2018 Volume 60 Issue 4 Pages 1017-1026
レーザー内視鏡では狭帯域光観察であるBlue Laser Imaging(BLI)やLinked Color Imaging(LCI)が可能である.BLIにはBLIモードとBLI-brightモードがあり,前者は拡大観察による質的診断,後者は明るい視野による遠景観察におけるポリープの発見に有用である.一方でLCIはBLI-brightよりもさらに明るく病変の発見に有用な可能性が示唆される.本稿ではBLI,LCIの実臨床における手技の解説を行う.
消化器内視鏡では10年来世界的にキセノンが光源として用いられているが,2012年に新しくレーザーを光源とする消化器内視鏡システムが登場した.レーザー内視鏡(LASEREO,富士フイルム)ではより特異的な波長の光を用いた狭帯域光観察が可能となりBlue Laser Imaging(BLI)やLinked Color Imaging(LCI)が行え,腫瘍の質的診断や発見に用いられている.本稿ではBLI,LCIの実臨床における手技の解説を行う.
BLIには通常のBLIモードと少し明るさを増したBLI-brightモードの2つがある.前者は拡大観察,後者は暗い視野での拡大観察や遠景観察に適している 1)(Figure 1).そしてLCIはBLI-brightよりもさらに明るく病変の発見に有用な可能性が示唆される(Figure 1).BLIは短波長の狭帯域光観察の一種であるが,似たmodalityであるNarrow Band Imaging(NBI)との違いは,レーザーによる410nmおよび450nmの光がNBIの415nmと540nmにくらべてより短波長であること,またその波長幅は2nmとoptical filterを用いるNBIの波長幅30nmとくらべてより特異的であることが挙げられる 1)~3).これらの違いによりBLIとNBIの内視鏡画像はやや異なるが,われわれはNBI分類を用いて大腸腫瘍の診断が可能であることを過去に報告している 2).そして現在は本邦から昨今発信されたNBI分類の一つであるJNET分類を用いて診断を行っている 4).
直腸,0-Ⅰs,8mm,high grade adenoma.
a:白色光像.隆起性病変であり腫瘍左側はやや発赤調であり右側は褪色調を示す.右側は浅い陥凹を呈する.
b:BLI-bright像.病変は茶色調となる.
c:LCI像.病変は赤色調となり周囲粘膜は褪色調となり病変は白色光に比してより明瞭に描出される.
d:BLI拡大像.vessel patternおよびsurface patternとも腫瘍左側は整であり腫瘍右側は不整を示す.EMRを施行し病変左側はlow grade adenoma,左側はhigh grade adenomaを呈した.拡大ゲージはマニュアルで3段階.
BLI-brightおよびLCIはともにBLIモードと同じ波長2つのレーザー光を用いているが450nmの光の出力を強くしそれにより励起される蛍光体による光を増すことで明るい視野となっている.そしてLCIについてはシステム内で腫瘍がより赤く,背景粘膜がより褪色調となるよう色合いの調整がなされ白色光観察に近い画面となっている.
レーザー内視鏡システムの最新の内視鏡であるEC-L600ZP(富士フイルム)ではより大容量のdataが扱えるよう画像情報の処理にこれまでのCCDにかわりCMOSが用いられている.また拡大ゲージが画面右上にあり客観的に拡大倍率がわかる.ゲージは4段階(マニュアルモードでは7段階)となっており,1段階目は30~40倍(マニュアルでは2段階),2段階目が50~60倍(マニュアルでは3段階),3段階目が80~90倍(マニュアルでは5段階),4段階目が120~135倍(マニュアルでは7段階)となっているが,大腸腫瘍診断においては,1-3段階目までを用いて診断するとよい.また低倍率の方がピントがあいやすくかつ病変への接触による出血も起きにくい.さらに拡大時の視野が暗い際にはBLIからより明るいBLI-brightに適宜切りかえて使用するとよい.
