GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ISSN-L : 0387-1207
INDICATION AND TECHNICAL TIPS FOR ENDOSCOPIC PANCREATIC STONE LITHOTOMY (WITH VIDEOS)
Ken ITO Naoki OKANOYoshinori IGARASHI
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2021 Volume 63 Issue 1 Pages 68-83

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要旨

膵石症に対する内視鏡治療は,主膵管または副膵管内に膵石が存在し,消化器症状を訴える症例が良い適応である.また症状がなくとも若年者や膵石除去により膵機能の温存が期待される症例は適応となる.前処置として内視鏡的膵管口切開を施行する.膵石が5mm未満の症例では,第一選択としてバスケット鉗子やバルーンカテーテルを用いて結石除去を行う.膵石が5mm以上の場合は,ESWLにより膵石を破砕した後に内視鏡的に除去する.その際結石より十二指腸側に主膵管狭窄を伴う場合が多く,狭窄を拡張し,膵管ステントを留置する.内視鏡的膵石除去の手技は,バスケット嵌頓,出血,穿孔などの重篤な偶発症も危惧されるため,手技を熟知する必要がある.内視鏡治療の限界を考慮して,外科治療への移行の時期を逃さないようにする必要もある.

Ⅰ はじめに

慢性膵炎は膵の持続する炎症と線維化が進行し,最終的に膵が荒廃する疾患である.また,膵石に伴う主膵管狭窄を認めることが多く,膵液の鬱滞による膵管内圧の上昇などにより持続的な疼痛や,急性膵炎・膵仮性嚢胞の原因となる.このような症例には,膵管を減圧することにより症状の改善を認めることが多く,内視鏡的膵管口切開術(endoscopic pancreatic sphincterotomy:EPST),体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shockwave lithotripsy:ESWL),内視鏡的結石除去術(endoscopic lithotomy:EL),電気水圧衝撃波破砕術(electrohydraulic lithotripsy:EHL),内視鏡的膵管ステント留置術(endoscopic pancreatic stenting:EPS)などの手技を組み合わせることにより内視鏡的な治療が行え,有用である.本稿では主にEPST,EL,EHLを中心とした内視鏡治療の実際について解説する.

Ⅱ 膵結石に対するEPST,ESWL,内視鏡治療

従来,膵石症に対する治療は外科的手術を中心に行われてきたが,1987年,Sauerbruchら 1により膵石症に対するESWLによる膵石治療が報告された.その後本邦においてもESWLによる結石破砕効果は80-100%と良好な成績が数多く報告され,ESWLが非手術的治療の中心になった 2)~4

一方,膵石に対する内視鏡治療はSiegel 5とCotton 6らによりEPSTとして提案され,1982年に二村ら 7,乾ら 8により膵石に対する内視鏡治療として初めて報告された.膵疾患に対する内視鏡治療に対しては当初ERCP後膵炎も危惧されていたが,主膵管乳頭や膵の繊維化が進んだ慢性膵炎を対象にEPSTを行う場合には術後膵炎が少ないと報告され,安全性も確立された 9

しかし,ESWL単独治療により破砕片が自然に排出した症例の割合は,49.4-81.8%と治療成績が様々であり 3),4),10,ESWL単独で排石が困難な場合には,追加治療としてEPST,バスケット鉗子による膵石除去術,EPS,内視鏡的主膵管バルーン拡張術などの内視鏡治療が補助療法として行われるようになった 2)~4),10.これらの内視鏡的治療を併用した報告では,結石完全消失率は76-100%と良い成績が得られている 11.本邦では2014年膵石症に対するESWLが内視鏡的膵石除去加算付き(一連につき)で正式に保険収載されたことから,現在ESWLを含む内視鏡的治療は強く推奨される.ESWLのない施設では膵石を破砕するために専門施設へ紹介することを勧める.

