GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2017 Volume 59 Issue 2 Pages 237-240

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概要

沿革・特徴など

当院は1978年10月に滋賀県唯一の国立大学の附属病院として開院し,現在は病棟数612床を有した地域医療を担う中核病院で,かつ高度先進医療を推進する特定機能病院である.当院は大津市と草津市の市境に位置し,滋賀県立埋蔵文化センターや県立図書館,県立近代美術館がある滋賀県営都市公園であるびわこ文化公園に隣接し,琵琶湖を望む小高い丘陵地に立地している.“信頼と満足を追求する全人的医療”を基本理念として,患者と共に歩む医療の実践,信頼・安心・満足の提供,質の高い医療の提供,地域に密着した医療,世界に通用する医療人の育成,健全な病院経営などを基本方針として病院の体制が整っている.当院は日本内科学会認定施設であるとともに,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本消化管学会などの消化器関連学会の認定施設としても機能を果たしている.

光学医療診療部は2002年4月に病院の中央診療部門の1診療部門として設置され,消化管及び胆膵領域の消化器内視鏡診療,気管支内視鏡など呼吸器領域の診療を担当している.設置時より消化器内科の科長である藤山佳秀教授が部長を兼任し,2014年4月からは安藤朗教授が部長を兼任する形で引き継いでいる.

組織

光学医療診療部は大学病院内の独立した部署である.専任スタッフは准教授(副部長)が1名と特任助教が2名であり,業務には消化器内科,呼吸器内科,呼吸器外科の各科の医師が診療にあたっている.消化器系の内視鏡検査は,スクリーニングから精査まで消化器内科医師が行い,外科症例の術前診断や術中の補助内視鏡も同様に消化器内科医師が内視鏡診療を担当している.

コメディカルは光学医療診療部専任で看護師長1名,副師長1名,スタッフ4名,専属洗浄員2名,受付1名が配置されている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

2008年に病院再開発の一環で消化器病棟が4階C病棟へと移動すると同時に,光学医療診療部も2階の検査部門より4階のB病棟に移設され,消化器外科病棟と合わせて,附属病院の4階が消化器疾患診療の集学的な診療部門として効率的に機能する環境となっている.

内視鏡室は検査室が3部屋,気管支鏡検査と共用しているX線TV室が1部屋,リカバリー室が3床,面談室1部屋,内視鏡洗浄室,腸管洗浄液服用の専用室を有し,総面積 210m2と限られたスペースの中で内視鏡診療や治療内視鏡を効率的に行っている.

当院の光学医療診療部には2つの大きな特色を軸としている.1つは小腸検査,2つ目は早期癌の内視鏡治療である.小腸検査はシングルバルーン小腸内視鏡を開発当初から携わっており,全国に先駆けて小腸の内視鏡診断/治療を開始している.さらに当院消化器内科の特色でもある炎症性腸疾患診療との関連でシングルバルーン小腸内視鏡を使用した小腸狭窄の内視鏡治療を積極的に行っている.また,カプセル内視鏡を早期から導入しており,小腸病変の精査が必要な紹介患者の受け入れを滋賀県内外の施設から積極的に行っている.早期癌の内視鏡治療も積極的に施行しており,近畿圏ではトップクラスの内視鏡治療件数を維持している.今後は大学病院という特性もあり,より先進的な内視鏡検査・治療を積極的に導入し,低侵襲かつ安全に施行することを心がけて行っている.

スタッフ

(2016年4月現在)

医   師:指導医6名,専門医4名,その他スタッフ6名

内視鏡技師:Ⅰ種4名(看護師)

看 護 師:常勤3名,非常勤3名

事 務 職:1名

そ の 他:2名(洗浄員)

設備・備品

(2016年4月現在)

 

 

実績

(2015年4月~2016年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当科では内視鏡診療を通じて消化器内科医,消化器内視鏡医として質の高い医療を提供できるような資質の育成や技術の習得を目指し,更に高い内視鏡診療をマネジメントできるような基本姿勢の確立を目指している.将来的に滋賀県下の中核病院の指導者としてのみではなく,消化器内視鏡分野において日本,あるいは世界をリードできるような若手内視鏡医の育成を目標にしている.

