2017 Volume 59 Issue 3 Pages 372-374
当院は昭和16年八日市陸軍飛行連隊病院として創立され,昭和20年より国立八日市病院の厚生省管轄となる.その後,平成12年に国立療養所比良病院と統合し,病床数250床の国立滋賀病院と名称も変更となる.平成16年には独立行政法人国立病院機構滋賀病院として新たに発足したが,同時に新臨床研修制度開始により徐々に常勤医師数の減少が顕著となった.このため滋賀県の地域医療再生計画に基づき,東近江市立2病院から病床の集約と増床に対応すべく新病棟の建設,さらに寄付講座の設置による滋賀医科大学からの医師確保によって,平成25年4月より新たに国立病院機構東近江総合医療センターとして病床規模320床となった.
内視鏡室は平成25年の新棟設立時に移転を行い,現在の内視鏡センターとなった.滋賀県東近江市の地域中核病院として,上下部消化管内視鏡,胆膵内視鏡,小腸内視鏡による検査及び治療を幅広く行っている.
組織内視鏡センターに専属の医師はおらず,副院長がセンター長を兼任している.消化器内視鏡検査に加えて,呼吸器内科・外科による気管支鏡検査も行われている.内視鏡看護師・洗浄員・事務員は外来部門所属となっている.管理・運営の責任者は内視鏡センター長であり,各診療科,看護部門と連携をとりながら業務を行っている.
検査室レイアウト

内視鏡センターは総面積263.7m2で,上下部消化管内視鏡検査室2部屋とX線TV室1部屋で検査,治療を行っており,検査室1部屋とX線TV室は様々な処置や,重症患者が病棟ベッドでそのまま入室できるよう広い間取りになっている.内視鏡検査室の間に検査結果説明用の部屋があり,内視鏡検査後に施行医より直接説明が聞けるようにしている.
内視鏡検査室で上下部消化管内視鏡検査,超音波内視鏡検査,EMR,ESD,EVLなどの処置を行い,X線TV室では胆膵内視鏡検査,小腸内視鏡検査,バルーン拡張術,ステント留置術などを行っている.また,下部消化管内視鏡挿入困難例や狭窄例ではX線TV室が同じ敷地内にあるため,スムーズな移動が可能となっている.
リカバリールームには,ベッド3台を配置し,カーテンで仕切れるようになっており,プライバシー保護に努めている.
画像ファイリングシステム(Solemio)と電子カルテはリンクしており,電子カルテ上で画像の閲覧が可能である.各検査室及び説明室に画像ファイリングシステムと電子カルテ両方を設置している.
内視鏡の洗浄は,洗浄機4台を設置して,専任の洗浄員が行っている.洗浄管理システムを導入し,洗浄履歴情報なども管理している.
(2016年9月現在)
医 師:指導医1名,専門医2名,その他スタッフ2名
看護師:常勤5名(内視鏡技師Ⅰ種3名),非常勤1名
洗浄員:1名
事務職:1名
(2016年9月現在)

(2015年4月~2016年3月まで)

当院の初期臨床研修は専門性を高めるだけではなく,幅広く基礎的な医学知識を身につけることを目標としており,毎朝8時より内科スタッフ及び臨床研修医全員が集まり,前日の入院患者と救急受け入れ患者についてカンファレンスを行っている.common diseaseの診療レベルは,どの内科専門医でも同じとなるように,カンファレンスの中で担当疾患の専門医から他の専門医や研修医に対して繰り返し助言や指導を行っている.消化器内科では特に急性腹症を呈する消化器症例のカンファレンスでは,鑑別診断のための基本的診療技術や画像読影のコツについて解説している.消化器内科研修の実践については,まず入院担当患者の検査を中心に介助を行いながら,内視鏡手技の見学や検査の準備・補助について熟知する.次に内視鏡シミュレーターで十分な手技トレーニングを行った後に,鎮静下内視鏡症例などでの観察,引き抜きを指導医監督下のもとで行っている.また,内視鏡生検やEMRでの介助,イレウス管挿入なども積極的に行うことによって,ただ見学するだけでなく内視鏡検査及び治療に関わる機会を増やすようにしている.また消化器関連のカンファレンスは,消化器内科での症例検討と外科・放射線科との合同カンファレンスを週1回行っており,特に内視鏡治療か外科手術かなど治療方針について検討している.
当院は滋賀医科大学の第2教育病院として位置づけられており,現在初期臨床研修指導に力をいれているが後期研修についても今後指導体制を整える予定である.
地域の中核病院として年々内視鏡件数は増加しており,時間外・休日を含めた24時間オンコール体制にて緊急内視鏡検査も行っている.ただし,新体制となってからの年数が浅く緊急時の医師や看護師数に余裕がある状況ではない.また,ルーチンの内視鏡検査時でも鎮静を希望する患者数が増加しており,日によってはリカバリーベッドの不足やリカバリー中の患者観察を必要とする看護師の業務負担が増えている.安全性を担保しながら検査数増加に対応し得る体制の再検討が,今後必要と考えている.
当院の特徴として,小腸内視鏡検査の充実が挙げられる.小腸シングルバルーン内視鏡と2社のカプセル内視鏡を有しており,OGIBの精査と治療だけでなく,クローン病の小腸狭窄病変に対するバルーン拡張術や術後腸管の胆膵内視鏡治療など,滋賀県湖北・湖東地区の小腸内視鏡診療拠点として近隣の病院より多数紹介して頂いている.ただし,OGIB精査はできるだけ早期にカプセル内視鏡を行う必要があり休日も受け入れ可能としているが,件数増加に伴い施行医の負担も増加している.また,昨年よりEUS検査数とEUS-FNA施行例も急速に増加しており,消化器内視鏡による診療はほぼすべて当院のみで完結できるようになった.今後は滋賀医科大学の第二教育病院,そして東近江医療圏の中核病院としてさらに貢献するため,最新の内視鏡設備を整えること,医学生,研修医への教育をより充実させること,医師や内視鏡技師,看護師がより働きやすい環境を構築することを目標とし,特に若い内視鏡医が数多く研修することを願っている.