GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC BALLOON DILATION FOR SMALL BOWEL STRICTURES IN PATIENTS WITH CROHN’S DISEASE (WITH A VIDEO)
Tomonori YANO Hirotsugu SAKAMOTOYasutoshi KOBAYASHIManabu NAGAYAMAHiroko TOJOShoko MIYAHARAMariko SEKIYAKeijiro SUNADAHironori YAMAMOTO
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2018 Volume 60 Issue 5 Pages 1107-1115

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要旨

クローン病患者において,小腸狭窄は重要な合併症であり,その治療については未だ課題が多い.外科的切除で治療しても,クローン病を完治させることはできない.再燃して生じた狭窄に対して外科的切除を繰り返せば,短腸症候群になってしまう.バルーン内視鏡の登場により,深部小腸の狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術も可能となった.バルーン拡張術後に再狭窄することもあるが,繰り返し治療することが可能で,外科的治療を長期にわたって回避できる.本稿では,クローン病小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術について,多数例の治療経験から編み出された戦略や工夫について紹介する.

Ⅰ 内視鏡的バルーン拡張術の意義

クローン病は,消化管壁全層にわたる炎症をきたし,非連続性に深い潰瘍を生じる慢性炎症性腸疾患である.再燃・寛解を繰り返すうちに消化管狭窄や瘻孔を生じ,消化管穿孔をきたすこともある.高度の消化管狭窄が生じた場合には,腸閉塞の原因となり,経口摂取が困難になる.特に,小腸はもともとの内径が小さいため,狭窄を生じた場合に臨床的問題となりやすい.

従来,小腸狭窄に対して,内視鏡による到達が困難であったため,外科的に切除されることが多かった.しかし,小腸狭窄を外科的に切除してもクローン病が完治するわけではない.再燃・寛解を繰り返すうちに再狭窄し,外科的切除を繰り返せば,短腸症候群になってしまう.特に,複数の狭窄が広範囲の小腸に分布している場合には,短腸症候群となるリスクが高くなる.

今世紀に入ってバルーン小腸内視鏡(BAE:balloon-assisted enteroscopy)が登場したことにより,深部小腸への到達だけでなく,内視鏡的バルーン拡張術(EBD:endoscopic balloon dilatation)を含む内視鏡的治療が可能になった.クローン病の小腸狭窄をEBDで治療すれば,外科的切除の回避につながる 1.EBD後に再狭窄してEBDを繰り返し行ったとしても短腸症候群にはならないため,その意義は大きい.

本稿では,クローン病小腸狭窄に対するEBDの普及のため,具体的な手技について解説する.

Ⅱ EBDの適応判断

クローン病の消化管狭窄には炎症性狭窄と線維性狭窄がある.前者は炎症による消化管壁の腫脹により内腔が狭くなっており,内科的治療による改善が期待できる.EBDの対象となるのは,深寛解状態に至ったとしても狭窄が残存する後者である.

EBDの適応となる狭窄は,①狭窄症状の原因となっている狭窄 1,②口側腸管の拡張を伴う狭窄 1,③病状評価や治療のためのスコープ挿入の妨げとなっている狭窄の3つである.

EBDの適応外となるのは,狭窄長が5cmを越えるような長い狭窄と,高度の屈曲・深い潰瘍・瘻孔・裂溝・膿瘍・悪性腫瘍を伴う狭窄1である.

Ⅲ EBDの施行時期

上述のように狭窄部に活動性の炎症がある場合には,EBDの適応とならない.そのため,EBDの施行時期は,クローン病の寛解期である必要がある.臨床的寛解に至っていても,内視鏡で見ると小腸に潰瘍が残っている場合があるため,内視鏡的寛解,即ち粘膜治癒の状態で行うのが理想である.そのためには,ステロイドや免疫調節薬,生物学的製剤,成分栄養剤による栄養療法などの内科的治療を強化して寛解導入治療を行う.

寛解導入治療により縦走潰瘍が治癒した結果,瘢痕狭窄を生じる場合があるため,何らかの検査で狭窄がないことを確認できるか,全狭窄をEBDできるまでは,食事内容に注意する必要がある.

寛解導入治療の開始から4〜6カ月後くらいに,病状評価も兼ねたBAE検査を行い,EBDの適応となる狭窄があれば,EBDを行う.

