GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC ULTRASOUND-GUIDED FINE-NEEDLE ASPIRATION (EUS-FNA) IN PATIENTS WHO ARE RECEIVING ANTIPLATELET AND ANTICOAGULANT THERAPY
Kazumichi KAWAKUBO Hiroshi KAWAKAMINaoya SAKAMOTO
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2019 Volume 61 Issue 12 Pages 2575-2581

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要旨

超音波内視鏡下穿刺吸引法(Endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration;EUS-FNA)は,体腔内の腫瘍性病変に対する病理組織学的診断には,その安全性と確実性から,必須の手技であるといえる.近年,高齢化に伴い,虚血性心疾患や脳血管障害の治療や予防目的に抗血栓薬を内服する患者は増加し続けている.このような患者に対し,EUS-FNAを施行する機会も増えてきており,適切な周術期服薬マネージメント,および出血性偶発症に対する対処が必要となってくる.

Ⅰ はじめに

超音波内視鏡下穿刺吸引法(Endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration;EUS-FNA)は,体腔内の腫瘍性病変の病理組織学的診断には,欠かすことができない検査手技である.2010年にわが国で保険収載されて以降,検査数は増加してきている.近年,血栓塞栓症の治療または予防のために,抗血小板薬や抗凝固薬といった抗血栓薬を内服している患者も,増加している.それに伴い,そのような患者に対し,EUS-FNAを施行する機会も,増加してきている.抗血栓薬には,抗血小板薬と抗血栓薬に大別されるが,抗血栓薬を服薬中の患者に対してEUS-FNAのような観血的手技を行う際には,出血性偶発症の可能性,また,安易に抗血栓薬を休薬することによる血栓塞栓症の発生にも留意する必要がある.本稿では,抗血栓薬を服用中の患者に対しEUS-FNAを行う際の,服薬マネージメント,および,出血時の対応につき概説する.

Ⅱ EUS-FNAの術後出血リスク

EUS-FNAによる出血性偶発症の頻度は0.0-0.5%であり,EUS-FNA全体の偶発症のなかでは約13%で,術後疼痛,急性膵炎についで3番目に多い 1),2.EUS-FNAを含む出血高危険手技においては,抗血栓薬を服薬者においては,非服用者と比較し出血性偶発症の頻度が高いことが日本消化器内視鏡学会の全国調査により明らかにされた(非服用者1.39% vs 服用者4.80%,p<0.001).また,同調査において,休薬の有無により出血性偶発症の頻度は変わらないことも報告された(継続者3.07% vs 休薬者5.67%,p=0.11) 3.EUS-FNAに関しても,抗血栓薬服用中患者114例中4例(3.5%),非服用患者794名中2例(0.3%)と,有意に重篤な出血性偶発症が多かったと本邦からの後方視的研究にて報告されている 4.また,Inoueらの後方視的研究においては,アスピリンまたはシロスタゾール内服患者においては,継続者と休薬者において出血性偶発症の頻度が,1.6%と0%と有意差を認めなかったと報告している 5.一方,われわれは,抗血栓薬を内服中患者において,日本消化器内視鏡学会からの抗血栓薬内服中患者に対する内視鏡診療ガイドラインを遵守し,北海道内13施設,3年間に渡り,EUS-FNAの前向き観察研究を行った.研究対象者となった85名のうち,出血性偶発症を2例(2.4%,95%信頼区間0.6-8.3%)に認めた 6.1例はワルファリン内服中でヘパリン置換,1例は抗血小板薬2剤併用療法(Dual Antiplatelet Therapy;DAPT)中でアスピリンを内服継続,クロピドグレルは5日休薬しており,2例とも重篤な偶発症に分類された.これらの報告より,抗血栓薬服薬中患者に対するEUS-FNA後の出血性偶発症の頻度は,休薬の有無に関わらず,高いことが伺える.

