GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF CAP POLYPOSIS LOCALIZED IN THE TRANSVERSE COLON THAT WAS CURED BY HELICOBACTER PYLORI ERADICATION THERAPY
Kenji TSUCHIDA Kyoji SENOOYoshihide KIMURAAtsuyuki HIRANOHisayo KOJIMAHiroaki YAMASHITAYoshihiro YAMAKAWANobuhiro NISHIGAKITomonori OZEKIKazuhisa NAKANISHI
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2017 Volume 59 Issue 1 Pages 24-32

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要旨

症例は59歳女性,腹痛と交代性便通異常で当科を受診.大腸内視鏡,注腸X線,病理組織所見から横行結腸に限局したCap Polyposisと診断した.Helicobacter pylori除菌が成功するとEMR/クリッピング部の再発はなくなった.Helicobacter pylori陽性のCap Polyposisでは,その持続感染が基礎にあり,除菌成功が本症の改善には重要と思われた.

Ⅰ 緒  言

Cap Polyposis(以下CP)は下痢・腹痛・低栄養などの症状,主に直腸からS状結腸の頂部に白苔を有する多発性ポリープで,炎症性肉芽のcap,腺管の過形成,線維筋症などの特徴的病理組織所見から比較的容易に診断可能な疾患であるが,病因に関しては未だ不明な点が多い 1)~3.今回われわれは横行結腸に限局し,Helicobacter pylori(以下HP)除菌成功にてポリープが消失した症例を経験した.HP感染状態では,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection; EMR)/クリッピング部にポリープの再発がみられたが,除菌が成功するとEMR/クリッピング部にも再発なく著効が得られた.

Ⅱ 症  例

患者:59歳女性.

主訴:腹痛,交代性便通異常.

家族歴:父 胃癌.

既往歴:53歳大腸ポリープ切除(他院にて).

現病歴:2010年頃から左右の脇腹の痛み,交代性便通異常を自覚.近医での注腸X線検査で横行結腸に限局する多発性大腸ポリープを指摘,精査加療目的で2011年6月当科を受診.採血で軽度の肝障害を認めたが,白血球増多なくCRPも陰性で,TPも正常範囲内であった.6月に大腸内視鏡検査(以下CS)を施行,肝弯曲から横行結腸にかけて表面にびらんを有し中心に発赤陥凹を伴う扁平な多発性ポリープが横走するひだ上に認められCPを疑った(Figure 1).吸引便の細菌培養ではE. coli O6が(+)であった.7月の注腸X線検査では,横行結腸に限局した多発性ポリープと憩室を認めた(Figure 2-a).7月に確定診断を目的に目立つポリープ3個をEMRした.Figure 3横行結腸の向かって2時方向のポリープをEMR/クリッピングし(Olympus EZ ClipTM HX-610-135使用.肝弯曲のポリープ切除部2カ所にそれぞれ4本と3本のクリッピング,横行結腸の切除部に3本のクリッピング),病理組織学的にはフィブリンの付着と間質の肉芽層が観察されCPを強く疑った(Figure 4).同時期の迅速ウレアーゼテストと血清抗ヘリコバクターピロリIgG抗体は陽性(30U/mL:正常値0~9U/mL)であった.HP除菌療法により軽快したCPの報告 1)~10を参考に,インフォームドコンセントの後9月にHP一次除菌(Lansoprazole 60mg, Amoxicillin 1,500mg, Clarithromycin 400mg/day×7 days)を行うも症状は改善しなかった.10月にCS再検(前回から83日経過)したところ,すべてのクリップは既に脱落していた.多発するポリープは全体に目立たなかったが,3カ所の切除部においてEMRで切除したポリープが引きつれを伴って再発していた(Figure 5).確定診断と治療を兼ね再度そのポリープを含め4個のポリープをEMR/クリッピングした(肝弯曲ポリープ2個の切除部のうち1カ所に対して3本クリッピング,横行結腸のポリープ2個の切除部に対してそれぞれ2本クリッピング).病理組織学的には上皮の過形成性変化,間質の線維芽細胞増殖,細い平滑筋線維束の伸展が隆起の深層中心に認められ(Figure 6),横行結腸のポリープ(Figure 5)は肉芽組織でありCPと確診した.また抗HP抗体(DAKO,ラビット抗人ポリクローナル抗体)でEMRしたポリープを免疫組織染色したが,HPは検出されなかった.11月の尿素呼気試験で除菌不成功(28.9‰(0~2.4))が判明し同月に二次除菌(Rabeprazole 20mg, Amoxicillin 1,500mg, Metronidazole 400mg/day×7days)を行った.2012年1月すべての症状は消失し,尿素呼気試験で二次除菌成功(0.9‰)が確認された.2月のCS(前回から113日経過)ではすべてのポリープは消失し,クリップもすべて脱落,切除部にも再発を認めなかった(Figure 7).吸引便の細菌培養ではE. coli O6が(+)で,血清サイトメガロウイルス抗体,C7-HRPおよび血清赤痢アメーバ抗体も陰性であった.4月の注腸X線検査においてもすべてのポリープは消失(Figure 2-b),翌2013年7月のCSでも異常を認めなかった(Figure 8).