大腸腫瘍に対するBLI観察については2015年に発表されたJNET分類の使用が推奨される 4).JNET分類はType 1,2A,2B,3の4つのパターンで構成されており分類に応じて病理診断を推測することができ治療方針の決定に役立つ(Figure 2) 5).Type 1はsurface patternが黒色または白色の円形であり,vessel patternは概ね視認不可であり,過形成性ポリープや一部のsessile serrated adenoma and polyp(SSA/P)を示す.Type 2Aは,surface patternはⅣ型,ⅢL,ⅢS型のpit様構造を呈し,vessel patternは均一なnetworkを形成し高度の口径不同は伴わない(正常の1.5倍未満).Type 2Aは概して整なパターンであり,主に腺腫の指標となる.Type 2Bは,surface patternはⅤI型pit様の不整形を呈し,vessel patternは蛇行や高度の口径不同(正常の1.5倍以上)を認める.Type 2Bは概して不整なパターンであり,主に粘膜内癌から粘膜下層軽度浸潤癌の指標となるが,不整度の強いものについてはSM深部浸潤癌も一部含まれる.Type 3は,surface patternは構造が消失した所見を認め,vessel patternでは無血管野および著明に拡張した血管の断絶や途絶した所見が認められる.すなわち概して破壊パターンとなり,ほぼ粘膜下層深部浸潤癌に合致する.JNET分類は簡略な分類ではあるが覚えるコツとしてあくまで私見ではあるが文中にも提示している所見を加味した整,不整,破壊パターンといった3つの用語を活用いただければよりとっつきやすいものとなるかと思われる.
JNET分類~BLI観察~.
BLIにおけるsurface patternの不整の診断において注意が必要な所見としてWhite Opaque Substance(WOS)の沈着が挙げられる.粘膜固有層への脂肪の沈着が原因とされており,大腸ではTisやT1癌において腺腫に比して沈着の頻度が高いとされる 6).WOSの沈着によりsurface patternの辺縁が不整となるが,良性病変では比較的均一な沈着を呈し,悪性病変においてはWOSはより不均一で不整な沈着を呈し鑑別が可能である(Figure 3).
WOS.
腫瘍内の一部でsurface patternの辺縁に一段と白色調を呈するWOSの沈着を認めsurface patternが不整様に見える(赤矢印).しかしその沈着は比較的均一であり腺腫を推定しえる.
大腸癌の新たな発育経路としてserrated pathwayの存在が明らかとなりsessile serrated adenoma and polyp(SSA/P)は欧米では腫瘍性病変として扱われ内視鏡的な切除が行われている 7).本邦でも前癌病変として治療を行うことが普及しつつあるが,何ミリ以上の病変が発癌リスクがあるかなど不明な点も多い.SSA/Pの発見についてはBLI-brightでは褪色調となるが,その表面に粘液が付着していることにより赤色調病変として観察されることも少なくない.LCIにおいては全体的には褪色調であるが局所的にわずかな発赤を呈する病変として視認される(Figure 4).BLI拡大観察ではNBIで報告されている拡張した腺管によるsurface patternにおける拡大黒色調ドットやvessel patternにおける腺管を取り囲まない拡張血管などが特徴所見として挙げられる 8).またdysplasiaや癌の合併も時にあり,BLI観察では腫瘍性血管が認められるため20mm以上の病変においては慎重な観察が重要である.
上行結腸,0-Ⅱa 20mm,SSA/P.
a:白色光像.表面に粘液の付着を認める褪色調の表面平滑な病変.
b:BLI-bright像.病変は茶色調および褪色調に明瞭に描出される.
c:LCI像.病変は赤色調および淡いピンク調で描出される.
d:拡張した血管および拡張した腺管を認める.
レーザー内視鏡の各種モードについて代表的な病変を数病変あげて説明する.
小さな腺腫病変では白色光観察ではやや赤色調の病変として視認されることが多いがBLI-brightでは腫瘍は茶色調に強調され,その視認性は良くなる(Figure 5-a,b).LCIでは病変は概して赤色調となり周囲の正常粘膜は褪色調となりコントラストが高められ,視認性が向上される(Figure 5-c).BLI拡大観察ではⅢL様のpit様構造の整なsurface patternを呈し,口径不同を伴わない均一な分布のvessel patternを認める.
横行結腸,0-Ⅱa 5mm,low grade adenoma.
a:白色光観察.やや赤色調の病変として視認される.
b:BLI-bright.腫瘍は茶色調に強調され,その視認性は良くなる.
c:LCI.病変は赤色調となり周囲の正常粘膜は褪色調となりコントラストが高められ,視認性が向上される.
d:BLI拡大観察.ⅢL様のpit様構造の整なsurface patternを呈し,口径不同を伴わない均一な分布のvessel patternを認める.
