GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF SYSTEMIC FOLLICULAR LYMPHOMA WITH MULTIPLE LYMPHOMATOUS POLYPOSIS IN THE ENTIRE COLON
Ryosuke ITAI Eiji IKEDASakae MIKAMIHisahiro UEMURAMitsuru HOSHIMasayuki MARUOSatoki YASUMURAMariko TAKADAYasuhiko SUMITOMOYukimasa YAMASHITA
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2019 Volume 61 Issue 8 Pages 1561-1568

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要旨

73歳女性.下痢,血便,体重減少の精査のために施行した大腸内視鏡検査で全大腸にMultiple lymphomatous polyposis(MLP)を認め,上部消化管内視鏡検査では十二指腸に白色顆粒状の隆起性病変を認めた.大腸,十二指腸病変からの生検より濾胞性リンパ腫と診断した.追加検査にて多発リンパ節腫大,脾臓,骨髄浸潤を認め,濾胞性リンパ腫 grade1,Ann Arbor分類IVB期,FLIPI high riskと診断した.化学療法(R-CHOP療法)8コース施行後の画像検査でCRと判定した.十二指腸に典型的な濾胞性リンパ腫の所見を呈し,大腸にMLPを認める全身性濾胞性リンパ腫の症例は稀でありここに報告する.

Ⅰ 緒  言

濾胞性リンパ腫の多くは節性であり,従来節外性病変は例外的といわれていた.吉野らが十二指腸病変の存在を報告して以来,濾胞性リンパ腫の消化管病変の診断頻度が高まっているが,多くは十二指腸を含む小腸を主座としており,大腸に病変を認める頻度は少ない.今回われわれは典型的な十二指腸病変と共に大腸に広範にMultiple lymphomatous polyposis(以下MLP)を認めた全身性濾胞性リンパ腫の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.

Ⅱ 症  例

症例:73歳,女性.

主訴:下痢,血便,体重減少.

既往歴:陳旧性肺結核,B型肝炎(既感染),脂質異常症,高血圧症.

内服歴:エディロール,カルベジロール,アムロジピン,ピタバスタチン,エチゾラム,モサプリド.

家族歴:特記事項なし. 

現病歴:20XX-1年6月頃より軟便,水様下痢が続いていたが,他院で過敏性腸症候群と診断され投薬加療を受けていた.20XX年1月に血便がみられ,約半年で10Kg以上の体重減少を認めたため,精査,加療目的に当科を紹介受診した.

初診時現症:身長149cm,体重49.0kg,体温36.5℃,血圧130/70mmHg,脈拍80回/分・整.結膜に貧血,黄疸を認めない.胸部に異常を認めない.腹部は平坦,軟,右季肋部から右下腹部にかけて軽度圧痛を認めた.体表リンパ節は触知しない.

初診時検査成績(Table 1):Hb 10.7mg/dlと貧血を認め,Alb 3.35mg/dlと軽度の低アルブミン血症を認めた.肝腎機能に異常を認めない.可溶性インターロイキン2受容体は2,075U/mlと高値であった.

Table 1 

初診時血液検査成績.

注腸X線検査(Figure 1):盲腸から直腸にかけて連続性,びまん性に小型の半球状隆起が多発していた.隆起中央に陥凹面と思われるバリウムの貯まりを伴う病変もみられた.盲腸から上行結腸にかけては襞の太まり,内腔の狭小化,伸展不良を認めた.

Figure 1 

注腸X線検査.

盲腸から直腸にかけて連続性,びまん性に小型の半球状隆起が多発していた(矢印).盲腸から上行結腸にかけては襞の太まり,内腔の狭小化,伸展不良を認めた(矢頭).

下部消化管内視鏡検査(Figure 2):盲腸から横行結腸に不規則な襞の腫大を認め,表面に拡張血管を伴っていた.直腸でも同様に襞の腫大を認め,拡張血管を伴った粘膜下腫瘍様隆起もみられた.横行結腸からS状結腸にかけて表面平滑で中央に小陥凹を伴う平坦隆起性病変が多発していた.

Figure 2 

初回下部消化管内視鏡検査(a. 上行結腸,b. 横行結腸,c. 直腸).

a:盲腸から横行結腸に不規則な襞の腫大を認め,表面に拡張血管を伴っていた.

b:横行結腸からS状結腸にかけて表面平滑で中央に小陥凹を伴う平坦隆起性病変が多発していた.

c:直腸にも襞の腫大を認め,拡張血管を伴う粘膜下腫瘍様隆起もみられた.

