2017 Volume 59 Issue 3 Pages 375
【背景・目的】潰瘍性大腸炎(UC)関連大腸癌のサーベイランス法としてランダム生検が推奨されてきたが,狙撃生検がより効果的である可能性がある.狙撃生検とランダム生検による腫瘍性病変発見率比較のためRCTを実施する.【方法】2008年10月1日から2010年12月31日までに日本の52施設において,7年以上の罹病期間のUC患者246名を登録した.患者はランダム生検群(大腸を10cm毎に4カ所ずつ生検を行い,腫瘍性病変が疑われる部位には狙撃生検を加える群,n=122)と狙撃生検群(腫瘍性病変が疑われる部位から生検を行い,直腸からは炎症がなくてもランダムに生検を行う群,n=124)に振りわけた.主要評価項目は1回のサーベイランス大腸鏡で発見した腫瘍性病変数である.両群間で平均腫瘍性病変数の割合や差を評価した.探索的研究として両群間の非劣性も評価した.0.65(0.13/0.20)を両群間における腫瘍性病変の平均数比率の非劣性マージンとした.【結果】1内視鏡あたりの平均腫瘍性病変数は,狙撃生検群で0.211(24/114),ランダム生検群で0.168(18/107)であった(両群間比率1.251 95%信頼区間0.679-2.306).下限値が0.65の非劣性マージンより上であった.患者あたりの腫瘍性病変の割合は,狙撃生検群で11.4%,ランダム生検群で9.3%であった(P=0.617).1内視鏡検査あたりの生検数は,ランダム生検群が狙撃生検群より多く(34.8個 vs 3.1個;P<0.001),そして検査時間も長かった(41.7分 vs 26.6分;P<0.001).ランダム生検群において,発見された腫瘍性病変はすべて過去や現在炎症のある粘膜から採取されていた.【結論】RCTにおいて,狙撃生検とランダム生検では腫瘍性病変の検出率は同じであった.しかし,狙撃生検はより費用対効果が高い方法と考えられた.ランダム生検において,過去や現在炎症のない部位で腫瘍性病変は認めなかった.
UCは罹病期間が長期になると大腸癌発生率が高まることが知られている 2).Inflammation-dysplasia-carcinoma sequenceと呼ばれる発癌経路が提唱されており,dysplasiaと呼ばれる前癌病変の発見が重要である.しかし,炎症粘膜を背景に発生するため,正常粘膜との境界が不明瞭かつ平坦な病変が多く,内視鏡的な早期発見は困難とされてきた.従って全大腸から多数のrandom biopsyを採取することが推奨されてきたが,癌サーベイランスとしての実効性には乏しかった.近年,高解像度の内視鏡の開発や色素内視鏡観察の応用 3),4)により腫瘍性病変を視認することが可能であるとする報告を認めるようになり,より効率的に腫瘍性病変を捉えられるように,内視鏡的な形態的特徴の分類が試みられている 5).
本論文では狙撃生検群とランダム生検群で腫瘍性病変の発見率は同等であった.また,ランダム生検群で発見した腫瘍性病変はすべて炎症部粘膜であり,非炎症部粘膜709片から腫瘍性病変は1片も認められなかった.非炎症部からの多数のランダム生検組織採取は無駄である可能性が高い.さらに狙撃生検群の方が生検数は著明に少なく検査時間も短く,費用対効果は高いことが示された.しかし,狙撃生検群で追加した直腸のランダム生検において腫瘍性病変を認めており,ランダム生検の有用性が全く否定されたわけではない.本論文の結論として,狙撃生検を行う場合は直腸のランダム生検を追加し,ランダム生検を行う場合は炎症の既往がない粘膜の生検は省略し効率化を図ることを推奨している.