GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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Accuracy of the Narrow-Band Imaging International Colorectal Endoscopic Classification System in Identification of Deep Invasion in Colorectal Polyps 1).
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2019 Volume 61 Issue 8 Pages 1608

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【背景と目的】少なくとも1つリンパ節転移のリスク因子があるT1大腸病変は外科的切除の必要があり,内視鏡的には切除不能であると考えられる.内視鏡治療を要する粘膜下浸潤病変を同定するために,NICE分類に基づいた画像診断が用いられる.われわれはNICE分類に肉眼型を加味して内視鏡的切除不能な浸潤病変(少なくとも1個のリンパ節転移リスクを持つ病変)を同定する場合のNICE分類の正診率を解析した.

【方法】2014年7月~2016年6月までの期間,スペインの17の大学と関連病院にて多施設共同前向き研究を行い,58人の内視鏡医によりNBIで診断された10mm以上の連続病変,2,123病変(1,634人)を対象とした.プライマリーエンドポイントは粘膜下層深部浸潤癌(T1b)に対するNICE分類の正診率とし,病理診断をゴールドスタンダードとして用いた.また,CTREE(conditional inference tree)が正診率の解析法として用いられた.

【結果】解析された2,123病変のうち89病変(4.2%)がT1bであり,91病変(4.3%)が内視鏡的切除不能病変であった.NICE分類のT1bに対する感度は58.4%(95%信頼区間47.5%~68.8%),特異度96.4%(95%信頼区間95.5%~97.2%),陽性反応的中度41.6%(95%信頼区間32.9%~50.8%),陰性反応的中度98.1%(95%信頼区間97.5%~98.7%)であった.すべての変数を含んだCTREEによる解析ではNICE分類がもっとも正確にT1bを診断可能であった(p<0.001).しかしながら有茎性の肉眼型(p<0.007),潰瘍形成(p=0.026),陥凹面(p<0.001),LST-G mixed type(p<0.001)が正診率に影響していた.内視鏡的切除不能病変を同定する場合の解析結果も同様であった.

【結論】10mm以上の2,123の大腸病変に対し,NICE分類と肉眼型によりT1bを診断する場合,非熟練医による非拡大内視鏡観察であっても96%以上の特異度を持って診断可能であった.

《解説》

本論文は多施設共同前向き研究によるNICE分類を用いた深達度診断能,および内視鏡的切除不能病変に対する予測能の検討である.

検討には,いわゆる決定木分析の一つであるCTREE(conditional inference tree)という分析方法を用いている.決定木分析は,多変量解析のように,各々の因子が診断に寄与するp値(および尤度含む統計量)が計算され,診断アルゴリズムを木の枝状に場合分けすることで全体像を理解しやすく図示する事を特徴とする解析法である.しかしこれまで報告されている複数の決定木分析方法には,いずれも選択バイアスや外れ値があると正確な統計解析ができない場合があるという問題があった.CTREEはこれらの問題を解決した新しい分析法とされている.

筆者らは2,123例という比較的多数例を対象としてNICE分類に肉眼型を加味した場合の,10mm以上の大腸病変における深達度T1b以深の診断能を検討した.試験に参加した内視鏡医はいずれもスペインのバルセロナ大学およびその関連施設の医師で,NICE分類についての40の教育画像を見てNICE分類のトレーニングを行っている.

本論文においては10mm以上の病変に対してNBI非拡大診断を用いており,欧州諸国における“real-life”の実臨床に即した研究であることが強調されている.さらに,統計学的に十分なサンプルサイズを事前に計算し,必要症例数をエントリーしたとしている.本検討では特異度は96.4%と高く,感度は58.4%と不十分としているが,これらの診断能は既報と同様であったと述べられている 2),3.また肉眼型を加味した解析で,陥凹面を認める病変の9.7%,LST-G nodular mixed typeの8.6%がT1bであることも考察されている.既報の如く,とくにLST-G nodular mixed typeにおいては全体をくまなく観察することは難しく,またmulti-focalに深部浸潤を認めることがその原因の一つと考察されている 4),5.さらに,本検討では深達度のほかに,非治癒切除因子を予測しうるかどうかについての検討も行い,結果,深達度T1bを診断する場合と同様であったと述べられている.このことから,本検討において提示された診断モデルは,深達度診断と同様に,内視鏡的非治癒切除因子を予測する診断モデルとしても同等の価値をもち,治療選択の決定に寄与すると結論されている.

文 献
 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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