル操作などで挿入していくような操作法はできない.バルーン内視鏡では右手でステントを押す操作や,内視鏡を押し進める操作に頼らざるを得ない 45).このため,いかに胆管軸に合わせられるかが重要である.

Ⅷ おわりに

術後再建腸管におけるバルーン内視鏡による胆膵内視鏡処置の手技の実際と有用性について概説した.バルーン内視鏡の登場により,目的部位までのアプローチ成功率は飛躍的に向上した.しかしながら,手技的には未だ確立されたものではなく,今後さらなるスコープや処置具の改良により,問題点が克服されることが望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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