2021 Volume 63 Issue 1 Pages 84-94
自己免疫性膵炎の内視鏡診断の中心的役割を果たすのが内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による特徴的な主膵管不整狭細像の確認と超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)による組織診断である.膵管狭細所見はびまん性,限局性のいずれの場合もあり,またスキップして存在することもある.膵病変が膵尾部に限局している場合には,途絶様所見を呈する頻度が高くなる.EUS-FNABによる自己免疫性膵炎の診断能はまだ十分とは言えないものの,穿刺針の改良により以前と比べれば大幅に向上している.
自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)は本邦から世界に発信された疾患概念である.最初の症例報告はNakanoらによってなされたが 1),疾患概念という意味では,そのルーツは土岐らが内視鏡的逆行性胆道膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を施行した慢性膵炎症例の一部にびまん性膵管狭窄を呈する一群があることを報告したことに始まると思われる 2).びまん性膵管狭窄を呈する膵炎に自己免疫異常を伴うことが多く,ステロイドが有効であることなどから,YoshidaらによるAIPの疾患概念提唱に至った 3).2001年にHamanoらによりAIPにおいて高率に血清IgG4の上昇が認められることが報告され 4),現在ではAIPの診断はIgG4の上昇や膵外病変の存在など多角的な視点からなされるようになっている 5).AIPはかって「膵管狭細型慢性膵炎」と呼称されていた時代があり,本邦のAIP診断では伝統的にERCPによる膵管狭細像の確認が重視されてきた.日本膵臓学会による臨床診断基準(2002,2006,2011,2018)を見ても,限局型のAIPの診断は2011年基準まではERCPなしではほぼ不可能であった 6)~9).今なお,膵管狭細像の確認がAIPの診断において有用であることに変わりはないが,近年のMRIの性能の向上や超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診・生検(endoscopic ultrasound fine needle aspiration and biopsy:EUS-FNAB,以下単にEUS-FNABと記す)の普及に伴って診断ERCPが回避される流れがあり,AIPの診断もERCP一本槍ではなくなってきている.2018年の診断基準ではERCPなしでも診断がある程度は可能になるように改訂され,時代の流れに合わせたものとなっている.
本稿ではAIPに対する内視鏡診断としてERCP,EUSを用いた検査について概説する.さらに,AIPにしばしば併存する胆管病変や乳頭部病変についても触れることとする.
本邦における自己免疫性膵炎診断基準(2006年基準)では「主膵管にびまん性ないし限局性に狭細像」を認めることがAIPの診断において必須とされていた 7).2011年基準ではびまん型については膵管像確認が必須ではないと緩和されたが,限局型ではERCPでの膵管像が必須とされた 8).この背景としては施設間においてMRCPの解像度の差が大きく,また,分枝膵管の描出まで含めて考えるとMRCPの解像度では膵管像の評価は必ずしも容易ではないことが挙げられていた.近年はMRIの性能が向上してきたことに加え,後述するようにMRCPの方が有利なケースもあることも踏まえ,2018年基準ではMRCP所見でも代用可能となっている 9).筆者もMRCPで膵管,胆管像が十分描出され,ERCPを追加しても新たに有用な知見が得られないようなケースではERCPを省略する場合もある.一方で,MRCPだけでは膵管像評価に確信が持てないようなケースもまだ少なくなく,実際にはMRCP,ERCPの両方を行っているケースがほとんどである.また,AIPの画像所見では膵管狭細所見と並んで「膵腫大」が重要な所見であるが,治療前では腫大があるのかないのかはっきりしない症例もある.膵管造影を行うことで膵病変の存在,範囲がより明らかになることがあり,AIP診断において膵管造影を行う意義は依然として大きい.
「狭細像」とはAIP以外の疾患ではあまり耳慣れない用語であるが,「閉塞や狭窄像と異なり,ある程度広い範囲に及び,膵管径が通常より細くかつ不整を伴っている像」を意味する 9).典型例では狭細像が全膵管長の1/3以上(約5cm)に及ぶが,実際には狭細長が1/3未満のものも少なくない.また,狭細部位は必ずしも連続せず,頭部と尾部というようにスキップして認められる場合もある.狭細長や膵腫大の範囲を表すのに,びまん性,限局性といった用語が使われるが,膵管全長の1/3以上が狭細していればびまん性(diffuse),1/3未満であるならば限局性(focal)とすることが多い.実際には判断が微妙,困難な症例も少なくないため主観が入り込む余地は大きいが,実臨床上,びまん性,限局性の区別が難しいためにAIPの診断に差し支えるということはあまりない.膵癌と異なり,狭細部より尾側の膵管拡張は軽度の場合が多い.自験例のデータではERCPを施行し膵管像を評価できたAIP103例において狭細像は95例(92%)で描出可能であり,狭細長が連続して1/3以上の症例は40例(52%),1/3未満の症例は46例(42%)であった(Figure 1,2).狭細所見がスキップして認められる症例(びまん型に含めるべきかもしれないが)は9例(8.7%)であった(Figure 3).狭細部(狭窄部)の尾側膵管の拡張径については,膵癌例と比較した場合の検討により,4mmないし5mm以下ならばAIPを疑いやすい 10),11),と報告されているが,あくまでも参考程度に考えるべきである.