Ⅲ 内視鏡的膵管口切開術(endoscopic pancreatic sphincterotomy:EPST)

1.適応と禁忌

内視鏡治療が必要な膵石症は,主乳頭部の乳頭炎による乳頭狭窄や高度な主膵管内狭窄を呈しており,EPSTに連続して主膵管狭窄に対しての主膵管拡張術やEPS,バスケット鉗子を用いての結石除去などを行う.頻回な経乳頭的処置によるERCP後膵炎を未然に予防もでき,EPSTは慢性膵炎に携わる内視鏡治療において必要不可欠な前処置である.適応としては,主膵管または副膵管内に結石が存在し,それにより尾側膵管が拡張し,膵管内圧上昇に由来すると思われる疼痛を認める症例や,ESWL時の自然排石や内視鏡的結石除去などの排石を前提とする場合が良い適応である 12.EPSTの禁忌は,出血傾向のある症例,抗血栓薬服用症例である.抗血栓薬服用症例に対しては抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡ガイドラインに準じて行っている 13

2.方法

方法としては一期的に切開する方法と,最初に胆管口をESTした後に,膵管口を切開する二期的方法に分けられる.

①一期的切開

いわゆる通常のEPSTである.EPSTを施行する際にはEST同様にパピロトームにガイドワイヤーを通し,膵管開口部に挿入し,乳頭長軸に対して12時から1時方向に向けて切開する.当院での高周波装置はPSD-60(オリンパス社)を用いており,その際の設定はエンドカット120W,ソフト凝固30W,effect 3としている.切開長に関しては乳頭近傍の動脈は1時から2時方向に通っていることが多いため,乳頭上縁を極力残すようにして切開し,切開範囲が足りない場合には次セッション時に追加切開を行う.慢性膵炎症例は乳頭炎による繊維化を呈しており,EPSTを行った際に,切開部はEST時と異なり白色調の組織を観察することが多い.

②二期的切開(dual sphincterotomy)

高度な乳頭炎や乳頭部での膵石嵌頓により膵管造影や膵管へのガイドワイヤー挿入が行えない場合に施行する.最初に総胆管にERCP用造影カニューラを挿入し,ガイドワイヤーを用いてパピロトームに交換した後に胆管口切開し終了する.1週間後に再度主乳頭を確認すると胆管口と膵管口が分離されているので,胆管口の肛門側4時から6時方向を探して,選択的に膵管口にパピロトームを挿入する.その後一期的方法と同様にEPSTを行う.胆管口とEPSTのdual sphincterotomyは胆管狭窄やOddi機能不全を併存している症例が望ましい 14

③EPSTが困難な場合(膵管precutting,副乳頭切開)

a.膵管precutting

 膵管カニュレーションが困難,ガイドワイヤーも膵管内に挿入困難な場合が適応である.針型ナイフや通常型パピロトームを用いる.胆管カニュレーションが可能な場合,通常とおりESTを行い,切開後に膵管口を同定する.針型ナイフを用い,乳頭の中央,12時から6時方向に縦切開を行う.膵管口の同定が困難な場合,1週後に再度ERCPを行うことにより主乳頭の浮腫も軽減され膵管口の同定が可能になる(Figure 1-a~d).胆管へのカニュレーションも困難な場合,パピロトームの先端が開口部に入る場合には12時方向に向かって切開していく.口側隆起上縁まで切開が行えたらカニュレーションで胆管口の肛門側4時から6時方向に膵管口を同定する.膵管口が同定できなければ,針型ナイフで切開部を浅く切開していく.上から少しずつ切り足して徐々に深く切り込んでいく.深くするというより縦に長く切り拡げるというイメージが大事である.

Figure 1 

膵管 precutting.

a:ビルロート-Ⅰ再建後腸管であり,左向きに固定されている.

b:乳頭炎,結石嵌頓で主乳頭腫大しており選択的膵管挿管困難でありプレカット施行.

c:1週間後の主乳頭.

d:PR110Qを用い膵管への挿管が可能となった.