SSA/Pにおいては白色光観察ではやや褪色調の病変として視認されることが多いがBLI-brightでは病変表面の粘液により茶色もしくは赤色調に強調され,その視認性は良くなる(Figure 6-a,b).LCIでは病変は概して白色調から淡いピンク調となる.明るい視野により本例のように強い白色調を呈することも稀ならず経験される.周囲の正常粘膜は褪色調となりコントラストが高められ,視認性が向上される(Figure 6-c).BLI拡大観察では拡張腺管および拡張血管を認める(Figure 6-d).
上行結腸,0-Ⅱa 14mm,SSA/P.
a:白色光観察.やや褪色調の病変として視認される.
b:BLI-bright.病変表面の粘液により茶色もしくは赤色調に強調され,その視認性は良くなる.
c:LCI.病変は強い白色調を呈し周囲の正常粘膜は褪色調となりコントラストが高められ,視認性が向上される.
d:BLI拡大観察.拡張腺管および拡張血管を認める.
T1a癌症例では白色光像では中央に深い陥凹および結節を伴う(Figure 7-a).LCIでは病変は全体に赤色調となり視認性は向上する(Figure 7-b).BLI拡大では 腫瘍肛門側辺縁では画面右側は均一なvessel patternを呈しⅢLpit様の整なsurface patternパターン(Figure 7-c).中央の結節は整なsurface patternおよび均一なvessel patternであり腫瘍肛門側の陥凹部およびそれに接する隆起部.全体にⅤI pit様の不整なsurface patternおよび不均一な分布の不整なvessel patternを示す(Figure 7-d,e).以上からJNET Type 2B.その後のpit pattern観察ではⅤI軽度不整を示しTisもしくはT1aと診断.内視鏡切除を行いCancer in adenoma,tub1>tub2,pT1(500μm),ly0,v0,pHM0,pVM0であった(Figure 7-f).
S状結腸,0-Ⅱa 20mm,T1a.
a:白色光像.中央に深い陥凹および結節を伴う腫瘍.
b:LCI.病変は全体に赤色調となり視認性は向上.
c:BLI拡大.腫瘍肛門側辺縁.画面右側は均一なvessel patternを呈しⅢLpit様の整なsurface patternパターン.
d:BLI拡大.中央の結節は整なsurface patternおよび均一なvessel pattern.
e:BLI拡大.腫瘍肛門側の陥凹部およびそれに接する隆起部.全体にⅤI pit様の不整なsurface patternおよび不均一な分布の不整なvessel patternを示す.以上からJNET Type 2B.pit pattern観察ではⅤI軽度不整を示しTisもしくはT1aと診断.
f:内視鏡切除を行いT1癌Cancer in adenoma,tub1>tub2,pT1(500μm),ly0,v0,pHM0,pVM0であった.
欧米では大腸ポリープに対する内視鏡切除がその後の大腸癌の発生を抑制することが大規模studyで報告されている 9)~11).本邦でもcold snare polypectomyという簡易かつ安全にポリープを切除する手技が普及しclean colonが浸透しつつある 12),13).ポリープの発見率の向上においては種々の研究がなされてきたがレーザー内視鏡にもその期待が持たれる.
当施設で行ったBLI-brightについて動画を用いた臨床研究を紹介する 14).研究の概要について述べる.対象は2013年4月より2015年1月までに連続的に指摘した長径20mm以下の大腸ポリープ100病変とした.白色光およびBLI-brightで病変の前後約5cmの動画を撮影し,全病変の動画を集積後に,独自のポリープ視認性のスコア(Polyp visibility score)を用いて8名の内視鏡医が全病変の視認性を評価した(Figure 8) 15).対象ポリープの背景は,平均径は9.7mm(2-20mm),部位は右側(盲腸から横行結腸)52病変,左側(下行結腸からS状結腸)33病変,直腸15病変であった.病理はSSA/P:2病変,過形成性ポリープ:15病変.腺腫:64病変,Tis・T1:19病変であった.結果は,全病変の平均のスコアはBLI-brightにおいて白色光に比べExpert:3.10±0.95 vs 2.90±1.09(P<.001)およびNon-expert:3.04±0.94 vs 2.78±1.03(P<0.001)ともに有意に向上していた.またスコア1および2の視認性が悪いポリープの頻度が白色光 vs BLI-brightとしてExpertでは34.5% vs 23.5%,non-Expertでは35.5% vs 22.5%とBLI-brightで有意に低下していた(いずれもP<0.01).