InfliximabやUstekinumabの8週毎投与による維持治療中では,疾患活動性がより低いと期待できる投与間隔前半にEBDを施行する.

Ⅳ 術前検査

上述の通り,クローン病の活動性がある状態ではEBDの適応とならないため,術前の採血検査で強い炎症反応や低アルブミン血症,重度の貧血がある場合には延期すべきである.

経肛門挿入の前処置としての腸管洗浄剤を内服した状態でCT(MRI)を撮影すればCT enterography(MR enterography)となり,病変分布の把握,瘻孔や膿瘍の有無確認の一助となる.

当施設では,前処置や偶発症リスクを考慮して,クローン病の小腸狭窄に対するEBDを入院で行っている.

Ⅴ 挿入経路の選択

BAEは経口でも経肛門でも挿入できるが,狭窄がどこに存在するかによって,近い方の挿入経路を選択する.クローン病による小腸狭窄の多くは回腸に存在するため,経肛門を選択する場合が多い.ただし,回腸の腸管変形が強いため,経肛門挿入での狭窄部到達が困難な場合がある.経口挿入であれば腸管変形の影響が少ないため容易に目的の狭窄部まで到達できる場合があるため,過去の検査結果を踏まえて選択する.

広範囲の小腸に複数の狭窄を有する場合には,一方の経路からだけではすべての狭窄をEBDできないこともある.このような場合には,両方の経路からの挿入で全狭窄に対してEBDを試みる.しかし,2017年現在の医療保険制度において,EBD(K735-2小腸・結腸狭窄部拡張術(内視鏡によるもの))は,「短期間または同一入院期間中において,回数にかかわらず1回に限り算定可能」という回数制限が存在する.両方の経路からのEBDを行う場合には,後日再入院して行うか,片方の経路からのEBDを観察のみのバルーン小腸内視鏡検査(D310 小腸内視鏡検査)として保険請求することになる.

Ⅵ 前処置

経肛門挿入だけでなく,経口挿入でも狭窄部の口側には食残渣が残りやすい.前日もしくは前々日から,経口摂取は流動食や成分栄養剤のみに制限し,徐放性の5-ASA製剤も休薬しておく.

経肛門挿入の前処置として,腸管洗浄剤を通常の大腸内視鏡と同じ方法で治療当日の朝に内服すると,残渣が残りやすく,狭窄症状の出現も危惧される.腸管洗浄剤は前日夕に1リットル,当日朝に1リットル内服し,適宜追加内服する.ただし,狭窄を有する状態では完璧な腸準備は望めないため,ある程度の段階で妥協も必要である.

Ⅶ 残渣のオーバーチューブ内侵入への対策

BAEのオーバーチューブは,内面に親水コーティングがされており,潤滑用に水を注入するだけでスムーズにスコープを操作できる.小腸狭窄があると,残渣がトラップされやすく,腸準備が不十分であることが多い.この残渣がオーバーチューブ内に浸入すると,スコープ操作に支障をきたす.

この問題への対処として当施設では,内視鏡潤滑用ゼリーを水で2倍希釈したものを,オーバーチューブ内に注入している.検査前に注入しておけば,その粘性により残渣の侵入を抑制できる.また,検査中に残渣が侵入した場合でも,オーバーチューブ手前側をスコープ操作部の膨大部に押しつけ,逆流をブロックすればゼリーを注入できる.水を注入しても残渣の横を水が通り過ぎるだけで解決しないが,粘性のあるゼリーを30〜40ml注入すれば残渣を外に押し流して操作性を回復することができる.

Ⅷ 鎮痛・鎮静・鎮痙の方法

経肛門挿入では意識下鎮静,経口挿入では深鎮静に近い状態で施行する.当院では鎮痛剤としてペチジン塩酸塩(オピスタン35mg/1ml),鎮静剤としてミダゾラム(ドルミカム10mg/2mlの製剤を希釈して10mg/10mlにして使用)を使用している.鎮痙剤は,チメピジウム臭化物水和物(セスデン7.5mg/1ml)か,グルカゴン(1mg/1ml)を用いている.検査開始時にペチジン塩酸塩を35mg(超高齢者では17.5mg)とミダゾラム2mg(症例により1〜5mg)を投与しておく.検査中に痛みを感じているようなら,ペチジン塩酸塩を17.5mgずつ追加し,覚醒すればミダゾラムを1mgずつ追加する.鎮痙剤は必要に応じて,チメペジウム臭化物水和物であれば3.75mgずつ,グルカゴンであれば0.5mgずつ静注する.