b.副乳頭挿管,副乳頭切開

主膵管乳頭からの造影が困難な症例においては,副乳頭が膵液の排出のメインルートであり,副乳頭が腫大し開口している場合には,副乳頭経由で挿管,副乳頭切開が可能となる.スコープ操作はpull法とpush法に分けられるが,push法の方が副乳頭正面視や視野の保持や処置具の交換が安定する.コツとしては主膵管乳頭確認後にスコープを抜去しながら副乳頭を確認し(Figure 2-a,b),十二指腸下行部左壁に沿うようにpushしていく.透視下にて胃内でスコープのたわみを作ると副乳頭と適度な距離を保持できるようになり(Figure 2-c,d),アングル操作やスコープの調整により副乳頭の正面視が可能となる(Figure 2-e 15.副乳頭は主乳頭よりも開口部が小さいため,先端先細りカニューラを用い,0.025inchガイドワイヤーを用いwire-guided cannulationを行う 14.先細りカニューラでも造影が困難な場合には先端メタルチップ型造影カニューラも有用である.主乳頭からアプローチしガイドワイヤーが副乳頭から出る場合には,ガイドワイヤーを直接把持鉗子で把持し,ランデブー法で副乳頭切開する方法もある.副乳頭切開の方法としては,EPST同様にガイドワイヤーを利用して通常型パピロトームナイフを副乳頭に挿入して切開を行う.副乳頭が小さい場合には,先細りカニューラ,5Fr拡張用カテーテルで拡張してから,パピロトームを挿入している.この際あくまでも出口を拡げるためなので,大きく切開する必要はなく,12時方向に1-2mm程度の目安で切開を行い,隆起部を越えないように切開する 14

Figure 2 

副乳頭正面視のコツ.

a,b:主乳頭正面視.

c:主膵管乳頭確認後にスコープを抜去しながら副乳頭を確認する.

d,e:透視下にて胃内でスコープのたわみを作ると副乳頭と適度な距離を保持できるようになり,副乳頭挿管がしやすい.

c.副乳頭precutting

針型ナイフで切開する際は頂部から6時方向に向かって切開し,次いで頂部から12時方向に切開をするが,副乳頭の膨隆部を超えないようにする.高周波はエンドカットモードを用い,フットスイッチを踏んでからそのまま切開するon and touchで徐々に浅く切り足していく(Figure 3-a~d).Pancreas divisumで副乳頭をprecuttingすると術後重症膵炎を来たすことがあるので慎重に行う.

Figure 3 

副乳頭precutting.

a:結石嵌頓しており副乳頭が正面視出来なかった.

b:針型ナイフにてprecutting施行した.

c:開口部がしっかり確認される.

d:結石が排石された.

Ⅳ 内視鏡的膵結石除去術

1.膵石の治療適応

原則として膵石症の内視鏡治療ガイドライン2014に沿って治療を行っている(Figure 4 11.腹部症状や膵炎を伴い,USやCTで膵実質に著明な萎縮を認めず,膵内・外分泌機能が残存している症例に行われることが多い.症状のない場合でも,膵石を除去することにより膵機能の温存が期待される症例には実施している 2),3.膵石の存在部位としては膵頭部から体部が良い適応である.膵石の数や大きさには特に制限はない.ESWLを中心に結石除去を行うことが基本であるが,5mm以下の小結石,浮遊結石,X線非陽性結石などにおいてはバスケット鉗子による単独治療で行える症例もある.結石が5mm以上ある場合にはバスケット嵌頓が危惧されるために,ESWLによる破砕を先行して行う 16.バスケット鉗子による結石除去を行う際,ESWLとEPSTなどの内視鏡治療を併用した治療が前提になる.そのためESWLのない施設では破砕治療のために専門施設に紹介することが望ましい.

Figure 4 

膵石治療のフローチャート(文献11より引用).

*:疼痛のない症例は経過観察あるいは従来の内科的保存療法などによる治療を行うが,疼痛のない症例でも,膵実質の萎縮を認めず膵石が主膵管に嵌頓している場合は,膵機能改善のために治療を行うことがある.

☆:十二指腸狭窄,高度胆管狭窄,膵癌など.

★:充満結石や膵尾部のみに結石が存在し,内視鏡を用いても排石不良が推測できるものは外科治療の対象となる.

1)分枝内結石でも主膵管内結石に伴うものはESWLの適応としても良い.

