GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF CHOLEDOCOLITHIASIS CAUSED BY FISH BONES THAT SERVED AS CORES AROUND WHICH GALLSTONES DEVELOPED
Yukari MORIMOTO Taizo FUJITATatsunori MIZUNOAroka ITOTomoyuki NAKANOTakashi HACHISUKATakanari TATSUMIToshihiro MORITANoboru KONISHIMasahiko MATSUMURA
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2018 Volume 60 Issue 7 Pages 1338-1343

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要旨

症例は73歳女性.右季肋部痛,背部痛を主訴に当院を受診し,腹部CTにて総胆管下部に線状の石灰化陰影を認め,総胆管結石と診断した.内視鏡的乳頭切開術(EST)を行い,針状の結石を2本摘出した.病理組織学的所見や成分分析の結果,魚骨と判断した.魚骨を核とした総胆管結石の報告はまれであり,Vater乳頭に対する未処置例において,複数の魚骨が存在した報告例は検索しえた限りみられず,文献的考察を加えて報告する.

Ⅰ 緒  言

魚骨を核とした総胆管結石の報告はまれである.今回われわれは,Vater乳頭への処置歴がないにもかかわらず,魚骨を核とした総胆管結石が2個存在したまれな一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

Ⅱ 症  例

患者:73歳女性.

主訴:腹痛,背部痛.

既往歴:不整脈に対し,ペースメーカー挿入中.虫垂切除術後.狭心症,高血圧,脂質異常症.

内服薬:ランソプラゾール,ピタバスタチン,エゼチミブ,アムロジピン,アスピリン腸溶錠,ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド,硝酸イソソルビド.

家族歴:特記事項なし.

現病歴:2016年12月に起床時から心窩部痛を自覚し,背部痛,右季肋部痛も伴うため,当院を受診した.血液検査で肝障害は見られなかったが,CTで総胆管結石を疑い,精査加療目的で入院となった.

入院時現症:身長 144cm,体重 58kg,意識清明,眼球結膜に黄染なし,腹部は平坦・軟で右季肋部に軽度の圧痛あり.

入院時臨床検査所見:来院時の血液検査ではBUN:22.8mg/dl,Glu:120mg/dl,CRP:0.42mg/dlと軽度上昇を認めるのみで肝胆道系酵素の上昇は見られなかった.

腹部CT所見:総胆管下部に,横断面では点状の,冠状断面では線状の石灰化陰影を認めた(Figure 1).

Figure 1 

初診時腹部CT検査(冠状断).

総胆管下部に線状の石灰化陰影を認めた.

以上より総胆管結石症を疑い,精査及び治療目的に内視鏡的逆行性胆管造影を施行した.

内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)所見:Vater乳頭の腫大や開大は見られず,周囲に胆道との瘻孔も見られなかった(Figure 2-a).胆管造影では総胆管は径10mmと軽度拡張しており,総胆管下部に3.5mm×30mm大の棍棒状の陰影欠損を認め(Figure 2-b),総胆管結石と判断した.内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy;EST)を施行し,中切開とした.バルーンカテーテルを用いて排石したところ,多量の胆泥とともに針状の結石が排出された.排出した結石は把持鉗子を用いて回収した.結石は長さが35mm大で黒色の針状であった(Figure 2-c).

Figure 2 

1回目内視鏡的逆行性胆管造影.

a:Vater乳頭の腫大や開大は見られず,周囲に胆道との瘻孔も見られない.

b:胆管造影では総胆管下部に3.5mm×30mm大の棍棒状の陰影欠損を認めた.

c:結石は長さが35mm大で黒色の針状であった.

臨床経過:EST翌日から心窩部痛と発熱を認めた.

EST翌日臨床検査所見:T-Bil:1.3mg/dl,ALP:438U/l,AST:312U/l,ALT:110U/l,γ-GTP:136U/l,CRP:1.29mg/dlとビリルビンの軽度上昇を伴う肝機能障害と炎症反応の軽度上昇を認めた.

EST翌日CT:総胆管下部に線状の石灰化陰影の残存を認め(Figure 3),再度ERCを施行した.

Figure 3 

EST翌日のCT.

総胆管下部に線状の石灰化陰影を認めた.

2回目ERC所見:乳頭はEST後であるが,出血は無く,異物の付着も見られなかった.総胆管中部に線状の陰影欠損を認めた.初回ERCの際と同様に結石の存在を疑い,バスケットカテーテルを用いて排出し,鉗子口から回収した.結石は長さが35mm大で黒色の針状であった.

臨床経過:その後の経過は良好で,肝機能異常を認めることなく第16病日に退院となった.

結石所見:排出された2個の線状結石はともに弾性硬で,長さが35mm大で黒色の針状を呈していた.形状から総胆管に迷入した魚骨を核とした総胆管結石を疑い,病理組織学的検査と成分分析を依頼した.

病理組織学的検査の結果,HE染色ではビリルビン沈着物の中に断片化した針状の構造物を認めた.石灰化骨および類骨の染色法であるTripp-Mackay法で処理したところ,ビリルビン沈着は除去され,骨様構造が確認された(Figure 4).対照としてウマヅラハギの魚骨を用いて同様の処理を行ったところ,ほぼ同様の染色性,構造を示した.

Figure 4 

Tripp-Mackay法では,ビリルビン沈着は除去され,骨様構造が確認された.

