GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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CURRENT STATUS AND PERSPECTIVES ON INTERVENTIONAL ENDOSCOPIC ULTRASOUND(EUS)
Shomei RYOZAWA
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2019 Volume 61 Issue 1 Pages 7-15

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要旨

近年,Interventional EUSによる診断や様々な治療手技が開発され実施されている.EUS-FNAはこれまでアプローチ困難であった消化管および消化管近傍の病変に対して安全かつ確実な生検診断を可能とした.Interventional EUSによる治療は,大きく3つに分類される.すなわち,1)EUSガイド下ドレナージ術,2)EUSガイド下腹腔神経叢ブロック・融解術,3)その他の治療である.また,最近では,膵癌などによる十二指腸狭窄に対して,EUSを用いた胃空腸吻合術も臨床応用されるようになった.Interventional EUSによる診断と治療は限りない可能性を秘めており今後のさらなる発展が期待される.

Ⅰ 緒  言

超音波内視鏡(EUS)機器の進歩は目覚ましく,近年ではEUSガイド下に消化管内から消化管壁内や消化管近傍の対象物を穿刺して検体を得る超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-guided fine-needle aspiration:EUS-FNA)も行われるようになり,さらに診断のみならず治療にも応用されている.このようなEUSを用いた穿刺処置は,画像診断のみを目的としたEUSと区別してInterventional EUSと呼ばれている.Interventional EUSはこれまで非手術的な穿刺が困難であった部位に対して,超音波画像下に生検や穿刺治療を安全かつ確実に行えるのが特徴である.本手技を用いた診断は1992年にVilmannら 1によって報告された膵病変に対する生検が最初である.また治療は同年のGrimmら 2による膵仮性嚢胞ドレナージ術の報告に始まる.Interventional EUSを用いた治療は,各種ドレナージ術や薬剤注入療法などに応用されている.さらに,先進的な治療として専用デバイスを用いて胃空腸吻合術を行う試みなども報告されている.本稿では,現在施行されている代表的なInterventional EUSについて概説する.

Ⅱ EUS-FNAによる診断

1.適応と禁忌

EUS-FNAは前述のように膵病変に対する生検法として報告されたのが始まりであるが,現在ではTable 1に示すようなさまざまな病変に対して行われている.現状では,膵病変のほか,消化管粘膜下腫瘍の中でも特に消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)疑いの病変,縦隔や腹腔内の腫大リンパ節に対して行われることが多い.一般的に,EUS-FNAの主な適応および目的として,①腫瘍性病変の鑑別診断,②癌の進展度診断(リンパ節転移や少量の胸・腹水),③化学/放射線療法施行前の組織学的確診,の3点があげられる 3.施行にあたってはEUS-FNAが安全かつ容易に実施可能で,今後の治療方針決定に有用な情報を与える場合に限るべきである.

Table 1 

EUS-FNAの主な適応病変.

一方,禁忌としてはEUSで病変が明瞭に描出できない場合,穿刺経路上に血管が介在する場合,EUS-FNAにより偶発症の発生が強く危惧される場合,などである.抗血栓薬内服中の症例については,「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」 4においてEUS-FNAは出血高危険度の手技とされており,ガイドラインに基づいた対処をすべきである.

2.成績

充実性膵腫瘤に対する感度は85%-89%,特異度は96%-99%ときわめて良好な成績が報告されており 5)~7,EUS-FNAは充実性膵腫瘍に対する病理診断における検体採取手技の第一選択のひとつとなっている.消化管粘膜下腫瘍に対するEUS-FNAは,可動性が大きく病変が硬い場合が多いことから,特に2cm未満の小病変では検体採取が困難であるが 8,2cm以上の胃粘膜下腫瘍では85.7%-86%と良好な検体採取率が報告されている 9),10.また消化管粘膜下腫瘍の外科切除例に対する正診率は95.2%-97%と高率であったと報告されている 11),12.リンパ節腫大に対するEUS-FNAも感度82%-95.3%,特異度89%-100%と良好な成績が報告されており 13)~16,病期診断や原発巣特定などにおける有用性が示されている.一方,胆道病変に対するEUS-FNAの報告はまだ少なく,胆道狭窄病変についての2つのメタ解析 17),18では,感度は66%と80%,特異度は100%と97%と報告されている.