2)5-6mm以下の小結石,浮遊結石,X線透過性膵石などでは内視鏡治療が有効であるが,内視鏡的経鼻膵管ドレナージカテーテルによる膵管造影でフォーカシングが可能であればESWLによる破砕を行う.

3)十二指腸乳頭部狭窄や主膵管狭窄を有する場合には,拡張術などの内視鏡治療を併用して排石を促進する.

2.主膵管狭窄に対する拡張手技

十分なEPSTを行っても膵石の十二指腸側に主膵管狭窄を伴った場合には,そのままでは膵石を除去することは困難であり,無理な操作によりバスケット鉗子嵌頓を生じる.そのため,事前に内視鏡的主膵管拡張術を施行する.その際には,ステント留置前にガイドワイヤーの選択と十分な拡張手技が必須となる.多くの場合,高度な狭窄に伴って膵石が嵌頓している症例や,主膵管の蛇行や屈曲などが併存している症例である.通常の0.035inchガイドワイヤーは狭窄部の通過が困難であり,その場合には追従性に富んだ0.025inchの先端部の柔軟性が確保されたガイドワイヤーなどを選択する.これらを愛護的に操作することで,安全に狭窄を突破することができる 17),18.拡張には膵管専用の処置具はなく,胆管拡張用バルーンカテーテルや胆管拡張用カテーテルなどを代用している 17),19),20.拡張用バルーンカテーテルであるREN(カネカメディックス社)は先端が3.5Frと細く,先端チップからバルーンプロファイルまでがテーパードされている.ガイドワイヤーとの段差が少なく,優れた乳頭への挿入と膵管狭窄の突破が行いやすい.主膵管がたわみ主乳頭と十二指腸スコープの近接が困難な症例に対してはシャフトの強いSoehendraStent Retriever(SSR;Cook社)を用いる(Figure 5-a~c 21),22.胆管拡張用バルーンやSSRは保険適応外使用となるため,院内倫理委員会の承認を事前に得る必要がある.

Figure 5 

主膵管狭窄に対する拡張デバイス.

a:REN(カネカメディックス社).

b:SoehendraBiliary Dilation Catheter(Cook社).

c:SoehendraStent Retriever(Cook社).

3.バスケット鉗子による結石除去

ESWLおよび内視鏡治療の併用療法は,低侵襲で合併症が少ないため第一選択とされている.結石除去に関しては胆管の手技と基本的に同様であるが,主膵管は胆管と異なり①径が細い,②屈曲している,③分枝がある,④膵管狭窄を合併している,などの理由によりバスケット鉗子の膵石把持嵌頓が起こりうる点を十分に念頭におく.膵管径が細く屈曲しているため,直接バスケット鉗子を挿入することは容易でないため,ステンレス製ガイドワイヤー式バスケット鉗子を使用する.市販化されている膵石専用のバスケット鉗子は少なく,胆管結石除去用の4線バスケット鉗子や8線バスケット鉗子を使用している.しかし胆管結石除去用バスケット鉗子は細い膵管内では拡張が不十分で縦長に展開されるため,結石の把持が困難である.形状記憶合金を使用し,内腔が狭い部分においてもバスケットの拡張が良好なナイチノール製バスケット(MTW Endoskopie社)なども使用している.把持力が強いため,小結石を多数把持した際,バスケットを強く引くことによりナイチノールと通常ワイヤー部間でワイヤーが断裂してしまい,嵌頓解除に非常に難渋することがある.そのため本バスケットを使用する際,主乳頭に更にバルーン拡張を付加し,バスケット嵌頓に対する予防を行う.主膵管壁に張り付いたり,分枝膵管内に結石が入り込むような細かい結石に対しては,網様の構造をしている膵石専用バスケット鉗子(Reforma,Piolax社)が有用である 23

