GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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TECHNICAL TIPS FOR PERFORMING ENDOSCOPIC ULTRASONOGRAPHY FOR INVASION DEPTH DIAGNOSIS OF T1 COLON CARCINOMAS
Yuhei INABA Yusuke SAITOHYu KOBAYASHIRyuji SUGIYAMARyuji SUKEGAWAKenichiro OZAWAMasaki TARUISHIMikihiro FUJIYAToshikatsu OKUMURA
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2019 Volume 61 Issue 5 Pages 1145-1157

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要旨

大腸T1(SM)癌の深達度診断における超音波内視鏡検査(EUS)診断のコツについて解説した.超音波内視鏡検査は大腸内視鏡検査とは異なり,病変の垂直断面像が得られることにより大腸癌のSM以深への浸潤像を直接観察できる唯一の検査法である.内視鏡検査と同時に施行可能な超音波細径プローブ検査が簡便であり初学者には推奨される.約10%程度の症例で画像そのものが得られない,また屈曲部やハウストラ上の病変では良好な画像を得ることが困難な場合がある.内視鏡であらかじめSM深部浸潤が疑わしい部位を中心にスキャンすることで,また内視鏡画像を見ず,超音波画像を見ながらスキャンを行うことで正診率の向上が得られる.また,病変高6mm以上の隆起型病変においては深部減衰により満足な深達度診断能が得られない場合もあり,低周波プローブ(12または7.5MHz)の併用が有用である.内視鏡摘除か外科手術かの治療法選択における正診率は全体では77.0%(211/274)とさほど高くはないが,T1b癌における深達度正診率はTis・T1a癌に比較して有意に高く(それぞれ87.3%(125/151)vs 69.2%(86/123);p<0.01),特に表面型T1b癌における深達度正診率は隆起型T1b癌に比較して有意に高かった(それぞれ91.4%(53/58)vs 83.3%(50/60);p<0.05).高周波超音波細径プローブ検査(HFUP)は(特に表面型の)T1b癌を疑う病変の深達度診断に有用であると考える.EUSは組織上のSM浸潤距離をよく反映することから,今後の大腸SM深部浸潤(T1b)癌への内視鏡治療の適応拡大に向けて必須の検査法となると考えられる.そのため,消化器内視鏡医は,EUSの手技に精通しておくことが肝要である.

Ⅰ はじめに

近年の表面型大腸腫瘍発見の増加 1と内視鏡的摘除術(内視鏡的粘膜切除術:Endoscopic mucosal resection(EMR) 2,内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic submucosal dissection(ESD) 3)の普及,さらには早期大腸癌に対する内視鏡治療根治基準の確立 4により早期大腸癌に対する術前の深達度診断がより重要となっている.深達度診断に有用な検査として,注腸X線検査 5,通常内視鏡検査 6,拡大内視鏡検査 7)~9などがあるが,超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography:以下EUS)(高周波超音波細径プローブ検査(High-frequency ultrasound probe:以下HFUP))は 8)~10これらの検査とは異なり,病変の病理割面像に近い断層像が得られ,その画像に客観性を有するという点で他にはない利点を持つ検査法である.HFUPの最もよい適応は早期大腸癌であり,内視鏡的摘除(EMR,ESD)を施行するか,外科手術を行うかという治療法決定の術前診断に有用である.これまでの多くの外科切除例の検討から,粘膜内(Tis)癌とSM垂直浸潤距離1,000μm未満のSM浅層浸潤(T1a)癌では,他の組織学的リンパ節転移危険因子を認めない場合,リンパ節転移は認めず,一方,SM垂直浸潤距離1,000μm以上のSM深部浸潤(T1b)癌では約10%程度にリンパ節転移を認めることから,大腸癌治療ガイドライン2016年版 4においては,術前にTis癌,またはT1a癌と診断した早期癌については内視鏡的摘除が推奨され,T1b癌に対して外科手術が推奨されている.したがって臨床的にはTis癌及びT1a癌とT1b癌を術全に正確に鑑別することが重要となり,HFUPはその鑑別に有用な検査法である.

また,大腸ポリープ診療ガイドライン2014年版 11においても,超音波内視鏡検査による早期大腸癌の深達度診断法は弱く推奨されている.