上部消化管内視鏡検査(Figure 3):十二指腸球部から水平脚にかけて白色顆粒状の隆起性病変が多発していた.同部ではケルクリング襞は軽度腫大し,浮腫性変化が目立った.

Figure 3 

初回上部消化管内視鏡検査(水平脚).

十二指腸球部から水平脚にかけて白色顆粒状の隆起性病変が多発していた.同部ではケルクリング襞は軽度腫大し,浮腫性変化が目立った.

大腸病変の病理組織所見(Figure 45):粘膜内に中型主体のリンパ腫細胞がびまん性に増殖していた.免疫組織染色検査では腫瘍細胞はBCL2陽性,CD20陽性,CD3陰性,CD10陽性,Ki-67 labeling index low,cyclin D1陰性であった.

Figure 4 

大腸病変の病理組織所見(HE染色,×4倍).

粘膜内に中型主体のリンパ腫細胞がびまん性に増殖し,濾胞構造を形成していた.

Figure 5 

大腸病変の病理組織所見(免疫組織染色).

a:BCL2陽性(×20倍).

b:CD20陽性(×20倍).

c:CD10陽性(×20倍).

d:Ki-67 labeling index low(×20倍).

フローサイトメトリー:B細胞系マーカーのCD10,CD19,CD20陽性であり,免疫グロブリン軽鎖制限(κ鎖)を認めた.以上より濾胞性リンパ腫,grade1と診断した.

骨髄生検:くびれた核を有する小型リンパ球が胚中心構造を伴わない濾胞構造を形成していた.BCL2は陽性であり,リンパ腫細胞の骨髄浸潤と判断した.

PET-CT:上行結腸,直腸,上部空腸にFDGの高度集積を認めた.腸間膜,傍大動脈領域,腹腔動脈周囲にFDGの高度集積を伴う腫大リンパ節が多発していた.右鼠径部,両側鎖骨上窩リンパ節にも集積がみられた.脾腫を認め,びまん性に集積を認めた.

以上の結果より,濾胞性リンパ腫 grade 1,Ann Arber分類IVB期(胃,大腸,鎖骨下,傍大動脈周囲,腸間膜,鼠径リンパ節,脾臓,骨髄),FLIPI high riskと診断した.

20XX+1年3月よりrituximab併用CHOP(cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, predonisone)療法を開始し,計8コース施行した.9月に施行した上部消化管内視鏡検査では十二指腸の白色の顆粒状隆起性病変,ケルクリング襞の腫大は改善しており,下部消化管内視鏡検査でも不規則な襞の腫大,多発平坦隆起性病変は消失していた.PET-CTでも腸管,腫大リンパ節,脾臓へのFDG集積は消失しており,完全寛解と判断した.現在まで12カ月間,寛解を維持している.

Ⅲ 考  察

濾胞性リンパ腫とは,胚中心細胞に類似する小型から中型B細胞と胚中心芽細胞に類似する大型B細胞とが種々の割合で混在し,リンパ濾胞様結節を形成する腫瘍で,低悪性度リンパ腫の代表疾患である.その大部分は節性であり,従来節外性のものは例外的といわれていたが,吉野ら 1が濾胞性リンパ腫に特徴的な内視鏡所見として,十二指腸下行部の白色顆粒状所見を報告してからは,十二指腸病変の報告例が増加している.2008年に公刊されたWHO分類第4版でも新たなvariantとしてprimary intestinal follicular lymphomaの項目が設けられた 2

濾胞性リンパ腫の消化管病変は上部消化管内視鏡検査で前述のように十二指腸下行部に存在する白色顆粒状病変の集簇として偶然発見されることが多い.一方で空腸,回腸では十二指腸と比較して多彩な病変がみられ,品川らは発赤を伴う凹凸不整な粘膜,正常のリンパ濾胞との鑑別を要するような正色調の多発性隆起性病変,腫瘤形成,粘膜の発赤等の所見を報告している 3.一方で大腸病変の報告は少ない.2014年に高嶋らは,医学中央雑誌を用いて検索した論文報告17例をまとめている(1985年から2013年まで「濾胞性リンパ腫」または「follicular lymphoma」と,「盲腸」,「結腸」,「直腸」または「大腸」を用いて検索) 4.今回2017年までの報告例で同様の用語で検索すると,本邦報告は自験例を含めて21例であった(会議録除く)(Table 2 4)~24.男性11例,女性10例であり,年齢は47〜77歳(中央値62歳),大腸以外の消化管病変の併存は11例にみられた(胃3例,十二指腸5例,空腸4例,回腸7例).肉眼型は中村らの分類(隆起・潰瘍・MLP・びまん・混合型) 25を用いると,隆起型,MLP型が主体で,潰瘍型,びまん型はみられなかった.

