2018 Volume 60 Issue 2 Pages 192
【背景】膵の上皮内新生物は,超音波内視鏡(EUS)にて慢性膵炎様変化としてとらえられることがある.本研究の目的は,BRCA2変異キャリアがどの程度非キャリアよりEUSにおける慢性膵炎様変化を示すかを調べることである.
【方法】内視鏡データベースからEUS目的に紹介されたBRCA2突然変異を有する患者を同定し,医療記録,EUSレポート,およびEUS画像について検討した.対照として,性別,EUS施行日,内視鏡専門医,および内視鏡機種を一致させた症例を1:2の割合で抽出した.慢性膵炎様変化の評価はRosemont分類を用いた.
【結果】37人のBRCA2変異キャリアと92人の対照症例がEUSを受けた.対照群と比較して,BRCA2変異キャリア群は,膵臓の充実性病変(16.2%対1.08%;P=0.005),膵嚢胞(21.6%対6.1%;P=0.01),Rosemont分類における「慢性膵炎と一致する」所見(13.5%vs 1%;P=0.002),またはRosemont分類における「慢性膵炎を示唆する」所見(16.2%対2.1%;P=0.003)を有意に有していた.年齢,アルコール摂取,および喫煙歴を調整した後,BRCA2変異キャリアは,慢性膵炎様変化を示す可能性が約25倍高いことが判明した.
【結論】BRCA2変異キャリアにおいて,慢性膵炎様の変化は膵臓の充実性および嚢胞性病変とともに,非キャリアよりも有意に多くみられた.
BRCA2の生殖細胞変異は遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の原因遺伝子であることが報告されているが,膵臓癌のリスクも上昇させることが示唆されている2).欧米の家族性膵癌症例の6-17%にBRCA2の遺伝子変異がみられることが報告され,スクリーニングの重要性が指摘されている.PanINなどの膵癌の初期変化は画像でとらえられることは困難であるが,PanINと慢性膵炎様変化の関連性が指摘されており,EUSがその検出に最も優れていることから,EUSを用いたスクリーニングの重要性が推奨されている.
PanIN病変は増殖過程において微小膵管の閉塞をきたし,局所的な炎症および線維化を生じる.またPanIN細胞が産生するムチンや活性化されたトリプシノーゲンによる萎縮性閉塞も限局的な炎症性変化の原因と考えられている.
本論文はBRCA2の突然変異を有する症例が対照群に比べ,どの程度慢性膵炎様所見を有しているかEUSを用いて比較検討した研究である.筆者らは年齢,アルコール摂取,および喫煙歴を調整したのち,蜂巣状変化,嚢胞,点状高エコーなどといった慢性膵炎にみられるEUS所見の有無を臨床情報とともに後方視的に検討したところ,BRCA2突然変異キャリア群が対照群に比べ約25倍の割合で慢性膵炎様所見を有していることを報告した.また膵充実性病変や嚢胞性病変の合併率も高いことから,膵癌の高リスク群であることが示唆され,今後厳重なスクリーニングやサーベイランスが必要であると考えられる.