本稿では大腸SM癌の診断における超音波細径プローブ検査の適応,検査手技,病変描出のコツ,診断成績について示す.また実際の症例を供覧し,本検査の有用性についても解説する.

Ⅱ 超音波内視鏡の種類

超音波内視鏡は大腸でもEUS専用機と鉗子孔から挿入可能なHFUPの大きく2種類に分けられる.大腸の専用機は先端の硬性部がやや長く,通常の大腸内視鏡と比べて深部への挿入が困難であり,スクリーニング検査として用いるには適さないが,直腸の病変評価では用いられる可能性がある.一方,鉗子孔挿入型のHFUPは通常の大腸内視鏡検査中に病変の発見と同時に検査可能であり,内視鏡直視下でスキャン部位の確認も可能なことから,専用機と比べると大腸のどの部位においても容易に施行可能である.消化管の超音波画像を簡便に得るにはEUSよりもHFUPが有利であり,特にこれから大腸の超音波内視鏡検査を始める内視鏡医にはHFUPが推奨される.

Ⅲ 超音波細径プローブ(HFUP)の適応

超音波内視鏡検査は,病変の病理割面像に近い断層像が得られるという点で注腸X線検査や大腸内視鏡検査など,他にはない利点を持つ検査法である.適応はすべての大腸疾患であるが,一般に炎症性腸疾患に比較して腫瘍性病変において診断的役割は大きい.さらに,粘膜下腫瘍を含む非上皮性腫瘍では深達度,性状診断,治療法決定において極めて有用である 12.大腸早期癌の深達度診断もHFUPのよい適応であり,特に近年の表面型早期大腸癌の発見頻度の増加に伴い,小さなうちからSM深部浸潤を来たすこれら病変に対してEMR・ESDの内視鏡的摘除を行うか,外科手術を施行するかという治療法の決定に有用な検査法である 12)~16

Ⅳ 超音波細径プローブの検査手技

1.脱気水充満法

通常HFUPを用いて大腸壁の断層像を得るためにはインターフェイスとして脱気水,または微温湯の存在が必要である(音響インピーダンスが低い空気の存在は超音波像を得るには障害となる)(脱気水充満法).胃や食道では脱気水が必須であるが,大腸では水道水の微温湯で充分である.

また,水浸下で病変を走査するためには腸管蠕動を抑える必要があり,抗コリン剤やGlucagonの投与,またはペパーミントオイルの注入が必要となる.一般的には直腸からS状結腸の遠位大腸では150-200ml位,と水の必要量は少なく,横行結腸から上行結腸の深部大腸では300ml以上の大量の水を必要とする.微温湯の注入は気胞が混入しないようゆっくりと行うのがコツである.

2.HFUPで良好に病変を描出するコツ

1)病変描出不良の原因

HFUP検査で良好な画像が得られない(10%程度存在)原因として以下が挙げられる.

①高齢患者において蠕動により水を溜めることが困難である.

②強い屈曲部近傍に位置する病変やHaustra上・裏側に位置する病変では描出・scanが困難である.

③内視鏡で病変が真正面に観察され,HFUPで病変を垂直にscanすることが困難である.

等があり,これら,HFUP検査には限界があることを念頭に置いた上で検査を行うことが重要である.

2)内視鏡画像ではなく超音波画像を見ながらscanする

内視鏡操作により病変と超音波プローブとの間に適切な距離を保ちながらゆっくりとくまなくscanすることが重要であるが,この際,内視鏡画面は見ずに超音波画面を見ながらscanすることが上達の近道であり,良好な画像を得るためのコツと考える.またscan前に内視鏡であらかじめ深部浸潤の可能性が高い場所に目星をつけ,その場所を重点的にscanすることも重要と考える(Figure 1-a~d).例えば結節集簇様病変(laterally spreading tumor:LST)では内視鏡で大きな結節,びらんや潰瘍の有無を詳しく観察し 17,その部位を中心にscanすることで正診率が向上する.

注:内視鏡画像を見ながらscanを行うと超音波画像に集中できずに上達が妨げられる.初めは超音波画像上の上下左右の動きが内視鏡操作と逆になり混乱することもあるが,検査数が増えるにつれてすぐに対応可能となる.超音波画像を見ながらのscanが重要である.