Figure 1 

2011年6月 初回大腸内視鏡.

肝弯曲から横行結腸にかけて表面に発赤びらんを伴う多発性のポリープを認めた.

Figure 2

a:2011年7月注腸X線(除菌前).肝弯曲から横行結腸に限局した多発性ポリープ.

b:2012年4月注腸X線(二次除菌成功後).ポリープはすべて消失した.

Figure 3 

2011年7月初回EMR/クリッピング.横行結腸,向かって2時方向の頂部に白苔を伴うポリープ(□)をEMR/クリッピングした.

Figure 4 

病理組織所見(HE染色×20).

ポリープ表面のフィブリン付着(矢頭)と間質の肉芽組織(矢印).

Figure 5 

2011年10月 2回目EMR/クリッピング.多発するポリープは全体的に目立たなくなっていたが,前回EMR/クリッピングした部位(□)では消失したポリープの再発がみられた.

Figure 6 

病理組織所見(HE染色×4).

上皮の過形成性変化が目立ち,粘膜脱症候群に類似した線維筋症(矢印)を認めた.

Figure 7 

2012年2月 大腸内視鏡.

前回まで認められた多発性のポリープはすべて消失し,EMR/クリッピング部(□)にも再発を認めなかった.

Figure 8 

2013年7月 大腸内視鏡.

ポリープの再発を認めなかった.

