GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 62 Issue 7 Pages 830-833

Details

概要

沿革・特徴

当院は1951年に開設された札幌共済病院が1961年に斗南病院と改称され,以来,これまで約60年余りの歴史を持つ.2016年10月に現在地に新築移転し,現在は27科の診療科を有する病床数283床の急性期型の総合病院である.

当院は地域支援病院に承認されており,地域の中核病院としての役割を担っているほか,北海道がん診療連携指定病院にも指定されており,内視鏡治療のみならず,腹腔鏡・胸腔鏡や手術支援ロボット(ダヴィンチ)による低侵襲手術,化学療法や放射線治療に至るまで各科が互いに協力しながら最先端のがん診療にあたっている.

また,消化器内科に関連するものとして,日本内科学会認定教育関連病院,日本消化器病学会指定施設,日本消化器内視鏡学会認定指導施設,日本がん治療認定医機構認定研修施設の認定も受けており,がん診療のみならず幅広く消化器診療を行うと同時に十分な臨床経験を積むことができる研修体制も整備している.

組織

内視鏡部は外来部門の一つとして位置づけられており,診療スタッフは消化器内科医師のほか専属の看護師11名(常勤5名),臨床工学技士1名(3名が他業務と交代で勤務),事務員3名,看護助手3名で構成されている.なお,コメディカルスタッフにおいては内視鏡技師の資格を持つスタッフが7名在籍している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

年々増加し続ける内視鏡検査数に対応すべく,内視鏡室は旧病院での総面積266.23m2から新病院への建て替えに伴い462.08m2に拡大した.現在は6室の内視鏡検査ブース(3室ずつオリンパス社製内視鏡システムと富士フイルム社製内視鏡システムを設置),安静室,診察室,下部内視鏡検査における前処置室(正面にトイレも設置),内視鏡洗浄スペース,画像診断室(カンファレンス室)からなる.また,同フロアで内視鏡センターに隣接する検診センターと共有ではあるが待合室,更衣室も備えている.検査室の1室は救急患者への対応やESDなどの内視鏡治療を行いやすくするために広く設計した.そのほかESDやFNAなどの処置の際だけでなく,大腸内視鏡検査時の被験者の苦痛を軽減するために全室にCO2を配管している.

なお,当院では以前より経口内視鏡検査および下部内視鏡検査の際には原則として“苦痛のない内視鏡検査”を実践するために全例で鎮静下内視鏡検査を施行しており,安静室にはベッド11台,リクライニングシート5台を設け,検査を行った外来患者の安静に対応できるようにしている.一方で検査の効率化も考慮する必要があり,ドック患者などの検診目的の内視鏡検査においては鎮静を要しない経鼻内視鏡検査も行っている.

内視鏡画像はファイリングシステムで管理しており,診療のみならず,内視鏡カンファレンスや外科・病理との合同カンファレンスの際にも有効に利用している.

当院では積極的に消化管,胆膵領域における内視鏡治療を行っており,とくにESDにおいては道内でも先駆的に導入し,現在も治療件数は増加傾向にある.食道ESDや長時間を要することが予想される胃ESD,十二指腸ESD,LECS(腹腔鏡内視鏡合同手術)や耳鼻科と合同で行う咽頭表在癌に対するESDなどにおいては全身麻酔下に手術室で行う体制も整えている.

そのほか,ERCPや消化管ステント留置術などの透視を要する検査は別フロアの放射線透視室を使用している.透視の際の放射線防護対策においてはプロテクター,防護眼鏡のほかX線透視台用防護カーテンを備え,医療被曝の低減にも配慮している.

スタッフ

(2020年2月20日現在)

医師:消化器内視鏡学会指導医6名,消化器内視鏡学会専門医2名,その他スタッフ5名,後期研修医1名

内視鏡技師:Ⅰ種7名

看護師:常勤5名,非常勤6名

事務職:3名

看護助手:3名

その他:臨床工学技士1名(他業務と兼務のため3名が毎日交代で配属)

 

 

設備・備品

(2020年2月20日現在)

 

 

実績

(2019年1月~2019年12月まで)

 

 

指導体制・指導方針

消化器内科は大きく消化管グループと肝胆膵グループに分かれているが,各々のグループは協力し合いながら業務分担しており,通常内視鏡検査においてはいずれのグループの医師も担当して行っている.