Figure 1 

浸潤部を狙ってscanする.内視鏡で浸潤部の目星をつけ,浸潤部に向かって周囲からゆっくりとscanを開始し(a,b,c),浸潤部を重点的にscanする(d).

3)押し当てスキャンを試みる

隆起型病変では,深部減衰により浸潤先進部の描出が困難な場合が生じる.その際に,プローブを病変頂部や病変基部に押し当ててscanすることで,浸潤最深部の描出が可能となる場合がある.但し,本走査により出血を来たす場合があるため,押し当てscanは内視鏡観察後に行うことが望ましい.

4)初めに注入する微温湯の量を多くする

あらかじめ注入する微温湯の量を多くしておくことで多少の蠕動が生じても水が残存する.また,水を吸引しながら病変をscanすることで壁構造が明瞭化して良好な画像が得られやすい(Figure 2-a,b).

Figure 2 

腸管内の水を吸引しながらscanする.初めに水を多めに溜めてscanを開始する(a).水を吸引しながらscanすることで壁構造にやや厚みが生まれ,明瞭化することで良好な画像が得られやすい(b).

3.深部減衰の克服とリンパ節転移の描出

20MHzのHFUPでは高周波のため空間分解能はよいが,丈の高い病変では深部減衰のため深達度診断が困難なことが多い.われわれは,病変高が6mm未満の病変ではHFUPを,病変高が6mm以上の比較的丈の高い隆起性病変では12MHz以下の低周波プローブを用いるようにしている(Figure 3-a~d).また,20MHzのプローブでは良好なscanが可能な範囲は約2cmと狭いため,壁外のリンパ節転移の診断には適さないことが多い.HFUPでSM深部浸潤癌(T1b)と診断した病変でリンパ節転移の有無を確認する必要がある際には12MHzまたは7.5MHzのプローブの併用が推奨される.

Figure 3 

直腸の大きさ22mmのIs型T1b癌(SM浸潤距離5,000μm).

病変高は8mmと高く(a),20MHzでは深部減衰により診断は困難である(b).15MHzでは最深部が描出されているが不十分である(c).7.5MHzを用いると最深部は描出され,T1b癌との診断が可能であり(d),病変の高さに応じて低周波プローブの使い分けが必要である.

Ⅴ 正常大腸壁のHFUP像

20MHzのHFUPを用いると正常大腸壁構造は最大9層構造として描出され,1-3層が粘膜層,第4層のstring low echoic layerが粘膜筋板,第5層の高エコー層が粘膜下層,第6から8層までが固有筋層であり,第6層の内輪筋層と第8層の外縦筋層の間に第7層のstring high echoic layerとして固有筋層間エコー(境界エコーに相当する)が描出される.第9層の高エコー層が漿膜(外膜)下層以深層に相当する(Figure 4 12),14),18),19

Figure 4 

HFUPにおける正常大腸の壁構造(SP-701;20MHz).

9層構造として描出され,管腔側から第1,2,3層は粘膜層,第4層のstring low echo層(赤)は粘膜筋板,第5層は粘膜下層,第6層は内輪筋層,第7層のstring high echo層は固有筋層間エコー(緑),第9層は漿膜下層以下に相当する.

Ⅵ 早期大腸のHFUP像

Figure 5に各深達度ごとのHFUP像を示す.腺腫,Tis癌では低エコーの腫瘤は粘膜内に限局しており,病変直下に粘膜筋板が描出される場合がある(Figure 5-a).T1a癌では,低エコー腫瘤がSM層に僅かに浸潤している(Figure 5-b,c).表面型癌ではSM層に癌浸潤を伴わないリンパ濾胞が描出され,誤診の原因となったり,リンパ濾胞に癌浸潤が伴う場合もあり,それらの鑑別は困難なことも多いので注意が必要である.T1b(従来の相対分類sm2)癌では,低エコーの腫瘤が中等量SM層に浸潤している(Figure 5-d).T1b(従来の相対分類sm3)癌では,低エコー腫瘤がSM層に大量に浸潤しているが,固有筋層はintactである(Figure 5-e).参考にT2(MP)癌では,第5層のSM層は断裂し,第6-8層の固有筋層まで低エコーの腫瘤が浸潤している(Figure 5-f).

