GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
IMAGE-ENHANCED ENDOSCOPY USING LASER LIGHT SOURCES FOR DIAGNOSIS OF EARLY GASTRIC CANCER
Osamu DOHI Nobuaki YAGIYuji NAITOYoshito ITOH
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2019 Volume 61 Issue 7 Pages 1367-1375

Details
要旨

レーザー光源搭載の内視鏡システムであるLASEREO(レザリオ)の登場により,2種類の波長のレーザー光(410nm,450nm)を利用した狭帯域光観察であるBlue laser imaging(BLI),BLIをより明るくしたBLI-brightならびにLinked color imaging (LCI)といった新たな画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)が可能となった.筆者らはVessel plus surface classification systemを用いたBLI拡大観察により,Narrow-band imaging(NBI)拡大観察と同等の胃癌診断が可能であることや,白色光と比較して優れた胃癌の質的診断能を有していること,これまでのIEEの光量不足や画質不良などの課題を克服することで,BLI-brightが胃癌の存在診断において白色光よりも有用であることを報告した.また,LCIは,赤色はより赤く,褪色はより白くなるように,粘膜色付近のわずかな色の差を認識しやすくする機能である.LCIにおいてはびまん性発赤が韓紅色に,腸上皮化生がラベンダー色に観察されることで胃癌のリスク分類をより高い精度で評価できる.さらに,早期胃癌の存在診断においてもLCIの有用性が期待されている.

Ⅰ 緒  言

内視鏡治療が全盛期を迎えた現在,効率的な胃癌の存在診断,確実な質的診断および範囲診断が求められる.近年,画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)観察は,拡大内視鏡観察と共に急速な進歩を遂げ,特に腫瘍性疾患に対する質的診断(腫瘍,非腫瘍の鑑別)において白色光通常観察と比較し有用であることが報告されてきた.富士フイルム株式会社が開発した新世代の内視鏡システムであるLASEREO(レザリオ)は,2種類のレーザー光による画像強調機能Blue laser imaging(BLI)ならびにLinked color imaging(LCI)を搭載し,胃癌の質的診断および存在診断に対する有用性が報告されている.本稿では,BLIおよびLCIによる胃癌の質的診断,存在診断,胃癌のリスク判定の有用性について,最新の知見および実例を交えて詳説する.

Ⅱ BLIとLCIの原理

2012年9月,富士フイルム株式会社からレーザー光源搭載の内視鏡システムLASEREOが販売された.このシステムには450±10nmの白色光用レーザーと410±10nmのBLI用レーザーの2つの波長のレーザー光に蛍光体を組み合わせたレーザー照明技術と独自の画像処理技術を搭載し,白色光観察と狭帯域光観察を切り替えて使用することが可能である.画像強調モードには,狭帯光による粘膜表層の微小血管や微細構造を強調するためにBLI用レーザー光の比率を高めたBLI,白色光の比率を高くしより明るいBLI-brightの2種類のモードが設定されている(Figure 1 1

Figure 1 

レーザー光内視鏡と各種画像強調内視鏡.

WLI:白色光,FICE:flexible-spectral imaging color enhancement,BLI:blue laser imaging,BLI-bright:blue laser imaging-bright,LCI:linked color imaging.

さらに,2014年10月には白色光に近く,より粘膜色の違いを識別しやすくするため,色彩強調機能であるLCIモードがLASEREOで使用可能となった 2.LCIは,狭帯域短波長光と白色光をBLI-brightと同様の比率で照射することで,狭帯域光で得られる粘膜表層の血管および構造の情報と白色光で得られる情報を一度に取得し,色彩情報の再配置を行うことで,粘膜色付近のわずかな色の差を認識しやすくするIEEである.すなわち,赤味を帯びている色はより赤く,白っぽい色はより白くなるように,色の拡張と縮小を同時に行う機能である(Figure 2).

Figure 2 

Linked color imaging(LCI)の原理.

Ⅲ BLIによる胃癌診断

消化管の腫瘍性病変に対する内視鏡診断は粘膜表層の形態的特徴をより明瞭化させるためにNarrow-band imaging(NBI)やFlexible spectral imaging color enhancement(FICE)などのequipment-based IEEが開発された.これらのIEEは,血管の視認性の向上はもちろん,表面構造をより強調して観察できる新しいシステムであり,NBIは特に拡大内視鏡観察と併用することにより胃癌の診断に有用であることが報告されている 3),4.しかしながら,NBIは光量が少ないため胃の遠景からの観察は難しく,FICEは粘膜表層の微細模様を高いコントラストで描出することには限界があった.レーザー光源を利用した狭帯域光観察機能BLIは微小血管および表面微細構造の視認性の向上だけでなく,光量を高く設定したBLI-brightモードが可能となり,NBIやFICEの弱点を克服したIEEと考えられる.ここからはBLI,BLI-brightのエビデンスを中心に有用性を解説する.

