GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2021 Volume 63 Issue 1 Pages 117-120

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概要

沿革・特徴など

名古屋市立大学病院は1931年に設立された名古屋市民病院を前身とし,1943年には名古屋市立女子高等医学専門学校付属医院として改称.その後名古屋女子医科大学附属病院を経て,1950年から現在の名古屋市立大学病院として運用されている.1966年には総合病院の認可を得ており,その後は災害拠点病院,地域がん診療連携拠点施設に指定され,2008年には日本医療機能評価機構より病院機能評価(Ver.5.0)の認定を受けるなど,中部圏における中核の医療施設として重要な役割を担っている.内視鏡室は,1983年に外来棟の一部を改装してわずか2室を設置したことを端緒としている.1990年に内視鏡室は内視鏡部として組織改編され,2004年に現在の病棟・中央診療棟がオープンした際に,中央部門が集中する2階に設置された.その後,2018年に喜谷記念トラストからの支援による増改築を経て,現在は「喜谷記念内視鏡医療センター」として稼働している.

組織

現在の内視鏡室は,内視鏡医療センターとして中央部門の一つに位置づけられており,専属の医師3名による運営のもと,消化器内科,呼吸内科,総合内科および消化器外科といった複数の診療科の医師により内視鏡検査・治療が行われている.また,看護師11名,臨床検査技士1名が専属スタッフとして所属し,うち看護師4名および臨床検査技士1名は認定消化器内視鏡検査技師の資格を有している.なお,看護師については,救急部,病棟業務との兼務となっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡医療センターは中央診療棟2階に位置し,内視鏡治療専用の内視鏡室1室をふくむ6室の内視鏡室と内視鏡専門X線TV室1室があり,治療専用室とX線TV室については,複数の医師やコメディカルによる内視鏡医療が円滑に行えるよう広い面積が確保されている.センター内にはトイレや更衣室,リカバリールームなどが配置されており,受診者の移動の動線に配慮したレイアウトとなっている.また,内視鏡洗浄室を同フロアーに設置しており,内視鏡医療にかかわる業務の効率化や感染制御の点にも十分配慮がなされている.カンファレンスルームや内視鏡読影室,医療従事者専用の更衣室も備えており,医療者にとって効率よく,快適に内視鏡業務を行うことができる施設となっている.

スタッフ

(2020年6月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医11名,消化器内視鏡 専門医12名,その他スタッフ7名,研修医など2名

内視鏡技師:Ⅰ種1名

看護師:常勤11名

事務職:4名

設備・備品

(2020年6月現在)

 

 

実積

(2019年4月1日~2020年3月31日まで)

 

 

指導体制,指導方針

学生への指導であるが,当院ではBSL(ベッドサイトティーチング)における参加型の教育を重視しているため,学生たちを積極的に内視鏡検査・治療の見学や介助に参加させている.また,看護師や臨床検査技師による内視鏡検査の前処置や検査後の対応,院内物流管理システムセンター職員による内視鏡の洗浄作業など,内視鏡検査に関連した一連の作業についても見学させている.これは,内視鏡検査・治療におけるコメディカルとのコミュニケーションや感染対策の重要性について認識させ,内視鏡医療について全般的に学習させるためである.内視鏡モデル(臓器モデルおよびバーチャル・リアリティ(VR)内視鏡シミュレータ)を用いた体験学習も取り入れ,興味を持って臨床実習に取り組めるような機会も提供している.初期臨床研修医に対しては,研修が短期間であること,将来専門とする診療科が決まっていないことから,各診療科の医師として必要な内視鏡医療に関する知識を学ぶことを主眼とし,内視鏡検査の適応判断から検査後の患者管理に至るまでの幅広い観点から内視鏡医療について学べる指導体制を整えている.初期研修では内視鏡手技の習得を目標とはしていないが,将来的に消化器内視鏡の専攻を検討しているなどの理由から内視鏡技術の修練を希望する研修医には,VR内視鏡検査シミュレータを用いたトレーニングを行い,その習熟度に応じて指導医の監視のもとに担当患者の内視鏡検査を行わせるなどの柔軟な対応を行っている.専攻医に対しては,基本的な内視鏡検査手技だけでなく,高度内視鏡検査・治療の習得を目標とした指導を行っている.積極的に基本的な内視鏡検査業務にあたらせ,基本手技を習得した後は,ESDやERCPに関連した検査・治療などのより専門性の高い高度な内視鏡検査・治療のトレーニングに移行する.まずは検査・治療の介助者として従事させ,ある程度の症例を経験させた後に,指導医のもとに比較的難易度の低い症例からトレーニングを開始し,最終的には検査・治療が完遂できるように指導を行っている.また,専攻医として必要な内視鏡医療に関する知識をさらに深めるために,カンファレンスへの参加を通じて自らが経験することができなかった症例についての知識を補完させるとともに,指導医のもとで個別に内視鏡検査所見の読影トレーニングを行うなどして学ばせる.関連学会や各種セミナーへの参加も促し,より専門分化した内視鏡医療についてのモチベーションを保ちながら研修が進められるよう配慮している.さらに臨床研究論文による自己学習の励行,実際に経験した症例や内視鏡検査,治療成績についての論文作成を指導し,リサーチマインドの素養が修得できるようにしている.

