GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2020 Volume 62 Issue 9 Pages 1682-1685

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概要

沿革・特徴

当院は国家公務員共済組合関連病院の中央病院として昭和33年に設立され,昭和40年に専門診療部門としての内視鏡検査室が設立された.令和元年5月1日に旧病院の隣地に移転し現在の場所において地上19階建ての新病院で診療を行っている.霞が関の官庁に近く,国家公務員共済組合の運営する病院であるため官公庁からの受診者が多いが,現在は全国から多くの患者の受け入れをしている.また近年は外国からの受診者が増加しており外国人に対する内視鏡検査件数も増加している.

虎の門病院本院内視鏡部での検査と治療の他に,近接する赤坂インターシティーAir5階にある虎の門病院付属健康管理センターにおいて人間ドックの内視鏡検査を行っている.本院と健康管理センターを併せて年間3万件を超える内視鏡検査を実施している.

組織

以前は中央検査部の一部として運用されていたが,現在は内視鏡部として独立した診療部とし運用を行っている.内視鏡検査に従事する医師は内視鏡部専任ではなく,主に消化器内科(消化管グループ布袋屋修部長,胆膵グループ今村綱男部長)及び肝臓センター(鈴木義之部長)所属の医師が行っている.また消化器外科,呼吸器センターに所属する医師にも協力を仰ぎ充実した検査治療体制を運営している.内視鏡部の責任者は消化器内科部長が兼務し,上記医師と看護師12名に加え,14名の専門性の高い内視鏡検査技師が所属していることは当院の大きな特徴である.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は4階に位置し,2つの透視室を含めて全12室の検査室を有する.それぞれの検査室は個室となり被検者のプライバシーに配慮した構造となっている.透視室以外の10室は,スクリーニング検査用の4室と緊急内視鏡や治療内視鏡に対応できる6室に分けられる.陰圧管理された検査室もあり感染症が疑われる症例に対して使用されている.

令和元年の新病院移転の際には,医師,看護師,内視鏡技師,事務などすべての職種が新内視鏡室の設計段階から関わり,それぞれの視点でスタッフ動線,患者動線の効率を重視した運用を考案し,新内視鏡室を立ち上げた.

各セクションの配置は,内視鏡室の中心はナースステーションとし,その周りにリカバリー,咽頭麻酔スペースなどを配置し,さらにその周りに検査室を配置することで動線の効率化を計っている.下部内視鏡検査の前処置用のスペースとトイレも内視鏡室内に配置し,前処置の際の諸問題にすぐに対応することが可能とした.洗浄室や保管庫があるバックヤードは一番外側に配置され,使用後の不潔スコープと使用前の清潔スコープの動線が交差しないために新たにパススルーキャビネットを導入した.

十分な広さを確保した読影室では,集中モニター上ですべての内視鏡室の内視鏡画像と室内モニターを供覧でき,各検査室の状況を遠隔でリアルタイムに把握できるようになっている.入院患者のカンファレンスや他科との合同カンファレンスも読影室で行っている.

スタッフ

(2020年4月現在)

医師:内視鏡学会指導医7名,消化器内視鏡学会専門医12名,その他スタッフ10名

内視鏡技師:14名

看護部:常勤6名,非常勤6名

事務職:5名

内視鏡洗浄スタッフ:3名

設備・備品

(2020年4月現在)

 

 

実績

(2018年4月~2019年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

前期(1,2年目)及び後期研修医(3-5年目)は消化器内科と肝臓センターを同時にローテーションし,消化器疾患を全般的に研修することが可能である.部長以下,各グループのスタッフ医師1-2名と一緒に診療を行う.内視鏡研修に関しては,前期研修医は週1回見学を中心に行い,研修期間中に上部消化管内視鏡トレーニングモデルを用いて実際の内視鏡操作やクリップなどの処置具の使用方法についての研修を行う.後期研修医に関しては週1-2回の上部消化管内視鏡検査を義務として行い,実際に内視鏡学会指導医もしくは専門医のマンツーマンでの指導監督のもとに内視鏡検査を行う.まず上部内視鏡検査の本格的な研修を3年目から開始し,その技術に応じて4年目もしくは5年目から下部内視鏡検査,各種治療手技の研修を開始する.消化管,胆膵,肝臓の各分野のエキスパートの指導の下で先端治療に触れられるだけでなく,実際にマンツーマン指導のもと手技を行うことが可能であり充実した消化器研修を受けることができる.また海外からの見学や研修の希望も多く,積極的に受け入れを行っている.

ESDの研修においては豚の切除臓器を用いたESDのトレーニングも頻回に行っている.以前は豚の切除胃を用いることが多かったが,近年は準備の簡便さ,人間との類似性などの観点から切除食道でのESDトレーニングを主に行っている.ESD手技のマーキングから検体切除までの一連の流れを体験することで日常診療のESD介助の際にどのような動きをするべきかにフィードバックがなされている.

カンファレンスは週2回の回診と週1回の内視鏡カンファレンスを行っている.その他に食道疾患を中心とした上部消化管カンファレンスを消化器外科,臨床腫瘍科,放射線科と合同で,内視鏡診断と病理診断のディスカッションを行うためのカンファレンスを病理部と合同でそれぞれ週1回行っている.回診で患者背景を含めた病態の総合的ディスカッションを行い,内視鏡カンファレンスで個々の内視鏡診断や治療方法の意思の統一を図っている.

学会や研究会の発表や論文作成も数多く行っている.当院は一人の研修医が経験できる症例数が非常に多く貴重な症例に遭遇する機会も多い.研修医にはそのような症例報告を中心に積極的に学術活動を行うように指導している.またスタッフも国内のみならず海外の学会にも数多く参加し発表することで知識のアップデートを常に行っている.また論文作成に関しても研修医の時点から可能な限り英文での報告をするように指導しており,実際に多くの英文論文が当院より報告されている.

現状の問題点と今後

新病院に移転したことでスペース的には広くなり恵まれた環境ということができる.しかし患者の動線が長くなったことで,制約された時間内における更なる効率的運用が求められている.個々の検査室が個室化することでプライバシーや衛生面においては改善が得られたが,各医療者間でのコミュニケーションが取りづらくなっているのも一つの問題点である.

ハードの面のみならず,ソフト面においては恒常的なマンパワー不足が大きな問題点である.内視鏡医や内視鏡検査技師も決して充足しているとは言えない現状であるが,看護師の不足は非常に大きな課題である.内視鏡診療は内視鏡医だけでできるわけではなく,内視鏡技師,看護師,事務職などすべての職種の協力が重要である.そのために定期的に全職種が参加して意見を述べられる場を設けているが,より一層連携を密にする必要があると考えられる.

高いクオリティーでの内視鏡検査,治療の件数が多く,そのデータを用いて今までも多くの学会発表や論文作成を行ってきたが,今後はより国際競争力が求められている.欧米のみならず中国,韓国,インドなどのアジア諸国の内視鏡診療のレベルは目覚ましく進歩している.今後,日本の内視鏡診療が世界トップでいるために,日常診療のレベルを高めるだけでなく,海外も含めてより発信力を高める必要があると考えられる.また,医工連携による内視鏡機器の開発も数多く行っている.これからはより精度の高いデバイス開発を行い,それを実臨床に応用することで内視鏡診療のレベルの向上とエビデンスの構築を行うものとする.

 
© 2020 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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