GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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EVALUATION OF THE APPROPRIATE LENGTH OF TIME FOR BILIARY CANNULATION BY TRAINEES IN THE CASE OF NATIVE PAPILLA
Kiyonori KUSUMOTO Yoshitaka NAKAIToshihiro KUSAKAMari TERAMURATakeharu NAKAMURAYouko OIWAYoshio ITOKAWAHiroyuki KOKURYUShinji KATSUSHIMA
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2018 Volume 60 Issue 3 Pages 243-250

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要旨

【目的】トレーニー施行のERCにおけるPEP発症危険因子と胆管挿管容認時間について検討した.【対象・方法】胆管挿管を目的としたnative papilla 157例を対象に,胆管挿管成功群(S群)114例と不成功群(F群)43例の2群比較で挿管困難な因子を後方視的に検討し,PEPの危険因子について解析したうえでトレーニーへの胆管挿管許容時間について検討した.【結果】挿管困難な因子は10mm以上の口側隆起で,PEPの危険因子は,トレーニーの挿管時間と10mm未満の口側隆起,メタリックステント留置例であった.挿管許容時間の検討では,PEP発症におけるトレーニーの挿管時間を予測因子としたROC曲線から11分が妥当と考えられた.【結語】挿管時間の延長はPEPの危険因子であり,トレーニーへの許容時間は11分を上限とするのが妥当と考えられた.

Ⅰ 緒  言

ERCPは,ビデオや模型などの様々なツールを用いた教育が各施設にて行われているが,Hands-on trainingが主流であり,多くのHigh volume centerでは,一定数の上下部内視鏡検査数を経験したトレーニーがERCPの先発を務めることでトレーニングを積んでいる.しかし,ERCPやその関連手技の習熟は容易ではなく,少なくとも200例の経験が必要とされる 1),2.その一方で,ERCPは5-10%に重大な偶発症を認める手技 3であり,実臨床上,偶発症を極力避け,かつトレーニーに十分な検査時間を与えることが課題となっている.

ERCPの重大な偶発症にはERCP後膵炎(post ERCP pancreatitis:PEP)があるが,術者が未熟であることと挿管時間が延長することがPEPの危険因子として報告されている 4)~7ことから,われわれは挿管困難な乳頭形態がPEPに関与している可能性を考えた.

本検討では,PEPを回避しつつ,ERCPの研鑽をトレーニーに積ませるために,当センターのトレーニーによる胆管挿管を目的としたnative papillaへの挿管症例を後方視的に解析することで,挿管困難な因子とPEPの危険因子を明らかにし,トレーニーに割り当てる適切な胆管挿管時間を導くことを目的とした.

Ⅱ 対象と方法

1:対象

2015年1月から2016年10月までの期間に京都桂病院で施行したERCPは計682例であった.その中で,胆管挿管を目的にトレーニーが先発したERCP症例を適格基準例とし,以下の項目を除外基準とした.

・EST後

・EBS後

・EPBD後

・Billroth-Ⅱ法あるいはRoux-en-Y法での胃術後再建例,胆管膵管を分離する手術の既往

・膵管挿管目的

・術前CTで画像的に膵炎合併例

・悪性腫瘍の乳頭浸潤例

・挿管不成功であった例

2:ERCPトレーニングとトレーニー,トレーナーの定義

当施設では,上部消化管内視鏡検査数1,000例,下部消化管内視鏡検査数100例以上の経験を目安にERCPのトレーニングを開始している.本検討では,トレーニーをERCP経験数200例未満と定義し,6人がこれに該当した.また,トレーナーはERCP経験数400例以上で胆管挿管成功率90%以上と定義し,2名が該当した.