また,成分分光光度計にて成分分析を依頼したところ,リン酸カルシウムとタンパク質との結果であった.成分比率は算出できなかったが,本症例の赤外線吸収波形(Figure 5-a)が,比較として測定したサバ(Figure 5-b)およびサケ(Figure 5-c)の魚骨の赤外線吸収波形と極めて類似していたため,本症例は魚骨を核とした総胆管結石であると診断した.

Figure 5 

結石の赤外線吸収波形は3例とも類似している.

a:本症例の結石.

b:サバ魚骨.

c:サケ魚骨.

Ⅲ 考  察

胆管内異物を核とした総胆管結石症の報告は,比較的少ない.医学中央雑誌で「魚骨」「総胆管」「異物」,PubMedで「fish bone」「biliary duct」をキーワードとして2016年まで検索しえた限りでは,乳頭未処置例にもかかわらず魚骨が迷入して核となり総胆管結石を形成した報告は,自験例を含めわずか11例 1)~9であった(Table 1).魚骨が2本以上逆流した報告は自験例のみであった.

Table 1 

乳頭未処置例における魚骨を核とした総胆管結石症の報告例.

Banら 10は総胆管異物63症例について報告し,①手術時の遺残:30例,②経口摂取物の逆流:21例,③体外からの侵入物:12例と分類している.

手術時の遺残としては,開腹胆嚢摘出時に使用した結紮糸 11,総胆管切開後に留置したTチューブの断片遺残物 12などが報告されているが,近年では腹腔鏡下胆嚢摘出術の増加に伴い,金属クリップを核とした総胆管結石の報告 13),14が増加している.

体外からの侵入物としては,弾丸の金属片が30~50年後に総胆管異物として発症した症例 15が報告されている.

寄生虫の胆道への迷入症例 16),17のような自動性のある異物以外に,経口摂取物の胆道への逆流をきたす要因として,胆道再建術後,胆道と消化管の瘻孔形成,乳頭括約筋不全などが考えられる.膵頭十二指腸切除後の症例 18,や総胆管十二指腸吻合後の症例 19などが報告されており,EST後に頻回にわたり魚骨を核とした総胆管結石を繰り返した症例 20も報告されている.自験例はVater乳頭への処置歴はなく,Vater乳頭の形態・機能異常や十二指腸と胆道の瘻孔形成も見られなかったため,経口摂取物である魚骨が偶然,Vater乳頭から逆流したものと考えられた.経口摂取物の逆流例として,Ordaら 4は,手術歴のない例においてサクランボの茎,木質繊維,植物繊維,トマトの皮,ナッツ,魚骨などが胆管内異物として認められたと報告している.乳頭括約筋機能不全を認めないにもかかわらず,経口摂取物が胆管内へ逆流するには物理学的な力が必要であるため,蠕動運動により異物がVater乳頭と対側から押し上げられ,その反動によりVater乳頭を通過するのではないかと推測した報告 21がある.またToouliら 22は,乳頭括約筋圧を測定し,総胆管結石を有する症例では,Vater乳頭括約筋の逆蠕動が有意に増加しており,これが十二指腸からの逆流を惹起する可能性について考察しているが,経口摂取物が胆管へ逆流する機序については,依然,明らかにはなっていない.魚骨の逆流による総胆管結石症例では,Vater乳頭部癌の合併 23,膵頭十二指腸切除術後 18やEST後 20),21などのVater括約筋不全を疑う症例ばかりではなく,Vater乳頭括約筋機能が保持されていると考えられる乳頭未処置例も報告されている.したがって,乳頭処置歴の有無にかかわらず,消化管異物が胆道内へ逆流する可能性については考慮に入れておくべきと考える.

最近の報告では,CT画像の鮮明化に伴い,初診時のCTで総胆管内に点状または線状の高輝度陰影を認める例 7),9),12),18),21が増加している.CT画像から魚骨の迷入と診断したうえで,治療方針を決定している報告 21もある.自験例では初診時のCT画像で,横断面では点状陰影を,冠状断面で線状高輝度陰影を認めていたものの,魚骨との診断に至らなかった.初回の胆管造影時にバルーンカテーテルにて針状の結石を排出した際に,初めて魚骨の逆流による総胆管結石と考えた.その後,遺残を疑い,再度排石を行ったときには,針状結石の軸と胆管軸がなるべくずれないようにとバスケットカテーテルを選択し,排石を行った.また,排石後の針状の結石は,鉗子口から回収した.消化管異物の多くは小さなものであれば自然排泄が期待できるが,魚骨は鋭利な場合もあり穿孔もまれに報告されており 24,可能な限り回収することが望ましいと考える.今回,われわれは初診時に魚骨による総胆管結石と診断しえなかったが,今後は特徴的な画像所見から魚骨を念頭に置くことにより,治療前診断だけでなく,効果的な排出方法や回収方法を治療前に計画できるようになるものと考えられた.

Ⅳ 結  論

Vater乳頭への処置歴がないにもかかわらず,魚骨を核とした総胆管結石が2個存在したまれな一例を経験した.乳頭機能不全の有無にかかわらず,初診時のCTなどで点状または針状などの特徴的な陰影を認めた際には,魚骨の総胆管への逆流による総胆管結石の可能性も念頭に置き,適切な対応を講ずるべきであると考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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