2018 Volume 60 Issue 2 Pages 189-191
当院は,昭和26年に開院した.当初は34床の小さな病院であったが,昭和52年に新館増築され354床の中規模病院,平成元年に総合病院となった.平成4年には現在の地に新築移転し,その後も増改築により,現在は病床数423を備える地域医療支援病院である.平成12年にはヘリポートも竣工し,地域がん連携拠点病院,新型救命救急センター,災害拠点病院,地域周産期母子医療センターなど,多数の指定を受けて地域の急性期医療を担っている.
消化器内科では,平成25年に内視鏡室が移転新築され,平成28年4月から内視鏡センターとして独立した組織となった.併せて内視鏡外来を開設し,地域連携から内視鏡検査の依頼があった症例について指導医が精査内視鏡の必要性等を総合的に判断して円滑に検査をセッティングしていく取り組みも行っている.
組織内視鏡センターとして独立している.
検査室レイアウト
検査および治療は主に消化器内科医が行っているが,総合内科,外科や小児科の医師も内視鏡を行う.呼吸器内科医による気管支鏡もここで行っている.内視鏡センター専任の看護師を配置している.
リカバリーコーナー(3ベッド)を介して救命救急センターと直結しており,救急搬送患者の処置を迅速に行うことが出来る.
(2017年7月現在)
医 師:指導医2名,専門医6名,その他スタッフ5名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種5名,その他技師1名
看 護 師:常勤6名,非常勤1名
事 務 職:1名
そ の 他:看護助手2名
(2017年7月現在)
(2016年1月~2016年12月まで)
当院は研修指定病院であり,内視鏡センターには初期研修医が1-2名,常にローテーションしている.初期研修の2年間を通じて,内視鏡モデルを用いた指導を行いつつ,研修1年目では検査の見学,介助までを中心に行う.2年目でのローテーションでは,指導医の監督下で実際に上部消化管内視鏡の引き抜き操作から開始し,状況が許せば観察まで行う.
信州大学から後期研修医のローテートがあるが,年次により卒後4年目・5年目とばらつきがある.いずれにしても上部消化管内視鏡については,初期研修医の指導を行わせることで自己の技量の見直しをはかりつつ,専門医による指導の下で拡大観察その他精査内視鏡から処置内視鏡についての指導を受けている.また,下部消化管内視鏡検査は専門医・指導医の監督下で透視を用いながら施行している.単年のローテートが多いため,他病院との重複する指導内容もあると思われるが,年次終了までには単独で下部消化管内視鏡検査からポリペクトミー/EMRが完遂できること,消化管出血に対する止血処置が可能となること,進捗状況次第では胃のESDやERCPで選択的に胆管・膵管造影ができることを目指している.
週1回の内科・外科・放射線科・病理医による合同カンファレンスおよび月1回はコメディカルも含めた多職種でのキャンサーボードも開催しており,内視鏡のみならず消化器科医として多角的な視野も学んでもらう.
また,積極的に学会や研究会・講習会などへ参加し,最新の知識・技術を習得するとともに,地方会への発表や論文の指導を行っている.
指導体制の項でも触れたが,研修医の指導にあたって透視を用いていることもあって,透視下内視鏡の件数が比較的多いにもかかわらず,敷地面積の都合などで内視鏡センター新設時に専用のX線TV室が1室しか確保できなかった.そのため透視下での内視鏡検査が並列で行うことができず,検査が渋滞してしまうことがしばしばある.また,気管支鏡検査も内視鏡センターを使用するため,X線TV室の不足は重要な課題である.空きがあれば数十メートル離れた放射線科のX線TV室を使用して内視鏡を行うことも出来るが,その裏では患者や機材・処置具などの移動をスタッフが何度も往復して献身的な努力をしてもらうことが必須であり,労力・安全性・利便性の点で劣ることは否めない.当面,拡張工事の予定は立っていないため,更なるマンパワーの充実が必要である.
また,近年鎮静下内視鏡のニーズが高まっていて,当院でも可能な限りは患者の要望に応えていきたいと考えている.しかし全面的な導入にはマンパワーのみならずリカバリー用のベッドの確保の問題もある.鎮静下にて苦痛のない内視鏡検査を安全に行うためには,現状のリカバリーが3ベッドのみでは明らかに不足であり,モニター可能なベッドの拡充が要件となる.また,患者の状態観察をする人員の確保も必要であり,ここでもハードとソフト両面での充実が求められる.
また,下部消化管内視鏡時の前処置室も完備していないため,現状は自宅での前処置を行ってもらっているが,地域の特性として通院距離の長さや高齢化など,患者の負担は大きく膨らんでいる.前処置専用のスペースの設置や,その他アメニティの充実(例えば検査終了後に使用可能なシャワールームの設置など)も,今後の課題である.