嚢胞性腫瘍に対するEUS-FNAは出血の高危険群として知られているが,それ以外のEUS-FNAに伴う出血性偶発症の危険因子については,EUS-FNAの穿刺回数,穿刺方法,穿刺針の種類(側孔付き,組織採取用など)など明らかなものはなく,今後のデータの集積が待たれる.

Ⅲ 休薬に伴う血栓塞栓症のリスク(Table 1
Table 1 

血栓塞栓症の高リスク 7)~9

抗血栓薬の一時休薬に伴う,血栓塞栓症のリスクを,個別に算定するのは困難である.各種ガイドラインにも記載があるが,4-7日のワルファリンの休薬に伴う血栓塞栓症の発症リスクは約1%である.われわれの前向き観察研究においては,JSGEのガイドラインにしたがって抗血栓薬のマネージメントを行うことで,血栓塞栓症の偶発症は認めなかった.また,ASGEのガイドラインには,心房細動患者における血栓塞栓症のリスクを評価するためにCHA2-DS2-VASc scoring systemが記載されている.鬱血性心不全1点,高血圧1点,75歳以上2点,65-74歳1点,糖尿病1点,脳梗塞2点,血管障害1点,女性1点で,スコアリングし2点以上では,2.2%/年の脳血管障害のリスクがあり,高リスクとされている 7.JSGEのガイドラインにおいては,血栓塞栓症のリスクを評価するための凝固系分子マーカー(可溶性フィブリン,フィブリンモノマー複合体など)が記載されている 8.これらのマーカーが高値の時は,血栓塞栓症のリスクがより高いとして,慎重に対応することも必要である.しかし,どのような患者において採取すべきかどうかは明らかになっていない.

Ⅳ 各種ガイドラインにおけるEUS-FNAの位置付け(Table 2
Table 2 

EUS-FNAの手技の出血リスク 7)~9

日本消化器内視鏡学会(JSGE)を初め,米国(ASGE)および欧州(ESGE)より,抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが公表されている 7)~10.いずれのガイドラインにおいても,多少の差異はあるものの,内視鏡手技の出血危険度と併存疾患の血栓塞栓症の危険度を加味し,抗血栓薬の休薬の方法が推奨されている.Table 2に示したように,EUS-FNAは出血高危険度手技に分類されている.ASGEのガイドラインでは,アスピリンやNSAIDs単独内服患者の固形腫瘍に対するEUS-FNAは,出血低リスクであると示されている.いずれのガイドラインにも,記載されているように,待機的(elective)な出血高危険手技は,可能なかぎり手技の延期または中止を考慮することが大原則である.特に,EUS-FNAは診断手技の一つであり,緊急を要することは極めて稀であり,必要であれば後述するように,専門家へのコンサルト後に適切な服薬マネージメントを行うことを考慮することも必要である.

Ⅴ アスピリン(Table 3
Table 3 

血栓塞栓症のリスクに応じた指針 7)~9

ASGEとESGEガイドラインにおいては,アスピリン単独服用患者にEUS-FNA施行する際には,血栓塞栓症のリスクに関わらず休薬は不要とされている.一方,JSGEのガイドラインにおいては,血栓塞栓症のリスクが高い場合には休薬は不要だが,血栓塞栓症のリスクが低い場合には,3-5日の休薬を考慮しても良いとしている.われわれの前向き観察研究では,アスピリン単剤服用患者28名において休薬せずにEUS-FNAを施行し,出血性偶発症は0例であった 6.また,Inoueらの後方視的研究によると,アスピリンまたはシロスタゾール内服患者においては,休薬しなかった群63例において出血性偶発症を1例(1.6%)に認めたが,休薬した群と有意差を認めなかったと報告している 5.一方,Polmaneeらの後方視的研究においては,63例中2例(3.2%)に出血性偶発症を認めたと報告している.これらの出血性偶発症は,いずれも軽症と報告されている.以上より,アスピリン単剤服用患者に対しEUS-FNAを行う際には,血栓塞栓症のリスクが高い場合には休薬は不要,低い場合には休薬を考慮することを推奨する.

