2017 Volume 59 Issue 1 Pages 112-116
当院は1935年に野付牛町(現:北見市)に開設された.北見市は,北海道東部・オホーツク圏最大の都市で,人口約12万人,面積は全国第4位の広さである.かつては世界市場の70%を占める「ハッカ」の世界的産地であった.現在はたまねぎ生産量が日本一である.北見市常呂町は「カーリングの聖地」として知られる.
三次医療圏は通常は都道府県を一つの単位とするが,北海道は広大な面積を有するため例外的に6つの三次医療圏が設置されている.北海道東部のオホーツク医療圏は,北見市を中心とし,総面積は10,691平方キロメートルで,新潟県に迫る広さを有している.圏域の人口は約30万人である.
当院はオホーツク医療圏の基幹病院として,1992年には救命救急センターを開設,地方センター病院の指定を受け,2005年にはがん診療拠点病院,2007年には人間ドック・健診施設機能評価認定を受けている.
オホーツク医療圏には当院まで2時間以上の搬送時間を要する地域が入るが,当院は圏内唯一のがん診療連携拠点病院であり,かつ唯一の三次医療救急救命センター病院である.
札幌までの距離は約300km,車で約5時間であり,本州でいうと横浜・名古屋間,あるいは,大阪・広島間に相当する.このような地理的条件から,オホーツク医療圏では当院が「最後の砦」となっている.
現在,24診療科を有し,許可病床数は532床(一般病床:490床,精神病床:40床,感染症病床:2床)で,健康管理センターを併設している.
2010年,新病院の基本・実施設計が始まった.内視鏡室は,「内視鏡センター」として年間目標全内視鏡検査件数を経年実績の倍の10,000件と設定し,救急救命センター・放射線部と隣接した配置を確保し,通常・緊急検査時の患者導線に配慮した設計を行った.2014年4月,医療圏内唯一のPETセンターを併設し,同年12月,屋上ヘリポートを有する新病院が完成し業務を開始している.
組織内視鏡センターは外来診療部門の中の独立した一部門である.消化器内科・腫瘍内科と内科が使用する.
検査室レイアウト

1993年に増築した旧病院は,内視鏡室は検査室2室で透視室は共用で2室であった.2001年,消化器科(現:消化器内科)が新設され,徐々に内視鏡業務が拡大し,2009年5月,検査室を3室に増やし,リカバリー室(リクライニング3台)の新設を行った.当時,年間5,000件前後の内視鏡検査・治療を施行していた.健康管理センターでの胃がん検診は年間4,000件程度で,ほぼ胃バリウム検査を施行していた.
2010年に新病院の基本・実施設計が始まった.内視鏡検診導入の要望もあり,新病院での年間目標全内視鏡検査件数を過去実績の倍の10,000件と設定し,鎮静内視鏡検査に対応可能な設計を行った.新病院開設に向けて徐々に検診内視鏡の導入と,鎮静内視鏡の導入を行った.2014年12月に新病院が竣工し,現在業務が開始されている.2015年実績で年間検査件数約9,000件となっている.
内視鏡センターは新病院1階の中央に位置している.救命救急センター,放射線部に隣接し,消化器内科・腫瘍内科外来も同フロアの近隣に位置する.
内視鏡センターの総面積は444m2である.センター内には,検査室のほかに,症例検討室,リカバリーエリア,男女兼用の個室トイレ,浣腸が施行可能なベッド・トイレ付個室などを整備している.内視鏡検査台は6台あり,通常検査室3室,超音波内視鏡専用室,内視鏡治療室,専用X線透視室に配備している.全検査室に強制排気システムを導入している.
通常検査エリアとして検査室3室を横に並べて配置した.各検査室は18m2以上の十分な広さを有し,上部および大腸内視鏡検査に利用する.EMRなどの治療内視鏡も施行可能である.検査室3室は個室化されているが,側壁にスライドドアがあり連結されるため,緊急時等には医師・スタッフがスムーズに検査室間を移動することができる.
通常検査室3室に隣接してセンター中央にリカバリーエリアを配置した.リクライニングチェア4台,ベッド5台,ストレッチャー1台の待機スペースがある.カーテンで仕切られており,各々に酸素配管・吸引配管・観察モニターを整備している.
救命救急センターと隣接する位置に,治療・精密検査エリアとして,25m2の治療専用室,レクチャースコープ付の顕微鏡・病理検体処理設備を有し迅速検査が可能な超音波内視鏡専用室,内視鏡専用X線透視室,さらに医師が控える症例検討室を配置した.
救命救急センターの緊急患者は専用通路により直接センター内の治療室や透視室に搬入可能である.また,このエリアの専用出入口は,中央廊下を挟んで病棟搬送用のエレベーターホールに直結する.通常検査の待合い入口と導線が完全に分離されているため,緊急患者・入院患者の搬入や検査・治療後の病棟への搬送がスムーズに行われる.通常検査室3室と治療・精密検査エリアはリカバリーエリアを介して分断される形をとるため,緊急止血術などが慌ただしく治療室で行われている最中でも,通常検査室では穏やかな環境で検査を受けていただくことができる.
夜間・休日の緊急内視鏡検査・治療は,通常検査3室は使用せず,救命救急センターに隣接した治療・精密検査エリアのみを使用することで対応可能である.
特筆すべき当センターの設備上の特徴を2点以下に示す.
① CO2中央配管
センター内の全検査室6室と緊急時並列使用する放射線部のX線透視室にCO2中央配管を導入している.ESDなどの治療内視鏡や小腸鏡,あるいは大腸内視鏡等でCO2送気を利用しているが,ボンベ設置・交換・管理が不要であり非常に有用である.
② コメディカルスタッフのインターコミュニケーションシステム(インカム)導入
内視鏡業務において,コメディカルスタッフ間では,検査開始・終了時,患者の入れ替え時,リカバリー開始・終了時,不測の事態発生時など,多種多様な場面で「連絡業務」が「短時間」に「頻繁」に発生する.本センター整備計画ではリカバリーエリアを中央にセミオープンスタイルで配置した.検査室・治療室が離れるため,スタッフ間,あるいは受付担当との連絡業務をどうするかが問題点として浮上した.大声で叫ぶわけにもいかず,その都度電話やNsコールで対応するのは非効率的であり,かつ,各検査室に響き渡る頻繁の電話・Nsコール音はセンター全体,とりわけリカバリーエリアの静寂を乱し,安寧な検査施行・リカバリーに支障をきたしかねないと判断した.
ポータブルトランシーバーを利用したインカムを導入することにより,受付事務担当・内視鏡介助スタッフ(技師・看護師)・リカバリー担当看護師・洗浄スタッフが随時双方向でコミュニケーションをとることが可能となった.
センター外部からの電話連絡は受付事務担当に集約されるため,検査室で電話が鳴ることはない.電話・Nsコールが鳴ることなく,各検査室・治療室・リカバリーの進捗状況をスタッフ全員が共有することができる.患者の前処置,入れ替え,検査室間のスタッフ応援などが粛々と静寂を保ったまま行われている.
(2016年7月現在)
医 師:指導医2名,専門医2名(うち1名は非常勤),その他スタッフ1名,研修医など3名
内視鏡技師:Ⅰ種6名,Ⅱ種2名
看 護 師:常勤2名
事 務 職:1名,その他:1名
(2016年7月現在)