1)早期胃癌のBLI拡大内視鏡診断における有用性(NBIとの比較)

著者らは,八尾らの提唱するNBIを用いた早期胃癌の診断アルゴリズムであるVessel plus surface classification system(VSCS) 5がBLIおよびBLI-brightで応用可能かどうかをNBIと比較検討した.多施設で前向きに登録した早期胃癌ESD症例104病変を解析対象とし,同一病変にBLI併用拡大観察(M-BLI),BLI-bright併用拡大観察(M-BLI-bright),NBI拡大観察(M-NBI)を行い,VSCSにおけるdemarcation line(DL),microvascular pattern(MVP),microsurface pattern(MSP)を評価した 6.DLはM-BLI 96.1%,M-BLI-bright 98.1%,M-NBI 98.1%,irregular MVPはM-BLI 95.1%,M-BLI-bright 95.1%,M-NBI 96.2%でいずれも有意差はなく,BLI,BLI-brightはNBIとほぼ同等の表層血管の描出能,境界診断能を有することが示された.しかし,irregular MSPはM-BLI 97.1%,M-BLI-bright 90.4%,M-NBI 78.8%であり,BLI,BLI-brightがNBIと比較して粘膜微細構造の検出能が高いことが示された(p<0.001).つまり,NBIでabsent MSPと診断された21.2%がBLIではすべてirregular MSPと診断された.BLIとNBIでMSPが同じ病変とMSPが異なる病変を胃癌の組織型で検討すると中分化型は9.9%と35%であり,MSPが異なる病変に中分化型癌が有意に多い結果であった(p=0.002).

さらに,木村らはM-BLIとM-NBIでMSPが異なる病変を17症例抽出し,MSPが同じ病変とその病理学的特徴について比較検討した 7. M-BLIとM-NBIでMSPが同じ病変とMSPが異なる病変の癌腺管の深さ(crypt depth)の平均はそれぞれ265μm,56μmで,MSPが異なる病変は有意にcrypt depthの浅い病変が多かった.八木らは粘膜模様を形成する白い縁をwhite zoneと定義し,癌腺管の密度や高さが内視鏡的に認められるwhite zoneの明瞭さに関係していると報告している 8ことからも,BLIではNBIより腺管高に対する感度が高いことが証明された.BLIとNBIでは狭帯域光の波長幅や取出し方が違うこと,プロセッサーでの画像処理の違いなどから画質の違いが想定される.BLIにより腫瘍の表面模様がより描出されやすいということはより詳細な病理組織学的所見との対比が可能になることを意味し,良悪性の鑑別診断のみならず,癌の組織型や側方範囲の診断に有用と考えられる.

NBIと比較し,BLIで腫瘍表面の微細粘膜模様が明瞭となった症例を呈示する(Figure 3).いずれの症例もNBIでは不鮮明であった表面微細粘膜模様がBLIでは不整な微細構造として明瞭に観察できる.

Figure 3 

前庭部小彎,0-Ⅱc,10mm,tub1>tub2,T1a(M),UL(-).

a:拡大NBI観察.

b:拡大BLI観察.

NBIでは病変の中央の粘膜模様は不明瞭であるがBLIでは比較的大きく不整な粘膜模様が明瞭である.

2)早期胃癌のBLI拡大内視鏡診断における有用性(白色光との比較)

NBIと同等の拡大内視鏡所見が得られることから,NBIと同様に白色光と比較して,癌か非癌かを診断する組織診断能が優っていると考えられた.著者らは,生検を施行していない新規発見病変に対する組織診断能を白色光と前向きに比較検討した 9.早期胃癌あるいは食道表在癌で内視鏡治療を予定された530症例に対して,白色光で早期胃癌が疑われた新規病変に白色光およびM-BLIで組織診断を行い,生検で確認を行った.早期胃癌32病変,非癌95病変に対して,白色光では感度46.9%,特異度80.0%,正診率71.7%,VSCSを用いたM-BLIでは感度93.8%,特異度91.6%,正診率92.1%,でありそれぞれ有意にM-BLIの診断能が高い結果であった(p<0.001,p=0.021,p<0.001).このことからスクリーニング検査時にM-BLIを行うことで,精度の高い質的診断を行うことができoptical biopsyとして,生検を減少させる効果が期待できる.白色光では癌と診断できなかったが,M-BLIで腫瘍表面のirregular MVPおよびDLが明瞭で癌と診断した症例を呈示する(Figure 4).

