2020 Volume 62 Issue 4 Pages 516
【背景】胃mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫は稀な疾患であり,そのデータの大半は拠点医療機関にて加療された限られた患者の臨床研究に拠る.
【目的】フランスの住民ベース研究における胃MALTリンパ腫患者の臨床像,治療および生存率を解析すること.
【方法】がん登録が行われているフランス国内11地域で2002-2010年に新規登録された胃MALTリンパ腫を対象とした.病理報告書を照合し,必要であれば病理専門医が再鑑定した.全臨床データをカルテより後方視的に集積し,STATA V.14ソフトウェアを用いて解析した.
【結果】416症例の胃MALTリンパ腫を確認した(男性50%,年齢中央値67歳).このうち44例は早期にdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)に形質転換しており,高悪性度リンパ腫の誤診例と考えられた.診断時の臨床病期はⅠ/Ⅱ期76%,Ⅲ/Ⅳ期24%であった.Helicobacter pylori感染は57%の症例で認め,76%の例で除菌が行われ,39%の例で完全寛解(complete remission;CR)が得られた.全体で70%の例でCRが得られ,5年生存率は79%(95%信頼区間75-83)であった.
【結論】臨床ケースシリーズと異なり,一般住民においては,胃MALTリンパ腫は進行病期で診断される例が多い.このため,様々な治療が行われており,誤診や過剰治療のリスクがある.本症に対する適切な診療ガイドラインが必要である.
胃MALTリンパ腫は,胃の粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)に由来する稀な胃腫瘍であり,通常はHelicobacter pylori感染によって発症する.その多くは胃に限局し,播種を来すことは稀である.また,DLBCLへの高悪性度形質転換例は極めて稀(<1%)と考えられる.
欧州では,2011年以降に本症に対する診療ガイドラインが公表されているが 2)~4),治療や予後に関するデータの多くは,限られた医療機関における少数例の後方視的または前方視的研究に拠るものであり,本症の臨床像,治療法および予後に関する住民ベース研究は本論文が初めてである.今後,本論文の結果を反映した,現状に即した本症の診療ガイドラインの確立が望まれる.