GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A RARE CASE OF COLONIC INTUSSUSCEPTION THAT OCCURRED DUE TO ENDOSCOPIC MUCOSAL RESECTION
Takumi ICHINONA Satoshi ASAIYuki KANOKoutaro TAKESHITAEisuke NAKAOEisuke AKAMINENaoki FUJIMOTOAtsuhiro OGAWA
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2017 Volume 59 Issue 2 Pages 190-195

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要旨

症例は73歳男性.右腹部違和感を主訴に来院され,大腸内視鏡検査(CS)を施行したところ,上行結腸に側方発育型腫瘍(LST)を認めたため,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行った.EMR翌日に,腹痛と発熱を認めたため当院受診された.来院時,血液検査にて炎症反応上昇を認め,腹部単純CTでは上行結腸に重積を認めた.緊急入院とし,診断的治療目的にてCSを施行すると上行結腸に浮腫状粘膜を認めていたが,重積は解除されていた.本症例ではEMR施行時の局注やクリップによる影響に加えて上行結腸の固定が悪く,移動盲腸であったことなどから腸重積をきたしたと考える.EMR後の腸重積は稀であり.若干の文献的考察も踏まえ報告する.

Ⅰ 緒  言

成人の腸重積は比較的まれな疾患とされており,何らかの器質性病変を有する場合が多く,器質的疾患を除く腸重積の頻度は極めて少ないとされている 1.器質性疾患を除く腸重積の原因としては移動盲腸が関与しているという報告が散見される 2.今回われわれは移動盲腸を背景とした内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection以下EMR)後に発症した腸重積という稀な1例を経験したため報告する.

Ⅱ 症  例

患者:73歳,男性.

主訴:右下腹部痛.

既往歴:胃癌に対して胃全摘術.前立腺肥大症.

生活歴:機会飲酒,喫煙歴なし.

服薬歴:なし.

現病歴:数年前より自覚する右下腹部違和感を精査するため,平成25年6月初旬に当院受診され,腹部単純CTにて骨盤内に盲腸が入り込んでおり,上行結腸や盲腸が後腹膜に固定されておらず,移動盲腸を示唆する所見を認めていた(Figure 1)が,その他特記所見は認めなかった.更なる精査目的で当院にて大腸内視鏡検査(colonoscopy以下CS)を施行した.上行結腸の固定が悪かったため,大腸内視鏡の挿入は容易ではなかったが盲腸まで挿入し全大腸の観察を行った.観察時に上行結腸に約12mmの側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor以下LST)を認めたため,合計約10mlの生食を局注しEMRを施行した.出血予防のためにクリップで切除後潰瘍底を縫縮し,その他に病変がないことを確認し検査を終了した(Figure 2).病理組織はhigh grade tubular adenomaで完全一括切除であった.帰宅後より間欠的な腹痛を認めていたが,様子を見ていたところ,翌日には38度台の発熱に加え腹部膨満感や右下腹部痛も認めたため,再度当院を受診された.

Figure 1 

腹部単純CT画像.

腹部CTにて骨盤内に盲腸が入り込んでいる所見を認めたため,移動盲腸と判断.

Figure 2 

大腸内視鏡検査.

a:上行結腸に約12mmの側方発育型腫瘍(LST)を認めた.

b:生食を合計約10cc粘膜下注入し,内視鏡下粘膜切除術(EMR)施行.

c:出血予防目的にて2カ所クリッピングにて閉創.

初診時身体所見:体温は38℃.腹部は平坦で軟.右下腹部を中心に圧痛あり,反跳痛は認めなかった.腸蠕動音亢進あり.明らかな腹部腫瘤は触れず.

入院時臨床検査成績:白血球19,300/μl,CRP 4.9mg/dlと炎症反応上昇を認め,クレアチニン1.31mg/dlと軽度の腎機能障害を認めた.その他に特記すべき所見は認めず.

入院時腹部単純CT検査:クリッピング部位の近傍に同心円状の腸管像を認めた.更にクリップ周囲の上行結腸には著明な浮腫状壁肥厚を認めた(Figure 3).またfree airや腹水は認めず.

Figure 3 

腹部単純CT検査.

a:腹部CTでは上行結腸に同心円状の腸管像を認め,腸重積と診断.

b:クリッピング周囲に粘膜浮腫(矢印)を認める.free airや腹水は認めず.