Figure 4 

胃体中部小彎,0-Ⅱb,12mm,tub1,T1a(M),UL(-).

a:白色光観察.

b:拡大BLI観察.

白色光観察では病変は周囲粘膜よりわずかに発赤調を呈するが,粘膜の不整は乏しく癌と診断するのは難しい病変である(矢印).拡大BLI観察では不整な微小血管により境界が明らかに認識でき,癌と診断できる(矢印).

3)早期胃癌の存在診断に対する有用性(白色光との比較)

背景粘膜に高度な粘膜萎縮や腸上皮化生を有している症例に発生する胃癌の多くは分化型癌である.BLIおよびBLI-brightでは癌は褐色調,腸上皮化生は緑色調に観察され,その色調コントラストは,癌の存在診断に有用であると報告されている 10.BLI-brightは白色光用レーザーの比率を高めることでその明るさが向上し,中遠景観察からの観察も容易となったため,白色光観察と同程度の距離での内視鏡観察が可能であり,胃腫瘍の存在診断においても有効性が期待されていた.

著者らは,胃癌の存在診断における非拡大BLI-brightの有用性を白色光と比較検証する前向きランダム化比較研究を実施した 11.胃癌のハイリスクである胃癌を有する患者,内視鏡治療の既往がある患者または粘膜萎縮を有する患者630例に対して,胃内を白色光で観察した後にBLI-brightで観察する群(白色光先行群)とBLI-brightで観察した後に白色光で観察する群(BLI-bright先行群)にランダムに振り分けし,胃癌発見割合を前向きに比較検討した.両群それぞれ298症例が検討され,胃癌症例発見率は,白色光先行群全体では7.0%(21症例),BLI-bright先行群全体では8.7%(26症例)で有意差はない結果であった.しかし,先行した白色光での胃癌発見割合は50%(12/24病変)に対して先行したBLI-brightでの胃癌発見割合は93.1%(27/29病変)であり,有意にBLI-brightの胃癌発見割合が高い結果であった(p=0.001).特に胃癌の既往がある症例や高度萎縮粘膜を有する症例などの胃癌ハイリスク症例でBLI-brightでの胃癌発見割合が有意に高かった.さらに,特筆すべきは除菌後胃においてBLI-brightでの胃癌発見割合は100%(14/14病変)と白色光の18.2%(2/11)と比べて有意に高い結果であった(p<0.001).

粘膜の凹凸が急峻な病変は白色光観察やインジゴカルミンにより検出しやすいが,除菌後発見胃癌でよく見られる胃炎類似型胃癌などの平坦・陥凹型病変の拾い上げには非拡大BLI-bright観察が有用と思われる.白色光観察では認識が困難であったが,BLI-brightにより茶色の胃癌と緑色の腸上皮化生の色調コントラストが存在診断に有用であった症例を提示する(Figure 5).

Figure 5 

胃体下部小彎,0-Ⅱc,15mm,tub1,T1a(M),UL(-).

a:白色光観察.

b:非拡大BLI-bright観察.

白色光観察ではわずかに発赤調を呈するが,注意深く観察しても存在診断が難しい病変である(矢印).非拡大BLI-bright観察では緑色の腸上皮化生に囲まれた境界明瞭な茶色の領域として認識できる(矢印).

Ⅳ LCIによる胃癌リスク評価と胃癌診断

1)LCIによる胃癌リスク評価

2013年2月にHelicobacter pyloriH. pylori)感染胃炎の除菌療法が日常診療において保険収載され,除菌治療を行う前には上部消化管内視鏡検査による胃癌の除外に加えて,日常の内視鏡検査でH. pyloriの感染状況を診断すること,さらに今後の胃癌の発生リスクを評価することがより重要となった.そのためには内視鏡による胃炎診断が必要不可欠である.2014年9月には内視鏡による胃炎診断に必要な所見を取り上げ,胃炎診断の統一化を図った「胃炎の京都分類」が発表された 12.胃の内視鏡スクリーニングをする際に個々の胃癌の発生リスクを評価するため,H. pylori未感染,現感染,既感染の3つのフェーズに分けて胃炎の内視鏡所見を診断することを基本とし,H. pylori感染胃炎を診断する所見を明確にすること,胃癌のリスクとなる所見をスコア化することを目的として作成された分類である.具体的には,胃癌リスクが高いと報告されている萎縮,腸上皮化生,皺襞腫大,鳥肌,びまん性発赤の5項目である.これらの所見の中でも,腸上皮化生,びまん性発赤は白色光による客観的な内視鏡評価が難しいため,LCIを活用することで胃炎診断に役立つことが期待されている.筆者らは,H. pylori感染胃炎の最も有意な所見の一つである体部胃底腺粘膜のびまん性発赤 13が韓紅色(crimson)を呈し,H. pylori陰性胃粘膜(除菌後)ではびまん性発赤のない杏色(apricot)となることを発見し(Figure 6),LCIによるH. pylori感染胃炎の診断の有用性を白色光と後向きに比較検討した 14.LCIによるH. pylori感染の診断精度は感度93.3%,特異度78.3%であり,WLIの感度81.7%,特異度66.7%に比べ有意に診断能は高かった.

