2018 Volume 60 Issue 1 Pages 82-85
・当院は昭和32年に広島県厚生農業協同組合連合会が運営する農協病院として開設された.
・内視鏡センターは平成15年6月に開設された.
・平成23年5月,病床数を393床とし尾道市平原へ新築移転を行い,その際に内視鏡センターの面積・内視鏡機器の拡充,スタッフの増員が実現した.
・24時間365日体制で緊急内視鏡対応を行っている.
・広島県東部地区の基幹病院として多くの症例が集まる施設である.
組織独立した組織で,消化器内科を中心として運営されている.
検査室レイアウト
当センターが統括している領域は,上部・下部消化管,肝臓,胆道・膵臓,小児内視鏡,気管支鏡,更に平成22年からは小腸も加わり,全消化器を網羅している.看護師は当センター専任であり,内視鏡技師Ⅰ種資格を9名が有している.休日・夜間においても医師2名・看護師1名(Ⅰ種資格を有する)が待機しており,24時間365日体制で緊急内視鏡対応を行っている.また,当院には外来・病棟にも合計32名の内視鏡技師を配置しており,外来・病棟と一貫した内視鏡看護が高い質で展開できている.
検査室は内視鏡室が5部屋,X線透視室が1部屋あり,業務は年間総件数約11,000件,1日あたり約50~60件:(処置を含む上部内視鏡30~35件,処置を含む下部内視鏡10~15件,超音波内視鏡(EUS)20~23件/週,膵臓・胆道関連内視鏡(ERCP)20~25件/週,カプセル内視鏡5~8件/月)の内視鏡検査・治療を行っている.
また,当院は中核病院として地域の医師会や自治体との十分な連携・協力を行っており,内視鏡関連の紹介も急激に増えている.例えば,2007年からは地域連携を活かした「膵癌早期診断プロジェクト」を展開し,尾道方式として高い評価を頂いている.また,消化管腫瘍に対する内視鏡治療の紹介も増えており,ESD(特に大腸ESD)の件数は年々増加している.また各分野において,様々な多施設共同研究に参加しており,高度でかつ地域医療圏に密着したセンターを目指している.
(平成29年7月現在)
医 師:指導医5名,専門医6名,医師4名
看護師:常勤11名(内視鏡技師:Ⅰ種9名),非常勤1名
内視鏡洗浄スタッフ:3名
受 付:2名
(平成29年7月現在)
一部物品をレンタル契約している.
(平成28年1月~12月)
消化器内科・内視鏡センターにおける消化器疾患診療マニュアルを作成し,それに基づいて指導を行っている.マニュアルには研修期間において研修すべき必須項目や必要な手技についてそれぞれ注意すべきこと,禁忌,リスクマネージメントなどについて記載されている.内視鏡センターでの研修は主として内視鏡手技の見学が中心となり,胃や大腸の教育モデルを用いて内視鏡に触れる機会を設けているが,全身状態の管理や検査の介助など参加できる手技については積極的に参加してもらうようにしている.また,研修医2年目で選択科として当科の研修を希望した医師については教育モデルでの指導に加え,十分なインフォームド・コンセントのもと指導医と共に担当患者の上部内視鏡検査を実施している.
(後期臨床研修医)後期研修は3年間を通して消化器科医としての一般的な内視鏡診療・治療を行えるようになることを目標としている.具体的には日本消化器内視鏡学会で提示されている専修医研修カリキュラムの達成を一つの目標として指導している.上部消化管内視鏡は初期に通常の手技を習得するとともに中期までに通常光観察に加え,画像強調観察・拡大観察・色素内視鏡検査で観察し質的診断,範囲診断ができるように指導する.また,EMRやESDについては助手として積極的に参加し,後期研修終了までに内視鏡治療を完遂できるように指導している.下部消化管内視鏡については初期までに盲腸まで挿入ができることを,中期までにEMRの基本的操作ができるように指導している.ESDについては助手として積極的に参加し,症例によっては治療に携わるように指導している.ERCPについては初期に十二指腸乳頭の構造を理解し,指導医のもとで慎重に操作法を習得する.一定の期間上級医の介助を行うことで検査・治療に用いるデバイスを理解し,中期までに胆管深部挿管の基本をマスターし,後期までにENBDおよびESTの基本的操作ができるよう指導している.EUSにおいては初期までにラジアル型とコンベックス型の違いを理解し,それぞれの標準的描出法を理解する.また中期~後期においてEUS-FNAの理論・施行方法を理解し,穿刺操作を習熟できるよう指導している.
(カンファレンス)当院では内科カンファレンスに加え,キャンサーボードや術後カンファレンスを定期的に行い,各症例について他科とも連携して診療を行っている.初期・後期臨床研修医は各カンファレンスに参加するだけでなく,プレゼンテーションを行うことでより病態や治療方針を理解できるようにしている.内視鏡センターにおいても消化管領域・胆膵系領域のカンファレンスをそれぞれ定期的に行い,画像診断や治療方針について知識を習得できるように指導している.
当センターの内視鏡件数は急激に増加している.2006年の内視鏡件数は7,000件弱であったが,2016年度は約11,000件と順調に伸びてきている.理由としては先程述べた紹介患者の増加に加え,任意型検診(人間ドック)が挙げられる.任意型検診については上部内視鏡,S状結腸鏡を当センターで施行しているが,希望者が非常に多いため検査枠を漸増して対応しているが月単位の予約待ちが続いている状態である.
件数の増加は大変喜ばしいことだが,同時に日々の内視鏡業務の終了時間も遅くなり,スタッフの疲弊や超過勤務が問題となっている.また,初期/後期研修医への指導をすればするほど,検査時間は延長し,円滑な内視鏡検査や治療が行えないジレンマがある.これらの問題に対して,医師とコメディカルでスタッフミーティングを行い,その日の検査件数や内容について意識を共有し,検査や処置が多い日は,指導時間を短縮するなどの対応をし,超過勤務とならないように工夫をしている.また,平成23年の新築移転の際に大規模な面積・内視鏡機器の拡充,スタッフの増員を行っているが,予想以上の内視鏡件数増加のため,1日に可能な検査数は上限にきている.当センターにおいてすべての検査や治療を行うのではなく,地域として検査や治療の棲み分けを考えていく必要があると思われる.