3.偶発症

EUS-FNAの主な偶発症は,出血,膵炎,穿孔などが報告されているが,その多くは軽症であり頻度も0.29%-3.4%ときわめて低い 19.腫瘍の播種の発生頻度は極めて低く,これまでに13例が報告されているのみである 19.最初の報告例 20がIPMN(intraductal papillary mucinous tumor:膵管内乳頭粘液性腫瘍)に対するものであり,以後本邦では嚢胞性膵腫瘍に対するEUS-FNAを禁忌としている施設が多い.しかしながら,これまでに報告された13例中9例は通常型膵癌であり,切除可能かつ膵内に限局している腫瘍に対するEUS-FNAの可否や播種症例に対する対処法については,今後も議論の余地があると思われる.

4.採取検体による新たな診断の試み

近年の分子生物学的解析法の進歩に伴い,EUS-FNA検体の単なる組織診,細胞診といった病理診断のみならず,得られた検体を用いた遺伝子診断や抗腫瘍薬感受性試験などへの臨床応用が期待されている 21)~25

Ⅲ Interventional EUSを用いた治療

Interventional EUSを用いた治療は大きく3つに分類される(Table 2).すなわち,1.EUSガイド下ドレナージ術,2.EUSガイド下腹腔神経叢ブロック・融解術,3.その他の治療,である.

Table 2 

Interventional EUSを用いた治療.

1.EUSガイド下ドレナージ術

1)EUSガイド下膵液体貯留ドレナージ術

2013年の改訂Atlanta分類 26で,急性膵炎は間質性浮腫性膵炎と壊死性膵炎に分けられ,間質性浮腫性膵炎に基づく急性膵周囲液体貯留(acute peripancreatic fluid collection:APFC)とそれが器質化した膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:PPC),壊死性膵炎に基づく急性液状化壊死(acute necrotic collection:ANC)とそれが器質化した被包化壊死(wolled-off necrosis:WON)の大きな4つのカテゴリーに分類された.

このような新しい分類に則った診断治療指針は,2014年に「膵炎局所合併症(膵仮性嚢胞,感染性被包化壊死等)に対する診断・治療コンセンサス」 27としてまとめられている.治療を要するのは感染性あるいは有症状のPPC/WONである.感染性PPC/WONのうち,抗生剤などの保存的治療のみで感染コントロールが困難な場合に,ドレナージが必要となる.WONは網嚢腔等に貯留した浸出液や膵周囲壊死物質が被包化されたものであり,基本的に胃漿膜と網嚢は癒着しているため,経胃的にWONを穿刺しても内用液が腹腔内に漏出する危険性が低く,比較的安全なドレナージが施行できる.PPCについては,嚢胞壁が胃壁と離れており,穿刺に際して嚢胞内溶液が腹腔内に漏出する可能性があるため注意を要する.

EUSガイド下膵液体貯留ドレナージ術の手技成功率は約95%,治療成功率は約90%,また,出血,穿孔,嚢胞内感染,ステントの迷入などの偶発症発生率は約11%と報告されている 28)~30.一方,ドレナージ単独では治療に難渋する症例も少なくない.このような症例に対して内視鏡的ネクロセクトミーが施行されるようになっている.これは,ドレナージルートを大口径のバルーンで拡張した後に,WON内腔に直接内視鏡を挿入し,壊死物質除去や洗浄を行う手技である.日本,ドイツ,アメリカで行われた多施設研究 31)~33では,それぞれ75%,80%,91.3%と良好な治療成功率が報告されている.しかしながら,偶発症発生率(14%-33%)ならびに手技関連死亡率(6.7%-11%)はいずれの報告でも高い結果となっており,ステップアップアプローチが推奨される.すなわち,最初から一期的に内視鏡的ネクロセクトミーを行うのではなく,まずはEUSガイド下ドレナージ術を試み,奏功しない症例のみ内視鏡的ネクロセクトミーを行うべきである.