Ⅵ チエノピリジン系抗血小板薬(Clopidogrel,Prasugrel,Ticagelor)(Table 3

いずれのガイドラインにおいても,血栓塞栓症のリスクに関わらず最低5日間の休薬を勧めている.多くの場合DAPT(Dual antiplatelet therapy)中で,アスピリンも同時に内服しているが,その場合,アスピリンを継続のまま,チエノピリジン系の5日間休薬を勧めている.休薬した際には,ASGE,JSGEでは,アスピリン置換を推奨している.ESGEにおいては,血栓塞栓症のリスクが高い場合,つまり,いわゆるDAPTが必要とされる期間においては,専門家へのコンサルトを勧めている.われわれが行った前向き観察研究では,DAPT施行19名で,アスピリン継続のままチエノピリジン系のみを5日休薬したところ,19例中1例(5.3%)に出血性偶発症を認めた 6.さらに,Polmaneeらの後方視的研究においては,チエノピリジン系内服中でアスピリンに置換した24例中1例(4.2%)に出血性偶発症を認めたと報告している 4.DAPT症例は,出血性偶発症の危険因子であることが知られており,このように適切な休薬期間を設けても,出血のリスクは高いと認識するべきである 11.したがって,チエノピリジン系抗血小板薬を内服中患者に対しEUS-FNAを施行する際には,最低5日間の休薬期間を置くとともに,血栓塞栓症のリスクが高い場合には,アスピリンによる置換を行う.また,DAPT中では,冠動脈ステント留置直後などで特に血栓塞栓症のリスクが高いと考えられる場合は,専門家へのコンサルトやEUS-FNAの延期も考慮するべきである.

Ⅶ ワルファリン(Table 3

ワルファリン内服患者における対応は,各種ガイドラインにおいて微妙に異なる.血栓塞栓症の高危険群はTable 1に記載した通りである.JSGEにおいてワルファリン内服患者は基本的にはすべて血栓塞栓症の高危険群として扱うべきとしている.一方,ESGEやASGEのガイドラインでも,血栓塞栓症のリスクを細かく記載してある.ESGEとASGEにおいて,血栓塞栓症の低リスク群とされた場合には,適切な休薬期間(ESGEでは5日間)ののち,INR<1.5であることを確認してEUS-FNAを行うことを推奨している.血栓塞栓症の高リスク群である場合は,ガイドラインにより大きく異なっている.ESGEのガイドラインでは,ワルファリン休薬2日後から,治療域の低分子ヘパリンを開始,EUS-FNA24時間前まで継続,EUS-FNA前にINR<1.5であることを確認,EUS-FNA後の夜に,ワルファリンを同量で再開し,低分子ヘパリンもEUS-FNA後に再開し,INRが治療域に戻るまで継続することを推奨している.ASGEのガイドラインでは,ワルファリンを休薬後,INR<2.0になったらヘパリンを開始,EUS-FNA4-6時間前に休止しEUS-FNA後に再開,EUS-FNA施行の夕方にワルファリンを再開し,INRが治療域に入るまで,ヘパリンを継続することを推奨している 12.一方,JSGEのガイドラインにおいては,ワルファリンによる置換が出血リスクを増加させることが明らかになってきたため,ヘパリン置換の代わりに,ワルファリンを治療域にコントロールしたままEUS-FNAを行うことも可としている 10.ガイドライン内では具体的なINR治療域の定義はないが,Inoueらの報告によると非弁膜症性心房細動においてはINR1.6-2.6が最も望ましいとされている 13.また,非弁膜症性心房細動の場合は,INRが有効域以下であることを確認のうえ,DOACに一時変更後にEUS-FNAを施行することも選択肢に入れている.