Table 2 

大腸病変を有する濾胞性リンパ腫の本邦報告例.

術前診断がついた症例は12例であり(生検9例,ESD/EMR3例),手術検体により診断された症例が9例であった.治療は手術単独が3例,ESD/EMR単独が2例であり,化学療法が施行された症例は15例であった(化学療法単独7例,術後化学療法7例,放射線療法併用1例).

自験例では十二指腸病変は典型的な白色顆粒状であり,大腸病変はMLP型と内視鏡像が異なっていたが,十二指腸病変と大腸病変の合併を認めた自験例を除く4症例のうち内視鏡像の判明している3症例では,船田らの症例は十二指腸と大腸病変はいずれも白色顆粒状病変であり,他の2症例は十二指腸と大腸は多発する粘膜下腫瘍様の隆起性病変であった.

全大腸に連続して所見を認めた濾胞性リンパ腫の報告は2例であり 10),18,自験例と同様に多発隆起とMLP型が混在した症例は渡辺らによって報告された1例のみであった 10.渡辺らの報告では盲腸から直腸にかけてMLP像を呈しており,直腸では発赤・びらんを伴う巨大皺襞様の隆起性病変が多発していた.この直腸の所見は自験例で右側横行結腸,直腸にみられた不整な脳回状の襞腫大所見と類似していた.

本症例はCornesの定義に当てはまらず,全身性濾胞性リンパ腫の消化管浸潤と考えられた.本症例においては,横行結腸からS状結腸にかけては典型的なMLP像を呈していたが,盲腸から右側横行結腸,直腸では不整な脳回状の襞腫大,粘膜下腫瘍様隆起が多発しており,MLPが集簇,融合する程度により,このような多彩な内視鏡像を呈したと推察される.MLPを呈する悪性リンパ腫としてはマントル細胞リンパ腫が代表的であるが 26,本症例のような濾胞性リンパ腫の他,MALTリンパ腫 27や成人T細胞性白血病/リンパ腫での報告例もあり鑑別を要する 28.またMLP類似の病変を呈する疾患としてCowden病,多発する粘膜下腫瘍様隆起を呈する疾患として転移性大腸癌も鑑別を要したが,いずれも全大腸の所見を説明できず,否定的と考えられた.

またMLPを認めた際に,悪性リンパ腫と良性リンパ濾胞過形成との鑑別は重要となる.

特に直腸リンパ腫とリンパ性濾胞性直腸炎との鑑別は病理学的に容易でない場合も多く,鉗子生検で診断が困難な場合はEMRで大きな組織を採取して診断することが推奨されている 29.またリンパ性濾胞性直腸炎の一部は潰瘍性大腸炎の初期病変であることも指摘されており,リンパ腫との鑑別も含めて,十分な経過観察が必要とされている.上記のように精度の高い悪性リンパ腫の病理診断のためには,挫滅のない十分量の組織を採取することが必要であり 30,そしてHE染色のみならず,適切な免疫染色,リンパ球の各種表面マーカー,遺伝子検査,染色体検査を追加し,正確な診断を行うことで,適切な治療が可能となる.病理オーダー時には,悪性リンパ腫が疑われていることを必ず記載し,病理医と十分に情報を共有することが重要である.病理診断にて濾胞性リンパ腫と診断されれば,全消化管検索として消化管造影透視検査や内視鏡検査,全身検索として全身CT,PET-CTや骨髄穿刺等を行い,正確な病期診断の上で適切な治療方針を決定する必要がある.

Ⅳ 結  語

下痢,血便,体重減少で発症し,典型的な十二指腸病変と共に大腸にMLPを認めた全身性濾胞性リンパ腫の1例を報告した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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