当院では2017年7月末までの5年間に,クローン病小腸狭窄に対するEBDを66人に208件施行した.このうち,ミダゾラムでの鎮静が困難でフルニトラゼパムを併用した5件を除く203件の挿入経路は,経肛門155件,経口44件,経ストーマ4件であった.それぞれのペチジン塩酸塩投与量/ミダゾラム投与量/総検査時間(スコープ挿入開始から抜去まで)の中央値は,経肛門が70mg/5mg/77分,経口が70mg/9mg/102.5分,経ストーマが70mg/8.5mg/63.5分であった.

Ⅸ 機器選択

小腸狭窄の部位によっては,通常の内視鏡でも到達できる可能性があるが,小腸での操作性を考慮すれば,BAEの使用が望ましい.BAEにはスコープ先端にバルーンを有するダブルバルーン内視鏡(DBE:double-balloon endoscope)と,シングルバルーン内視鏡(SBE:single-balloon endoscope)がある.狭窄の長さ・形状の評価のため,狭窄部近くで鉗子口から水溶性造影剤を注入しての選択的造影を行う.この際,DBEであればスコープ先端バルーンを拡張して造影剤の逆流を抑制できるため,狭窄を越えての造影剤注入が可能になり,より多くの情報を得ることができる.

EBDに用いる拡張用バルーンカテーテルを挿入するためには,最低でも2.8mm以上の鉗子口径を持つスコープを選ぶ必要がある.鉗子口径3.2mmあれば,拡張用バルーンカテーテルの挿入がより容易になる他,拡張用バルーンカテーテルが鉗子口内にあっても隙間を通じて吸引等が可能になる.以上より,当科ではDBEであるEN-580T(富士フイルム製)を主に用いている.

クローン病の小腸狭窄は偏心性狭窄となり,腸管変形を伴って,正面視が難しいことが珍しくない.また,内視鏡先端の構造として,対物レンズは鉗子口とは別の位置にある.内視鏡の画面上で狭窄をうまく視認できても,拡張用バルーンカテーテルは対物レンズとは別の位置から出てくることになる.これらの要因から,狭窄に拡張用バルーンカテーテルを通すことが困難になりやすい.目盛付き先端細径フード 2であるキャストフード(トップ製)(Figure 1)を用いれば,鉗子口から出た拡張用バルーンカテーテル先端がフード内面に当たり,画面中央に誘導されて,この問題を解決できる(電子動画1:クローン病の回腸狭窄に対するキャストフードを用いたEBD).また,フードを狭窄に押し当てて目盛やフード先端の内径と比較することで,狭窄の内径を客観的に評価できる.さらにはEBD後のスコープ通過も容易となるため,複数の狭窄を有する場合には,一回の治療でより多くの狭窄をEBDできるようになる.

Figure 1 

キャストフード.

電子動画1

送気に関しては二酸化炭素送気が望ましいが,無送気が理想である(後述).

鉗子栓として,BioShield irrigator(US Endoscopy製)(Figure 2)のような鉗子栓を用いれば,拡張用バルーンやガイドワイヤを挿入したままでも,水溶性造影剤や消泡剤を注入できる.

Figure 2 

BioShield irrigator.

拡張用バルーンカテーテルは,内圧によって3段階の拡張径が得られるものが,複数のメーカーから販売されている.バルーン両端が円錐型になっているバルーンカテーテルよりも,俵型となっているものの方が,狭窄とスコープ先端の距離が短い状態でもEBDできる点で有利である.当施設では下部消化管用CREプロGIワイヤーガイデッドバルーンダイレータ(Boston Scientific製,カタログ番号5881〜5883)を用い,拡張時には2倍希釈した水溶性造影剤(ガストログラフィン)を用いている.

EBD時には拡張用バルーンが棒状になるため,狭窄部に強い屈曲があると前後の腸管壁にバルーン両端が押し当てられる.これによる腸管壁損傷を防ぐため,ガイドワイヤの併用が必要である.しかし,現時点で販売されている下部消化管拡張用バルーンカテーテルに付属するガイドワイヤは,小腸で用いるには硬すぎるため,代わりに胆道系処置で主に用いられているような0.035inch径のガイドワイヤを用いる.多くの製品は全長が4,500mmだが,ガイドワイヤ先端を腸管内に残しての拡張用バルーンカテーテル抜去を行うには,全長が不足する.当施設では全長5,500mmのRevowave RWSA-3555I(Piolax製)を用いている.

Ⅹ Water exchange法を用いた挿入

一般に,内視鏡挿入中に送気すると,腸管が伸展して挿入効率が低下する.さらに,BAEでは腸管内の残存ガスが短縮操作の妨げとなる.そのため,二酸化炭素送気が望ましく,無送気での挿入が理想的である.当施設では,腸液と残存ガスを吸引して水に置換していくwater exchange methodを用いている.もともと管腔が狭い小腸を虚脱させながら挿入していくため,視野確保に必要な水はスコープの送水機能で注入できる程度で充分である.

残存ガスをすべて無くしてしまえば,水中では泡立つこともなく,屈折率が変わって近接観察が可能になる.また,ハレーションが起きにくいため,キャストフードの透見性が改善する(Figure 3).

Figure 3 

浸水観察ではフードによるハレーションが起きにくい.

選択的造影においても,残存ガスがなければ造影剤は腸液の中を拡散していく.その結果,腸管の屈曲・変形・狭窄で造影剤の流れが途切れることなく,広範囲の小腸を造影できる.

当施設ではスコープ先端が肛門もしくは幽門を越えた後,water exchange法による浸水状態で挿入・EBDを行い,治療終了まで無送気で浸水状態を維持したまま施行している.

Ⅺ 狭窄部への到達

クローン病では全層性の炎症をskip lesionとして生じるため,腸管変形もskipして生じる.このため,スコープ挿入時にステッキ状態になりやすく,バルーン内視鏡の挿入が比較的困難である(Figure 4).しかも,スコープ操作を無理すると腸管壁が脆弱な部位で穿孔(偶発症の項で後述)を起こすため,注意が必要である.

Figure 4 

腸管変形のためBAE挿入が困難.

BAEは①スコープ挿入,②オーバーチューブ挿入,③短縮操作の3つを繰り返して挿入していく.この3つの操作を1ストロークとして内視鏡画面から挿入長を推定し,ストローク毎の挿入長を積算していき,幽門・回盲弁・回腸結腸吻合部からの挿入長を記録する.

スコープ挿入では,ステッキ状態に陥らぬよう,アングルをかけすぎないように丁寧に挿入していく.困難な状況になればなるほど,Push操作は最小限にし,アングルの微調整とスコープの捻り操作を中心にして挿入する.BAEではオーバーチューブ先端からスコープを繰り出せる長さが決まっているが,その全長を使い切らなくても良い.挿入しにくい状況になったら,挿入はそこまでにしてオーバーチューブを進め,短縮操作で形状を整えた方が良い.

短縮操作の最後で,管腔を視野に維持しつつアングルをまっすぐにできる状況をつくりだせれば,次の挿入操作が容易になる.DBEでは,挿入操作に移る前に,スコープを少し押してみて進めそうな感触が得られてから,スコープ先端バルーンを収縮させると,より確実である.

挿入困難な状況が続く場合には,オーバーチューブ先端の腹腔内での位置を変えることや,体位変換を行って重力の方向を変えることで,状況が改善する場合がある.

Ⅻ 狭窄部の評価

狭窄部では,まず潰瘍・炎症の有無を評価する.前述の通り,深い潰瘍や強い炎症がある場合にはEBDは行わない.狭窄の内径は,腸管形状や内圧の影響を受けるため,客観的評価が難しい.キャストフードを用いれば,狭窄部に押し当てて白色輪が出現する位置の目盛で計測できる(Figure 5).

Figure 5 

キャストフードを狭窄に押し当てて狭窄径を計測(この場合は8mm).

狭窄長と口側拡張の有無については,2倍希釈した水溶性造影剤を注入しての選択的造影で評価できる.ただし,複数の狭窄を連続的にEBDしながら挿入する場合には,造影を省略するか,造影しても最小限の造影剤注入に留める.

ⅩⅢ 拡張目標径

拡張径が小さすぎれば拡張効果が少ないし,大きすぎれば穿孔の危険がある.いわば寸止めで目標拡張径を決める必要があるが,迷ったら小さい拡張径に留めておく.目標拡張径は,狭窄径・狭窄長・潰瘍の有無や,前回EBD時の最大拡張径,狭窄数などから総合的に判断する.

内径4mm以下の狭窄では8〜10mm,内径5〜7mmの狭窄では10〜12mm,内径8mm以上の狭窄では12〜15mmを目標拡張径とすることが多い.

12mmまでEBDすれば,多くの症例でスコープ先端が通過可能になり,症状改善が期待できるため,すべての狭窄を12mm以上までEBDすることを初回治療時の目標とする.

複数狭窄例などで,深部挿入のためオーバー チューブを通過させたい場合は,少なくとも13.5mmまでのEBDが必要である.そのため,内径5〜7mmでも狭窄長が短く,安全に拡張できると判断できれば13.5mmまでEBDする場合がある.

ⅩⅣ ガイドワイヤと拡張用バルーンの挿入

前述のとおり,拡張用バルーンの付属ガイドワイヤは使わず,軟らかいガイドワイヤを拡張用バルーンの先端まで通しておく.

BAEは有効長が長いうえ,複雑な形状で挿入されている場合があり,拡張用バルーンを鉗子口に通す際の抵抗が強くなりやすい.抵抗が強いと操作性も悪くなるため,バルーンカテーテル挿入直前にオリーブ油1mlを注入しておく.オリーブ油が多すぎると,レンズに付着して視野が悪化するため,注意する.

ⅩⅤ 拡張用バルーンの拡張

狭窄部で腸管が屈曲していると,5cm長の棒状になった拡張バルーンで前後の腸管壁に穿孔を生じる可能性がある.このため,狭窄部前後の腸管形状を整えておく必要がある.DBEでは,内視鏡先端バルーンで腸管を把持して内視鏡を動かすことで,腸管形状を整えられる.

狭窄部と拡張用バルーンの位置関係を直視できない場合は,透視下に確認する.このときに造影剤が流れてしまっていれば,BioShield irrigatorから造影剤を追加注入する.

拡張用バルーンを拡張していく段階では,選択した拡張用バルーンの最小径から段階的に拡張していく.特に最初の段階ではゆっくりと慎重に規定圧まで上げていく.当施設では各段階で1分間のバルーン拡張の後に,必要に応じて狭窄部の状態や出血を視認し,疼痛の程度も参考に,次の段階の径まで拡張するかどうかを判断する.腸管穿孔しては元も子もないので無理はしない.

ⅩⅥ EBD後の狭窄部通過

狭窄部を12mmまで拡張できればスコープ通過,13.5mmまで拡張できればオーバーチューブ通過が可能になる.ただし,腸管形状や角度によっては通過しにくい.EBDに用いた拡張用バルーンカテーテルやガイドワイヤを狭窄部に残したままにしておけば狭窄部通過の一助となる場合がある.

粘膜が大きく裂けて筋層が見えるような場合は無理に通過させない.特にオーバーチューブ通過はブラインド操作になり,要注意である.

スコープやオーバーチューブを通過させることの必要性とリスクを考えて判断する.

ⅩⅦ 複数狭窄例に対する拡張術

複数狭窄例では,到達・評価・拡張・通過の手順を繰り返す.広範囲に狭窄が分布する場合には,スコープだけでなく,オーバーチューブも深部挿入する必要がある.そのため,スコープ先端が通過できる狭窄でも,オーバーチューブ通過が困難な狭窄については,挿入時に13.5mmまでEBDしておく.このとき,15mmまでEBDするとバルーンが伸びてしまい,EBD後に虚脱させても鉗子口に引き込みにくいことがあるため,必要最低限の13.5mmに留めておくことが多い.

複数狭窄例において,拡張用バルーンを毎回完全に抜去・再挿入すると大変な労力を要する.一カ所の狭窄をEBDした後に,拡張用バルーンを完全には抜去せず,鉗子口内に引き戻すだけに留めておく.EBDした狭窄を越えて挿入していき,次の狭窄に到達したら拡張用バルーンを鉗子口から出して連続的にEBDしていけば良い.この拡張用バルーンの出し入れ操作の際に,前述のオリーブ油1mlが効果を発揮する.

前述のとおり,広範囲に多数の狭窄がある場合に は,両方の挿入経路からEBDを試みる.狭窄があまりに多い場合は,一回の入院ですべての狭窄をバルーン拡張することにこだわらず,数回にわけることも検討する.

ⅩⅧ 透視ガイド下での拡張術

選択的造影で,スコープでの到達が不可能な部位に狭窄を認めた場合でも,バルーンカテーテルとガイドワイヤを通せれば,透視ガイド下にEBDすることがある.しかし,内視鏡観察による狭窄部の評価ができないため,目標拡張径はより慎重に決定する.

ⅩⅨ マーキング(点墨とクリップ)

両方の挿入経路からEBDを行う場合や,次回の検査・治療,手術のために点墨もしくはクリップでマーキングする場合がある.

点墨はほぼ一生涯残るため,その使用は手術前の切除範囲決定時などに限ったほうが良い.点墨では墨汁を粘膜下に局注するが,小腸壁は非常に薄いため,容易に針先が穿通してしまう.小腸点墨用の局注針(トップ製内視鏡用穿刺針 小腸点墨用)を用い,生理食塩水を針先から垂らしながら接線方向で穿刺し,膨隆ができたのを確認後に墨汁に切り替えて注入する.膨隆ができる前に一度でも穿通してしまうと,針先を粘膜下に引き戻して膨隆ができたとしても墨汁が腹腔内に漏れてしまうため,穿刺部位を変える.

クリップは,一時的なマーキングだが,X線透視やCTでも確認可能である.クリップを1本だけ留置したのでは,X線透視やCTで確認する際に,脱落して流れたものか,マーキングした部位に残存しているものかを判断しにくい.クリップ2本を並べて留置(Figure 6)すれば,2本まとまって見えれば本来留置した部位に残存している可能性が高く,2本がばらばらに見えれば少なくとも1本は脱落したと判断できる.

Figure 6 

クリップ2本でマーキング.

近年,クローン病に対してMRIを用いたMR enterographyでの評価が行われるようになってきた.MRI対応のクリップもあるが,アーチファクトが発生してしまう.MRIを予定している場合にはクリップ使用の是非を検討する.

ⅩⅩ 戻り操作でのEBD

内視鏡挿入時には,以前の検査で指摘されている狭窄に気づかず,通過してしまう場合がある.特にキャストフードのような先端細径フードを用いていると,ブジー効果もあり,軽度の狭窄は通過できてしまう.

このような場合,最深部から戻る際にガイドワイヤを長めに出した拡張用バルーンを15mm(目標としている拡張径)まで拡張した状態でスコープの先から出しておき,少しずつスコープを抜いてくる.拡張用バルーンが引っかかる狭窄があれば,そこで拡張用バルーンを収縮させ,位置調整した上でEBDを行う.

ⅩⅩⅠ 検査レポート

検査レポートを詳細に記録しておくと,次回からの安全で効率的な検査・治療に役立つ.当施設ではDBE検査レポートに,簡単な病歴,手術歴,EBD歴,現行治療,スコープ種類,使用方法(DBE/SBE/先端バルーンのみ),フード種類,送気種類,挿入ルート,最深挿入部位(ストローク数,幽門・回盲弁・吻合部から何cm),挿入時所見・治療(挿入困難部位と解決方法も含める),マーキング(有無・種類・位置),選択的造影所見,抜去時所見・治療,最深部までの挿入時間,総検査時間,使用薬剤(鎮痛・鎮静・鎮痙剤),診断,今後の方針を記載している.

特に,クローン病小腸狭窄に対するEBDでは,各狭窄の部位(回盲弁(幽門・吻合部)から何cm),内径,狭窄長,潰瘍の有無と,何mmまでEBDしたかを記載しておく.選択的造影所見についても,最深到達部から何cmの範囲を造影して,何cmの部位に狭窄を認めたのかを記載しておく.

ⅩⅩⅡ 治療後の管理・投薬

翌朝の腹部症状がないことを確認後に,成分栄養剤もしくは流動食から経口摂取を再開する.

当院では,一時的な粘膜バリアの破綻に伴うbacterial translocationに対し,ニューキノロン系の経口抗菌薬を治療日より5日間使用している.また,EBD後の浮腫と線維化を抑制するため,経口プレドニゾロンを1日30mg,20mg,10mgを2日間ずつ,合計6日間使用している.

ⅩⅩⅢ 偶発症

当施設で2017年7月末までにクローン病小腸狭窄に対するEBDを行った613件のうち,4件(0.7%)で穿孔が起き,すべて緊急手術となった.また,輸血や内視鏡的止血術を要する出血が,2件(0.3%)あった.

EBDの手技自体に伴う偶発症の他に,クローン病ではBAE挿入に伴う偶発症にも注意が必要である.クローン病では腸管壁全層に及ぶ炎症により,深い潰瘍を形成する.そのため,寛解導入直後では,潰瘍が治癒しているように見えても,筋層の強度は不十分である.また,腸間膜へも炎症が及び,線維化で腸間膜が短縮している場合が多い.内視鏡の小腸挿入に伴って腸間膜付着部にかかる力は,腸間膜の長さが均等であれば均等に分散する.しかし,線維化で腸間膜が短縮した部位には,力が集中しやすく,かつ筋層の強度が不十分な部位と一致しているため,より穿孔に注意する必要がある(Figure 7).スコープが既に通過した部位でおこるため,内視鏡画面だけを見ていたのでは気づきにくい.検査中に,オーバーチューブ内や,内視鏡視野に血性腸液が流入してきたら,穿孔の危険信号と考えるべきである.

Figure 7 

スコープ挿入時には穿孔に注意.

検査後に強い腹痛など穿孔を疑う症状があれば,腹部単純CTを撮影して穿孔の有無を確認する.検査中に穿孔に気づいて,穿孔部位を視認できたら,クリップ等を用いた閉鎖術を試みても良いが,困難な場合が多い.穿孔が起きた場合には保存的加療に固執することなく,適切なタイミングで外科的治療を選択することが重要である.

出血に関しては,EBDを行った狭窄部位だけでなく,スコープやオーバーチューブによる粘膜損傷部位からの出血もありうる.そのため,広範囲に多発する狭窄に対するEBD後の出血では,内視鏡での到達はもちろん,真の出血源を同定することも容易ではない.条件が悪い中で多数のEBD後狭窄を越えて挿入していくことは,さらなる偶発症リスクにもなりうる.予想される出血部位にもよるが,出血量が少なければ,まずは自然止血を期待して保存的加療とする.それでも出血が持続する場合には,内視鏡的止血術を試みる.

経口挿入でBAEを行う場合には,膵炎にも注意が必要である.膵臓への物理的負荷が原因と推測されており,当院では経口BAEの総検査時間が2時間を越えないように注意している.

ⅩⅩⅣ EBD後の長期的なフォロー

EBD後も深寛解を維持して,再狭窄しなければ理想的である.深寛解を長期的に維持できていれば,多数の狭窄があってもEBDを繰り返しているうちに狭窄の数や内径が改善していく.逆に,深寛解を維持できなければ,狭窄の数や内径が悪化していくだけでなく,腸管変形が進んでいき,狭窄部への到達も困難になっていく.EBD目的のBAEで炎症所見を認めた場合には内科的治療の強化を検討する.

EBDすべき狭窄が残存している場合には,そのまま食事制限を続け,2〜6カ月後に再入院し,EBDを行う.

EBDすべき狭窄のすべてを12mmまでEBDできた場合には6〜12カ月後に,13.5mm以上の径までEBDできた場合には12カ月後にBAEを行い,必要に応じて15mmまでEBDを行う.

充分な内科的治療を行いつつEBDを行ってもすぐに再狭窄し,6カ月未満の間隔でEBDを必要とする場合には,外科的治療も検討する.その場合には経口・経肛門の両方からのBAEを行い,切除を要する範囲を示すための点墨や,小腸を何cm切除して何cm残せるのかを評価しておく.

外科的治療で部分切除術となった場合の吻合方法について,機能的端々吻合が行われると吻合を越えての内視鏡挿入が困難になりやすく,吻合部狭窄の頻度も高い.Kono-S吻合であれば内視鏡挿入が容易であり,吻合部狭窄も起こしにくい 3といわれており,当施設でも採用している.

ⅩⅩⅤ 最後に

本稿では,クローン病小腸狭窄に対するEBDについて,できるだけ詳細に解説した.確固としたエビデンスに乏しいものもあるが,当施設にて多数例の経験から編み出した工夫を記載した.操作性や治療時間など,まだ改良の余地があり,今後も手技の工夫や器具の改良を重ねていくことが必要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:矢野智則(富士フイルム㈱,富士フイルムメディカル㈱),山本博徳(富士フイルム㈱,富士フイルムメディカル㈱)

文 献
 
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