(2015年1月〜2015年12月まで)

当科は,北海道大学消化器内科(以下,北大消化器内科)の医局関連施設である.2016年7月現在,指導スタッフは4名,後期研修医として卒後5年目1名,4年目1名,3年目1名,初期臨床研修医(2年次)1名,初期臨床研修医(1年次)1名の,9名体制である.3年目以上のスタッフは北大医局からの派遣医師である.北大光学医療診療部より,専門医の定期派遣(月1回)を受けて難しいケースのESDに対応している.他,胆膵領域においても不定期に北大消化器内科より指導医の派遣を受けている.
各グループ3名の3グループ体制で診療に従事している.グループ毎に毎朝カンファレンスを行い,回診担当医が病棟業務を行う.卒後3年目以上の医師は,通常の外来と内視鏡検査のほかに,消化器救急搬送患者対応を当番で担当する.
各年次に合わせて,学会や研究会への参加・聴講や,発表を積極的に行う.
① 初期臨床研修医
1年次は,消化器疾患の診療を通じて,まずは臨床医としての基本的診療スキルを研修する.内視鏡業務にも積極的に参加し,指導医の指示・管理のもと,検査・治療の介助を行う.研修状況によっては,上部消化管内視鏡検査の引き抜きを中心とした観察・操作を経験する.
2年次は,将来,消化器内科医や外科医をめざす研修医が,2,3カ月間選択することが多い.内視鏡検査・治療の介助には積極的に参加し,研修状況によっては,指導医の指示・管理のもと,上部消化管内視鏡検査の引き抜きを中心とした観察・操作に加えて,下部消化管内視鏡検査の引き抜きを中心とした観察・操作を経験する.
② 後期研修医
3年次から消化器専門外来に従事する.指導医のもと,各種内視鏡検査の意義,目的,適応等について十分に理解した上で,自ら説明し同意を得て検査を予定する.
専門医・指導医のもとで,上部消化管内視鏡検査を自ら実施し,生検も行う.病理診断を含めた総合的な内視鏡診断学を研修する.研修状況をみて,下部消化管内視鏡検査の研修を開始する.
治療内視鏡については,意義,目的,適応等について十分に理解した上で,見学・検査介助を行う.適応を理解し,手順等を経験し同意書が取得できることをめざす.研修状況によっては止血処置・異物除去・イレウス管挿入・大腸EMRなどを経験する.
4,5年次には,専門医・指導医のもと,止血処置や,大腸EMRについては単独での施行をめざす.上部ESDやEUS関連検査,胆膵内視鏡検査・治療を経験する.特に,胆道ドレナージの適応については十分に理解し,止血処置等と合わせて,より積極的に経験する.緊急内視鏡検査・治療を数多く経験し,消化器内科オンコールを担当できる礎を完成させる.
カプセル内視鏡やCTコロノグラフィーは現在十分な提供体制ができておらず,早急な体制整備が必要である.
2015年の年間総内視鏡検査・治療件数は約9,000件であった.後期研修医3名とスタッフ4名の計7名での診療実績であった.
当院は,地域がん診療拠点病院であり,かつ三次救命救急センターを有する地方センター病院の消化器内科として,消化器がん診療と24時間体制の消化器救急診療を担っている.
2025年に向けた地域医療ビジョンにおいて,当院はオホーツク医療圏の高度急性期医療・一般急性期医療を主に担う立場となることが想定される.すなわち,われわれが行うべき内視鏡検査・治療は今まで以上に「質と量」が求められるようになる.
同時に,新・専門医制度における教育機関としての当院の果たすべき役割も明らかになりつつある.
最善・最良の内視鏡診療と内視鏡研修を今後も継続して行うために,当科診療体制のさらなるレベルアップを目指していきたいと考えている.