2017 Volume 59 Issue 6 Pages 1435-1436
症例:63歳,男性.
主訴:左上腹部痛.
既往歴:高血圧,不安定狭心症に対し冠動脈にステント留置後.
生活歴:飲酒歴なし,喫煙歴なし.
家族歴:特記事項なし.
現病歴:就寝中に左上腹部痛を自覚し同日当科を受診した.血液検査および造影CTで急性膵炎と診断され,精査加療目的に入院となった.
現症:血圧157/95mmHg,脈拍85回/分.体温37.1度.左上腹部から心窩部にかけて圧痛を認めた.
血液検査:膵型アミラーゼ3,338IU/L,リパーゼ5,273IU/L,WBC 14,200/μl,CRP 0.42mg/dL.肝胆道系酵素の上昇はなし.
造影CT(Figure 1):背側膵に限局する急性膵炎の所見を認める.膵実質が十二指腸下行部を背側より不完全に取り囲み,同部で十二指腸は狭小化していることから,不完全型輪状膵が疑われる.

造影CT.
十二指腸下行部(白矢印)の背側を膵実質が取り囲む不完全型輪状膵および背側膵に限局した膵炎の所見を認める.
MRCP(Figure 2):腹側膵管の描出はなく,背側膵管に分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)の所見を認める.

MRCP.
腹側膵管の描出はなく,背側膵管に分枝型IPMNを考える所見を認める.
急性膵炎は保存的加療により軽快し,原因精査目的にERPを施行した.
ERP(Figure 3,4):主乳頭からの造影では十二指腸下行部の背側を右側に回り込む輪状膵管が描出される.副乳頭口は粘液の排出により軽度開大し,造影では副乳頭近傍の分枝型IPMNおよび背側膵管が描出されるが,腹側膵管や輪状膵管は描出されず.

主乳頭からの膵管造影.
十二指腸下行部の背側を右側に回り込む輪状膵管が描出されたが,腹側膵管が描出されるべき部位に描出される膵管はない.

副乳頭からの膵管造影.
背側膵管および副乳頭近傍の分枝型IPMNが描出されたが,腹側膵管や輪状膵管の描出はない.
以上の所見より,膵管非癒合を伴う不完全型輪状膵(吉岡Ⅲ型,湯村Ⅲ型)および分枝型IPMNと診断した.
輪状膵は輪状膵管の開口様式により,吉岡の分類 1)では4型に,湯村らの分類 2)では8型に分類されている.これらのうち,吉岡Ⅲ型,湯村Ⅲ型の輪状膵は輪状膵管が十二指腸の後方より総胆管とともに主乳頭に開口し,Wirsung管が欠如した,膵管非癒合を伴った輪状膵である.その成因について神沢ら 3)は,右側腹側膵原基の過成長あるいは左側腹側膵原基の遺残により形成された輪状膵管と,背側膵管との癒合不全と推察している.
輪状膵を背景とした急性膵炎は通常,輪状部および膵頭部に限局するとされている 4),5).自験例では膵管癒合不全を合併した湯村Ⅲ型(吉岡Ⅲ型)の輪状膵が背景にあり,副乳頭より粘液の排出が認められた.自験例での背側膵炎は背側膵管領域の分枝型IPMNからの粘液による,背側膵管の一過性閉塞が原因と考えられた.
湯村Ⅲ型(吉岡Ⅲ型)の輪状膵については症例報告が散見される程度であり,その頻度は不明である.一方で海外での成人型輪状膵におけるERCP像の検討では,40例中15例(37.5%)で膵管癒合不全を合併していたとの報告 6)もあり,輪状膵では膵管癒合不全の合併に留意する必要があろう.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし