GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2018 Volume 60 Issue 6 Pages 1276-1279

Details

概要

沿革・特徴など

667年天智天皇の近江大津宮遷都から1350年以上の歴史を有する山と湖に囲まれた風光明媚な大津市に,本院はあります.本院屋上からは,琵琶湖や比良山系が一望できます.

本院は,120年に近い歴史を有します.明治32年に滋賀県立避病院が大津市立圓山病院として開設されたことに始まり,その後大津回生病院,国民健康保険直営大津市民病院を経て,昭和39年1月大津市民病院となり現在地に移転しました.平成11年には地下1階,地上9階の免震構造,屋上ヘリポートを有する本館が竣工され,平成29年4月より,地方独立法人 市立大津市民病院となり,現在に至っています.

常に市民や地域とともにある病院で,市民や地域から愛され信頼され続ける病院であることを願い,質の高い医療を提供できるよう,職員一丸となって日々努めています.

組織

消化器内視鏡センターに,専属の医師はいませんが,センター所長を若林直樹が,副センター所長を松本尚之が兼任しています.検査・治療は,消化器内科医師が担当し,看護師は,看護局救急入院病棟の所属となっています.

検査室レイアウト

 

 

 

当消化器内視鏡センターの特徴

2010年8月30日に,総床面積650m2と滋賀県内最大規模の消化器内視鏡センターとして,当時の消化器科の内視鏡部門から独立して開設され,現在に至っています.

“患者に優しくかつわれわれ医師をはじめとするメディカルスタッフにも優しい”をコンセプトに,患者動線およびスタッフ動線に配慮した機能的な検査室をレイアウトしています.

増加傾向が続くと予想された大腸がん対策,高齢化対策として,下部消化管内視鏡検査での腸管前処置室およびトイレ設置に配慮しています.さらに下部消化管内視鏡検査が終了した直後に速やかに対応できるよう,検査室前室にもトイレを設置しています.

また胆・膵がん精査として超音波内視鏡検査の需要が増えていることもあり,5ベッドを持つリカバリー室を有しています.

検査件数も開設当初の年間約6,500例から,年々増加傾向にあり,最近の2-3年は,ほぼ9,000件以上で推移しています.

2015年9月より,内視鏡システムを一新し,最新の診断・治療体制となっています.

CO2送気装置をほぼ全検査室に配備し,下部消化管内視鏡検査時,ESDなどの治療・処置時,ERCP関連の検査・処置時に使用し,患者さんの身体負担軽減につとめています.

画像管理システムは,電子カルテと連動のNEXUSデジタル画像ファイリングシステムを使用し,画像情報だけではなく,検査実施情報,洗浄履歴などを管理し,内視鏡機器の保全などにも留意しています.

緊急内視鏡においては,消化器内科医師2名,内視鏡担当看護師1名のオンコール体制で常時対応しています.本院の救急部門である“ERおおつ”のスタッフや,外科スタッフからの当センターへの信頼が高い要因の一つと考えています.

スタッフ

(2018年1月現在)

医   師:指導医2名,専門医6名,その他スタッフ3名

内視鏡技師:I種4名

看 護 師:8名

事 務 職:3名

そ の 他:2名

設備・備品

(2018年1月現在)

 

 

実績

(2016年4月1日~2017年3月31日まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は,臨床研修指定病院であり,初期研修医が,各学年約10名研修しています.当科には,研修医全員が1-2カ月の期間ローテーションをしており,消化器疾患全般にわたり,診断・治療・緊急対応について上級医が指導しています.内視鏡検査・治療手技に関しても,初期研修から積極的かつ能動的にかかわる方針のもと,止血術,ESD,ERCP関連手技への介助の研修を行います.また指導医の十分な監督下で,医療安全に配慮しながら,鎮静下などリスクの少ない患者の上部消化管内視鏡検査(抜去時の観察から開始)研修も行います.緊急内視鏡検査・治療は,初期研修医にとって,非常に研修すべきことが多く含まれており,むしろ通常時間内の消化器内視診療以上に勉強になるため,オンコールでの参加をほぼ必須としています.

3年目以降の後期研修医は,まず上部消化管内視鏡検査の習得を目標として,指導医の監督下で,挿入・観察における適切なスコープ操作,正確な生検,さらには所見記載を一緒に行います.同時に下部消化管内視鏡検査についても,時間制限を設けて,指導医の監督下に手技の習得を行います.上部および下部消化管内視鏡検査の習得状況に応じて,ERCP,EUSなどの胆膵内視鏡検査手技の習得を開始しています.

内視鏡的止血術やイレウス管挿入といった緊急内視鏡治療は,できる限り早い習得が望ましいとの考えから,リスクの少ない症例から,上級医の指導下に早い時期から習得を目指しています.個々人の技量習得に応じて,上部および下部EMR習得を開始し,最終的には,バルーンタイプの小腸内視鏡検査・治療,ESD,ERCP関連治療手技,消化管内視鏡ステント留置,EUS-FNAなどの習得を目標としています.ESDに関しては,まず胃(前庭部)から開始し,その後は,食道,大腸もリスクの少ない症例を十分な指導体制のもとに開始しています.

現状の問題点と今後

2010年消化器内視鏡センター開設当時の予想以上に,“より苦痛の少ない検査”という患者ニーズが高まってきています.特に健診センター受診者では経鼻内視鏡検査を希望することが増加しています.通常診療での患者も,鎮静下での検査を希望する患者が増加しており,現在のリカバリー環境では対応困難となりつつあり,再整備の検討が必要です.さらに高齢化も予想以上に進んでおり,特に下部消化管内視鏡検査の前処置の問題が顕在化しています.基本的には自宅での前処置を原則としていますが,高齢者においては,院内での前処置を希望される場合が多く,しかも単にトイレの設置数の問題ではなく,前処置中やトイレ中の介助にスタッフが必要となり,実際の内視鏡診療にスタッフが足りないとことも今後予想されます.

対策型胃がん検診に内視鏡検査が導入され,今後も上部消化管内視鏡検査件数の増加が予想されます.そのなかで,消化器内科医師は,外来・病棟業務,救急対応,患者・家族へのインフォームドコンセント,会議・研修への参加に時間を割かれながら,消化器内視鏡診療に従事しており,検査件数の増加やより高度治療への対応に,人員不足になりつつあるのが現状です.内視鏡検査技師資格を持つ看護師も,昨今の看護体制の観点から,通常病棟勤務を優先せざるをえない状況もあり,現在消化器内視鏡センターに配置されているのは4名のみです.内視鏡検査技師資格のない看護師が,局注,クリップ,CSP,EMRといった手技に積極的に関われるように,看護部局と協力し教育体制の整備しているところです.

2015年に内視鏡システムは一新しましたが,消化器内視鏡分野の機器進歩も早く,超音波内視鏡,バルーンタイプ小腸内視鏡,カプセル内視鏡,画像ファイリングシステムの更新が急務であり,これからの時代を背負う若い医師にできるだけ魅力のあるセンターであり続けるため,ソフト・ハード両面から,早急に再整備をはかる必要性を痛感しています.2017年度中に,画像ファイリングシステムの更新,カプセル内視鏡システムの更新を予定しています.

 
© 2018 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top