AIPの膵管像:びまん性の不整狭細像を示す.

AIPの膵管像:膵頭部限局性の狭細像を示す.頭部分枝膵管が比較的良好に描出され,狭細部尾側の主膵管は軽度の拡張を示す.

AIPの膵管像:膵頭部,尾部で主膵管は狭細所見を示すが,体部での狭細所見は認めず,むしろ軽度拡張している.
狭細像が描出できないのはどのような症例であろうか.前述の自験103例中,狭細像描出不可例は8例(7.8%)であるが,そのうち6例は膵管途絶像として捉えられた(Figure 4).膵管が途絶しているように見えても,ガイドワイヤーで途絶部手前まで造影カテーテルを誘導して,強い圧で造影すれば狭細像は描出できる場合が多い.しかしながら,ガイドワイヤー誘導が難しい例や,副膵管が発達している例では途絶としてしか捉えられない場合がある.とくに膵尾部限局腫大例ではこのようなことが起きやすい.ERCPでは途絶があるとその尾側の膵管像は全く不明となってしまうが,一方,MRCPでは途絶部以降の膵管が単純に拡張しているか,拡張後に再度狭細所見が出現しているか,という情報が得られるため,MRCPの方が有用とも言える.自験例では,膵管像に異常のない症例が2例見られたが,これは膵内限局炎症性偽腫瘍パターンのAIPとも言うべき症例である 12).うち1例は膵体部に2cmのmassとして捉えられた病変で手術後の病理所見によりAIPと診断された.膵管像の異常が描出されない場合,あるいはごく軽微な場合のAIP診断は大変難しく,他の画像所見,血清学的所見,病理所見などから総合的に診断する必要がある.

AIPの膵管像:頭部,体部の主膵管に狭細所見は認められない.尾部で主膵管は途絶しており,本例はCT上,膵尾部限局性の腫大を呈した症例であった.
狭細像以外に膵癌との鑑別で重要なポイントが狭細部(狭窄部)において,AIPでは分枝膵管が比較的良好に描出されることが挙げられる 11),13).狭細像ばかりに目が奪われがちであるが,分枝膵管の情報はERCPでないと得難い所見であり,丁寧に評価したいものである.
狭細像や分枝膵管の描出・評価のためには,造影の際の圧力をある程度強くする必要がある.ERCP後膵炎を懸念して欧米では診断目的の膵管造影はまず行われず,AIPもその例外ではない.ただ,通常の慢性膵炎でERCP後膵炎が多くない 14)という事実は,AIPにおいても当てはまる 15).ERCPを施行した自験110例(膵管像を評価しなかった,あるいはできなかった症例も含む)においても初回ERCP後膵炎の発生は5例(4.5%)ですべて軽症であった.膵炎を起こした症例を見直すとやはり診断目的に強めの造影を行った症例が多いように感じられる.膵管造影をしっかり行っていることを考えれば,4.5%は決して高い数字ではないと考えられ,過度にERCP後膵炎を恐れる必要はない.一方でERCPなしでも,診断基準を十分満たすような症例については,必須の検査とは言えなくなってきており,適応を慎重に検討する必要がある.
AIPには胆道病変(IgG4関連硬化性胆管炎)を伴うことが多い 16),17).経過中の出現も含めると自験例での膵内胆管狭窄の頻度は72/112(64%),膵外胆管病変の頻度は25/112(22%)であった.また,胆管が狭窄をきたしていなくとも胆管壁肥厚所見が認められることがしばしば経験され,AIPの診断において有用な所見である(Figure 5) 18),19).閉塞性黄疸がない場合でも,胆管造影及び管腔内超音波による胆道系の評価はなされるべきである.ここでは膵内胆管狭窄と膵外胆管狭窄に分けて述べる.