また,本施設のERCPは,スコープはJF-260V(オリンパス株式会社,東京),カテーテルはMTW ERCPカテーテル0.025inch(株式会社アビス,兵庫),ガイドワイヤーはVisiglide2 angle 0.025inch(オリンパス株式会社,東京)を基本的に使用して検査を開始し,Wire Guided Cannulation法(WGC法)を基本とし,適宜造影法を併用している.胆管挿管困難例には膵管ガイドワイヤー法,pancreatic sphincter precut(PSP)の順に施行し,膵管挿管も不可能な場合にはneedle knife precut papillotomy(NKPP)を行っている.また,PEP予防目的にミラクリッド®15万単位を術前投与している.トレーニーが先発する場合は,必ずトレーナーの監督下で検査を行い,危険な操作がない限り,トレーニー自身がトレーナーとの交代を希望する,あるいは検査開始後30分を上限にトレーナーと交代し胆管挿管を続行する方針としている.

3:本検討におけるPEPと重症度の定義Figure 1

Figure 1 

本検討のPEPの定義.血清アミラーゼ値の異常,あるいはERCP後に新たな腹部症状が出現した場合にCTを施行し,画像的に膵炎と診断したものをPEPと定義した.

当院ではERCP2時間後にもアミラーゼを含めた血液検査を施行しており,その時点で治療を開始するため高アミラーゼ血症例に対しても治療することがある.本検討では厳密に膵炎症例を抽出するために,ERCP後翌朝,血清アミラーゼ値上昇時(①ERCP前値が正常の場合は正常上限値を上回る,あるいは②ERCP前値が高値の場合はERCP前値を上回る),もしくはERCP後に新たな上腹部痛あるいは背部痛が出現した場合に腹部単純CT検査を施行し,膵腫大や膵周囲の脂肪織濃度の上昇,液体貯留所見を認め,画像的に膵炎と診断した症例をPEPと定義した.また,本検討におけるPEPの重症度に関しては,厚生労働省急性膵炎重症度判定基準で診断した.

4:検討方法と評価項目

検討1:トレーニー間の挿管成功率やPEP発症率の多重比較検討

検討2:トレーニーにとって挿管困難な因子の検討

挿管成功率を評価項目とし,性別,良悪性疾患を含む患者背景と,乳頭形態として正面視の難易度,傍乳頭憩室の有無,乳頭の大きさ,口側隆起の長さ,結節の有無,胆管膵管の合流形式について各々比較検討した.正面視の難易度は主観的に評価した.結節の有無や,乳頭の大きさは,内視鏡画像を後方視的にトレーナー2名で評価した.口側隆起の長さに関してはMTW ERCPカテーテルの先端の青色マーカー(長さ6.0mm)を目安に,内視鏡画像から後方視的にトレーナー2名で評価した.簡便性も加味し10mmで分類することとした.また胆管膵管合流形式に関しては,猪俣の分類 8を用いて,乳頭開口部の形状から分離型とそれ以外の非分離型に分類した.

検討3:トレーニーが先発したERCにおけるPEPの危険因子の検討

PEPの危険因子については,年齢,女性,悪性疾患,不成功群,トレーニーの挿管時間(正面視から胆管挿管に要した時間),全挿管時間(正面視からトレーニーのみ,あるいはトレーニーと交代後のトレーナーが胆管挿管に要した時間),膵管造影,膵管挿管回数,WGC法で胆管挿管成功,膵管ガイドワイヤー法,PSP,NKPP,プラスチックステント留置,メタリックステント留置,EST,膵管ステント留置,乳頭バルーン拡張術,さらに検討2で導かれる挿管困難な因子を加え,PEPの発症を目的変数とした多変量解析を行った.

検討4:トレーニーに割り当てる適切な胆管挿管時間の検討

トレーニーの挿管時間を予測因子としたPEP発症におけるROC曲線を作成し,cut off値を算出した.

5:統計学的解析

トレーニー間の挿管成功率,PEP発症率に関してはpost-hoc検定を,挿管困難な乳頭形態の因子についてはFisher検定を,PEPの危険因子については多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した.また,ROC曲線においてcut off値は感度,特異度ともに1となる点より最短となる点を求めた.本検討の統計学的解析は,EZR Ver1.33(Saitama Medical Center,Jichi Medical University)を用いて行った.P値0.05未満を統計学的有意差ありとした.