2)EUSガイド下胆道ドレナージ術(EUS-guided biliary drainage:EUS-BD)

閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージとして,多くの施設では経乳頭的な内視鏡的胆道ドレナージまたは経皮経肝的胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)が行われるが,これらの手技が困難な場合もある.近年,このような症例に対しEUS-BDが行われるようになってきた.EUS-BDは,その方法により以下の4つに大別される.すなわち,①経十二指腸的に肝外胆管を穿刺する方法(EUS-guided choledochoduodenostomy:EUS-CDS)(Figure 1),②経胃的に肝内胆管を穿刺する方法(EUS-guided hepaticogastrostomy:EUS-HGS),③EUSガイド下に胆管を穿刺した後に,順行性にガイドワイヤーを乳頭から出して,そのガイドワイヤーを利用して経乳頭的に胆管にアプローチする方法(EUS-guided rendezvous technique:EUS-RV),④EUSガイド下に胆管を穿刺した後に,順行性にガイドワイヤーを乳頭から出してステントを留置する方法(EUS-guided antegrade stenting:EUS-AGS),である.

Figure 1 

EUS-guided choledochoduodenostomy(EUS-CDS).

a:スコープをpushの状態にすると先端が肝門部方向に向く.

b:19GのFNA用穿刺針を肝外胆管に穿刺する.

c:胆管を造影し,ガイドワイヤーを挿入後,胆管拡張用カテーテルで瘻孔拡張した.

d:8.5Frのプラスチックステントを留置した.

上述したようなERCP困難例かつPTBD困難例がEUS-BDの良い適応である.EUS-CDSとEUS-HGSで手技成功率はそれぞれ94%と87%であり,偶発症発症率は19%と27%と報告されている 34.偶発症として,気腹症,胆汁漏出・胆汁性腹膜炎,出血,ステント逸脱などがある.また,世界の主要な6施設で行った多施設研究では240症例中4例の手技関連死亡例も報告されている 35.Holtら 36は,EUS-BDが必要な症例を前向きに検討したところ,様々なテクニックを用いてもERCPが不成功であったためにEUS-BDを要した症例は,対象となった524例中わずか3例(0.6%)であったと報告している.本法はEUS下瘻孔形成術として保険収載されているものの,専用のデバイスが未だ開発されておらず,確立した手技とは言えない状況である.その適応と手技についても未だ議論されている状況であり,安易な施行は避けなくてはならない.現在,胆道学会が中心となり,日本消化器内視鏡学会,日本消化器病学会,日本膵臓学会が合同でガイドラインを作成中であり,今後本邦におけるEUS-BDのあり方に一定の指針が出されるものと期待される.

3)EUSガイド下胆嚢ドレナージ術(EUS-guided gallbladder drainage:EUS-GBD)

EUS-GBDは広い意味では,上述のEUS-BDの範疇に入る手技ではあるが,現在保険収載されているEUS下瘻孔形成術の適応外である.胆道ドレナージ同様に内瘻化できるといった観点からは有用な手技になり得るが,これまでに症例数は少なく確立した手技とは言えない.現在は急性胆嚢炎に対する特殊なドレナージ法としての位置づけであり,外科的手術,経皮的ドレナージ,経乳頭的ドレナージ不能な症例において,専門的技術を有する内視鏡医が所属する施設においてのみ施行を検討すべきである 37

4) EUSガイド下膵管ドレナージ術(EUS-guided pancreatic duct drainage:EUS-PD)

EUS-PDは,経乳頭的に深部膵管へのアクセスが困難な慢性膵炎症例や,膵管消化管吻合部の狭窄等による膵管拡張症例において,難治性疼痛や膵機能低下を呈する症例を適応として施行されている.ドレナージ方法として,いわゆるランデブー法(穿刺後にガイドワイヤーを進め,乳頭もしくは膵管消化管吻合部から腸管内に出して,それを利用して膵管ドレナージを行う方法),とそのままダイレクトにステントを留置する方法がある.

2.EUSガイド下腹腔神経叢ブロック・融解術(EUS-guided celiac plexus block/neurolysis:EUS-CPB/CPN)

通常,局所麻酔薬やステロイドなど神経を破壊しない薬剤を注入することをブロックと称し,アルコールやフェノールなどで神経を破壊することを融解術と称する.EUS-CPB/CPNは1996年Wiersemaらによって初めて報告された 38.リアルタイムに施行でき,刺入経路が短いため,安全かつ確実なCPB/CPNを行うことができる.