Figure 5 

各深達度におけるEUS像.

M(Tis)癌では低エコーの腫瘤が粘膜内に限局しており,粘膜筋板が描出されることがある(a).T1a癌では,低エコー腫瘤がSM層に僅かに浸潤している(b,c).T1b(従来の相対分類sm2)癌では,低エコーの腫瘤が中等量SM層に浸潤している(d).T1b(従来の相対分類sm3)癌では,低エコー腫瘤がSM層に大量に浸潤しているが,固有筋層はintactである(e).参考にT2(MP)癌では,第5層のSM層は断裂し,第6-8層の固有筋層まで低エコーの腫瘤が浸潤している(f).

Ⅶ HFUPによる大腸癌の深達度診断

2008年1月から2017年12月までに当院でHFUPを施行した早期大腸癌は274病変である(描出不能の29病変は除いた).肉眼型では隆起型は123病変で表面型が151病変である.Table 12にHFUPによる深達度診断能を示す.内視鏡摘除か外科手術かの治療法選択における深達度正診率は,全体では,77.7%と高くはないが,これは内視鏡的にSM癌を疑う病変にのみHFUPを施行し,明らかな腺腫・Tis癌に対しては行っていないためである.深達度別にみると,T1b癌における深達度正診率はTis・T1a癌に比較して有意に高く(それぞれ87.3%(103/118)vs 69.2%(108/156);p<0.01),HFUPは深部浸潤を疑う病変の深達度診断に有用であると考えられる(Table 1).肉眼型別の深達度正診率についてみると,隆起型の69.9%に比較して表面型で82.8%と有意に高く(p<0.05:χ二乗検定)(Table 2),いずれの肉眼型においてもTis・T1a癌に比較してT1b癌の正診率が有意に高率であった(隆起型:Tis・T1a:57.1%(36/63),T1b:83.3%(50/60);p<0.05(χ二乗検定),表面型:Tis・T1a:77.4%(72/93),T1b:91.4%(53/58);p<0.05(χ二乗検定)).また,表面型T1b癌においては隆起型T1b癌に比較して有意に正診率が高く(それぞれ91.4%(53/58),83.3%(50/60);p<0.05(χ二乗検定))(Table 2),われわれは,HFUPはT1b癌を疑う表面型病変に最もよい適応があると考えている.

Table 1 

HFUPによる大腸癌の深達度診断.

Table 2 

HFUPによる肉眼型別の深達度正診率.

Ⅷ 今後の早期大腸癌診療におけるEUSの役割

われわれは,T1癌77病変においてHFUP画像上でSM浸潤距離を計測し,超音波内視鏡で計測したSM浸潤距離と病理組織上のSM浸潤距離とは非常に高い相関を示すことを報告した(相関係数(R値=0.875,p<0.0001,Figure 5)) 18.また,OzawaらはT1b癌78例に内視鏡治療前にEUSを施行し,腫瘍の浸潤先進部とMP層との間にEUS上spaceを認めた例では,ESDによる断端陽性例は認めなかったことを報告している 20.近年,SM浸潤距離以外に組織学的リンパ節転移危険因子を認めないT1癌においては,リンパ節転移の頻度が1.2-1.4%と極めて低いとの報告がなされたこと 21),22.また今後の患者高齢化や併存疾患の増加等などから,T1b癌に対して診断的完全摘除生検の意味での内視鏡摘除症例の増加が予測される 23ことから,術前にEUSを施行し,T1b癌に対するESDによる完全摘除 24),25が可能かどうかについて正確に術前診断されることが必要とされる.今後の大腸SM深部浸潤(T1b)癌への内視鏡治療の適応に向けて,EUSは必須の検査法と考えられ,消化器内視鏡医は,EUSの手技に精通しておくことが肝要であると思われる.

Ⅸ 症例呈示

①上行結腸の大きさ6mmのⅡa+Ⅱc型T1b癌(SM浸潤距離2,000μm).

大きさは6mmと小さな表面型SM癌である.病変中央部に癌の露出を認め,SM深部浸潤癌を疑う.HFUPではSMへの癌浸潤が明らかであり,内視鏡治療の適応外病変と考えられ,外科的切除を施行した.中央部分で2,000μm SMに浸潤する中分化腺癌であった(Figure 6).

