GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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BowelScope : Accuracy of detection using Endocuff optimisation of mucosal abnormalities (the B-ADENOMA Study) : a multicentre, randomised controlled flexible sigmoidoscopy trial 1).
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2020 Volume 62 Issue 8 Pages 1565

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【背景と目的】大腸腺腫の検出率(ADR)は下部消化管内視鏡検査の質を担保する重要な要素の一つである.高いADRは,下部消化管内視鏡検査後の大腸癌死の抑制に繋がる事が証明され,英国ではS状結腸内視鏡検査で大腸癌スクリーニングプログラムとして55歳時に1回限りの内視鏡検査が行われている.しかし大腸内視鏡検査はADRにばらつきがある事が問題となっている.大規模研究では大腸内視鏡スクリーニングでエンドカフを使用する事によりADRが向上する事が報告されたが,S状結腸内視鏡検査では,その有用性は証明されていない.そこで,本研究では,英国のS状結腸内視鏡のスクリーニングプログラムでADRに対するエンドカフの有用性を証明することを目的に行われた.

【デザイン】エンドカフを使用したS状結腸内視鏡検査時におけるADRの検討を英国の16施設にて多施設共同無作為化比較試験にて行われた.対象者はエンドカフ使用群と通常内視鏡群の2群にランダムに分け,ADR,ポリープの検出率,1施行毎の腺腫検出数,ポリープの特徴,局在,施行者の経験,内視鏡検査の施行時間,合併症を評価項目として,比較検討をした.

【結果】53%の男性を含む3,222人を1,610人のエンドカフ使用群と1,612人の通常内視鏡群に分割した.対象者の背景因子は両群間で有意差は認めなかった.エンドカフ使用群のADRは13.3%,通常内視鏡群のADRは12.2%と両群間で差は認めなかった(p=0.353).他の評価効果項目であるポリープ検出率,1施行毎の腺腫数,ポリープの特徴,局在,施行者の経験,施行時間,合併症の出現率も両群間で差は認めなかった.通常内視鏡群のADRは,一般臨床で行われている際のADRよりも3.1%高いものであった.

【結論】S状結腸内視鏡検査でのスクリーニングプログラムでは,エンドカフの使用によるADRの有益性は認めなかった.今回の検討でのADRは一般臨床で行われている際のADRよりも高率であり,今回の検討のようにADRが高い場合には,更なる検出率の向上を証明することは困難と思われた.(臨床研究登録情報:NCT03072472,ISRCTN30005319,CPMS ID 33224)

《解説》

大腸内視鏡検査時のADRは病変径に依存し,1cm以上の腫瘍を指摘する感度は79-100%であるものの,1cm以下の腫瘍では75-85%程度と報告されている.既報によりADRは,大腸癌死の抑制に繋がる事が証明されており,実際に個々の内視鏡医のADRが1.0%低下した場合には,大腸内視鏡検査を施行した後の6カ月~10年の間に大腸癌と診断されるリスクは3.0%上昇する事が示された.ADRは時代背景,機器の性能,対象者,施行医の技術により大きく異なるが,一般的に男性患者では25%以上,女性患者では15%以上が質の適正な指標とされる.今回の検討は全大腸内視鏡検査ではなくS状結腸での検討であり,一概に数字を比較することはできないが,内視鏡検査で大腸病変を的確に検出し,ADRの向上を目指すことは変わらず,ADRが向上するための方策を練ることは重要である.S状結腸内視鏡検査でエンドカフの使用でADRの有用性を認めなかったが,本邦では全大腸内視鏡検査を行う事が多いことから,ADRを上げるためにはエンドカフを使用することも考慮するべきかもしれない.

文 献
 
© 2020 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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