2017 Volume 59 Issue 12 Pages 2767
【背景と目的】近年,消化管内視鏡検査時にプロポフォールが使用される機会が増加しているが,心肺系合併症の発症が危惧されている.本研究は内視鏡検査時にプロポフォールと従来の鎮静薬を使用した際の心肺系合併症の発症につき比較検討する目的で行われた.
【方法】Medlineを含む3つのデータベースを使用して鎮静薬使用時の低酸素血症,血圧低下,不整脈の出現頻度を検討した.上下部内視鏡検査を通常内視鏡検査とし,内視鏡的逆行性胆管膵管造影,超音波内視鏡検査,バルーン小腸内視鏡検査,内視鏡的粘膜下層剥離術を侵襲的内視鏡検査と定義した.鎮静薬を使用した際の心肺系合併症出現の危険性をオッズ比で評価した.
【結果】27本の原著論文が本研究のメタアナリシスに合致した.1,324人でプロポフォールが使用され,1,194人が従来の鎮静薬のミダゾラム,ペチジン,メペチジン,レミフェンタニル,フェンタニルが使用された.従来の鎮静薬と比較して,プロポフォールの低酸素血症のリスクは0.82(95%CI:0.63-1.07),血圧低下のリスクが0.92(0.64-1.32)であった.通常内視鏡検査時のプロポフォールのリスクは0.61(0.38-0.99)と従来の鎮静薬使用時よりも39%の危険性の削減効果を示した.侵襲的内視鏡検査時は両薬剤間で心肺系合併症の発症に有意差は認めなかった.
【結論】プロポフォールでの鎮静は,従来の鎮静薬の使用時と心肺系合併症の発症の危険性は同程度であった.しかし,通常内視鏡時では,プロポフォールを使用した時の方が心肺系合併症の発症率は有意に少なく,従来の鎮静薬よりもプロポフォールを使用することが適切かもしれない.
内視鏡診療における鎮静に関するガイドラインは,消化器内視鏡診療を行う中で鎮静が必要と考えられる局面の鎮静法や薬剤の使用方法に対する指針を示している2).本邦では検査時に保険適用が承認されている鎮静薬はなく,麻酔導入維持や人工呼吸中の鎮静に使用される薬剤を当該施設のルールにしたがって使用することを推奨している.
一般的にベンゾジアゼピン系薬剤によって内視鏡検査時に至適な鎮静を得ることが可能であり,ミダゾラムやジアゼパムが使用される頻度が高い.一方,プロポフォールは従来の鎮静薬よりも半減期が少なく覚醒時間が短いために,覚醒後の合併症が少ないが,個々の薬剤感受性が異なるために厳重に鎮静深度をモニタリングし,投与量を調節する必要がある.本検討では従来の鎮静薬とプロポフォールの合併症発症への影響は同程度であったが,通常内視鏡時はプロポフォールを使用した方が安全性に優れた結果であった.いずれにせよ,日常診療の中で安全な鎮静に心がける必要があり,合併症予防の観点からも慎重な対応が望まれる.