4.バスケット鉗子の基本操作

膵石が5mm以上の場合にはESWLによる破砕を先行して十分に細片化してからバスケット鉗子による結石除去を行う.注意する点としては胆管結石除去同様に,ただバスケット鉗子を引っ張るだけでなく,しっかりスコープに右アングルをかけ,ガイドワイヤーを把持した状態でダウンアングルをかけながら,下方へのpush操作を行う.乳頭側に過度なテンションが掛からず,出血や穿孔が回避でき,愛護的な操作につながる.小結石であってもバスケット鉗子にて複数個の膵石を1度に把持した場合には,バスケット嵌頓の危険性があるため,嵌頓しないように少量ずつ除去していく 24.バスケット嵌頓は時折,非常に重篤な偶発症につながる.膵石の主成分は炭酸カルシウムで胆管結石に比べて非常に硬く,胆管結石に使用する砕石用バスケット鉗子やリソトリプターを使用しても砕石できないことがあるので注意する 24.偶発症の項で後述するが,万一嵌頓した場合に備えて,バスケット嵌頓解除のためのリソトリプターを用意しておくとともに,その扱いに習熟しておく必要がある 25

Ⅴ バスケット鉗子による結石除去以外の内視鏡治療

1.採石用バルーンカテーテル

5mm未満の結石は採石用バルーンカテーテルを用いるケースもある.ただし,膵石は硬いため容易に採石バルーンカテーテルが破裂してしまう.胆管拡張用バルーンを代用し,それを80%程度拡張させた状態で使用すると,小結石が安全に除去できる.

2.把持鉗子

ESWLで破砕しきれない大きい結石片や嵌頓結石に対してはV字型鰐口型把持鉗子による直接結石除去が有用である(Figure 6-a~c).膵管拡張がなく,バスケット鉗子が十分に展開できない症例に対しては細径生検鉗子を挿入し,直接結石除去を行う(Figure 7-a~c).ともにEPSTを行ったのちに,ガイドワイヤーを留置したままの状態にして行う.当科で使用しているバスケット鉗子,把持鉗子を図に示す(Figure 8).

Figure 6 

鰐口把持鉗子による直接結石除去.

a:V字鰐口型把持鉗子(FG-47L-1:オリンパス社).

b,c:ESWL,EHLにて破砕不十分であり,把持鉗子による直接結石除去が行えた.

Figure 7 

細径生検鉗子による直接結石除去.

a:慢性膵炎急性増悪のため入院.体尾部に径5.2mm大の結石を形成した(CT値859HU).

b:モノレール式バスケット鉗子では主膵管内腔が狭く,バスケットが展開できなかった.

c:細径生検鉗子にて直接結石除去を行った.

Figure 8 

当院にて使用している結石除去デバイス.

Ⅵ 膵管鏡下電気水圧衝撃波破砕術(electrohydraulic lithotripsy:EHL)

バスケット鉗子による結石除去のほか,特殊な方法として膵管鏡下レーザー砕石術,電気水圧衝撃波破砕術などが報告されている 26),27.大結石や嵌頓結石,鋳型結石ではESWLでの破砕が困難な症例はEHLの良い適応である.EHLは現在,尿路結石と胆管結石にしか保険適用がないことより,院内倫理委員会,適応外使用委員会の承認を事前に得る必要がある.生理食塩水の還流により膵管内圧が上昇し,その結果重篤な膵炎が惹起されるので注意が必要である.膵管鏡もガイドワイヤーを介して挿入が行いづらいため難易度も高い.最近では破砕効果の高いESWL機種が販売されていることより当科では最近膵石症に対してEHLは使用していない.

1.経口膵管鏡(peroral pancreatoscopy:POPS)

EHLは親子式膵管鏡を用いて施行する.親スコープ,子スコープの協調操作が必要であり,熟練した内視鏡医が2名必要である.親スコープに使用する十二指腸鏡として,当科では,鉗子口径4.2mmのチャンネル径を有するTJF-260V(オリンパス社)を用いている.鉗子起上装置の挙上操作によりガイドワイヤーを固定するためのVシーステムに子スコープ先端が接触し,先端部分が破損することがあるため,注意する必要がある.子スコープはCHF-B260(オリンパス社)とSpyglassTM System(ボストン・サイエンティフィック社)がある.CHF-B260(オリンパス社)はビデオスコープであるが,2方向操作で操作が制限される.SpyGlassTM Systemは,4方向操作が可能である利点をもつが,ファイバースコープであり,CHF-B260と比較し画像解像度の差に問題があったが(Figure 9-a,b 28,2015年にデジタル化し,SpyGlassTMDS(ボストン・サイエンティフィック社)として改良された.ディスポーザブルであり,画質や操作性ともに向上しており,安全に施行可能できる 29),30.また新しい親子式ビデオスコープであるCHF-290(オリンパス社)も耐久性が向上している.

