2017 Volume 59 Issue 1 Pages 120-122
八重山病院がある石垣島は,沖縄本島の南西約411kmの地点にあり,我が国最南西端に位置する八重山諸島の中心にあります.八重山諸島は,有人12,無人20,計32の島々から成り立っており,石垣市,竹富町,与那国町の1市2町による行政が行われています.本院は,八重山医療圏で唯一の総合的な診療ができる地域中核病院であり,本院の診療は一般医療はもとより,救急医療や,訪問診療,訪問看護,附属巡回診療等と多岐にわたる医療サービスを地域に展開し,住民の皆様のニーズに答えています.
救急医療の中でも特筆すべきことは周辺離島や,周辺海域からの海上保安庁のヘリコプターによる急患搬送業務です.周辺離島からの救急患者の搬送件数は年間60~70件を数え,医師の添乗率は約70%です.また石垣島周辺の海上を航行する船舶からの救急患者の救助要請は年間2~4件あり,海上保安庁と協力して実施しています.本院には16の診療科があり,医療機器はCT,MRI,乳房撮影装置,心血管撮影装置等を装備し,地域に密着した地域完結型の急性期医療を主体に充実した日常診療を行っています.
組織常勤の消化器内科専攻医2名(琉球大学第一内科医局からの派遣を含む)と,沖縄県立中部病院から交代で業務応援に来る指導医1名の計3人で内視鏡業務を担当しています.月に1回東京大学消化器内科医局からも指導医が業務応援に来ています.看護師は手術室に属しており,手術室・血管造影室・内視鏡室を兼任しています.医師,看護師共に24時間オンコール体制にて緊急の内視鏡検査に対応しています.
検査室レイアウト
当院内視鏡室は内視鏡検査室1室,X線透視室2室,回復室2床からなっている.透視室②は処置台が上下に動かずまた透視の機械も老朽化が進んでおりドレーンの位置調整や造影,下部内視鏡検査の挿入困難例に使用するのみで,ERCPは全例透視室①で行っている.内視鏡室では午前中は上部消化管検査,午後は下部内視鏡検査を中心に行っている.
医 師:消化器専攻医2名,指導医1名
内視鏡技師:Ⅰ種 2名
看 護 師:常勤 2名,非常勤 1名,看護助手 1名
(2016年4月現在)
(2015年4月~2016年3月まで)
常勤医は3名であるが,2名は専門医ではなく研修を積んでいるところである.各々外来が週に2回と救急からの入院を担当する救急当番もあるため,3名が全員揃って検査できる曜日が週に1回しかない.現在は水曜日がその日であり,ERCPを含む特殊検査はこの日に行い症例を共有し,指導医からの直接指導のもとで研鑽を積んでいる.今年から沖縄県立中部病院の指導医の協力のもとで,期間限定ではあるが超音波内視鏡検査(EUS)を八重山病院でも施行できるようになり,以前は沖縄本島に紹介していた症例も当院で検査できるようになった.胆管炎,アルコール性慢性膵炎の症例が多くERCPの検査数は年々増加しており,今年は4〜6月の3カ月間で50例と年間200件ペースとなっている.また月に1回,東京大学消化器内科医局からも指導医の先生が指導に来ており離島ではあるが症例数と指導医には恵まれた環境となっている.
医師の異動が毎年あり,赴任する医師の専門性により行える検査・治療が大きく変わることが問題である.以前は胃・大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行できる医師が当院におり,当院にて治療も行っていた.しかし現在は石垣島内に施行できる医師がおらず,全例沖縄本島に紹介している状態である.
同様のことは他の特殊検査にもあてはまると考えられ,現在は沖縄県立中部病院より胆膵専門の指導医が応援にきているため,胆膵の検査はある程度当院でも行うことができる.しかし応援医師体制の変化により今後できなくなる可能性も十分にある.可能な限り石垣島内で検査・治療して欲しいと望まれる患者さんが多いが,現状で対応困難となっている.患者さんが石垣島外に検査・治療に出るのではなく,専門技術を持つ消化器医が定期的に当院に来ていただき検査・治療してもらうのが最善であり,今後そのような応援体制ができればと考えている.
設備面ではERCPに使用できる透視室(透視室①)が1つしかなく,注腸造影検査での使用,呼吸器の先生や外科の先生も透視室①を使用することがあるためスタッフはいるが検査はできないという状態が発生している.ERCPの検査数の増加に対応するために,今後古い透視室(透視室②)の改築が必要であるが,数年以内に八重山病院は新病院に移転する予定であり,新病院では透視室の拡充が望まれる.