AIPに合併する胆管病変:左図の胆管造影では下部胆管の狭窄所見のみであるが,管腔内超音波で観察すると胆管の狭窄部だけでなく非狭窄部においても胆管壁肥厚像を認める.
成因としては膵炎による圧迫と胆管壁自体の炎症に伴う壁肥厚という二つの要素が関与していると思われる.但し,胆管壁肥厚も膵頭部病変がない場合はほとんど認められないことから,壁肥厚自体も膵炎の炎症波及を受けた二次的な要素が大きいものと思われる 18).自験60例の検討で膵頭部病変と下部胆管狭窄の関連を示した結果がTable 1である(2015年日本消化器内視鏡学会総会で発表).下部胆管狭窄は膵頭部病変の影響が大きく,膵病変の一部として考えるのが妥当と思われる.

膵頭部病変と下部胆管狭窄有無の関連.
膵内胆管狭窄はAIP症例の多くに合併する.膵癌との鑑別が最も問題になるが,膵癌にしばしば認められる胆管の左方偏位はAIPでも認められ,鑑別に役立つ所見ではない 20).下部胆管癌や膵癌との鑑別のために胆管のブラシ細胞診や経乳頭的胆管生検が行われるが,癌の診断感度は前者で30~48%,後者で41~81%と報告されており,癌が出なかったからと言っても油断はできない 21).後述するように,癌鑑別がとくに問題になる場合は,膵病変があるのであれば,EUS-FNABを考慮すべきである.
2)膵外胆管病変膵外胆管病変はAIPの17-44%に合併する 18),22)~25).胆管だけでなく,胆嚢にもびまん性の壁肥厚をきたすことがある 26).ステロイド不使用で経過観察中に出現する例が少なくない 16).膵外胆管病変は肝門部胆管癌や原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)との鑑別が問題になる.胆管造影上,膵外胆管のどの部位にも狭窄や広狭不整所見は出現しうるが肝門部胆管に狭窄所見の強い患者が多い.胆管腔内超音波検査(intraductal ultrasonography, IDUS)では狭窄部に加え,一見狭窄していないように見える部位でも壁肥厚が認められる.また,壁肥厚は全周性,対称性であり,比較的均一な低エコーを示す.肥厚部の内側及び外側はsmoothであることが多い.壁肥厚辺縁がsmoothであることや非狭窄部にも壁肥厚がはっきり認められる点は胆管癌との鑑別に有用である.
もう一つの重要な鑑別疾患がPSCであるが,AIPに合併する胆管病変とPSCの鑑別の要点についてFigure 6にまとめた.Nakazawaらの解析では帯状狭窄(1-2mmの短い狭窄)の有無,下部胆管狭窄(膵病変を反映)の有無,発症年齢(AIPに合併する胆管病変は若齢者には少ない)が鑑別に際してとくに有用である 24).

