2017 Volume 59 Issue 10 Pages 2533-2534
悪性胆道狭窄の原因は多岐にわたり,多くの症例で胆道ドレナージが必須になる.切除可能症例に対し,Plastic Stent(PS)とSelf-expandable Metallic Stent(SEMS)のどちらを選択するかは意見が分かれる 1)が,切除不能症例に関しては,開存期間等の面から予後が4-6カ月以上見込める症例ではSEMSが一般的に用いられることが多い 2).
小規模病院等では,ERCPを医師1人で施行する場面に度々遭遇する.physician-controlled wire-guided cannulation法 3)の報告もあり,概ね,術者1人での施行が可能である.しかし,切除不能悪性胆道狭窄に対して,本来であればSEMSを選択したい際も,従来のYコネタイプではリリースのタイミング等,介助者の手技の煩雑さなどからSEMSを敬遠し,PS留置,交換を繰り返す症例は少なくない.そこで今回,ZEOSTENTTM(Zeon Medical Inc., Tokyo, Japan)のハンドルタイプを用いたphysician-controlled SEMS留置法を提案する.
通常のSEMS同様に狭窄部の位置や長さから,ステントの径と長さを選択し,ステントを留置予定位置に合わせる.その後,スコープの軟性部を腹部にあて安定させる.操作部を持ちながら,デリバリーカテーテル部分は,フリーな状態,もしくは,左手の第4指と第5指で挟み,軽く保持する.右手でハンドル部を持つ(Figure 1).この状態で内視鏡画面や透視画面が安定していることを確認する.その後,リリースを開始する.ハンドルを3回握ったあたりから透視上でステントのリリースが開始される.5回握っても開始されない場合はkinkingしている可能性が高いため,捻じれ,屈曲がないかなど確認する必要がある.Kinkingに注意すれば,Jumpingも少なく,ハンドルを握るごとにゆっくりリリースされていく.リリース中に少しステントがスコープから遠位側に引き込まれる感覚がある際は,ユニバーサルコードの根本を左前腕に掛け,左手でデリバリーカテーテルの外筒を少し引き,位置調整する(Figure 2).その際に,アングル保持が必要な際はロック機能を使用する.スコープの位置調整が必要な際は,ユニバーサルコードの根本を左前腕に掛け,左手でデリバリーカテーテルの外筒,およびハンドルを保持し,スコープの位置調整を行う(Figure 3).頻繁に軟性部とアングル部分の操作をしないと安定しない症例には,現時点ではこの方法は難しい.しかし,今後,Olympus社カテーテルに付属するC-Hookのようにハンドル部分をスコープに固定できれば,右手も時折ハンドルから離すことも可能となるため,多少スコープが安定しない症例においても留置可能になると考えられた.

スコープの軟性部を腹部にあて安定させる(白矢印).左手でスコープ操作部を持ちながら,ステントのデリバリーカテーテル部分は,フリーな状態にし,右手でステントのハンドル部を持ちリリースを開始する(黒矢印).

リリース中,少し引き込まれた際は,ユニバーサルコードの根本を左前腕に掛け,左手でデリバリーカテーテルの外筒を少し引き,位置調整する(白矢印).

スコープの位置調整(黒矢印)は,ユニバーサルコードの根本を左前腕に掛け,左手でデリバリーカテーテルの外筒,およびハンドルを保持した状態で行う(白矢印).
ZEOSTENTTM plusとZEOSTENTTM coveredがあるが,違いはデリバリーカテーテル外径が,ZEOSTENTTM plusは2.3mmと細く,リリースの際,ステントのズレはほとんど感じない.一方,ZEOSTENTTM coveredは2.8mmと少し太く,多少ステントがスコープから遠位側に引き込まれる感じを受けるため,TJF scope(240,260V;Olympus)の使用を推奨するが,安定したリリースにはもう少し症例の蓄積が必要と思われた.
今回,複数本留置は施行していないが,Stent in Stentでの留置法は従来のSEMS同様に可能であると考えられた.
上記の留置法を用いて,ZEOSTENTTM plusを5例,ZEOSTENTTM coveredを1例の症例に使用した(Table 1).年齢の平均は72.5歳(中央値 70.5歳),男女比は5:1であった.使用スコープはZEOSTENTTM plusはJF-260Vが4例,TJF240は1例,ZEOSTENTTM coveredはTJF240を使用した.疾患は膵癌2例,胆管癌2例,胆嚢癌1例,胃癌1例であった.ESTは,2例に施行されなかった.内1例はステント下端が十二指腸であったが膵炎は起こさなかった.留置部位はZEOSTENTTM plusは右胆管-下部胆管に10mm径 8cm長が2例,右胆管-下部胆管に10mm径 10cm長が1例,上部胆管-十二指腸に10mm径 10cm長が1例,中部胆管-十二指腸に10mm径 8cm長が1例であった.ZEOSTENTTM coveredは上部胆管-十二指腸に10mm径 8cm長が1例であった.すべての症例で安全に問題なく留置可能であった.

症例一覧.
今回,ZEOSTENTTMを用いたphysician-controlled SEMS留置法が可能であったので報告した.今後,SEMS留置が困難であった施設等でもphysician-controlled SEMS留置法を用いることで,SEMSを選択する症例が増えることを期待したい.
本論文内容に関連する著者の利益相反:宮谷博幸(アストラゼネカ,第一三共,武田薬品工業)