Ⅲ 結  果

解析対象例は全157例で,トレーニーの胆管挿管成功群(Success群:S群)114例,不成功群(Failed群:F群)43例であった(Figure 2).PEPはS群で16.7%(19/114例),F群で25.6%(11/43例)に発症し(p=0.26),重症例はS群で3例認めたが,F群では認めず,死亡例は認めなかった.

Figure 2 

本検討の解析対象例.本検討期間中に,除外基準を除く胆管挿管を目的としたnative papilla症例は157例であった.

検討1:トレーニー6名の胆管挿管成功率(p=0.33)とPEP発症率(0.55)について多重比較検討したが,有意差は認めなかった(Table 1).

Table 1 

トレーニーの挿管成功率とPEP発症率.

本検討期間中のトレーニーは6名で,挿管成功率とPEP発症率において多重比較検討を行ったが,いずれも有意差は認めなかった.

検討2:患者背景に関しては,年齢はS群で73.7±12.7歳で,F群では74.0±12.1歳で有意差は認めなかった.挿管成功率からみた患者背景では,口側隆起10mm以上(p<0.05)のみが有意な因子であった(Table 2).

Table 2 

乳頭形態を含む患者背景と挿管成功率.

乳頭形態別に挿管成功率を検討した結果,口側隆起10mm以上で有意にトレーニーの挿管成功率が低かった.

検討3:PEPに関与する因子として,前述の因子に,検討②で導き出した口側隆起10mm以上を加えて,単変量ロジスティック解析を施行した結果,p値0.05未満であったのは悪性疾患,トレーニーの挿管時間,全挿管時間,膵管造影,メタリックステント留置であった.引き続き,全因子について変数減少法で多変量ロジスティック解析を行った結果,口側隆起10mm以上(OR 0.360;95%CI,0.133-0.975 p<0.05),トレーニーの挿管時間(OR 1.070;95%CI,1.030-1.120 p<0.01),メタリックステント留置(OR 7.450;95%CI,1.730-32.10 p<0.01)がPEPに関連する独立した有意な危険因子であった(Table 3).

Table 3 

PEPの危険因子.

PEPの危険因子に関する単変量解析を行い,さらに全因子について多変量解析を行った結果,口側隆起10mm以上,トレーニー挿管時間,メタリックステント留置が独立した危険因子であった.

検討4:最後にトレーニーに与える胆管挿管許容時間について検討した.時間の検討として,前述の検討結果からPEPを回避するにはトレーニーの挿管時間の短縮が望ましく,トレーニーの挿管時間を予測因子としたPEP発症におけるROC曲線を描出し,cut off値を算出した結果,11分(特異度70.9% 感度60.0%)であった(Figure 3).

Figure 3 

トレーニーの挿管時間を予測因子としたPEP発症におけるROC曲線.Cut off値は11分であった.

ここで追加検討として,トレーニー挿管時間について11分以下と12分以上でPEP発症率をFisher検定で比較検討した結果,11分以下で12.0%,12分以上で28.8%(p<0.01)で有意差を認めた.

Ⅳ 考  察

ERCPは1968年に胆膵領域疾患の診断と治療目的に導入されて以来,全世界に広く普及し 9,現在でも胆膵疾患診療において必要不可欠な内視鏡的手技である.しかし,その手技の修得は容易ではなく,上下部内視鏡検査経験数を重ねた修練医がERCPトレーニングを開始し,ERCPとその関連手技を修得するには200例の経験数が必要であるといわれている 1),2.一方で,ERCP関連の偶発症は約5-10%で発症するとされ 10,その中でも重篤な病態へとなり得るPEPについては1.3-15.1%に発症すると報告されている 11)~13.PEPの危険因子は患者因子,手技因子,術者因子に大きく分類され,急性膵炎診療ガイドライン2015 14では手技・術者因子として10分以上の挿管時間を要する挿管困難例,トレーニーと報告されている.つまり,トレーニーのERCP手技修得は,200例以上と多数の経験が必要であるが,内視鏡関連偶発症として比較的発生率の高いPEPなどの偶発症を避けなければならないというジレンマが存在する.

