GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Prospective comparison of endoscopic bilateral stent-in-stent versus stent-by-stent deployment for inoperable advanced malignant hilar biliary stricture 1).
[in Japanese]
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2019 Volume 61 Issue 11 Pages 2541

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【背景および目的】切除不能高度悪性肝門部領域胆管狭窄に対するアンカバードタイプの自己拡張型金属ステント(uncovered self-expandable metallic stent:USEMS)を用いた両葉ドレナージは,stent-in-stent(SIS)法あるいはstent-by-stent(いわゆるside-by-side:SBS)法がある.いずれが有用なのかは明らかとはなっておらず,パイロット試験を計画した.

【方法】多施設共同前向き比較試験により高度狭窄を有する切除不能高度悪性肝門部領域胆管狭窄を登録した.主要評価項目は有害事象発生率,副次評価項目は技術的成功率,臨床的成功率,reintervention成功率,ステント開存期間,生存期間,などとした.

【結果】2016年6月~2018年1月までの期間中,病理組織学的に確定診断した69例をSIS法(34例),SBS法(35例)に無作為に割付した.主要評価項目である有害事象発生率は両群に有意差は認められなかった(SIS法:23.5%,SBS法:28.6%,P=0.633).副次評価項目は技術的成功率(SIS法:100%,SBS法:91.4%,P=0.081),臨床的成功率(SIS法:94.1%,SBS法:90.6%,P=0.688),reintervention成功率(SIS法:100%,SBS法:91.7%,P=0.255),3カ月後のステント開存率(SIS法:85.3%,SBS法:65.7%,P=0.059),6カ月後のステント開存率(SIS法:47.1%,SBS法:31.4%,P=0.184),50% ステント開存期間(SIS法:253日,SBS法:262日,P=0.865),50% 生存期間(SIS法:209日,SBS法:221日,P=0.197)のいずれも両群間で有意差はみられなかった.

《解説》

本試験は両群ともに臨床成績に有意差はなかった.興味深いことに本論文中の図ではステント開存期間や生存期間はステント留置150日後まではSIS法が長く(検定未施行),長期経過により両群間で有意差がみられなくなっていた.著者らは本試験の限界として,1)少数例の検討であること,2)β(Type Ⅱ)エラーの可能性,3)熟練した内視鏡医のみが参加したこと,4)韓国のみで販売されているステント(7-Frデリバリーシステム径,8 or 10mm径)を使用していること,を挙げている.なお,本試験では乳頭部をまたがない胆管内留置を行っていた(使用ステント長は未記載).欧米と使用ステントの種類,径,長さ,留置方法が異なる点も限界として挙げておくべきであろう.欧米では6-Frデリバリーシステム径のlaser cut typeのUSEMSを用いたSBS法を行い,ステント径は8mm,ステント長もreinterventionを考慮して10cm以上の長いUSEMSによる乳頭部をまたいだ留置が主流である.6-Frデリバリーシステム径は2本のUSEMSを同時に留置することが可能である.本試験で用いられた7-Frデリバリーシステム径は同時展開が不可能なためSBS法では不利である.欧米では,SIS法は高難度手技として認識されており,これまでSIS法は標準的とされていない.本試験の結果を受け,依然としてSBS法が標準的な留置法としての認識は変わらないであろう.しかし,150日後までの経過に関しては慎重に解釈するべきである.理由は明らかではないが,胆汁の生理的な流れに沿ったSIS法による留置形態が有利なのかもしれない.これまで本邦ではbraided typeのUSEMSを用いたSIS法による両葉ドレナージが主流であった.近年,細径laser cut typeのUSEMSの登場によりSBS法による留置が普及しつつある.本邦でも6-Fr laser cut typeのUSEMSを用いた多施設共同無作為化比較試験が行われている(UMIN000011699).主要評価項目はrecurrent biliary obstructionと本試験とは異なるが,その結果報告が待たれる.現在,本邦を中心にUSEMSの細径化の流れがみられるが,今一度,SIS法とSBS法を慎重に見直す時期にきたのかもしれない.

文 献
 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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