GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2019 Volume 61 Issue 7 Pages 1469-1472

Details

概要

沿革・特徴など

当院は1952年1月,日本電信電話公社の職域病院,関東逓信病院として開設された.1986年6月以降は保険医療機関の指定を受けて一般に開放され,NTTグループ社員に限らず誰でも利用できるようになり,1999年7月からNTT再編成の実施に伴い現在の名称であるNTT東日本関東病院と改称された.現在では,病床数627床,診療科数は40を数え,東京都品川区・大田区における地域がん診療拠点病院,また,東京都災害拠点病院に指定されている.また,2011年3月には国際的医療機能評価の一つであるJCI(Joint Commission International)を取得し,特に6つの国際患者安全目標(患者確認,良好なコミュニケーション,薬剤の安全投与,手術の安全な実施,感染対策,転倒・転落対策)には十分に重点を置き,医療安全と医療の質の改善に努めている.

組織

当院では昭和30年代の内視鏡検査の草創期から検査を行っていたが,2000年12月新病院開院に伴い,NTT東日本関東病院内視鏡センターが設立された.そして,2004年1月からは内視鏡部 として態勢を整え,質・量の両面で増大する内視鏡検査・治療の需要に即応できるようになった.その後も,更に高まるニーズに応える形で,2013年5月1日“人間ドック内視鏡センター”の新規開設を行った.現在は,内視鏡センターの検査室は専用のX線透視室を加え7室,人間ドック内視鏡センターには4室と計11室の検査室を有している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡センターの特徴

当院が目指すビジョン「All for one」を提供するために,内視鏡センターではがんの治療に関しては「早期発見」「低侵襲治療」の提供を,救急に関しては24時間充実の救急体制を引いている.

・早期発見:人間ドック内視鏡センターでは早期でのdetectionを,内視鏡センターでは正確なdiagnosisに注力しており,診断の難しい症例や抗血栓薬多剤内服例では共焦点レーザー顕微内視鏡を用いることでoptimal biopsyが可能である.Endocytoscopyも導入予定であり,更なる高精度内視鏡が可能となる.

・低侵襲内視鏡治療:当院では消化管表在腫瘍(食道・胃・大腸)に対するESDを多数例施行している.また,週に1回手術室の枠を確保しており,困難症例の内視鏡治療,咽頭表在癌に対するESDや十二指腸ESDは手術室で行っている.また,消化器外科とも密に連携を取っており,LECSをはじめとした外科内科合同手術も積極的に行っており,低侵襲内視鏡治療を安全に行うことが可能な体制を整えている.

・緊急内視鏡:消化管出血などの緊急内視鏡対応が24時間・365日安全に提供できるように,内視鏡医2名によるオンコール体制を常に整えている.

スタッフ

(2019年1月現在)

医師:常勤医師15名(指導医4名,専門医11名),特別研修生2名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看護師:常勤16名

臨床工学技師:2名

受付事務:2名

内視鏡洗浄スタッフ:3名

設備・備品

(2019年1月現在)

 

 

実績

(2018年1月~2018年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

われわれの施設ではトレーニングに非常に大きな比重を置いている.専門性の高い分野であるためか,後期研修終了後に内視鏡を専門としたい医師が研修に来る傾向にある.研修体制としては消化器内科のスタッフもしくは,内視鏡センター所属の特別研修生があり,研修生は内視鏡診断・治療に専念して研修を行うことが可能であり,年限が設けておらず希望に応じて週1~5日のシフトを組むことができる.

・経験年数に関わらず,まず研修最初の1カ月はしっかりと内視鏡検査を見学してもらい,当センターにおける検査の流れを学んでもらう.その後,実際にスタッフとマンツーマンで内視鏡検査を行う.

・内視鏡治療(特にESD)を開始するのにあたり,客観的な基準を設けることでトレイニーの目標を明確にするようにしている.

・胃・大腸モデルを有しており,挿入や観察のトレーニングの補完を行えるようにしている.また,アニマルモデル(豚)もいつでも使えるように完備しており,トレーニングの際にも1人ではなく指導医が同伴して技術指導を行うようにしている.

・カンファレンスは,消化器内科カンファレンス,内科外科合同カンファレンス,内視鏡カンファレンス,内視鏡読影勉強会を週に1回,病理カンファレンス,放射線カンファレンスも定期的に行っている.特に内視鏡読影勉強会は毎週水曜日の朝にレクチャーと症例提示を行っており,他院の希望者も参加できるようなオープンな勉強会としている.

海外医師のトレーニングも積極的に行っている.国内に研修に来る海外医師に関しては,短期・中長期いずれの研修も可能であり,基準を満たす医師に関しては,外国人臨床修練制度を利用し,患者への診療行為を認めている.見学に加えてレクチャーやアニマルトレーニングなどのステップを踏んで,内視鏡治療(ESD)まで行うことを目標としている.特に中国人医師に関しては,医療通訳を付けることでより効率的な研修を行うことができるように工夫している.同時に,国内および海外に直接赴いての実地トレーニングの指導も行っており,内視鏡を通じてグローバルな経験を積むことが可能である.

現状の問題点と今後

一般的な市中病院の中ではスタッフが多いと思われるものの,まだまだ医師・コメディカルとも人員が不足している.医師に関しては,患者に対する高度な医療・研修生への充実した指導体制を同時に提供するには,指導する内視鏡医の質・量ともに必要であり,症例数も順調に増加していることから更なる発展のためにはスタッフの増員が望まれる.また,コメディカルに関しては,有難いことに内視鏡専任の臨床工学技士2名をスタッフとして迎えることができた.専門的な知識や技術はコメディカルの教育という点でも大きなプラスである.一方で,鎮静剤を希望する患者や必要とする治療の数は年々増加しており,検査前後での患者説明に留まらず,検査中の看護や介助,リカバリーの管理など,コメディカルとの連携が非常に重要であり,人員の充実は急務である.現状では,医師側のリーダー,看護師側のリーダーが密に連携して当日予定・週間予定表の把握,検査治療の割り振りを細かく行っており,限られた人員で無駄な時間を少しでも省き,かつ内視鏡医が検査に集中できるよう努めている.

今後に関しては,従来の内視鏡検査や治療,トレーニングシステムの更なる充実は言うまでもなく,研究や開発にも取り組めるような環境整備,海外でのトレーニング施設の設立など更なる発展を目指し,「Only one」な施設となることを目論んでいる.

 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top