GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF GASTRIC VOLVULUS THAT WAS TREATED BY ENDOSCOPIC REDUCTION USING AN ENDOSCOPE POSITION DETECTING UNIT
Eisuke AKAMINE Satoshi ASAIYuki KANOKotaro TAKESHITAEisuke NAKAOTakumi ICHINONANaoki FUJIMOTOAtsuhiro OGAWA
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2017 Volume 59 Issue 3 Pages 277-283

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要旨

85歳女性が心窩部痛・嘔気を主訴に当院に救急搬送された.腹部単純CTにて胃軸捻転症と診断され,内視鏡的整復術を行った.その際に,内視鏡挿入形状観測装置「以下UPD(Endoscope Position Detecting Unit):オリンパスメディカルシステムズ社」対応の大腸内視鏡を使用し,整復に成功した.その後経過良好であったため当院退院となった.退院後,再発予防のため当院外科にて胃固定術を施行し,現在再発なく経過している.今回われわれはUPDを使用することで胃の捻転の方向を確認しながら捻転の解除をすることができたため,文献的考察を加えて報告する.

Ⅰ 緒  言

胃軸捻転症は,胃の全体,あるいはその一部が生理学的範囲を超えて捻転し,胃内容の通過障害を来たした形態異常を言い,比較的稀な病態である.急性期の治療方針としては,まずは胃管を挿入し,血流障害の改善や胃の減圧を図ることで自然整復が期待できる.胃管挿入で捻転解除不可能で,噴門部の通過が保たれている場合は内視鏡による整復を試みる必要がある.手術適応は上記の治療で改善しないもの,保存的整復後に繰り返すもの,または胃穿孔や大量出血を来たしているものとされている1.今回われわれは内視鏡挿入形状観測装置「以下UPD(Endoscope Position Detecting Unit):オリンパスメディカルシステムズ社」を使用することで胃の捻転の方向を確認しながら捻転の解除をすることができた.UPDの画像を示すとともに若干の文献的考察を加えて報告する.

Ⅱ 症  例

患者:85歳,女性.

主訴:心窩部痛・嘔気.

既往歴:76歳,胆嚢炎に対して胆嚢摘出術施行.

過去に3回(60歳代,70歳代,80歳代にそれぞれ1回ずつ),過食後の腹部膨満・腹痛で医療機関受診.2回は入院で,1回は入院せずに改善した.いずれも当院での診療ではないため詳細は不明であるが,保存的治療で改善した.

併存症:特記事項なし.

生活歴:飲酒:なし.喫煙:なし.

家族歴:特記事項なし.

現病歴:平成25年9月,間欠的な心窩部痛があり,様子をみていたが痛みの間隔が狭くなり,程度も増悪し,嘔気も認めたため当院救急搬送となった.なお,当日は普段より多めの食事を摂っていた.

入院時現症:身長148.8cm,体重41.7kg,意識清明,バイタルサインは血圧:153/64mmHg,脈拍:56回/分,SpO2:97%(Room air),体温:35.9℃.

胸部聴診上特記すべき異常所見なし.腹部膨満,腹壁軟,腸蠕動音異常なし.臍上部・心窩部に1カ所ずつ,右側腹部に2カ所の計4カ所に5~10mm大の手術瘢痕あり.心窩部に自発痛あるが圧痛は軽度であった.その他特記異常なし.

検査所見:臨床検査成績では炎症反応の軽度上昇とALT,LDHの軽度上昇を認める以外に特記すべき異常は認めなかった(Table 1).腹部単純CTでは胃の著明な拡張を認め,幽門部が噴門部の後方・頭側に位置していた(Figure 1).腹部造影CTでは胃の捻転した部位(幽門部)は狭窄しており,一部造影不良域も認められ,血流障害も疑われた.また脾臓周囲に少量の腹水が認められた(Figure 2).以上のことにより,胃軸捻転症の診断で治療目的に同日当院に入院となった.

Table 1 

臨床検査成績.

Figure 1 

腹部単純CTでは胃の著明な拡張を認め(左),幽門部(黒矢印)が噴門部(白矢印)の後方・頭側に位置していた(右).

Figure 2 

腹部造影CTでは胃の捻転した部位(幽門部)は狭窄しており,一部造影不良域も認められ,血流障害も疑われた(黒矢印).また脾臓周囲の腹水が認められた(白矢印).