われわれの研究では,ワルファリンやDOACの抗凝固薬を内服中の患者においては,ヘパリン置換を施行したところ,39例中1例(2.6%)において出血性偶発症を認めた.また,Polmaneeらの後方視的研究においては,ヘパリン置換した10例中1例(1.0%)に出血性偶発症を認めたと報告している 4.ワルファリン内服中のEUS-FNAについては,術前に出血性偶発症の高危険群であることを患者や家族に十分伝えるとともに,休薬方法やヘパリン置換の有無につき話し合う必要がある.ワルファリンを休薬しない場合には,確実にINRが治療域に入っていることを確認,ヘパリン置換を行う場合にもINRを確認するとともに,適切な期間ヘパリンを投与するべきである.ワルファリンのDOACへの置換については,まだデータが少なく,今後の報告が待たれる.また,現在日本消化器内視鏡学会において,抗凝固薬内服中患者における超音波内視鏡下穿刺吸引法の安全性を検討する多施設共同前向き観察研究( http://www.jges.net//index.php/member_submenu/archives/20)が,行われており,結果が待たれるところである.

Ⅷ 直接抗凝固薬(Direct Oral Anticoagulant;DOAC)(Table 34
Table 4 

腎機能に応じたDOACの休薬方法(ASGEガイドライン 7より改変).

DOACの適切なマネージメントに関しては,Table 4にも示したようにASGEのガイドラインに詳しく記載されている.EUS-FNA施行前に腎機能を調べ,適切な休薬期間ののち,EUS-FNA翌日または24時間以内に再開するのが望ましい.血栓塞栓症の超高リスクと考えられる場合,または出血性偶発症などでDOACの再開が遅れる場合には,その間ヘパリンによる置換も考慮しても良い.その際,ヘパリンからDOACへの変更タイミングは,ヘパリン投与終了から最低4時間あけてDOACに変更した方が良いと推奨されている.DOAC内服患者におけるEUS-FNAに関してはデータが乏しく,前述した臨床試験などの結果が待たれるが,ワルファリンと同様,出血性偶発症の高危険群であることを認識しつつ,腎機能検査を怠ることなく,適切な服薬マネージメントを行う必要がある.

Ⅸ 出血時の対応

EUS-FNA後の出血は,消化管内および,消化管外(腹腔,胸腔など)に分けられる.出血を認めた,または,疑われた際には,すぐに部位や程度を調べる検査を進めるとともに,必要な止血手技を検討するべきである.消化管内が疑われれば,通常の内視鏡による止血術を試み,止血困難な場合は,血管塞栓術や外科的止血術を考慮する.また,消化管外であれば,血管塞栓術や外科的止血術の適応を迅速に判断するべきである.その際の抗血栓薬のマネージメントについてはASGEのガイドラインに記載してある.ワルファリンについては,休薬するとともに,出血性ショックに至っている場合には,4-factor prothrombin complex(PCC)とVitamin Kの投与,または新鮮凍結血漿の投与を行う.INR<2.5の場合は,迅速な内視鏡的止血を試み,血栓塞栓症の高危険群の場合は,早期にヘパリン投与を行うこととしている.DOACに関しては,Dabigatranは血液透析にて除去が可能だが,その他のものについては透析による効果はなく,また,4-factor PCCや新鮮凍結血漿の効果は明らかではない.抗血小板薬については,血栓塞栓症の高危険群の場合は,専門医と相談のうえ,休薬するべきである.

Ⅹ おわりに

EUS-FNAは出血性偶発症の高危険度手技である.抗血栓薬内服中患者に対しEUS-FNAを行う際には,各種ガイドラインを参考にし,血栓塞栓症のリスクを評価し,必要ならば専門家にコンサルトのうえ,適切な服薬マネージメントにて臨むべきである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:坂本直哉(ギリアド・サイエンシズ,アッヴィ,MSD,エーザイ,大塚薬品,あすか製薬,塩野義製薬,バイエル,中外製薬,アステラス,武田薬品,EAファーマ,大日本住友,第一三共)

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