Figure 9 

経口膵管鏡別による膵石の見え方.

a:Spyglass system(Boston Scientific社).

b:CHFB260(Olympus社).

2.挿入前処置

EHLを行う際,子スコープの先端が主膵管内に挿入できるスペースが必要となる.子スコープの先端部外径はCHF-B260(オリンパス社)が3.4mm,SpyGlassTMDSが3.6mmであり,10Fr相当の主膵管径が必要になる.そのため膵石が乳頭に近い位置に嵌頓している場合には子スコープを挿入することができない.膵石より十二指腸側に主膵管狭窄を伴う場合には,十分な主膵管拡張術を行う必要がある.その際,10Fr膵管ステントを膵石脇より挿入するのが好ましい.一期的に行うのは困難なため,最初に7Frの胆管ダイレーターを用い,10Frまで段階的な拡張を行った後に10Fr膵管ステントを留置する.高度な狭窄で通常胆管ダイレーターでの拡張が困難な場合には主膵管がたわみ主乳頭と十二指腸スコープの近接が困難になる.そのような症例に対しては0.035inch ultra hard Revowave(Piolax社)とSSRを用いて狭窄突破を行ったのちに10Fr膵管ステントを留置する 31

3.手技の実際

親スコープを十二指腸下行部まで進めた後に子スコープ挿入操作を開始していく.

子スコープ挿入の際,主膵管乳頭開口部の時点で強い抵抗を感じた場合には無理な挿入をせずに追加EPSTや膵管口バルーン拡張を考慮する.鉗子起上装置の過度な挙上操作をせず,親スコープ操作により膵管開口部に近づけ,軸合わせを行い,子スコープを挿管していく.膵管内に挿入されたら,子スコープのアングル調整を行い,膵石を正面視し,生理食塩水で送水を行いながらEHLプローブを視野から出し,EHLの準備を行う.EHLプローブは1.9Frであり,慎重に扱ってもkinkしやすいため,子スコープを親スコープに挿入する前にあらかじめEHLプローブを鉗子口まで先込めで挿入しておくのが良い.過度の送水は膵管内圧を高め,迷走神経反射や膵炎増悪を生じやすいため注意が必要である.当科では体内挿入式電気水圧衝撃波結石破砕装置としてNORTECH AUTOLITH EHL Generator(Northgate Technologies Inc.)を用い,EHLプローブは1.9Fr NORTECH MICRO Ⅱ Electrohydraulic Lithotripter Probe(Northgate Technologies Inc.)を用いている.まず5連発,power10程度からはじめ,破砕状況を見ながら徐々にshot数やpower levelを上げていく.プローブの耐久性が2,000発程度であるため,shot数に対し配慮が必要である.

Ⅶ X線透視下EHL

当科では,主膵管の狭窄や屈曲により経口膵管鏡が挿入困難な症例には,X線透視下でEHLを行っている 28.7Frもしくは9FrのSoehendra Biliary Dilation Catheter(Cook社)の先端をカットし外筒シースとして用いる.内視鏡下のEHLと同様に,X線透視下に膵石の正面にプローブを当てることができれば破砕が可能である.

Ⅷ EUSガイド下EHL

近年,EUS下の処置術が発達し,interventional EUSが胆膵内視鏡治療の選択肢の一つとなっている.高度な主膵管狭窄を伴う巨大膵石に対して,6mm covered metallic stentを用いてEUSガイド下膵管ドレナージを行った後に,二期的に膵管鏡をantegradeに挿入しEHLによる破砕例が報告された 32.今後高度な膵管狭窄を有する症例に対して新たな選択肢となりうる手技であるが,治療後の経過を含め注意深い観察が必要である.