入院後経過:外来での造影CTで血流障害が示唆されていること,経鼻胃管によって約1,000mlの食物残渣を含んだ排液があり一時的に腹痛が軽減されたが遷延していたこと,全身状態が良好で,血液所見での変化も軽度であることから,緊急内視鏡的整復術を施行した.上部消化管用内視鏡では長さが不足する可能性があることと,UPDが捻転整復の参考になる可能性を考慮して,UPD対応大腸内視鏡(CF-Q260DI:オリンパスメディカルシステムズ社)で捻転整復を施行した.

胃内に食物残渣を認め,前庭部で狭窄を認めたが粘膜壊死を示唆するような粘膜の色調不良は認めなかった(Figure 3).狭窄部位をpushで通過し,十二指腸まで挿入し,UPDを参照すると,基本的には左方向に捻転しており,部分的に右方向に捻転しているという複雑なループを形成していた.左捻りで部分的なループを解除して,その後右捻りで180度以上の捻り操作で捻転を解除した.実際のUPD画像(Figure 4)とシェーマ(Figure 5)を示す.

Figure 3 

狭窄部位(前庭部)の内視鏡所見.明らかな粘膜の色調不良は認めなかった.

Figure 4 

内視鏡的胃捻転整復術のUPD画像.基本的には左方向に捻転しており,部分的に右方向に捻転しているという複雑なループを形成していた.

Figure 5 

UPD画像のシェーマ図.左捻りで部分的なループを解除して,その後右捻りで180度以上の捻り操作で捻転を解除した.

整復直後に撮影した腹部単純CTでは幽門部の位置は整復され,胃の拡張も改善していた(Figure 6).

Figure 6 

整復直後に撮影した腹部単純CTでは幽門部の位置は整復され,胃の拡張も改善していた.

整復翌日に撮影した腹部レントゲン検査では胃の拡張は認めなかった.全身状態も良好であったため同日より食事開始し,その後も経過良好であったため第3病日には退院となった.

退院後平成26年2月の上部消化管内視鏡検査では胃軸捻転症の原因となるような明らかな器質的疾患は認めなかった.その後同年3月に当院外科にて待機的腹腔鏡下胃固定術を施行した.胃底部と左横隔膜下にて2針,胃体下部と腹壁にて1針,胃前庭部と腹壁にて1針の計4針で固定を行った.また腹腔内には幽門周囲にのみ若干線維化した漿膜を認めるのみで,その他胃軸捻転症の原因となる所見は認めなかった.平成27年11月現在再発なく経過している.

Ⅲ 考  察

胃軸捻転症は,胃の全体,あるいはその一部が生理学的範囲(180度以上)を超えて捻転し,胃内容の通過障害を来たした形態異常を言う.1579年にAmbroise Pareによって最初に報告された 2.頻度としては,小池ら 3のX線検査での報告で,成人では0.17%で,小児では3.4%,特に1歳未満の乳児に限ると12.7%であり,小児に多い疾患とされている.Singleton 4の分類があり,①発症様式で,Borchardt 5の三徴(①著明な心窩部痛および心窩部拡張,②吐物のない強い嘔吐発作,③胃管の挿入困難・不能)を代表とする症状で急激に発症する急性と,症状は軽度であるが繰り返し発症する慢性に,②捻転軸により長軸性(臓器軸性:胃の噴門と幽門をつなぐ軸),短軸性(間膜軸性:胃の小彎と大彎をつなぐ軸),それらの混合型である混合性に,③回転の結果,大彎側が胃の腹側へ回るか背側へ回るかで前方型,後方型に,④捻転の程度が180度以上のものを完全型,それ以下のものを不完全型に,⑤合併疾患のない特発性と合併疾患のある続発性に,分類されている.本例は以前より過食後の腹部膨満・腹痛を呈しており,保存的に改善するも,繰り返しており,慢性の経過をたどっていたと考えられる.CTでは胃幽門部が噴門部の後方・頭側に位置しており,捻転整復には180度の内視鏡の捻りを必要とした.短軸性・後方完全型の捻転であったと言える.また上記のような,胃軸捻転症の原因となるような疾患は有しておらず,過食を契機に発症しており,特発性と分類することができる.

診断は画像でなされ,単純X線では胃体部,前庭部に対応する二つの鏡面像を認め,消化管造影検査では胃底部の下方偏移,小彎より上方に位置する大彎,食道と大彎の交差,下方に向いた胃幽門部,などの所見が認められる 6.しかし近年ではCTでの胃軸捻転症の診断が可能であったという報告がしばしばなされており 7),8,本例でもCTで同疾患を診断することができた.検査が煩雑であることや,急性期症状がある中での消化管造影剤を飲用することの嘔吐のリスクを考慮すると,消化管造影検査は急性期での診断においてはその有用性が薄れてきているのではないかと考える.