当院は臨床研修指定病院にも指定されており,現在は14名の初期研修医と9名の後期研修医が在籍しているが,各々で指導方法や教育内容は大きく異なる.1-2年目の初期研修医については,内視鏡実習の希望者には内視鏡モデルで練習を行うほか,内視鏡検査・処置に介助者として参加するなどのより実践的な指導も行っているが,基本的には今後,医師としてさまざまな領域の診療科へ進むにあたり必要な消化器救急や入院患者の一般診療における知識や経験を積むことを主眼としている.3年目以降の後期研修医においては,消化器内科医として必要な知識ならびに技術を習得するため,消化器内科(消化管グループ,肝胆膵グループ)のみならず腫瘍内科とも協力をしながら指導を受ける体制を整えている.消化管グループでは指導医のもと通常業務として上部内視鏡検査を担当し,生検を含む内視鏡技術の向上が得られたのちに下部内視鏡検査の研修も開始している.さらに治療内視鏡においては指導医のもとで救急患者などにおける止血術や胃・大腸でのポリペクトミーおよびEMRの経験を十分に積んだのち,ESDの技術指導も行っている.また,肝胆膵グループにおいても,上・下部内視鏡検査の経験を経たのちにEUSやERCPなどの検査・処置につき指導を行っている.

消化器内科医として,さまざまな内視鏡検査・処置につき技術を習得することは非常に大切なことであるが,医師として化学療法の患者と向き合い,命の尊さについて学ぶことや,看護師,薬剤師,理学療法士やソーシャルワーカーなど多職種とのかかわりを持つことも重要なことだと考えている.そのため当院では腫瘍内科とも協力しながらがん化学療法についての教育体制も整えている.

そのほか,内視鏡読影カンファレンス,ESD症例についてのESDカンファレンスおよび外科・病理との合同カンファレンスを各々週一回行っており,とくに合同カンファレンスでは手術症例の病理診断についての検討のほか,個々の症例の治療方針につき協議している.

また,学術活動も重要と考えており,学会・研究会活動のほか論文執筆においても力を入れて指導している.

現状の問題点と今後

2016年の新病院設立に伴い,内視鏡検査ブースの増室,安静室の拡大など内視鏡設備は充実したものの,予想以上に内視鏡検査および治療件数は増加しており,この傾向は今後も続くことが予想される.とくに上部内視鏡検査においては,検査のqualityを損ねることがないよう,胃・食道癌ハイリスク症例ならびに精査が必要な症例では従来通り拡大内視鏡検査を含む経口内視鏡検査を行っていく一方,効率よく安静室を稼働させるため,現在は検診受検者のみを対象としているが検査目的に応じて経鼻内視鏡検査を積極的に行っていくなどの対策も必要と考えている.またESDやEUS,EUS-FNAの増加については現在,看護師をはじめとするコメディカルスタッフの献身的な協力もあり何とか遂行できてはいるものの,常勤の看護師は当直業務も兼ねており,また臨床工学技士も他業務との兼務であり,マンパワー不足は否めない.今後は「働き方改革」の問題もあり,とくに看護スタッフについてはこれまで以上に効率的な人員配置を検討すべく,改めて病院内での組織編制を考えていく必要があろう.さらに近年では内視鏡技術や専門性の高度化が進むに従い,内視鏡業務は複雑化してきており,コメディカルスタッフの人員確保のみならずその教育にも継続して力を入れていくべきだと考えている.

今後も多くの患者に病院の理念である“良質で優しい医療”を提供しつつ,さらには,「働き方改革」のほか新たな臨床研修医制度や新専門医制度などの臨床教育制度の変革にも対応すべく,病院全体で診療体制を整えていくことが必要となってきている.

 
© 2020 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top