今回,われわれは挿管困難な因子とPEPの危険因子に注目し,PEPを回避しつつ,ERCPの研鑽をトレーニーに積ませるためには挿管時間の上限をどれくらいとするべきかについて検討・考察した.時間を検討するにあたって,まずトレーニーがERCを行う場合の挿管困難となる乳頭形態について検討したうえで,挿管困難な乳頭形態がPEP発症に関与するのかについて検討することとした.その結果,挿管困難な乳頭形態は口側隆起10mm以上が独立した因子であったが,PEPの危険因子について検討した多変量解析では,われわれの‘挿管困難な乳頭形態が,PEPの危険度上昇に寄与するのでは’という仮説に反して‘10mm以上の口側隆起で危険度が低下する’という結果であった.

この結果に関して,まず手技的観点から考察した.当院のERCにおける胆管挿管では近接法を基本としWire-guided cannulation(WGC)と造影法の両方を併用している.口側隆起が長い症例では,見上げ法で正面視を行いWGC法で挿管成功している症例が多く,カテーテルによる乳頭への刺激の少なさや,造影法を用いることが少なく,既報どおり 4),15)~17余分な造影を減らすことが膵炎の発症の低さに関与している可能性が考えられた.さらに,解剖学的観点から考えると,乳頭の口側隆起内部では十二指腸の粘膜筋板と粘膜下層が欠けており,十二指腸壁を貫いてきた総胆管と膵管が合流し共通管を形成して乳頭開口部に出る 18.また,須田ら 19),20は乳頭括約筋について,十二指腸の固有筋層の直上にある胆管末端部括約筋部が最も発育し,共通管より上位にて胆管を取り囲んでいるとしている.口側隆起が長い症例では短い症例に比べ,共通管の長さが長く,乳頭開口部から括約筋が取り巻く部位までの距離が長いと考えられる.また,明石ら 21)~24はPEP重症化の回避目的でESTを行うことについて,括約筋を切開し胆管と膵管を十分に分離させることで膵管内圧の上昇が惹起されにくくなると論じている.以上のことから括約筋より上位における浮腫の影響が膵管内圧上昇に関与している可能性が考えられ,口側隆起が長い症例では挿管の際のカテーテルもしくはガイドワイヤーで刺激している部位が括約筋より下位にとどまり,浮腫が膵管内圧上昇に影響しない可能性が推察された.しかし,口側隆起の長さとPEPに関して論じた既報の文献はみられず,今後症例の積み重ねなどによるさらなる検証が必要である.

次に本検討の主目的であったトレーニーへの胆管挿管許容時間については,現在のところ一定の見解はない.これまでに適切な挿管時間について論じた様々な報告のなかで,前向きに比較検討したPanら 25は,挿管成功率と偶発症率からみて10分がトレーニーに与える適切な挿管時間であることを報告している.

本検討では,トレーニーの挿管時間の短縮がPEPの危険度を減少させる有意な因子であったことを前提にトレーニーに対する適切な手技時間を求めるため,PEP発症におけるトレーニーの挿管時間についてのROC曲線よりcut off値を算出した結果,既報より1分長い11分という結果であった.急性膵炎診療ガイドライン2015 14では10分以上の挿管時間を要する症例はPEPの危険因子として列挙されており,本検討の結果は妥当な範疇であると考えられた.

以上の結果から,原則的にはトレーニーの挿管時間は極力短縮することが重要であり,トレーニーが先発する場合には,本検討で得られた11分を目途に交代することが望ましいと考えられた.

本検討は,単一施設の後ろ向き検討から得られたデータであり,今後多施設の前向き検討による検証が必要と考えられる.

Ⅴ 結  語

トレーニーが先発する胆管挿管を目的としたnative papillaへのトレーニーの挿管時間は,PEPの発症率を抑制するために短縮する必要があり,11分を上限とするのが妥当であると考えられた.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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