急性期の治療方針としては,状態が許せばまずは経鼻胃管を挿入し,血流障害の改善や胃の減圧を図ることで自然整復を試みる.胃管挿入では捻転解除不可能で,かつ噴門部の通過が保たれている場合は全身状態が良好であれば内視鏡的整復が考慮される.手術適応は,上記の治療で改善しないもの,保存的に整復した後に捻転を繰り返すもの,または胃粘膜壊死・穿孔や大量出血を来たしているものとされている 1.なお,内科的に捻転整復が成功した場合,再発を予防するために胃の固定術が一般的には施行されている.従来は開腹手術により胃の固定術が行われていたが,近年では腹腔鏡を使用した手術例 9),10や,経皮内視鏡的胃瘻造設術による固定 11など,低侵襲な治療が報告されている.

なおわれわれは捻転の整復の際に,腸管の前後関係を把握する目的でUPDを使用した.諸家の報告では,胃軸捻転整復の際に透視下で行われており 10),12,われわれが文献的に検索した限りではUPDを用いて胃軸捻転症を内視鏡的に整復した症例は過去に例を見なかった.UPDは,微弱な交流磁界を利用することで生体内部での内視鏡の走行をリアルタイムで三次元的に画像表示する装置であり,大腸内視鏡検査において実用化されている.UPDによって内視鏡の走行を確認しながら挿入することで安全に正確な挿入ができると言われており,挿入の際の適切な部位での圧迫による介助のしやすさや,初心者の監視・教育においての有用性,病変の位置の確認などのメリットが挙げられている 13),14.また蓮尾ら 15は無透視下での内視鏡挿入困難例においても,その場で対応できる点,レントゲン被曝がない点,省スペース性などのメリットを挙げている.当科でも,S状結腸軸捻転症に対してではあるが,その内視鏡的整復術を施行するにあたってUPDを使用することで諸家の成功率 16と比較して高い成功率であったことを報告している 17.本例のような胃軸捻転症においても,UPDで内視鏡の走行を確認することで,捻転の方向を正確に把握することができ,安全で正確な整復術を行うことができたと考える.また従来行われていた透視下での整復術のように内視鏡の走行を確認するために体位変換をする必要もないし,レントゲン被曝をすることもない.

赤穂ら 18がバルーン内視鏡を用いて胃軸捻転症を整復した症例を報告している.その中で,2000年から2012年に国内で報告のある成人発症の胃軸捻転症において上部消化管内視鏡を用いて整復術が試みられた21症例を検討し,臓器軸性での整復成功例がないこと,食道裂孔ヘルニアを有する症例では有しない症例に比べて整復可能例が少ないことより,間膜軸性で食道裂孔ヘルニアを有していない症例に対しては内視鏡での整復が比較的容易である可能性があると考察している.本例でも間膜軸性で,食道裂孔ヘルニアを有していない.また捻転解除に使用する内視鏡には,胃の拡張によるたわみを超えて十二指腸深部まで充分に到達できる有効長と,捻転による狭窄部を通過できる外径の細さが求められる.赤穂らは上部消化管内視鏡(GIF-Q260:先端外径9.2mm,有効長1,030mm)では十二指腸水平部までの挿入が困難であったため,バルーン内視鏡(先端外径8.5mm,有効長2,000mm)を使用することで十二指腸水平部まで挿入し,捻転整復に成功した.本例で使用したCF-Q260DIの先端外径は12.2mmで有効長は1,330mmである.バルーン内視鏡より有効長は短く先端外径が太いが,狭窄部を通過し,十二指腸水平部までの挿入も可能であった.しかし,消化管内腔の狭い小児例や噴門部と幽門部で捻転する臓器軸性などの狭窄部がより狭い可能性がある症例では外径の太い下部消化管内視鏡を使用するUPDでの整復は困難である可能性が高く,外径の細いバルーン内視鏡(EN-580XP:先端外径7.5mm,有効長2,000mm)を使用するなど適応を慎重に検討する必要があると考える.UPDの内視鏡的胃捻転整復術における有用性の是非に関しては,本症例が初であり,症例の蓄積が待たれ,さらなる検討をする必要が有る.

Ⅳ 結  語

今回われわれはUPDを用いることで安全に正確に胃捻転を内視鏡的に整復することができた症例を経験したため,報告した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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