AIP合併胆管病変(写真A)とPSC(写真B)の膵外胆管造影所見を示す.
経乳頭的胆管生検によりIgG4陽性形質細胞の浸潤が確認されれば診断に有用である 27).経乳頭的胆管生検の有用性を報告する論文もあるが,陽性所見(強拡大1視野で10個を超えるIgG4陽性形質細胞の検出)が得られる率は概してあまり高いとは言えない 19),28).Nakazawaらの報告では経乳頭的胆管生検でIgG4陽性形質細胞浸潤が確認できたのは18%(3/17)に過ぎない 19).筆者の感覚では18%でも大きい数字に感じられる.経乳頭的胆管生検ではそもそも生検鉗子が胆管表面で滑ってしまいがちであり,組織が採取できたとしても表面部分しか取れないことが多く,粘膜下のIgG4陽性形質細胞浸潤を確認するには限界がある.ブラシ細胞診や胆管生検は陽性所見が出れば大きな意味があるが,陰性所見の場合は参考程度に捉えるべきであろう.他の画像所見や血液所見,AIPに認められる膵外病変(唾液腺炎や後腹膜線維症など)の有無を総合的に判断して良悪性の判断はなされるべきである.
IgG4関連硬化性胆管炎の9割以上にAIPを合併する.内視鏡診断とは離れるが,胆管癌や原発性硬化性胆管炎を疑うような症例であってもIgG4関連疾患の可能性は常に念頭に置き,膵病変の有無には注意を払う必要がある.筆者は画像所見からは胆膵悪性疾患や原発性硬化性胆管炎を疑う症例であっても一度は血清IgG4を測定するようにしている.
AIPの40-65%に十二指腸乳頭部腫大が認められると報告されている 29),30).Figure 7に典型的な乳頭腫大例とIgG4免疫染色の所見を示す.自己免疫性膵炎の診断基準の記載によれば,乳頭腫大は主として膵炎の波及によるものであるとされている 9).乳頭腫大の有無と膵頭部病変の有無の関係を自験60例で調べた結果が,Table 2である.意外にも有意な相関はなく,膵頭部病変が明らかでなくとも乳頭腫大の認められる症例が少なくなかった.したがって,乳頭腫大については下部胆管狭窄と異なり,膵臓の炎症の波及だけでは説明がつかないように思われる.生検でIgG4陽性形質細胞の浸潤が確認されれば補助診断として有用であるが,胆管生検と異なり乳頭生検での陽性率は52-80%と良好な数字が報告されている 26),27),30),31).乳頭腫大のある症例の方が生検での陽性所見率が高い 28),31).

AIPに見られる十二指腸乳頭部腫大.
A:乳頭部の内視鏡所見.
B:IgG4免疫染色ではIgG4陽性形質細胞が多数認められる.

膵頭部病変と十二指腸乳頭腫大有無の関連.
AIPにおける乳頭部腫大はUnnoらが2002年に報告したが,彼らの乳頭部腫大の定義は「乳頭と口側隆起の境界が不明瞭」というものであった 29).コンセンサスのある定義があるわけではなく,実際のところは乳頭腫大の有無の判断に悩むケースも少なくない.術者間でも相当のばらつきが生じうる.筆者は16例のAIPの乳頭の写真を集め,胆膵疾患を専門とする医師21名に腫大の有無の判定を行ってもらったことがあるが,13例で腫大ありと答えた医師もいれば2例でしか腫大は認めないと答えた医師もいた(筆者は8例で腫大ありと判断).このように乳頭腫大の判断には主観の入り込む余地が大きく,誰が見ても腫大が明らかという症例を除けば,診断における有用性には限界があると言わざるを得ない.
AIPにおける超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)所見についてはHyodoら 32),Hokiら 33)の報告があるが,膵全体の低エコー像,膵腫大,胆管壁の肥厚像,膵辺縁の低エコー(Capsule-like rimを反映)などが特徴として挙げられている.「AIP=低エコー」のイメージが強いものの,発症から時間がたつと線維化を反映して点状,線状,斑状の高エコーが目立つようになる(Figure 8).また,主膵管が腫瘤内を貫通あるいは腫瘤内に入り込む像(duct-penetrating sign)が膵癌との鑑別点になる場合がある.造影EUSではAIPでは膵癌と比して血流が多く,病変が均一に染まることが特徴であるが,AIP以外の腫瘤形成性膵炎でも同様の造影パターンを呈する 34).