Figure 6 

H. pylori感染胃炎.

a:白色光観察.

b:LCI観察.

白色光観察では萎縮のない胃底腺領域はわずかに発赤を呈するがびまん性発赤と判定するのは難しい.LCIでは萎縮のない胃底腺領域が韓紅色として認識でき,びまん性発赤の診断が容易になる.

また,腸上皮化生については,light blue crest 15),16やwhite opaque substance 17などのNBIやBLIで特異的な所見が明らかになっているが,拡大機能のない内視鏡では判定が難しいことが問題である.しかしながら,LCI では腸上皮化生はラベンダー色となることで,白色光に比較して認識が容易となる(Figure 7 18.小野らは,白色光とLCIの腸上皮化生の検出率を前向きに比較検討し,白色光の検出率が19.0%に対して,LCIの検出率が91.4%であり有意にLCIの検出率が優れていることを報告している 19.また,最新の細径内視鏡では通常内視鏡と同等の明るさで観察が可能であることやLCI観察が可能であるため通常内視鏡と遜色のない観察能を有していると考えられる 20

Figure 7 

腸上皮化生.

a:白色光観察.

b:LCI観察.

白色光観察では胃前庭部に注意深く観察すると白色調を呈する扁平隆起を多数認めるが,認識が難しい.LCI観察ではラベンダー色の境界明瞭な扁平隆起として容易に認識できる.

2)LCIによる胃癌の診断

胃のスクリーニング内視鏡検査に求められる画像は遠景・近景・近接観察のいずれにおいても十分な情報が得られることである.LCIは前述の通り白色光画像に近く,遠景観察でも十分な明るさでわずかな色調変化を認識しやすいため,管腔が広い胃での観察に適している.白色光観察では周囲粘膜との色調コントラストが乏しく検出が困難な病変であっても,LCIモードでは赤色粘膜はより赤く,白色粘膜はより白く観察されるため,周囲粘膜との色調コントラストが上昇し視認性が向上することが報告されている 21),22.また,色差(Color difference)を用いることによりLCIが早期胃癌の視認性を向上することが客観的に評価されている 23.しかしながら,これらの報告は後向き研究であるため,LCIによる早期胃癌を含めた上部消化管腫瘍の存在診断に関する多施設共同前向きランダム化比較試験の結果が待たれる(UMIN 000023863).白色光観察では認識が困難であったが,LCIによりオレンジ色の胃癌とラベンダー色の腸上皮化生の色調コントラストが存在診断に有用であった症例を提示する(Figure 8).

Figure 8 

胃角部前壁,0-Ⅱa,10mm,tub1,T1a(M),UL(-).

a:白色光観察.

b:LCI観察.

白色光観察ではわずかに発赤調を呈するが,注意深く観察しても存在診断が難しい病変である(矢印).LCI観察ではラベンダー色の腸上皮化生に囲まれた境界明瞭なオレンジ色の領域として認識できる(矢印).

Ⅴ おわりに

レーザー光源搭載の内視鏡システムによりBLIやLCIといった新たなIEEが登場した.BLI拡大観察はNBI観察と同等の胃癌に対する質的診断能を有し,白色光に比し有用であることが証明された.また,BLI-brightは,これまでのIEEの光量不足や画質不良などの課題を克服することで,胃においても中遠景観察が可能となり,胃癌の存在診断においても有用性が証明された.さらに,LCIにおいては胃癌のリスク分類をする上で必要な腸上皮化生やびまん性発赤などの胃炎所見をより高い精度で評価できることが証明された.対策型検診として胃癌の胃内視鏡検診が導入され,通常内視鏡のみならず経鼻内視鏡でも今後より一層高い精度の検査が求められている中で,早期胃癌の質的診断はもとより存在診断においてもBLIおよびLCIが有用であると考えられる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:内藤裕二(富士フイルム㈱)

文 献
 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top