GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
Novel endoscopic technique for tri-segment drainage in patients with unresectable hilar malignant biliary strictures(with video) 1).
[in Japanese][in Japanese][in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2020 Volume 62 Issue 7 Pages 834

Details
 

【背景と目的】Bismuth ⅢaもしくはⅣ型の肝門部悪性胆道狭窄(malignant biliary strictures:MBS)を有する患者に対するドレナージには,3本以上のステントが必要になる場合がある.金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)を用いたmultistentingは,これまでPartial stent-in-stent(PSIS)による留置が唯一の方法であった.近年,6Fr以下の細径ステントデリバリーが製品化され,2本のSEMSを同時に留置するside-by-side stenting(SBS)法が開発された.3本以上のmultistentingに対しても,このSBS法にPSIS法を組み合わせた方法であるHybrid法による留置が可能となった.本研究では,新たな内視鏡的3区域ドレナージ法であるHybrid法の有効性と安全性を評価している.

【方法】本研究では,Bismuth ⅢaもしくはⅣ型のMBSを有する17人の患者に対してHybrid法を用いたmultistentingを施行した.

【結果】手技的成功割合は82%(14/17)であり,処置時間中央値は54分であった.手技を通してバルーンによる拡張を必要とした患者は2人であった.2人の患者(12%)に早期偶発症として胆嚢炎を発症し,1人の患者(6%)に晩期偶発症として肝膿瘍を認めた.Hybrid法を用いたmultistentingのステント開存期間中央値は189日であった(95%信頼区間:124~254日).

【結論】ステントデリバリーの細径化により可能となった内視鏡的3区域ドレナージであるHybrid法を用いたmultistentingは,肝門部MBSに対する効果的な内視鏡的ドレナージ法である.

《解説》

非切除MBSに対する胆道ドレナージは難渋することの多い処置である.以前は経皮的なドレナージが行われていたが,現在では内視鏡的ドレナージ法が第一選択となっている.Kawamotoらは,Bismuth ⅢaもしくはⅣ型のMBSを有する患者を対象として,内視鏡的にPSIS法による3本のSEMSを留置する方法を報告した 2.しかし,このPSIS法による3本SEMS留置では,SEMSのメッシュ間隙を2度通過する必要があり,難易度が高く,最終的な完成形に至らないことも経験していた.

近年では,胆道ステントのデリバリーは細径化が進み,6Fr以下のデリバリーが製品化され,内視鏡チャネル内に2本のSEMSを同時に挿入し展開することが可能となっている.これにより,肝門部狭窄に対する2本のSEMSを用いたSBS法によるmultistentingが報告されている 3)~5

本報告はMBSに対する3本のmultistentingの新しい方法として,SBS法とPSIS法を組み合わせたHybrid法を紹介している.これは,SBS法により2本のSEMSを同時に留置(主に後区域と左肝管)したのちに,もう1本のSEMSをPSIS法により留置(主に前区域)する方法である.Hybrid法ではステントのメッシュ間隙通過回数を1回に減らす事が可能であり,従来のPSIS法に比べより確実な手技であり,かつ同時に2本のステント留置ができることから手技時間の短縮にも繋がる.また長期成績として,ステント開存期間も十分に担保されていること,偶発症も少ないことから,Hybrid法が肝門部への3本以上のmultistentingの際の新たな選択肢と考えられる.

文 献
 
© 2020 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top