2018 Volume 60 Issue 1 Pages 86
【目的】4-9mmの大腸腺腫性ポリープに対する,cold snare polypectomy(CSP)とhot snare polypectomy(HSP)の完全切除率を比較検討する.
【方法】日本の12施設における前向きランダム化平行群間比較非劣性試験として行われた.内視鏡的に腺腫性大腸ポリープと診断した4-9mmの広基性病変を,CSP群とHSP群にランダム化して割り付けた.それぞれの方法による内視鏡切除後に,切除断端からの生検を行い診断に供した.プライマリーエンドポイントは完全切除率であり,生検組織に腺腫成分を認めない場合を病理学的完全切除と定義した.
【結果】2015年9月から2016年8月までに施行されたスクリーニング検査において,912人中の538人から,計796の該当するポリープが発見された.完全切除率は,CSP:98.2%,HSP:97.4%で,CSPの非劣性が確認された(+0.8%;90%CI:-1.0 to 2.7;p<0.0001).内視鏡的止血術を要する後出血は,HSPにおいてのみ見られた(0.5%,2/402 polyps).
【結論】HSPに対する,CSPの完全切除率の非劣性が確認され,CSPは4-9mmの大腸ポリープに対する標準切除法の一つとなりうる.
(Study registration:UMIN000018328)
本邦の実臨床において,大腸腺腫性ポリープの治療として5mm以下の微小病変に対してはcold forceps polypectomyおよびhot biopsy,6~9mmの病変に対しては高周波電流を使用したpolypectomyもしくは内視鏡的粘膜切除術が選択されることが多い.近年,後者のポリープに対してもCSPが行われるようになり,Fujiyaら 2)のメタ解析では,CSPは有効性や安全性ではHSPと有意差がないと報告されている.本論文1)では,4-9mmの大腸腺腫性ポリープの完全切除率における,CSPのHSPに対する非劣性が確認された.また,CSP群では遅発性出血を認めず,HSPと同等以上の安全性を担保していると考えられる.ただし,今回使用したCaptivatorを用いた切除では,6.2%の切除困難例を報告している.CSPに適したスネア選択には,さらに検討の余地がある.また,Ipあるいは5mmを超える病変では,高周波を用いなければ切除できないケースがあり,Horiuchiら 3)は前向き比較試験で,10mm以下のポリープ切除に,CSP用のスネア(Exacto cold snare)が通常のスネア(Snare Master)と比較し,完全切除率が有意に高いこと,特に8-10mmのサイズや平坦あるいは有茎性のポリープで有意差があることを示した.さらに,Hewett 4)は,送気により大腸壁を伸展させて,カテーテル鞘の先端を右下方向へ向けながら,前方に押し出しつつ,スネアを閉じながら切除するCSP特有のテクニックを提唱している.断端評価可能な病変の割合は,熱変性のないCSPはHSPと同等あるいはそれ以上であるが,長期にわたる根治性に関しては,今後のデータを集積した上での評価が必要である.現時点においては,内視鏡所見から癌あるいは高度異型腺腫を疑う場合には,遺残する可能性からCSPの適応外病変とすべきであり,遺残再発の予防のため,切除前後での拡大内視鏡を使用した詳細な画像強調観察が望まれる.