Polyp visibility score.
score 4:excellent visibility.
score 3:good visibility.
score 2:fair visibility.
score 1:poor visibility.
さらにBLI-brightモードを用いた腫瘍の発見率の向上についての多施設共同研究(研究責任者:国立がん研究センター 斎藤 豊先生)を行い,白色光 vs BLI-brightで一人あたりの患者におけるポリープ発見数が1.43±1.64 vs 1.84±2.09(P=0.001),腺腫発見数が1.01±1.36 vs 1.27±1.73(P=0.008)と有意にBLI-brightで向上することを報告している 16).
しかしながらBLI-brightの課題として残渣のある状況では残渣が赤くなり,管腔が広い上行結腸などでは視野がやや暗くなる.一方で,LCIは明るい視野で残渣も黄色調のままであり,ポリープの発見についてはより汎用性が高いと思われる(Figure 9).LCIについても動画を用いた同様のpolyp visibility scoreを用いた評価方法により101病変(平均腫瘍径9.0±8.1mm,非腫瘍7病変,腫瘍94病変)について検討し,LCI vs 白色光において2.86±1.08 vs 2.53±1.15(P<0.001)と有意にLCIでスコアが向上することを報告している 17).
上行結腸のESD後潰瘍瘢痕.
a:白色光.
b:画面は暗く残渣は赤くなる.
c:画面は明るく残渣は黄色調のまま.
LCIにおける大腸腫瘍の診断に対する有用性については種々報告がある.静止画を用いた研究において表面隆起型腫瘍やSSA/Pは白色光に比べLCIにおいて有意にpolyp visibility scoreが上昇することが報告されている 18).またわれわれは視認性の客観的な評価法としてcolor difference(CD)値を用いて白色光に比してLCIで有意にCD値が高値を示し視認性が向上することを証明している 19).さらには白色光およびLCI観察において有意にAdenoma detection rateが向上とする報告もある(LCI vs WL:37% vs 28%:95% confidence interval,2.3%-19.4%) 20).
しかしながら一方で海外におけるレーザー内視鏡の現状にはやや課題がある.他国ではレーザーの安全性に懸念がなされており現在中国および南米諸国で認可されるにとどまっている.その代わりにLEDを用いた7000シリーズによるblue light imaging(BLI)やLCIがヨーロッパおよび米国で用いられている.
これらのevidenceをふまえて現在当院では上行結腸の白色光観察の後に見逃しの防止のためにLCIにより2回目の観察を行っておりその5-10%で白色光で発見されない新たなポリープを発見しており有用性が示唆される.またBLI-brightについては残渣のない状態であれば横行結腸から直腸にかけて見逃し防止のために白色光観察に適宜併用を行っている.そして発見されたポリープについてはBLI拡大にて質的診断を行っている(Figure 10,11).
盲腸,0-Ⅱa 12mm,low grade adenoma.
a:白色光像.ひだ上の病変でありやや視認性が悪い.
b:BLI-bright像.病変は茶色調になり良好に描出されるがやや視野は暗い.
c:LCI像.病変は淡いピンク調に良好に描出され視野は明るい.
d:BLI拡大.整なパターンであり腺腫を疑う.
横行結腸,0-Ⅱa 12mm,low grade adenoma.
a:白色光像.やや遠景像だが視認性が悪い.
b:BLI-bright像.病変は茶色調になり良好に描出される.
c:LCI像.病変は淡いピンク調に良好に描出され視野は明るい.
d:白色光像.
e,f:BLI拡大.整なパターンであり腺腫を疑う.
レーザー内視鏡を用いたスクリーニング大腸内視鏡についてBLI,BLI-brightおよびLCIの各種モードについて症例を交えてその特徴を詳述した.各々のモードの特徴を知ることでより質の高い大腸内視鏡検査が可能となる.
本稿を作成するにあたり京都府立医科大学消化器内科関係医局員の先生方に心から感謝いたします.
本論文内容に関連する著者の利益相反:吉田直久(富士フイルム),内藤裕二(富士フイルム),伊藤義人(富士フイルムメディカル)