現状の問題点と今後

2018年の増改築を経て,安全にプライバシーの確保された内視鏡医療がより多くの患者に提供できる体制が整えられた.また,リカバリー室の大幅な整備により,鎮静剤を使用した内視鏡検査が円滑に行えるようになった.しかし,内視鏡検査・治療件数の経年的な増加や鎮静下での内視鏡検査の需要の高まり,検査後にリカバリールームでの安静を要する超高齢者に対する内視鏡検査数の増加などへの対応が困難になりつつあるのが現状である.当面は内視鏡検査室のさらなる拡充は望めないため,検査室をより効率的に利用する方法を検討するとともに,標準的な内視鏡検査を関連施設へ振り分けるなどの対策も検討している.近年の新規内視鏡機材の開発にともなう内視鏡医療の高度・細分化には,目覚ましいものがある.当施設の使命である高度内視鏡医療の遂行には最新の内視鏡機器を導入することが不可欠であるが,当施設では新規機材購入の際の旧来からの選定基準や手続きの煩雑さなどがボトルネックとなり,スムーズな機種更新ができていないのが現状である.今後はVPP(value per procedure;症例単価払い)プログラムの導入など,常に最新の内視鏡機器のラインナップを可能とする対策を行い,高度内視鏡医療が滞りなく提供できる設備を整えたいと考えている.人員面においては,内視鏡医療の高度化,および今般の働き方改革への対応などから,医療者のなかでもコメディカルの確保が喫緊の課題となっている.現在,内視鏡室には専属の看護師11名,臨床検査技師1名が在籍しているが,増加傾向にある検査件数に対して充足している状態であるとは言い難い.また,高度化した内視鏡検査・治療のサポートに必要な知識や技能を習得しているスタッフの人数が限られていることが,医師の負担増につながっており,今後は高度内視鏡医療に十分に対応できなくなる可能性も危惧される.当施設における人事システムでは同じ部門に長期間にわたって人員を配置することは難しく,内視鏡医療に精通したコメディカルの育成には適していない.将来的には,内視鏡に関する知識や技能を備えた人材の育成を継続的に可能とする人事システムの構築や内視鏡室へ長期間にわたって人員配置が可能になる組織改変などを病院執行部とともに進めたいと考えている.地域医療との連携についてはいくつかの取り組みを行っているが,より一層発展させたいと考えている.すでに運用を開始しているインターネットによる内視鏡検査予約システムの利用をさらに推進するとともに,今後は内視鏡治療後の「がん地域連携パス」の導入などで地域医療とより密接な関係を築き,地域に信頼される中核医療施設として,求められている内視鏡医療のニーズに応えることができるよう努めたい.

 
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