AIPの超音波内視鏡像.
写真A(Bモード)では全体としては低エコーであるが,内部に線維化を表す高エコースポットが多数認められる.Elastography(写真B)では病変は主に青色(赤→緑→青の順に硬くなる)を呈し,病変が「硬い」ことが分かる.
EUS elastographyを行うと,組織の硬さを映像化することができるが,AIPは「硬い病変」として捉えられるが,膵癌も「硬い病変」であるため,膵癌との鑑別はelastographyでは難しそうである 35).
腹部エコーで病変がよく観察できない場合にはEUS所見は診断に有用かもしれないが,腹部エコーで膵臓が良好に観察される場合ではEUSの観察によって付加される情報はそれほど多くないというのが現状であろう.EUSの最大の意義はやはり次に述べるように組織採取が可能である点と思われる.
経皮的にエコーガイド下に膵生検を行うことは可能ではあるものの,病変が限局性でよく見えない場合には行い難い検査である.EUS-FNABであれば消化管ガスの影響は受けないため,十分に膵臓を観察しながらの生検が可能である.AIPの国際診断基準 5)では①膵管周囲のリンパ球形質細胞浸潤②閉塞性静脈炎③花筵状線維化④強拡大1視野(/HPF)で10個を超えるIgG4陽性形質細胞,のうち3項目を満たせば病理所見のみでAIPの診断は可能である(レベル1の所見).また,2項目を満たすものをレベル2の所見としている.典型像をFigure 9に示す.もし生検での診断率が膵癌の診断感度(78-95%)並みに高いのであれば 36),EUS-FNABはAIPの診断において最重要の位置づけになるはずであるが,現状はそのようにはなっていない.生検標本だけでAIPの診断を下すのが依然として難しいという事実がある.汎用される22G針を用いた論文をいくつか見直してみると,Imaiらは21例のAIPについてEUS-FNAの成績を2011年に報告しているが,AIPと確診できた症例はなく,IgG4陽性形質細胞浸潤(>10/HPF)の所見すら1例も確認できなかった,としている 37).Mizunoらの報告でも14例中AIPと確診できる症例はなかった 38).その後は,次第に成績の向上が見られ,Ishikawaらの報告では47例の検討でレベル1が9例(19%),レベル2(11%)が5例で診断可能であった 39).さらにKannoら報告では78例の多施設前向き検討でレベル1が32例(41%),レベル2が13例(16.7%)で診断され,強視野で少なくとも1視野以上の組織が62例(79.5%)で得られたという好成績であった 40).

22G Acquire針を用いて得られたAIP検体の病理所見(A:弱拡大,B:強拡大,C:IgG4免疫染色).
線維化とリンパ球,形質細胞浸潤が認められる.本例では好酸球浸潤もやや目立つ.IgG4免疫染色では1視野で10個以上のIgG4陽性形質細胞が認められる.
EUS-FNABによるAIPの組織診断が難しい理由を大別すると 1)診断に必要な組織量が十分採取できない 2)生検時期によっては組織が取れても細胞浸潤が目立たず診断に至らない,の2点である.後者の解決は難しいが,前者の要因は穿刺技術やデバイスの改良によりある程度は克服が可能と思われる.ただ,筆者が使用していた22G針(Expect, Boston Scientific)ではKannoらのように組織が取れる実感がなく,Iwashitaらの報告 41)(19G針を用いるとAIPの確診が43%で得られた)を参考に19GのExpect針を用いてAIPは穿刺していた.それでもなお,きちんと穿刺できているにもかかわらず十分な組織採取ができていないように思われ,また19G針では膵頭部の穿刺が難しく不便に感じていた.しかしながら近年急速に普及してきたフランシーン形状の穿刺針(Acquire, Boston scientific)は「AIPではEUS-FNABで組織が採取しづらい」という問題の解決に大きく貢献しそうである.フランシーン形状とはFigure 10に示すような形状を指す(的確な日本語訳はないようである).従来の穿刺針(ランセット形状針やメンギーニ形状針)では先端が鋭利であり,先端を切り裂いて,細胞を吸い込んで検体を採取するようにデザインされているのに対し,フランシーン針は3本の先端チップで組織を穿刺,把持し,3面の広いカッティングフェイスで組織を「切り取る」ことで検体を採取するようデザインされている.学会レベルで少数例の検討ながらAIPの組織診における有用性の報告が相次ぎ,筆者も22GのAcquire針を使用し始めたが,実際に従来針と比較しても明らかに大きな組織検体が採取できるようになったと感じている.KuritaらによりAIP組織診断における22G Acquire針と20Gの側溝付きメンギーニ形状針(EchoTip Procore, Cook Medical)の比較研究が2019年に報告された 42).Procoreは先端を切り裂いて,細胞を吸い込んで検体を採取するタイプの穿刺針であり,従来針の改良型である.レベル1または2の所見が得られた割合がProcore群では45%(23/51)であったのに対し,Acquire群では78%(39/50)と有意にAcquire群で高値であった(P=0.001).20G針より22G針の方で診断率が高いのであるから,驚きというしかない.Kuritaらの論文では10mlの吸引圧で病変内の穿刺方向を少しずつ変えながら(Fanning法),1回の穿刺で10回ほど針を前後させるとある.本論文からは,22G Acquire針を用いて吸引法で2~3回穿刺というのがおそらく現時点でのAIPのEUS-FNABのスタンダードということになると思われる.どのくらいの吸引圧がよいのか,あるいは吸引を行わなくてもよいのか(no suction法),スタイレットを少しずつ引きながら弱い陰圧を負荷するslow-pull法がよいのかといった問題はAIPに限らず,以前から存する問題であるが,どの方法が特別に優れている結論は至っていない 43).AIPについてはどの方法が最適か,あるいはどの方法でもあまり大差がないのかというのは今後の課題であろう.