Ⅸ 偶発症

バスケット鉗子の結石除去に伴うバスケット嵌頓,EPSTによる出血や穿孔,膵炎がある.バスケット嵌頓と出血に対するトラブルシューティングを中心に述べる.

1.バスケット嵌頓

バスケット嵌頓は時折,非常に重篤な偶発症につながる.バスケット嵌頓時のトラブルシューティングとして,乳頭部バルーン拡張,膵尾部でバスケットを拡げて嵌頓解除を試みる,リソトリプターの使用,緊急ESWLなどの様々な方法がある 33.小結石で複数個の膵石がある症例にはバスケット鉗子で一度に複数個の結石を把持してバスケット嵌頓を生じる可能性があるために事前に乳頭拡張を行う(Figure 10-a~f 24.膵管径がある程度確保できるスペースがあればそこまでバスケット鉗子を移動させ,バスケットを完全に展開しバスケットをたわませるようにし,籠状のバスケットが押し潰れた状態になり,結石がワイヤーから外れたらワイヤーを押し広げたままシース内にゆっくりと収納し嵌頓を解除する.この両方法により嵌頓が解除されなければリソトリプターを使用する.リソトリプターは経口タイプと内視鏡直視下の2つがある(Figure 11).経口タイプとしてBML-110-A(オリンパス社)やSoehendraLithotriptor(Cook社)がある(Figure 11-a,b).手順として嵌頓したバスケット鉗子の手元部分をニッパーにて切断し,ワイヤー部分だけを残してテフロンシースを抜去する.スコープを抜去し,口からバスケットワイヤーが出ている状態とする.ワイヤー部分をガイドにして金属コイルシースを被せ,ワイヤーはリソトリプターのハンドル部分に巻きつける.透視下に金属シースを慎重に結石把持部まで挿入し,ハンドル操作によって結石を破砕し,嵌頓を解除する(電子動画 1).乳頭部の様子を直視下に把握できないため,乳頭や十二指腸粘膜を損傷する危険性があり,砕石後には必ず内視鏡で確認する.Conquest TTC(Cook社)はシース外径が2.6mmで内視鏡直下に処置を行うことができるが,経口タイプより破砕力が劣る(Figure 11-c).稀ではあるが,リソトリプター使用途中にバスケット鉗子の金属ワイヤーが断裂し,トラブルシューティングに難渋する状況に遭遇することがある.当科ではMTW4線バスケット鉗子を使用した際にバスケット嵌頓を生じ,嵌頓解除に非常に難渋した症例を1例経験している 33.本症例は27回のESWLによる破砕を先行し,主膵管狭窄部の拡張を行い,10FrS字型膵管ステントが挿入できていた.まずリソトリプターで嵌頓解除を試みたが,胃内でワイヤーが断裂した(Figure 12-a).経口膵管鏡は膵管狭窄のため挿入困難であり,9Fr胆拡張用ダイレーターを外筒シースとして用い,X線透視下のEHLを施行した(Figure 12-b).ある程度の破砕はされたが,バスケットが閉じず,バスケットの中に再度石が入り込むために嵌頓解除は困難であった.SSRで結石の粉砕化を図るも効果なく(Figure 12-c),4線ロープウェイ式バスケット鉗子を用いて嵌頓部やワイヤーを把持しようと試みるも困難であり(Figure 12-d),最終的にはV字鰐口型把持鉗子にて結石を繰り返し少しずつ削り,ある程度砕石したところでワイヤーごと把持して抜去し,約3時間30分かけて嵌頓解除に成功した(Figure 12-e).

Figure 10 

小結石複数把持によるバスケット嵌頓.

a,b:びまん性結石.

c:膵管造影で主膵管内にびまん性に浮遊結石を認めた.

d:バスケットを末梢膵管で展開し複数個の結石を把持した.

e:バスケット嵌頓.

f:バルーン拡張を行い嵌頓解除を行った.

Figure 11 

リソトリプター.

a:BML-110A-1(オリンパス社).

b:SoehendraLithotriptor(Cook社).

c:Conquest TTC(Cook社).