Figure 6 

上行結腸の大きさ6mmのⅡa+Ⅱc型T1b癌(SM浸潤距離2,000μm).

病変中央部に癌の露出を認めSM深部浸潤癌を疑う.HFUPではSMへの癌浸潤が明らかであり,内視鏡治療の適応外病変と考えられ,外科的切除を施行した.

②直腸Raの大きさ7mmのIs型T1a癌(SM浸潤距離700μm).

注腸X線検査では隆起中央に僅かなバリウム斑を有する病変であり,拡大内視鏡検査では隆起中央部分は発赤が強くやや陥凹し,周囲とは異なる表面性状を呈しており,T1癌を疑う.HFUPでは僅かなSMへの浸潤も疑わせるが,深部浸潤は否定され,EMRにて摘除を行った.病理組織学的にはT1a癌で,SM浸潤距離は700μmであった.本例ではHFUPにより,明らかなSM浸潤は否定的であり,内視鏡治療にて完全摘除可能な癌であることが診断され,治療法の選択に有用であった(Figure 7).

Figure 7 

直腸Raの大きさ7mmのIs型T1a癌(SM浸潤距離700μm).

HFUPでは僅かなSMへの浸潤も疑わせるが,深部浸潤は否定され,EMRにて摘除を行った.病理組織学的にはT1a癌で,SM浸潤距離は700μmであった.

③直腸Rsの大きさ15mmのⅡa+Ⅱc型T1b癌(1,500μm).

注腸X線検査では平坦な病変の一部がなだらかに隆起しており,SM高度浸潤癌を疑う,内視鏡検査でも,なだらかな隆起部分でSM高度浸潤を疑う所見である.HFUPでは低エコーの癌のSMへの中等量浸潤が明瞭に描出されており,外科手術を施行した.軽度の皺襞集中は認め,繊維化が予測されるものの,今後,本例の様なSMに中等度浸潤するT1b癌に対して術前にESDを施行し,浸潤距離を計測し,さらにMP層と癌浸潤との間に十分な隙間を確認することでESDによる完全一括摘除可否の診断が可能となることが期待される(Figure 8).

Figure 8 

直腸Rsの大きさ15mmのⅡa+Ⅱc型T1b癌(1,500μm).

注腸X線検査では平坦な病変の一部がなだらかに隆起しており,SM高度浸潤癌を疑う,内視鏡検査でも,なだらかな隆起部分でSM高度浸潤を疑う所見である.HFUPでは低エコーの癌のSMへの中等量浸潤が明瞭に描出されており,外科手術を施行した.

④横行結腸の大きさ13mmのⅡa型T1b癌(深達度3,300μm).

大きさは13mmと小さいが,SMへmassiveに浸潤する癌である.注腸X線検査では皺襞集中の所見を認め,内視鏡では病変の立ち上がりは正常粘膜であり,T1b癌であると診断可能である.HFUPにてもT1b癌であることが容易に診断可能である.外科手術を施行し,術前診断通り,SM浸潤距離3,300μmのT1b癌であった(Figure 9).

Figure 9 

横行結腸の大きさ13mmのⅡa型T1b癌(深達度3,300μm).

大きさは13mmと小さいが,SMへmassiveに浸潤する癌である.注腸X線検査では皺襞集中の所見を認め,内視鏡では病変の立ち上がりは正常粘膜であり,T1b癌であると診断可能である.HFUPでもT1b癌であることが容易に診断可能であり外科手術を施行し,SM浸潤距離3,300μmのT1b癌であった.

Ⅹ おわりに

早期大腸癌に対する内視鏡治療としてESDが用いられるようになり,比較的大きな病変でも一括切除ができるようになった.この技術革新に伴い,これまでは外科手術の適応であったT1b癌の一部に対して診断的治療とも言える完全摘除生検が試みられようとしている.超音波内視鏡検査は大腸癌の浸潤を垂直断面として直接観察できる唯一の検査法であり,今後のT1b癌に対する完全摘除生検という意味での内視鏡治療の適応拡大において,完全摘除の術前の可否判断を行う上で有用な手段になり得ると考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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