EUS-FNABの穿刺針の先端形状.
Aがフランシーン形状針(Acquire 22G),Bがランセット形状針(Expect 22G).
穿刺の際には上記のようにFanning法を用いてsampling errorを減らす工夫をするわけであるが,細胞浸潤の強い部分を採取できた方が診断には有用である.そのため筆者はできる限り低エコーの部位を穿刺するようにしている.
2012年にも筆者は本誌にAIPの内視鏡診断に関する総説を書いたが 44),当時はEUS-FNAB(2010年4月に保険収載)の普及率が高くなく,十分な組織も採取できなかったことからAIPの内視鏡診断もどうしてもERCPがメインになるのは仕方がないことであった.ただ,当時の総説の中で「膵癌が否定できないような症例ではEUS-FNABを省略してはならない.」と述べ,さらに「(EUS-FNABは)進歩の著しい領域であり,画期的な生検針の開発などがあれば膵管像を中心とした診断体系そのものが変わるということもありえない話ではなかろう.」とも記していた.
8年が経過し,当時とは状況がずいぶん異なってきたと感じる.EUS-FNABだけでAIPの診断できるかと言えばまだまだ難しいが,膵癌の否定だけでなくAIPの診断に有用な所見がEUS-FNABで得られる症例は明らかに増加した.一方で,MRIの性能向上や診断ERCPの回避の流れからERCPの診断上の重みは低下したように思われる.
ただ,ERCP,EUS-FNABのいずれも重要なmodalityであることは間違いなく,優劣のつけられるものではない.症例によってどちらを先行して行うかを決めればよいと思われる.具体的には筆者の場合,閉塞性黄疸があればERCPを先行し,胆管ドレナージと膵管造影を施行.膵癌との鑑別が問題になる体尾部限局型病変はEUS-FNABを先行して行っている.ほとんど全例で両方とも行ってしまう施設はあると思われるが,両方行えばより診断の確実度が増す一方,片方だけですでに診断基準上「確診」できるような症例については,余計な?検査で合併症を起こせば面白くないとも言える.どこまで侵襲的検査を行うかはリスクとベネフィット,患者さんの性格なども踏まえ総合的に判断するしかない.ただ必要な検査まで省略して安易にステロイドトライアルに走ることは厳に慎まなければならない.
AIPの内視鏡診断について概説したが,内視鏡検査はどちらかと言えば診断の契機と言うよりは決め手になるものである.AIPは疑うことができれば,たいてい何とか診断できるものであるが,当然のことながら疑うことができなければ内視鏡診断の知識も役立たない.癌と決めつけて手術をしたら実はAIPだったというのが最も多い誤診のパターンである.「造影パターンが癌としては典型的ではない」「腫瘍マーカーが高くない」「総蛋白値が高い」「膵外病変を示唆するような症状や既往がある」など少しでも引っかかるところがあればAIPの可能性を想起する必要がある.また,腫瘍性疾患を疑っていても一度はIgG4を測定するようにすることでかなりの見落としは防ぐことができるはずである.内視鏡診断も大事ではあるが,AIPの診断で最も難しいのは「AIPを疑う」ことである,と最後に強調しておきたい.
本論文内容に関連する著者の利益相反:中井陽介(ボストン・サイエンティフィック・ジャパン)