電子動画 1 バスケット嵌頓

Figure 12 

MTW4線バスケット鉗子によるバスケット嵌頓.

a:ナイチノール砕石4線バスケット嵌頓解除の際,胃内でワイヤーが断裂した(黄矢印).

b:X線透視下EHLにて解除を試みた.

c:SSRにて結石の粉砕化も行えなかった.

d:ロープウェイ式バスケット鉗子にても把持は困難であった.

e:V字鰐口型把持鉗子にてワイヤーを把持し嵌頓解除に成功した.

2.出血

EPSTの場合,パピロトームが深く膵管内に入った状態で施行すると,膵管粘膜が損傷され出血する.EPSTに伴う出血に対しては,ESTに伴う出血と同様,バルーンによる圧迫,クリップ鉗子,凝固波焼灼,薬液局所注入などが行われる 34.直後の出血である場合,胆管用採石バルーンカテーテルを挿入し,乳頭部を約5分間圧迫止血する方法や,パピロトームをそのまま12-1時方向に当て,凝固モードにて止血する.また後出血の場合には,HSE局注やクリップ鉗子で止血する.乳頭上に凝血塊が付着しているため,丁寧に把持鉗子にて剝離した後に散布型洗浄チューブを用いガスコン水などで洗浄を行い,出血部位を確認する.HSEは介助者がしっかり局注が入っている感触を確認しながら1-2mlずつ出血部位の近傍に局注を行う.粘膜が白色調に変化するのが確認できる.過度の局注は膵炎を惹起するため注意が必要である.側視鏡により止血を行う際,クリップ鉗子がリリースできないため,大口径チャンネルの十二指腸スコープを選択する.更にクリップ鉗子が出た状態では起上鉗子は上がらず,クリップがリリースできないため,出血部位を見下ろした状態で,接線方向で行うため習熟した技術が必要である.昨年側視鏡でも容易に止血処置が行えるシュアクリップ(Micro-Tech社)が発売された.2.8mm以上のチャンネル径スコープで用いることができ,起上鉗子を挙上した状態でも良好な回転機能と把持機能を有するため,スコープが安定した状態で行うことができる.クリップサイズが8mm,11mm,16mmと病変型に合った選択が可能である.また,つかみ直し機能を備えており,今後側視鏡を用いた止血処置の第一選択として期待される(Figure 13-a~f電子動画 2).

Figure 13 

シュアクリップによるクリップ止血術.

a:主乳頭は凝血塊の付着および動脈性の出血を認めていた.

b:把持鉗子で凝血塊を除去し,冷水散布を行い,出血の同定を行った.

c,d:同部位に対してHSE1ml局注射を施行した.

e,f:シュアクリップ(Micro-Tech社)1個で止血を行った.

電子動画 2 sure clipによるクリップ止血

3.穿孔

乳頭上縁を過度に切開しなければ,穿孔は少ない.膵管口再狭窄の症例に対し追加EPSTを行う際は穿孔が危惧され,CO2送気を行いながら注意して行う.

4.膵炎

慢性膵炎症例では膵機能が低下しているため,ERCP後膵炎などの発症は少ない.しかしESWL後に細かい破砕片が膵管口に詰まることなどを予防するためにEPSTを行う.膵管口や膵頭部に狭窄を認める場合には拡張手技や内視鏡的経鼻膵管ドレナージ,膵管ステンティングなどを行う.

Ⅹ おわりに

膵石症に対する内視鏡治療の適応とコツについて概説した.膵管ステント留置術,膵石に対するESWLも保険適応となり,今後膵石除去を行う施設も多くなると思われる.このような内視鏡手技に対して様々な処置具の特性やトラブルシューティングに対応できるよう,その対処法に習熟する必要がある.

謝 辞

本解説の執筆にあたり,資料やデータの提供,構成や内容についてご助言をいただきました東邦大学医療センター大森病院消化器内科岸本有為先生,宅間健介先生,原精一先生に深く御礼申し上げます.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:五十嵐良典(オリンパス(株))

文 献
 
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