Ⅲ 考  察

Cap Polyposis(CP)はWilliamsらが1985年に膿性粘液に覆われた隆起の頂部が帽子様の形態を示す特異な炎症性ポリープをinflammatory cap polypとして提唱し 11,その後1993年CampbellらがCPと呼称した疾患である 12.症状は下痢,粘液便,下血,腹痛などがあり,採血検査では低蛋白血症や軽度の貧血を伴うことがあるが,血沈やCRPはほとんどの症例で正常範囲内であることが他の炎症性腸疾患との鑑別に参考となる 13.病変範囲は直腸からS状結腸が多く 5),9),14下行結腸より口側の報告例は少ないが,横行結腸に限局した症例は医学中央雑誌の検索で,S状結腸の粘膜脱症候群術後に横行結腸に見られたCPの1例 14と,Pub Med検索(key word: cap polyposis and transverse colon)で1例 15のみであった.内視鏡所見は初期/早期像として斑状発赤や平坦な地図状粘膜発赤で,完成された所見として表面にびらんを持つ種々の形態のポリープからなるタイプと,中心に発赤陥凹を伴う扁平隆起からなるタイプがあるといわれている 16.注腸X線では小円形透亮像の多発が横走するひだ上に認められるとされ 14,自験例でも横行結腸に限局していた以外は既報例と類似していた.病理所見では延長した腺管と上皮が炎症性肉芽組織のcapでおおわれていることが特徴で 1),11),17,線維筋症も伴うが軽度とされている 17.自験例もCPとしての特徴的病理所見を認めたが,標本すべてにおいてCPの典型的な所見が見られたわけではなく,CPの比較的初期像 17と考えられた.本症の病因について高山ら 3は以下のごとく1「粘膜脱あるいは大腸運動機能異常」,2「感染症」,3「免疫異常」という3説にまとめている.1については病理組織学的にMPSに類似する所見から蠕動異常やいきみの関与が疑われているが,いきみを避けて緩解していた症例が再発 6したり,自然軽快した例 18)~20もあり,粘膜脱の関与は症例毎に異なるように思われる 17.自験例では除菌不成功では,未切除の多発ポリープはわずかに縮小している印象であったが,切除部においてのみ消失したポリープが再発していた.しかし除菌が成功すると同様にすべての切除部にも再発なく,すべてのポリープは消失した.本症をEMRで治療しても短期間に再発し一時的な効果しか得られないとの報告 13があるが,自験例においては機械的刺激(EMR/クリッピング)がポリープの再発に関与した可能性が推測された 2.2については,HP除菌療法による著効例やMNZ有効例から,感染症特にHPの関与が示唆されている 1)~3),6.石川らのHP一次除菌で症状とポリープの改善無く,二次除菌で著効が得られた報告 7,メトロニダゾールで改善せず除菌成功で改善が見られた報告 2),4があるが,石川らの報告は自験例と同様な経過から,除菌成功がHP陽性の症例を著効に導くためには重要な条件であることを示している.自験例では一次除菌不成功でも未切除のポリープが若干縮小した印象があり,抗菌薬治療による何らかの変化がポリープの改善に働いた可能性が疑われ,二次除菌の成功によって著効が得られた.このようにHP除菌でCPが軽快した報告は2002年にOiyaらの報告 1以来,医学中央雑誌でCap Polyposisをキーワードに2015年11月まで検索すると,会議録を除き12例 1)~10が報告(Table 1)されている.除菌に反応する他の細菌の関与は否定できないものの,HP陽性例では除菌が成功すると全例軽快していること,HP陰性例では除菌無効との報告 21からCPの病因としてHP感染が強く関与し 5,その感染の有無により病態が異なる可能性が推測された.一方HP陽性でも除菌せず9年間の経過観察のみで自然軽快した報告 18も見られ,加齢による腸内細菌叢の変化 22も病態に関与している可能性が推測された.なお自験例においては初回CS時の便細菌培養でE. coli O6が検出されていたが,除菌成功後も検出されており,CPとは無関係と思われた.3について,自験例でも病変部の免疫組織染色でHPは認めず,既報例 1),2と同様であった.病変部にHPが検出されないにもかかわらずHP除菌で改善する現象は,Oiyaら,Akamatsuらが推測するHP持続感染によるサイトカイン産生や免疫反応などがCPの病因に大きく関与している 1),2),23),24ことを示唆するものである.またステロイドや抗TNF-α抗体の有効例 2),25),26や無効例 2),7),27が見られることも,CPの病因にHP持続感染を介した全身の免疫反応の関与があることを裏付けるものと思われた.

Table 1 

Helicobacter pylori除菌療法が著効したcap polyposisの報告例.

Ⅳ 結  語

HP除菌成功にて著効が得られ横行結腸に限局したCPを経験した.HP陽性のCPでは,その持続感染が基礎にあり,除菌成功が本症の改善には重要と思われた.

謝辞

本稿の遂行にあたり,病理組織学的所見につきご指導をいただきました当院病理診断科の佐藤慎哉先生に深謝申し上げます.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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