CPBは主に慢性膵炎に伴う疼痛,CPNは切除不能の膵癌などに伴う癌性疼痛が対象となる.施行時期に関しては,モルヒネなどの麻薬を大量投与した後には効果が妨げられるため,より早い時期に施行すべきであると言われている.腹腔動脈分岐部左右に腹腔神経叢が存在するため,腹腔動脈起始部の左右両側を穿刺し薬剤を注入する.両側穿刺が困難な場合には腹腔動脈分岐部直上1カ所のみに穿刺注入してもよい.近年,腹腔神経節(celiac ganglia)に穿刺注入する(EUS-guided celiac ganglia neurolysis:EUS-CGN)(Figure 2)が効果的であるとの報告もある 39

Figure 2 

EUS-guided celiac ganglia neurolysis(EUS-CGN).

a:腹腔神経節:腹腔動脈起始部の頭側左に径10mm,5mm,5mmの類円形の低エコーとして腹腔神経節が描出されている(矢印).糸状の低エコーの枝でつながっているように見える.

b:EUSガイド下腹腔神経節融解術:それぞれの神経節を穿刺針(矢印)で刺入してエタノールを注入した.

2009年のメタアナリシス 40では,膵癌に対するEUS-CPNの除痛率は約80%,慢性膵炎に対するEUS-CPBの除痛率は約60%と報告されている.偶発症については,交感神経がブロックされるため,血管拡張による血圧低下や腸蠕動運動低下による下痢が生じることがあるが多くは一過性である.また,エタノール注入による酩酊状態やエタノール刺激による一過性の疼痛増強が見られることがある.重篤なものとしては,エタノールの胃壁内注入による胃穿孔,穿刺部位の血腫や後腹膜膿瘍などが報告されている.

3.その他の治療

1)腫瘍内局注治療

これまでに膵腫瘍に対して,EUSガイド下に局注治療を施行する試みとして,パクリタキセル 41,アデノベクター 42,樹状細胞 43などの報告がある.

2)腫瘍焼灼治療

インスリノーマや切除不能膵癌に対するEUS-guided radiofrequency ablation(EUS-RFA)が報告されている 44),45

3)放射線粒子埋め込み

Jinら 46は,切除不能進行膵癌患者に放射線粒子を埋め込み,腫瘍縮小効果,除痛効果が得られたと報告している.

4.今後の新たな展開

1)Interventional EUS専用デバイス

これまで,EUSガイド下膵液体貯留ドレナージ術や胆道ドレナージ術,胆嚢ドレナージ術などに際して専用のメタルステントがなく,ERCP関連手技で用いられるメタルステントが代用されてきた.しかしながら,こういったステントは本来胆管内留置を目的としたものであり,消化管と嚢胞壁,胆管,胆嚢などを密着させて吻合することができないため,ステント迷入や胆汁漏出などの偶発症の要因となっていた.Hot AXIOSTM(Boston Scientific社,USA)(Figure 3)はInterventional EUSを用いた吻合術のための専用メタルステントであり,通電可能なデリバリーシステムを有するため,通電穿刺ならびにステント留置を一期的に施行可能である 47.本デバイスのもっとも良い適応はPPC/WONに対するドレナージ術と思われる.Walterら 48は,本デバイスを用いて61症例の膵液体貯留ドレナージ術を行い良好な成績が得られたと報告している.本邦では2018年11月より市販開始となっている.

Figure 3 

Lumen-apposing typeのフルカバードメタルスタント:Hot AXIOSTM

2)胃空腸吻合術

膵頭部癌の進展などによる十二指腸狭窄に対し,通常は内視鏡的十二指腸ステント留置や外科的な胃空腸吻合術が行われている.これに対し,EUSガイド下に経胃的に空腸を穿刺し,そこに瘻孔を作る試みが動物実験レベルで行われてきた 49が,ItoiらはHot AXIOSTMおよび専用に開発したダブルバルーンチューブを用いたEUSガイド下胃空腸吻合術(Figure 4)を開発し臨床応用に成功した 50.さらに症例を重ねて安全性,有用性を確立することが望まれる.

Figure 4 

EUSガイド下胃空腸吻合術のシェーマ(糸井隆夫教授より).

Ⅳ おわりに

Interventional EUSは,消化管壁在病変や消化管近傍臓器に対する安全かつ確実な生検の手段であるとともに,新たな内視鏡治療手技として限りない可能性を秘めている.今後,専用のデバイスの開発とともに多くの手技が安全かつ確実な手技として確立していくことが望まれる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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