臨床経過:腹部単純CT画像から腸重積と診断し,緊急入院となった.腹膜刺激徴候はなく,本人の全身状態は比較的良好であったため,絶食補液管理として抗菌薬(CMZ)にて加療を開始し,診断および治療のためにCSを施行した.前日に大腸内視鏡検査を施行した後からの食事摂取はなく水分摂取のみであったため,下剤は使用しなかった.上行結腸まで内視鏡を挿入した時点では,EMR後の部位を含む上行結腸全体に浮腫状変化と一部斑状発赤を認めたが,重積は解除されていた(Figure 4).翌日より飲水を開始し,第4病日には血液検査にて炎症反応や腎機能の改善を認めていたため食事を開始した.食事開始後も経過良好であり,第7病日のフォローアップのための腹部単純CTでも特記すべき所見は認めなかったため第10病日に退院となった.

Figure 4 

大腸内視鏡検査.

クリッピング部位(a)の口側(b)肛門側(c)ともに発赤や浮腫状粘膜を認めた.

Ⅲ 考  察

CSおよびEMRは広く普及する一般的な検査・処置でありわが国でも多く施行されているが,検査後に腸重積を起こすことは非常に稀である.

一般的に腸重積の原因としては器質性疾患を先進部として生じるものと器質性疾患の存在しない特発性腸重積に大きく分類される.本症例はCSにて器質性疾患がないことを事前に確認しており,CSやEMR後に腸重積が起こった原因を考える上で特発性腸重積の病因に関する仮説を参考にする必要がある.特発性腸重積の原因としては文献的には回盲部や上行結腸が後腹膜に固定されていない移動盲腸や腸回転異常などの解剖学的因子が原因とする説や,何らかの刺激により腸管の輪状筋が痙攣性に収縮し,隣接した肛門側の弛緩結腸に嵌入して重積が生じる痙攣説などが機序として考えられている 3),4

医学中央雑誌にて「腸重積」AND「EMR」ないしは「内視鏡的粘膜切除術」で検索したところ会議録で1例認めるのみであった.さらにPub Medにて「intussusception」AND「EMR」ないしは「endoscopic mucosal resection」で検索してもMindyらのポリペクトミー後の腸重積1例 5のみでありCSおよびEMR後の腸重積は非常に稀である.

本症例の背景には移動盲腸やCSに伴う影響が一因になっていると考える.CS前に右下腹部違和感を主訴に来院された際に施行した腹部CTでは重積を疑う所見は認めていなかった.またCSのみが原因で腸重積を生じたという文献も認めなかった.以上より移動盲腸やCSのみで重積を起こしたとは考えにくいが,それらが要因となった可能性はある.

Mindyらはポリペクトミー後に腸重積が起こった原因として,ポリペクトミー後の粘膜浮腫が先進部となり腸重積を生じたと結論づけている.器質性病変の存在する場合はいずれも重積の先進部となっており重積部と器質性病変が無関係の位置に存在する例はなかったという報告もあり,クリップや局注を器質的なものとすればEMRによる影響も考慮すべきである 6.また,成人の特発性腸重積の発生部位は回結腸または回盲部型が多く,大腸-大腸型は稀であるという報告もあり,本症例がクリップや局注と関与していると考える要因となり得る 1

さらに挿入や処置に時間がかかり腸管が拡張されている状態からスコープ抜去時の脱気に伴う腸管の陥入による影響や送気に伴う腸管の蠕動亢進や痙攣性収縮などが重積の一因となった可能性がある.

したがって本症例においては移動盲腸という解剖学的因子を背景にEMR時の局注やクリップが先進部となった可能性,さらに処置に伴う内視鏡的操作による影響など,EMRに伴う様々な要因を介して重積が生じたのではないかと考えられる.

腸重積の治療に関しては近年CSによる診断的治療が選択肢の一つであり,CSにより特発性か器質性かの診断や腸管壊死の評価ができるだけではなく内視鏡による送気にて整復を試みることが出来るため有用であると報告されている 7.本症例では腸重積発症前日に大腸内視鏡検査にて明らかな器質性疾患を有さないことがわかっている症例であったため,診断と治療を兼ねてCSを施行した.検査前に自然に整復されていたのか,内視鏡挿入時の送気のためかは定かではないが,観察時には重積は解除されていた.再発予防としての盲腸固定術などの手術の希望はなかったため,退院後は経過観察となっているが,現在のところ腸重積の再発は認めていない.

Ⅳ 結  語

今回われわれは大腸EMR後に腸重積をきたした貴重な一例を経験した.特に移動盲腸や腸回転異常などの解剖学的因子を有する患者のEMR後の腹痛においては腸重積も念頭に置いて診療にあたる必要があると考えられた.

尚,本論文の要旨は第91回消化器内視鏡学会近畿支部例会(大阪)で発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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