2017 Volume 59 Issue 4 Pages 494
【背景】術後再建腸管を有する胆膵疾患に対する内視鏡的アプローチは,従来の内視鏡では盲端部への挿入,乳頭や胆管・膵管空腸吻合部への到達が困難であったが,バルーン内視鏡により可能となっている.
【目的】消化管再建術後患者に対するショートタイプ型ダブルバルーン内視鏡(double-balloon endoscopy:DBE)を用いた内視鏡的逆行性胆管造影法(double-balloon endoscopic retrograde cholangiography:DB-ERC)の有用性と安全性を明らかにする.
【方法】本邦5施設による多施設共同前向き試験として実施された.2013年6月から2014年5月に胆道疾患に対してDB-ERCを施行した311例(男性210例,女性101例,平均年齢67.3歳)の患者が前向きに登録された.患者の内訳は,Roux-en-Y 203例,Billroth Ⅱ 26例,pancreaticoduodenectomy(PD)44例,pylorus-preserving PD(PpPD)31例,その他7例であった.内視鏡機器はショートタイプ型DBE内視鏡システム(フジフィルム社製:内視鏡EI-530B,オーバーチューブTS-13101,バルーンBS2)を使用した.主要評価項目としてターゲット部(乳頭部または術後盲端)への到達率,副次評価項目として,診断(胆管カニュレーションと胆管造影)成功率,治療成功率,手技全体の成功率,平均術時間(術後盲端部到達およびDB-ERC関連治療),偶発症について検討した.
【結果】ターゲット部への到達率は全体で97.7%(95%CI:95.4-99.1),診断成功率96.4%(95%CI:93.6-98.2),治療成功率97.9%(95%CI:95.4-99.2),手技全体の成功率92.3%(88.7-95.0%)であった.平均術時間は,術後盲端部到達22.4分,DB-ERC関連治療56.3分であった.偶発症は,33例(10.6%)(95%CI:7.1-14.0)に認め,32例(膵炎が最も多く11例)は保存的に加療されたが,1例は穿孔のため緊急手術を要した.
【結語】消化管再建術後患者に対するDB-ERCは治療成功率が高く,重篤な偶発症発生率も低いため,DB-ERCは消化管再建術後の胆道疾患に対する第一選択手技になりうる.
消化管再建術後患者に対するショートタイプ型を用いたDB-ERCの臨床的有用性を検討した多施設共同前向き試験である.2001年にYamamotoら 2)が小腸疾患の診断および治療に対するDBEの有用性を報告した.2007年以降,その応用手技としてDB-ERCの臨床的有用性に関する報告が多数なされている.これまで,ターゲット部への到達率は73-100%,治療成功率85-100%,手技全体の成功率63-95%と報告されているが 1),これらはすべて後ろ向き研究であり,単施設での検討,症例数が少ない,消化管再建法が異なる対象,通常の小腸用DBEを使用した成績などの問題点があった.今回の前向き検討の結果から,消化管再建法に関わらずショートタイプ型を用いたDB-ERCの臨床的有用性と注意すべき偶発症が明らかになったといえる.
今回使用したショートタイプ型DBEは全長が152cm,先端部13.2mm,鉗子口径2.8mmであり乳頭切開やバルーン拡張術,結石除去など様々な処置を行う上で適しているが,筆者らは手技成功率をさらに向上させ,より安全に施行するためにさらなる改良の必要性を述べている.今後,DBE機器の改良とともに新たなデバイスの開発にも期待したい.
今回の知見は内視鏡医にとって非常に参考になるものであるが,本論文はDB-ERCの経験数の多いハイボリュームセンターにおける成績であることに留意すべきである.消化管再建術後患者の胆膵疾患に対するDB-ERCの需要は年々増加傾向にあり,今後,本手技は一般施設にも将来広く普及していくことが期待される.ただし,現時点では,DB-ERCの適応(禁忌を含む),手順や方法は標準化されておらず,学会や研究会を通して適応基準や手技の標準化に関するガイドライン作成やトレーニングプログラムを確立していく必要があると考える.