当院は研修指定病院であり,初期研修医が常にローテーションで回ってきており,初期研修1年目は検査の見学より始まり,生検や色素散布といった内視鏡検査の介助を行うことで内視鏡検査の実際や,検査自体の流れをつかみ,次に止血術やポリープ切除術といった治療内視鏡検査の介助を担当している.また,上部消化管内視鏡のシミュレーターで内視鏡の挿入方法や操作を学び,指導医の監督下のもと実際の内視鏡検査を鎮静下の担当患者を中心に上部消化管の観察を行っている.2年目の初期研修医は消化器内科を希望してローテーションをするものが多いために,積極的に内視鏡を触る機会を増やしている.

3年目の専攻医は,上部消化管内視鏡検査から始まり,習熟度に合わせて下部消化管内視鏡検査,処置内視鏡,肝胆膵系の検査と習得手技を広げるようにしている.一般的な観察技術のみならず,画像強調内視鏡,拡大内視鏡検査など,疾患の精査内視鏡検査を独立してできることを目標としている.年次終了時までには一人で下部消化管内視鏡検査が完遂できること,ERCPで膵管と胆管の造影ができることを目指している.

内視鏡診療や処置内視鏡はESDなどを中心とした上部下部消化管グループ,ERCPとEUSを中心とした胆膵グループ,小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査を中止とした小腸グループにスタッフを分けて配置をしており,専門的な知識や治療方針の決定など専門医が的確に指導できるような体制作りを整えている.

また,週に一度,消化器内科,消化器外科,放射線科,病理部との合同カンファレンスが開催され,外科手術症例の治療前の内視鏡評価と術後の評価,画像診断,病理診断との対比を行うことで,診断能の向上を目指すとともに症例ごとの振り返りの重要性の指導を行っている.その際に内視鏡所見の読影を担当することで,所見の読影能力やプレゼンテーション能力の向上を目指している.

またレジデントや研修医を対象にESDカンファレンスが定期的に開催され,画像強調検査,拡大内視鏡検査の読影法の講義を行うとともに,その週に予定されているESD症例の担当主治医が,症例のプレゼンテーションを行った後に治療適応の確認,内視鏡治療のストラテジーの確認などを討論している.

更に,内視鏡診療を通じて疑問点を解決すべく臨床研究を構築し,多施設共同研究を含めて積極的に新たなEBMを作ることを目標にしている.

現状の問題点と今後

現在の当院における光学医療診療部の最大の問題点は,総面積が210m2と限られており,内視鏡検査数や処置内視鏡検査数が年々増えている中で,内視鏡室が3部屋,X線透視室が1部屋のみしかなく,ハード面において限界にきている点があげられる.また同時に,鎮静後のリカバリー室が3ベッドのみしかなく,鎮静下での内視鏡検査を希望される方の要望に応えられない場合もあり,その運用に苦慮している.保険診療における鎮静薬の使用についても懸念事項となっている.

前述のごとく,光学医療診療部内にはX線透視室が1部屋あるが,気管支鏡と併用で使用しており,小腸内視鏡検査や消化管狭窄に対する拡張術,EISなど限られた手技のみでしか使用することができない.EPCPなどの胆膵系の侵襲度高い検査は,以前からの当院の慣例にしたがって放射線科のX線透視室で行われている.並列で検査や手技を行えるといった利点はあるものの,スコープや処置具を移動させる必要がある点や,スタッフが分散して対応をしなければいけないといった問題点が残る.

現在夜間の緊急内視鏡時には救急部の看護師,臨床工学技士の応援協力により対応をしている.専門的な対応や看護が要求される場合には,内視鏡専属の看護師が介助できるような体制作りが理想であるが,現状ではマンパワーの問題で困難な状況である.内視鏡数の増加に伴い医師とともにコメディカルの負担が増大しており,根本的な人数の不足が問題となっているが,今後,日中の通常業務を含めて,内視鏡専属の看護師の補充や,臨床工学技士の配置を各担当部署と調整を図る必要がある.

大学病院の特性上,年度による医師の入れ替わりが多く,内視鏡に関わる医師の数が,変わることも問題となり,安定した医師の確保が関連病院を含めて課題である.

今後も検査数などが増加することが予想される中で,どのように対処していくかを検討していく必要があり,今後は関連病院とも協力し,検査や手技,処置の連携を深めることを目標にしていくところである.

 
© 2017 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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