2017 Volume 59 Issue 5 Pages 1335-1336
症例:65歳,男性.
主訴:発熱,食思不振,心窩部痛,手足の痺れ,体重減少.
現病歴:2009年より気管支喘息に罹患していた.2013年7月から両足の痺れが出現し,徐々に手にも広がった.同年10月頃から体重減少,食思不振,38℃台の発熱が出現し,精査加療目的で当科紹介となった.
検査所見:好酸球8,500/μlと増加,CRP上昇,高度貧血を認めた.MPO-ANCAは陰性であった.神経伝導検査で多発単神経炎を認めた.
経過:上部消化管内視鏡検査にて,胃十二指腸に辺縁不整な多発潰瘍を認め(Figure 1),好酸球増多,神経症状と併せ好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Eosinophilic Glanulomatosis with Polyangitis:以下EGPA)を疑い,消化管精査を進めた.大腸内視鏡検査(Figure 2)や,カプセル内視鏡で所見を認めたため施行した経肛門的小腸内視鏡検査(Figure 3)でも,辺縁不整な浅い潰瘍の多発を認めた.厚生労働省のアレルギー性肉芽腫性血管炎診断基準では主要臨床所見3項目を満たしていた.小腸内視鏡時に大腸潰瘍の深掘れ化を認め,穿孔を危惧してプレドニゾロン60mg/日で治療を開始した.症状,検査所見ともに速やかに改善した.消化管からの生検では好酸球増多以外の所見が得られなかったが,腓腹神経生検で血管炎の所見を認め(Figure 4),組織学的にも確定診断に至った.

上部消化管内視鏡検査.浮腫状粘膜を背景に,大小様々で類円形~地図状と多彩な形態を示す潰瘍を認めた.

大腸内視鏡検査.浮腫状,発赤調粘膜を背景に浅い不整形潰瘍が多発していた.

経肛門的小腸内視鏡検査.終末回腸に輪状傾向をもつ浅い辺縁不整な潰瘍を認めた.

腓腹神経の病理組織学的所見(HE×20).血管壁への好酸球浸潤を伴う肉芽腫様のマクロファージ浸潤,顆粒状のフィブリノイド変性,血管内腔の狭小化を認めた.
EGPAの本態は好酸球浸潤を伴う小型血管の血管炎である.発症機序としては血管外肉芽腫による中小動静脈狭窄や閉塞による循環障害 1),及び好酸球から放出されるサイトカインなどの細胞障害 2)が考えられている.消化管病変の特徴としては多発性潰瘍を呈し,潰瘍間は軽度浮腫状または正常粘膜で,病変は腸間膜付着部対側に好発するとされる.不整形で,大きなものは腸間膜側に拡がり亜輪状~輪状を呈するが,腸管長軸方向へは3cm以下が多いとされる 3).本症例でみられた病変もそれらの特徴を有していた.近年ではアフタ様潰瘍をびまん性に認めた報告 4)もあるが,血管炎の程度や検査施行時期の相違により様々な病変が発見されていると考えられる.消化管粘膜からの生検標本で血管炎や肉芽腫を認め,確定診断に至る症例は少ない.この理由の一つとして,血管炎は粘膜下層に炎症の主体があり,生検で十分に採取できないからと考えられる.本症例のように,消化管の生検のみでなく,神経や皮膚などからの生検も積極的に考慮すべきである.治療において,消化管穿孔は予後不良因子の一つであり,これをいかに回避するかが重要である.治療により急性炎症性変化が改善しても一度進行した血管内膜の線維化,肥厚,血栓の器質化などは不可逆的で,治療後も解除されないことが多いとされ 5),このような症例では特に穿孔の危険性が高い.EGPAを疑った場合,可能な限り早期の治療開始が望ましいことを知っておく必要がある.
本症例の神経学的な評価につきご指導頂きました当院神経内科の海田賢一先生,冨樫尚彦先生に深謝申し上げます.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし